電磁気学入門 第2章 §2.4 ★★★ 電荷を集めるのに要する仕事を、電荷の配置の式と、空間に分布する場のエネルギー密度 ε0E2/2 の2通りに書く
点電荷の配置のエネルギー
電荷を無限遠から1つずつ運んできて、決まった配置を作るのに必要な仕事を求める。運ぶ途中で運動エネルギーが生じないように、電荷はゆっくり運ぶとする。
1つめの電荷 q1 を位置 r1 へ運ぶときは、ほかに電荷が無いので仕事はゼロである。2つめの電荷 q2 は、q1 の電位の中を無限遠から運ぶ。その仕事は
4πε0r12q2q1,rij=∣ri−rj∣
である。3つめの電荷は、すでにある2つの電荷の電位の中を運ぶので、その仕事は
4πε0q3(r13q1+r23q2)
である。これを続けると、N 個の電荷の配置を作る仕事の合計は
W=4πε01i<j∑rijqiqj=21i=1∑Nj=i∑4πε0rijqiqj(2.17)
となる。2つめの形では、組 (i,j) を順序つきで2回数えるので 1/2 を付けた。電荷を運ぶ順序を変えても、どの組も1回ずつ現れることに変わりはないので、結果は順序によらない。これは静電場が保存力の場であること((2.13))の帰結である。
ほかの電荷すべてが位置 ri に作る電位を ϕi=∑j=iqj/(4πε0rij) と書くと、(2.17) は
W=21i=1∑Nqiϕi(2.18)
とまとまる。連続分布では和を積分に置き換えて
W=21∫ρ(r)ϕ(r)d3r(2.19)
を得る。
点電荷の式と連続分布の式の違い
- (2.18) の ϕi は「自分以外の電荷」が作る電位で、(2.19) の ϕ は「すべての電荷」が作る電位である。
- 連続分布では、1点の電荷は無限小なので、自分自身の寄与を除くかどうかは結果を変えない。
- 点電荷の集まりを (2.19) に入れると、各電荷が自分自身の位置に作る無限大の電位を含んでしまう。この差が次の小節の自己エネルギーの問題である。
- 符号も違う。(2.17) は異符号の電荷の組を含めば負になりうるが、次の小節の (2.20) は常に正である。
場のエネルギー密度
(2.19) を電場だけで書き直す。Gauss の法則 ρ=ε0∇⋅E を代入し、恒等式 ∇⋅(ϕE)=ϕ∇⋅E+E⋅∇ϕ を使う。
W=2ε0∫Vϕ∇⋅Ed3r=2ε0∫V∇⋅(ϕE)d3r−2ε0∫VE⋅∇ϕd3r=2ε0∮SϕE⋅n^dS+2ε0∫V∣E∣2d3r(発散定理と ∇ϕ=−E).
ここで V は電荷をすべて含む半径 R の球とした。半径 R を大きくしていくと、面積分は次の3つの因子で決まる。
- 面の上の電位:1/R のように小さくなる。
- 電場:1/R2 のように小さくなる。
- 面積:R2 のように増える。
したがって面積分は 1/R のように減ってゼロになる。一方、体積積分は V を広げるにつれて増えていき、全空間の積分に近づく。したがって
W=∫ud3r,u=2ε0∣E∣2(2.20)
を得る。u を電場のエネルギー密度(単位 J/m3)と呼ぶ。
2つの式 (2.19) と (2.20) は同じ量を表すが、エネルギーの在りかについて異なる見方を与える。前者では、エネルギーは電荷のある場所に付随している。後者では、電荷の無い真空も含めて電場のある所すべてにエネルギーが分布している。
静電場の範囲ではどちらの見方でも同じ数値が出るので、区別はできない。しかし第8章で電磁波を扱うと、電荷から遠く離れた真空をエネルギーが運ばれていくので、後者の見方が必要になる。
例題 2.5 一様に帯電した球の静電エネルギーと電子の大きさ ★★
オリジナル例題 2.3 の一様に帯電した球(半径 a、全電荷 Q)の静電エネルギーを、(2.19) と (2.20) の2通りで計算し、一致することを確かめよ。さらに、電子を、電荷 −e が一様に分布した半径 a の球とみなす。静電エネルギーが静止エネルギー mec2 に等しくなる半径を数値で求めよ。
電子の質量は me=9.109×10−31 kg、光速は c=2.998×108 m/s とする。
解答
記号を短くするため k=Q/(4πε0) と置く。
電荷と電位から:電荷があるのは r≤a だけなので、そこでの電位 (2.15) を使う。
W=21∫0aρ02ak(3−a2r2)4πr2dr=aπρ0k(a3−5a3)=54πρ0ka2.
