電磁気学入門 第2章 §2.2 ★★★ 電場の流束と中の電荷を結ぶ法則。対称性があれば積分なしで電場が求まり、微分形は Maxwell 方程式の1本になる
点電荷の電場の流束
閉じた曲面 S を考え、外向きの単位法線ベクトルを n^ とする。面を貫く電場の流束を
ΦE=∮SE⋅n^dS
で定義する。まず原点に置いた点電荷 q の電場 E=qr^/(4πε0r2) について流束を計算する。
球面の場合
原点を中心とする半径 R の球面では、n^=r^ で、電場の大きさは面上で一定である。よって
ΦE=4πε0R2q⋅4πR2=ε0q
となり、半径 R によらない。電場が 1/r2 で減る割合と、球の面積が r2 で増える割合がちょうど打ち消し合うからである。
一般の閉曲面の場合
面要素 dS が原点に対して張る立体角は
dΩ=r2r^⋅n^dS
である。点電荷の電場の流束の要素はこれを使って
E⋅n^dS=4πε0qdΩ
と書ける。原点が S の内側にあれば、S は原点のまわりの全方向をちょうど1回覆う。よって立体角の合計は 4π である。
原点が外側にあれば、原点から出る半直線は S と偶数回交わる。入る所と出る所で dΩ の符号が逆になるので、合計はゼロになる。したがって
∮SE⋅n^dS={q/ε00(電荷が S の内側)(電荷が S の外側)(2.6)
が成り立つ。
積分形と微分形
重ね合わせの原理により、電荷がいくつあっても、流束は各電荷の寄与の和になる。式 (2.6) から、外側の電荷は寄与せず、内側の電荷はそれぞれ qi/ε0 を寄与する。連続分布では S が囲む領域 V の電荷の総和を使って、次の定理を得る。
定理 2.1(Gauss の法則(積分形) ★★★)
任意の閉曲面 S と、それが囲む領域 V について
∮SE⋅n^dS=ε01∫Vρd3r=ε0Qin.(2.7)
証明
上で示したことの言い換えである。
電場 (2.5) の流束を、源の各体積要素 ρ(r′)d3r′ ごとに計算する。要素が V の中にあれば、(2.6) より流束 ρd3r′/ε0 を寄与する。外にあれば寄与はゼロである。これを源の座標について積分すれば (2.7) になる。
面積分と体積積分の順序の交換は、電荷分布が有界で、面の上に点電荷が乗っていなければ許される。
左辺に第1章 §1.2 の Gauss の発散定理 ∮SE⋅n^dS=∫V∇⋅Ed3r を使うと、
∫V(∇⋅E−ε0ρ)d3r=0
がすべての領域 V について成り立つ。
被積分関数が連続なら、どこかで正の値をとると、その点のまわりの小さな V で積分が正になって矛盾する。よって被積分関数そのものがゼロでなければならない。
定理 2.2(Gauss の法則(微分形) ★★★)
∇⋅E=ε0ρ.(2.8)
微分形は、立体角の議論を経ずに (2.5) から直接確かめることもできる。観測点 r についての発散を積分の中に入れる。
∇⋅∣r−r′∣3r−r′=−∇2∣r−r′∣1=4πδ3(r−r′)
を使う。最初の等号は ∇∣r−r′∣−1=−(r−r′)/∣r−r′∣3 によるもので、2つめの等号は (2.1) である。これを代入すると
∇⋅E=4πε01∫ρ(r′)4πδ3(r−r′)d3r′=ε0ρ(r)
となる。点電荷の電場は原点以外では発散がゼロで、原点にだけデルタ関数の湧き出しを持つ。Gauss の法則の中身はこの事実である。
Gauss の法則と逆2乗則
- 逆2乗であることが必要:電場が 1/r2+δ で減るとする(δ=0)。このとき半径 R の球面の流束は R−δ に比例し、半径によって変わる。流束が中の電荷だけで決まるという法則は成り立たない。
- 法則が単独で決めるもの:Gauss の法則は電場の発散だけを決め、回転については何も言わない。電場を一意に決めるには、§2.3 の ∇×E=0 と遠方での条件を合わせる必要がある。
- 第8章との関係:時間変化する場でも (2.8) はそのまま成り立ち、Maxwell 方程式の1本になる。
対称性からの計算
