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Helmholtz の分解とデルタ関数

2026年10月15日23分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 ベクトル解析の道具
目次
  1. Dirac のデルタ関数
  2. 回転なしの場とポテンシャル
  3. Helmholtz の定理
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第1章 §1.3 ★★★ 点電荷を扱う道具と、場が発散と回転で決まることの証明

点電荷の電場は r/r3\bm{r}/r^3 に比例する。例題 1.1 で見たように、この場の発散は原点以外では 0 である。

ところが原点を囲む球面を通る流束は、球面の半径によらず 4π4\pi になる。大きさ ∣r/r3∣=1/r2\left\vert \bm{r}/r^3\right\vert =1/r^2 に面積 4πr24\pi r^2 を掛けたものだからである。発散定理と矛盾しないためには、発散が原点の1点に集中していなければならない。この「1点に集中した湧き出し」を式で表す道具がデルタ関数である。

Dirac のデルタ関数

定義 1.11(デルタ関数)

1次元の Dirac のデルタ関数 δ(x)\delta(x) は、原点を含む区間で連続な任意の関数 ff について

∫−∞∞f(x) δ(x−a) dx=f(a)(1.26)\int_{-\infty}^{\infty}f(x)\,\delta(x-a)\,\mathrm{d} x=f(a)\tag{1.26}

を満たすものとして定める。3次元では δ(3)(r)=δ(x)δ(y)δ(z)\delta^{(3)}(\bm{r})=\delta(x)\delta(y)\delta(z) とおき、

∫f(r) δ(3)(r−a) dV=f(a)(1.27)\int f(\bm{r})\,\delta^{(3)}(\bm{r}-\bm{a})\,\mathrm{d} V=f(\bm{a})\tag{1.27}

が成り立つ。

δ(x)\delta(x) は普通の意味の関数ではない。x≠0x\neq0 で 0 でありながら積分が 1 になる関数は存在しないからである。正確には、関数 ff に数 f(a)f(a) を対応させる規則(超関数)であり、積分の中でだけ意味を持つ。具体的には、幅 σ\sigma の正規分布の密度

δσ(x)=12π σe−x2/(2σ2)\delta_\sigma(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\,\sigma}\mathrm{e}^{-x^2/(2\sigma^2)}

のように、積分が 1 で幅が 0 に縮む関数の列をとる。積分してから σ→0\sigma\to0 の極限をとったものが (1.26) の左辺である。連続な関数なら、δσ\delta_\sigma が 0 でない狭い範囲で f(x)≈f(a)f(x)\approx f(a) と置ける。よって極限は f(a)f(a) になる。

定義から次の性質が出る。c≠0c\neq0 について δ(cx)=δ(x)/∣c∣\delta(cx)=\delta(x)/\left\vert c\right\vert である。実際、y=cxy=cx と置換すると

∫f(x)δ(cx) dx=∫f(y/c)δ(y) dy∣c∣=f(0)∣c∣\int f(x)\delta(cx)\,\mathrm{d} x=\int f(y/c)\delta(y)\,\frac{\mathrm{d} y}{\left\vert c\right\vert }=\frac{f(0)}{\left\vert c\right\vert }

となる(c<0c<0 では積分の上下が入れ替わるので絶対値が付く)。

より一般に、g(x)g(x) の零点 xix_i がすべて単純であるとする。つまり各零点で g′(xi)≠0g'(x_i)\neq0 とする。このとき

δ(g(x))=∑iδ(x−xi)∣g′(xi)∣(1.28)\delta\bigl(g(x)\bigr)=\sum_i\frac{\delta(x-x_i)}{\left\vert g'(x_i)\right\vert }\tag{1.28}

が成り立つ。各零点の近くで g(x)≈g′(xi)(x−xi)g(x)\approx g'(x_i)(x-x_i) と1次近似し、上の性質を使えばよい。

次元について注意しておくと、δ(x)\delta(x) は長さの逆数、δ(3)(r)\delta^{(3)}(\bm{r}) は体積の逆数の次元を持つ。点電荷 qq の電荷密度を ρ(r)=q δ(3)(r−a)\rho(\bm{r})=q\,\delta^{(3)}(\bm{r}-\bm{a}) と書く。これは体積で積分すると電荷 qq になる。

∇2(1/r)=−4πδ(3)\nabla^2(1/r)=-4\pi\delta^{(3)}

定理 1.12(1/r1/r のラプラシアン)

超関数の意味で

∇21r=−4πδ(3)(r),同値な形で∇⋅rr3=4πδ(3)(r)(1.29)\nabla^2\frac1r=-4\pi\delta^{(3)}(\bm{r}),\qquad\text{同値な形で}\qquad\nabla\cdot\frac{\bm{r}}{r^3}=4\pi\delta^{(3)}(\bm{r})\tag{1.29}

が成り立つ。すなわち原点の近くで連続な任意の ff について ∫f ∇2(1/r) dV=−4πf(0)\int f\,\nabla^2(1/r)\,\mathrm{d} V=-4\pi f(\bm{0}) である。

証明

1/r1/r は原点で発散する。そこで ε>0\varepsilon >0 を使って uε(r)=(r2+ε2)−1/2u_{\varepsilon }(\bm{r})=(r^2+\varepsilon ^2)^{-1/2} と滑らかにし、その極限として意味を与える。xx で微分すると

∂uε∂x=−x(r2+ε2)−3/2,∂2uε∂x2=−(r2+ε2)−3/2+3x2(r2+ε2)−5/2\frac{\partial u_{\varepsilon }}{\partial x}=-x(r^2+\varepsilon ^2)^{-3/2},\qquad \frac{\partial ^2u_{\varepsilon }}{\partial x^2}=-(r^2+\varepsilon ^2)^{-3/2}+3x^2(r^2+\varepsilon ^2)^{-5/2}

である。y,zy,z についても同様なので、3つを足して

∇2uε=−3(r2+ε2)−3/2+3r2(r2+ε2)−5/2=−3ε2(r2+ε2)5/2(1.30)\nabla^2u_{\varepsilon }=-3(r^2+\varepsilon ^2)^{-3/2}+3r^2(r^2+\varepsilon ^2)^{-5/2}=-\frac{3\varepsilon ^2}{(r^2+\varepsilon ^2)^{5/2}}\tag{1.30}

を得る。この関数には2つの性質がある。

第一に、r≠0r\neq0 を固定して ε→0\varepsilon \to0 とする。このとき (1.30) は −3ε2/r5→0-3\varepsilon ^2/r^5\to0 となり、例題 1.1 の結果と合う。

第二に、全空間での積分は ε\varepsilon によらない。球殻に分けて r=εtr=\varepsilon t と置換すると

∫∇2uε dV=−∫0∞3ε2(r2+ε2)5/24πr2 dr=−12π∫0∞t2(1+t2)5/2 dt.\int\nabla^2u_{\varepsilon }\,\mathrm{d} V=-\int_0^\infty\frac{3\varepsilon ^2}{(r^2+\varepsilon ^2)^{5/2}}4\pi r^2\,\mathrm{d} r=-12\pi\int_0^\infty\frac{t^2}{(1+t^2)^{5/2}}\,\mathrm{d} t .

t=tan⁡αt=\tan\alpha と置換すると

dt=dαcos⁡2α,1+t2=1cos⁡2α\mathrm{d} t=\frac{\mathrm{d}\alpha}{\cos^2\alpha},\qquad 1+t^2=\frac{1}{\cos^2\alpha}

なので、最後の積分は

∫0π/2sin⁡2αcos⁡α dα=13\int_0^{\pi/2}\sin^2\alpha\cos\alpha\,\mathrm{d}\alpha=\frac13

となる。よって全空間での積分は −4π-4\pi である。

以上から、∇2uε\nabla^2u_{\varepsilon } は半径 ε\varepsilon 程度の範囲に集中する関数の列である。その積分は −4π-4\pi である(図 1.3)。

連続な ff について、積分 ∫f∇2uε dV\int f\nabla^2u_{\varepsilon }\,\mathrm{d} V を2つの範囲に分けて評価する。