電荷分布の対称性から、電場の向きと「大きさが一定になる面」が先に分かる場合には、Gauss の法則だけで電場が求まる。典型は球対称・円柱対称(無限に長い)・平面対称(無限に広い)の3つである。手順は次のとおりである。
- 電場の向きを決める:対称性の操作(回転・鏡映・平行移動)で分布が変わらないなら、電場もその操作で変わらない。これから電場の向きを絞り込む。
- 閉曲面を選ぶ:電場が面に垂直で大きさが一定の部分と、面に平行(流束ゼロ)の部分だけからなる閉曲面を選ぶ。
- 法則を適用する:流束は「電場の大きさ×面積」になるので、(2.7) から電場の大きさが代数的に求まる。
球対称の場合を例にとる。電荷密度が中心からの距離 r だけの関数 ρ(r) なら、中心を通る任意の軸のまわりの回転で分布は変わらない。この回転で電場の接線成分は向きを変えてしまうので、電場は動径方向 Er(r)r^ に限られる。半径 r の球面に (2.7) を使うと
4πr2Er(r)=ε0Q(r),Q(r)=∫0r4πr′2ρ(r′)dr′(2.9)
となる。半径 r より外の電荷は、r での電場に寄与しない。とくに分布の外側では、全電荷が中心に集まった点電荷と同じ電場になる。
例題 2.3 一様に帯電した球の電場 ★★★
オリジナル半径 a の球の内部に、全電荷 Q が一様に分布している。密度は ρ0=3Q/(4πa3) である。
- 電場をすべての r について求めよ。
- 求めた電場が微分形 (2.8) を満たすことを、球座標の発散の公式で確かめよ。
解答
(1) 半径 r の内側の電荷は、r≤a なら
Q(r)=34πr3ρ0=Qa3r3,
r>a なら Q(r)=Q である。(2.9) に入れると
Er(r)=⎩⎨⎧4πε0Qa3r4πε0Qr21(r≤a)(r>a)
となる。r=a で2つの式はともに Q/(4πε0a2) になり、電場は連続である。内部では中心からの距離に比例して増え、外部では点電荷と同じく 1/r2 で減る(図 2.2)。
(2) 球座標で動径成分だけを持つ場の発散は
∇⋅E=r21drd(r2Er)
である(第1章 §1.4)。内部では r2Er∝r3 だから
∇⋅E=4πε0a3Q⋅r23r2=4πε0a33Q=ε0ρ0
となる。外部では r2Er が定数なので ∇⋅E=0 で、そこには電荷が無いことと一致する。

図 2.2 一様に帯電した球(半径 a)の電場 Er(実線)と電位 ϕ(破線)。どちらも球面 r=a での値で割ってある。電位は例題 2.4 で求める。
晴天時の地表付近には、鉛直下向きに約 100 V/m の電場がある。この電場から地球の全電荷を見積もる計算は、第1章の例題 1.3 で発散定理を使って行った。(2.9) を地球の半径 RE=6.37×106 m の球面で使い、外向きの成分を Er=−100 V/m とおくと、同じ結果が1行で出る。
Q=4πε0RE2Er≈−4.5×105 C
確認テスト
オリジナル
- 2.2-1 一辺の長さ L の立方体の中心に点電荷 q を置く。立方体の1つの面を貫く電場の流束を、対称性を使って求めよ。
- 2.2-2 平面 ∣x∣<d にはさまれた無限に広い板の中に、一様な電荷密度 ρ0 の電荷がある。電場 Ex(x) をすべての x について求めよ。
- 2.2-3 z 軸上に線電荷密度 λ の無限に長い直線電荷がある。それを囲む半径 b の無限に長い円筒面には、単位長さあたり −λ の電荷が一様に分布している。軸からの距離 s の点の電場を、円筒の内側と外側に分けて求めよ。
- 2.2-4 ある球対称な電荷分布の電場が、半径 a の内側で Er=E0(r/a)2 である。内側の電荷密度 ρ(r) を求めよ。
- 2.2-5 半径 a の球殻に全電荷 Q が一様に分布している。球殻の内部で電場がゼロになることを Gauss の法則で示せ。あわせて、議論のどこで球対称性を使ったかを述べよ。
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