  • r>ε1/2r>\varepsilon ^{1/2} の範囲:∣∇2uε∣≤3ε2/r5\left\vert \nabla^2u_{\varepsilon }\right\vert \le3\varepsilon ^2/r^5 を使う。ff が有界なら、寄与はその最大値の O(ε1/2)\mathcal{O}(\varepsilon ^{1/2}) 倍で抑えられる。
  • r≤ε1/2r\le\varepsilon ^{1/2} の範囲:f(r)=f(0)+o(1)f(\bm{r})=f(\bm{0})+o(1) と置ける。

よって ε→0\varepsilon \to0 で ∫f∇2uε dV→−4πf(0)\int f\nabla^2u_{\varepsilon }\,\mathrm{d} V\to-4\pi f(\bm{0}) となる。

第2の形は、例題 1.1 の n=−1n=-1 の場合 ∇(1/r)=−r/r3\nabla(1/r)=-\bm{r}/r^3 による。これから

∇⋅rr3=−∇21r\nabla\cdot\frac{\bm{r}}{r^3}=-\nabla^2\frac1r

となる。

図

図 1.3 滑らかにした 1/r1/r のラプラシアンを球殻あたりの量 4πr2∣∇2uε∣4\pi r^2\left\vert \nabla^2u_{\varepsilon }\right\vert にして描いたもの。実線が ε=0.5\varepsilon =0.5、破線が ε=0.2\varepsilon =0.2。どちらも曲線の下の面積は 4π4\pi で、ε\varepsilon を小さくすると原点の近くに集中する。

この定理で座標の原点を r′\bm{r}' へずらすと、点 r′\bm{r}' にある湧き出しについての式

∇21∣r−r′∣=−4πδ(3)(r−r′)\nabla^2\frac{1}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }=-4\pi\delta^{(3)}(\bm{r}-\bm{r}')

も得られる。これを重ね合わせると次の公式が出る。

系 1.13(Poisson 方程式の解)

s(r)s(\bm{r}) が有界な範囲の外で 00 になる連続関数なら、

ϕ(r)=14π∫s(r′)∣r−r′∣ dV′(1.31)\phi(\bm{r})=\frac{1}{4\pi}\int\frac{s(\bm{r}')}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\,\mathrm{d} V'\tag{1.31}

は ∇2ϕ=−s\nabla^2\phi=-s を満たす。

証明

ラプラシアンは r\bm{r} についての微分なので、積分の中へ入れられる。(1.29) をずらしたものを使うと

∇2ϕ=14π∫s(r′)(−4πδ(3)(r−r′))dV′=−s(r)\nabla^2\phi=\frac{1}{4\pi}\int s(\bm{r}')\bigl(-4\pi\delta^{(3)}(\bm{r}-\bm{r}')\bigr)\mathrm{d} V'=-s(\bm{r})

となる。

第2章で s=ρ/ε0s=\rho/\varepsilon_0 とおくと、これは電荷分布の作る電位の Coulomb の公式そのものになる。

回転なしの場とポテンシャル

(1.12) は、勾配の場の回転が 0 であることを述べていた。その逆を考える。領域 UU の中のどんな閉曲線も、その領域の中で連続的に1点まで縮められるとき、UU は単連結であるという。全空間・球の内部・直方体の内部は単連結であり、全空間から zz 軸を除いた領域は単連結でない(zz 軸を巻く円は軸に引っかかって縮められない)。

定理 1.14(スカラーポテンシャルの存在)

単連結な領域 UU で連続的に微分できるベクトル場 F\bm{F} について、次の3つは同値である。

  1. UU で ∇×F=0\nabla\times\bm{F}=\bm{0}。
  2. UU の中の線積分 ∫CF⋅dr\int_C\bm{F}\cdot\mathrm{d}\bm{r} は端点だけで決まり、道筋によらない。
  3. 領域の上のスカラー場 ϕ\phi で、F=−∇ϕ\bm{F}=-\nabla\phi となるものがある。
証明

3 ⇒\Rightarrow 1 は (1.12) である。

1 ⇒\Rightarrow 2:同じ端点を結ぶ2つの道 C1,C2C_1,C_2 をとる。前者をたどってから後者を逆にたどる閉曲線を CC とする。領域が単連結なので、CC を縁とする曲面 SS を領域の中にとれる(入門の範囲では、この事実を認めて使う)。Stokes の定理から

∫C1F⋅dr−∫C2F⋅dr=∮CF⋅dr=∫S(∇×F)⋅dS=0\int_{C_1}\bm{F}\cdot\mathrm{d}\bm{r}-\int_{C_2}\bm{F}\cdot\mathrm{d}\bm{r}=\oint_C\bm{F}\cdot\mathrm{d}\bm{r}=\int_S(\nabla\times\bm{F})\cdot\mathrm{d}\bm{S}=0

である。

2 ⇒\Rightarrow 3:基準点 r0\bm{r}_0 を1つ決め、

ϕ(r)=−∫r0rF⋅dr\phi(\bm{r})=-\int_{\bm{r}_0}^{\bm{r}}\bm{F}\cdot\mathrm{d}\bm{r}

と定める。2 より右辺は道筋によらないので、ϕ\phi は矛盾なく定まる。

点 r\bm{r} から xx 方向へ少し進んだ点を考える。進んだ距離を hh とする。そこまでの道は、r\bm{r} までの道に線分を継ぎ足してとる。すると

ϕ(r+hex)−ϕ(r)=−∫0hFx(x+t,y,z) dt\phi(\bm{r}+h\bm{e}_x)-\phi(\bm{r})=-\int_0^hF_x(x+t,y,z)\,\mathrm{d} t

である。これを hh で割って極限 h→0h\to0 をとる。すると ∂ϕ∂x=−Fx\frac{\partial \phi}{\partial x}=-F_x を得る。y,zy,z 成分も同様で、F=−∇ϕ\bm{F}=-\nabla\phi となる。

静電場で E=−∇ϕ\bm{E}=-\nabla\phi と書く習慣に合わせて、符号を負にとった。ϕ\phi は定数を足す自由度を除いて一意に決まる。

単連結でない領域

zz 軸を除いた領域で、ベクトル場

F=(−y, x, 0)x2+y2\bm{F}=\frac{(-y,\,x,\,0)}{x^2+y^2}

を考える。zz 成分を直交座標で計算すると

(∇×F)z=∂∂xxx2+y2+∂∂yyx2+y2=y2−x2(x2+y2)2+x2−y2(x2+y2)2=0(\nabla\times\bm{F})_z=\frac{\partial }{\partial x}\frac{x}{x^2+y^2}+\frac{\partial }{\partial y}\frac{y}{x^2+y^2}=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}+\frac{x^2-y^2}{(x^2+y^2)^2}=0

である。

x,yx,y 成分も 0 である。Fz=0F_z=0 で、ほかの2成分が zz によらないからである。したがって zz 軸以外で ∇×F=0\nabla\times\bm{F}=\bm{0} となる。円柱座標で F=eφ/s\bm{F}=\bm{e}_\varphi/s と書いて計算する方法は、確認テスト 1.4-3 で扱う(1.4 節)。それでも zz 軸を巻く半径 aa の円での循環は

  • 円上で ∣F∣=1/a\left\vert \bm{F}\right\vert =1/a、
  • F\bm{F} は円の接線方向を向く、

ので (1/a)⋅2πa=2π(1/a)\cdot2\pi a=2\pi であり、0 でない。定理 1.14 の「単連結」という仮定を外すと 1 ⇒\Rightarrow 2 が成り立たないことを、この例が示す。第5章で見るように、この F\bm{F} は直線電流の作る磁場と同じ形をしており、循環が 0 にならないことが Ampère の法則に対応する。

発散なしの場についても同じ形の主張がある。全空間(あるいは星形の領域)で ∇⋅F=0\nabla\cdot\bm{F}=0 なら、F=∇×A\bm{F}=\nabla\times\bm{A} となるベクトル場が存在する。全空間で場が無限遠で十分速く 0 になる場合は、次の Helmholtz の定理の中で A\bm{A} を具体的に作る。この A\bm{A} が第5章のベクトルポテンシャルである。

Helmholtz の定理

ベクトル場は発散と回転から復元できるか、という問いに答える。まず一意性のための補題を用意する。

補題 1.15(最大値原理)

関数 uu は有界な閉領域 Vˉ\bar V で連続とする。さらに内部で ∇2u=0\nabla^2u=0 を満たすとする。このような関数を調和関数と呼ぶ。このとき uu の最大値と最小値は、境界 ∂V\partial V の上でとられる。

証明

ε>0\varepsilon >0 について v=u+εr2v=u+\varepsilon r^2 とおくと

∇2v=∇2u+6ε=6ε>0\nabla^2v=\nabla^2u+6\varepsilon =6\varepsilon >0

である。vv が内部の点で最大値をとったとすると、その点で1変数の最大の条件

∂2v∂x2≤0,∂2v∂y2≤0,∂2v∂z2≤0\frac{\partial ^2v}{\partial x^2}\le0,\qquad \frac{\partial ^2v}{\partial y^2}\le0,\qquad \frac{\partial ^2v}{\partial z^2}\le0

が成り立つ。足すと ∇2v≤0\nabla^2v\le0 となって矛盾する。よって vv の最大値は境界でとられ、

max⁡Vˉu≤max⁡Vˉv=max⁡∂Vv≤max⁡∂Vu+εmax⁡∂Vr2\max_{\bar V}u\le\max_{\bar V}v=\max_{\partial V}v\le\max_{\partial V}u+\varepsilon \max_{\partial V}r^2

が成り立つ。ε→0\varepsilon \to0 とすれば max⁡Vˉu≤max⁡∂Vu\max_{\bar V}u\le\max_{\partial V}u である。最小値は −u-u に同じ議論を使えばよい。

定理 1.16(Helmholtz の定理)

全空間で滑らかなスカラー場 D(r)D(\bm{r}) とベクトル場 C(r)\bm{C}(\bm{r}) が与えられているとする。後者は ∇⋅C=0\nabla\cdot\bm{C}=0 を満たし、どちらも有界な範囲の外で 0 になるとする1無限遠で 1/r31/r^3 より速く 0 になる場合でも、以下の積分が収束し、表面の項が消えるので同じ結論が成り立つ。下の脚注へ。このとき

∇⋅F=D,∇×F=C,∣r∣→∞ で F→0(1.32)\nabla\cdot\bm{F}=D,\qquad\nabla\times\bm{F}=\bm{C},\qquad\left\vert \bm{r}\right\vert \to\infty\text{ で }\bm{F}\to\bm{0}\tag{1.32}

を満たすベクトル場 F\bm{F} はただ1つあり、

F=−∇ϕ+∇×A,ϕ(r)=14π∫D(r′)∣r−r′∣dV′,A(r)=14π∫C(r′)∣r−r′∣dV′(1.33)\bm{F}=-\nabla\phi+\nabla\times\bm{A},\qquad\phi(\bm{r})=\frac{1}{4\pi}\int\frac{D(\bm{r}')}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\mathrm{d} V',\qquad\bm{A}(\bm{r})=\frac{1}{4\pi}\int\frac{\bm{C}(\bm{r}')}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\mathrm{d} V'\tag{1.33}

と書ける。−∇ϕ-\nabla\phi は回転を持たず、∇×A\nabla\times\bm{A} は発散を持たないので、(1.33) は場を回転なしの部分と発散なしの部分に分ける。

証明

存在:G=−∇ϕ+∇×A\bm{G}=-\nabla\phi+\nabla\times\bm{A} とおく。系 1.13 より ∇2ϕ=−D\nabla^2\phi=-D、成分ごとに ∇2A=−C\nabla^2\bm{A}=-\bm{C} である。(1.13) を使うと

∇⋅G=−∇2ϕ+0=D\nabla\cdot\bm{G}=-\nabla^2\phi+0=D

となる。回転は (1.12) と (1.16) から

∇×G=∇×(∇×A)=∇(∇⋅A)−∇2A=∇(∇⋅A)+C\nabla\times\bm{G}=\nabla\times(\nabla\times\bm{A})=\nabla(\nabla\cdot\bm{A})-\nabla^2\bm{A}=\nabla(\nabla\cdot\bm{A})+\bm{C}

である。残りの ∇⋅A\nabla\cdot\bm{A} が 0 であることを示す。r′\bm{r}' についての微分を ∇′\nabla' と書くと

∇1∣r−r′∣=−∇′1∣r−r′∣\nabla\frac{1}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }=-\nabla'\frac{1}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }

である。これに注意して、(1.14) と発散定理で部分積分すると

∇⋅A=14π∫C(r′)⋅∇1∣r−r′∣dV′=−14π∮∞C⋅dS′∣r−r′∣+14π∫∇′⋅C(r′)∣r−r′∣dV′\nabla\cdot\bm{A}=\frac{1}{4\pi}\int\bm{C}(\bm{r}')\cdot\nabla\frac{1}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\mathrm{d} V' =-\frac{1}{4\pi}\oint_{\infty}\frac{\bm{C}\cdot\mathrm{d}\bm{S}'}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }+\frac{1}{4\pi}\int\frac{\nabla'\cdot\bm{C}(\bm{r}')}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }\mathrm{d} V'

となる。C\bm{C} は遠方で 0 なので表面の項は消え、仮定 ∇⋅C=0\nabla\cdot\bm{C}=0 から体積の項も消える。よって ∇×G=C\nabla\times\bm{G}=\bm{C} である。

D,CD,\bm{C} は有界な範囲に収まっている。そのため遠方で、ポテンシャル ϕ,A\phi,\bm{A} は 1/r1/r のように 0 に近づく。場 G\bm{G} は 1/r21/r^2 のように 0 に近づく。

一意性:(1.32) を満たす2つの場の差を H\bm{H} とする。差は ∇⋅H=0\nabla\cdot\bm{H}=0、∇×H=0\nabla\times\bm{H}=\bm{0} を満たす。よって (1.16) から

∇2H=∇(∇⋅H)−∇×(∇×H)=0\nabla^2\bm{H}=\nabla(\nabla\cdot\bm{H})-\nabla\times(\nabla\times\bm{H})=\bm{0}

となり、各成分 HiH_i は調和関数である。

半径 RR の球に補題 1.15 を使うと、球の内部の任意の点で ∣Hi∣≤max⁡r=R∣Hi∣\left\vert H_i\right\vert \le\max_{r=R}\left\vert H_i\right\vert が成り立つ。R→∞R\to\infty で右辺は 0 に近づくので Hi=0H_i=0 である。

分解の意味

Helmholtz の定理によれば、遠方で 00 になるベクトル場は、各点の湧き出し(発散)と渦(回転)を与えれば完全に決まる。Maxwell 方程式も、この理由で次の4つを与える形で書かれている。

∇⋅E,∇×E,∇⋅B,∇×B\nabla\cdot\bm{E},\qquad \nabla\times\bm{E},\qquad \nabla\cdot\bm{B},\qquad \nabla\times\bm{B}

静電場では ∇×E=0\nabla\times\bm{E}=\bm{0} なので第1項だけが残り、静磁場では ∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 なので第2項だけが残る。

例題 1.5 一様な湧き出しを持つ球 ★★

オリジナル湧き出しの密度 D(r)D(\bm{r}) は、半径 aa の球の内部で一定とする。その値を s0s_0 とし、外部では 0 とする。ベクトル場 F\bm{F} は、全空間で回転を持たず(∇×F=0\nabla\times\bm{F}=\bm{0})、遠方で 0 に近づくとする。

  1. 球対称性と発散定理を使って F\bm{F} を求めよ。
  2. F=−∇ϕ\bm{F}=-\nabla\phi となるポテンシャルのうち、遠方で ϕ→0\phi\to0 となるものを求めよ。
  3. 中心での値 ϕ(0)\phi(\bm{0}) を公式 (1.33) から直接計算し、2 と一致することを確かめよ。
解答
  1. Helmholtz の定理より F\bm{F} はただ1つである。原点を中心とする回転で DD が変わらないので、回転した場も同じ条件を満たし、一意性から F\bm{F} 自身と一致する。

よって F\bm{F} は回転で不変であり、F=F(r) r/r\bm{F}=F(r)\,\bm{r}/r の形になる(ほかの向きの成分は、その点を通る動径を軸とする回転で向きが変わってしまう)。半径 rr の球面に発散定理を当てはめると、左辺は ∮F⋅dS=4πr2F(r)\oint\bm{F}\cdot\mathrm{d}\bm{S}=4\pi r^2F(r) である。これが右辺 ∫D dV\int D\,\mathrm{d} V に等しい。右辺は

∫D dV={4π3r3s0(r≤a)4π3a3s0(r>a)\int D\,\mathrm{d} V=\begin{cases}\dfrac{4\pi}{3}r^3s_0 & (r\le a)\\[2mm] \dfrac{4\pi}{3}a^3s_0 & (r>a)\end{cases}

である。したがって

F={s03r(r≤a)s0a33rr3(r>a)\bm{F}=\begin{cases}\dfrac{s_0}{3}\bm{r} & (r\le a)\\[2mm] \dfrac{s_0a^3}{3}\dfrac{\bm{r}}{r^3} & (r>a)\end{cases}

となる。どちらも f(r)rf(r)\bm{r} の形なので、例題 1.1 の 2 より回転は 0 である。発散は内部で s0s_0、外部で 0 になる。

  1. F=−∇ϕ=−dϕdrrr\bm{F}=-\nabla\phi=-\frac{d \phi}{d r}\dfrac{\bm{r}}{r} なので dϕdr=−F(r)\frac{d \phi}{d r}=-F(r) である。外部では ϕ=s0a3/(3r)\phi=s_0a^3/(3r) とすれば遠方で 0 になる。

内部では ϕ=−s0r2/6+c\phi=-s_0r^2/6+c である。定数は、球面上で外部の値 s0a2/3s_0a^2/3 とつながるように決める。すると c=s0a2/2c=s_0a^2/2 となる。まとめて

ϕ={s06(3a2−r2)(r≤a)s0a33r(r>a)\phi=\begin{cases}\dfrac{s_0}{6}(3a^2-r^2) & (r\le a)\\[2mm]\dfrac{s_0a^3}{3r}&(r>a)\end{cases}

となる。

  1. 公式で r=0\bm{r}=\bm{0} とおくと

ϕ(0)=14π∫r′≤as0r′ dV′=s04π∫0a4πr′2r′ dr′=s0a22\phi(\bm{0})=\frac{1}{4\pi}\int_{r'\le a}\frac{s_0}{r'}\,\mathrm{d} V'=\frac{s_0}{4\pi}\int_0^a\frac{4\pi r'^2}{r'}\,\mathrm{d} r'=\frac{s_0a^2}{2}

となり、2 で r=0r=0 とした値 s0a2/2s_0a^2/2 と一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 1.3-1 ∫−∞∞ex δ(x2−4) dx\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{e}^{x}\,\delta(x^2-4)\,\mathrm{d} x を求めよ。
  2. 1.3-2 ベクトル場 F=(2xy+z, x2, x)\bm{F}=(2xy+z,\ x^2,\ x) の回転を計算せよ。また、F=−∇ϕ\bm{F}=-\nabla\phi となる ϕ\phi を1つ求めよ。
  3. 1.3-3 点 a\bm{a} にある点状の湧き出しについて、次の式を認める。

∇⋅r−a∣r−a∣3=4πδ(3)(r−a)\nabla\cdot\frac{\bm{r}-\bm{a}}{\left\vert \bm{r}-\bm{a}\right\vert ^3}=4\pi\delta^{(3)}(\bm{r}-\bm{a})

F=r−a∣r−a∣3\bm{F}=\dfrac{\bm{r}-\bm{a}}{\left\vert \bm{r}-\bm{a}\right\vert ^3} の、原点を中心とする半径 RR の球面を通る外向きの流束を求めよ。∣a∣<R\left\vert \bm{a}\right\vert <R と ∣a∣>R\left\vert \bm{a}\right\vert >R の場合に分けて答えること。4. 1.3-4 全空間で F=∇×A\bm{F}=\nabla\times\bm{A} と書けるとする。任意の閉曲面 SS を通る F\bm{F} の流束が 0 であることを、2通り(発散定理を使う方法と Stokes の定理を使う方法)で示せ。

1 無限遠で 1/r31/r^3 より速く 0 になる場合でも、以下の積分が収束し、表面の項が消えるので同じ結論が成り立つ。

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