ρ0=3Q/(4πa3) を入れると W=3kQ/(5a) である。
場のエネルギーから:内部の電場は kr/a3、外部は k/r2 なので
W=2ε0[∫0aa6k2r24πr2dr+∫a∞r4k24πr2dr]=2πε0k2[5a1+a1]=5a12πε0k2.
4πε0k=Q を使うと 12πε0k2=3kQ である。よって、こちらも W=3kQ/(5a) になる。2通りの結果は一致し、
W=534πε0aQ2
である。内部の場のエネルギーは全体の 1/6、外部が 5/6 を占める。
電子の大きさの見積もり:Q=−e として W=mec2 と置くと
a=534πε0mec2e2=53re,re=4πε0mec2e2
である。re を古典電子半径と呼ぶ。数値は
re=9.109×10−31×(2.998×108)22.307×10−28=2.82×10−15 m
で、a≈1.69×10−15 m となる。電子の大きさについて実験は上限しか与えておらず、その上限はこの値よりはるかに小さい。点電荷の極限 a→0 では W が発散するので、古典電磁気学は点状の電子の自己エネルギーを有限に扱えない。
例題 2.6 向かい合う2枚の帯電面に働く力 ★★
オリジナル面積 A の2枚の平行な平板が、距離 d だけ離れて置かれている。一方には面電荷密度 +σ の電荷が一様に分布し、他方には −σ が分布している。d は平板の大きさに比べて十分小さく、端の効果は無視する。
静電エネルギーを求め、電荷を一定に保ったまま d を変えたときのエネルギーの変化から、平板どうしに働く力を求めよ。
解答
面密度 σ の1枚の無限平面の電場は、面の両側で面から遠ざかる向きを向き、大きさは σ/(2ε0) である。これは確認テスト 2.3-3 で外部の電場をゼロにした場合に当たる。
2枚を重ね合わせると、平板のあいだでは2つの寄与が同じ向きに足されて E=σ/ε0、外側では打ち消し合って 0 になる。したがって場のエネルギーは、平板のあいだの体積 Ad にだけある。
W=2ε0(ε0σ)2Ad=2ε0σ2Ad.
電荷を一定に保ったまま、間隔を Δd だけ広げる。そのためには外から力 Fext を加えて仕事をする必要があり、その仕事 FextΔd がエネルギーの増加に等しい。
Fext=∂d∂W=2ε0σ2A.
外力が正(引き離す向き)で必要なので、平板どうしは大きさ σ2A/(2ε0) の引力を及ぼし合う。
直接の計算でも確かめる。負の平板の位置で、正の平板が作る電場の大きさは σ/(2ε0) である。負の平板の電荷は −σA なので、受ける力の大きさは
σA⋅2ε0σ=2ε0σ2A
で、向きは正の平板へ向かう。平板のあいだの電場 σ/ε0 をそのまま使うと2倍の誤りになる。平板が自分自身に及ぼす力はゼロなので、相手の平板が作る電場だけを使わなければならない。単位面積あたりの力 σ2/(2ε0)=ε0E2/2 は、平板のあいだのエネルギー密度に等しい。
確認テスト
オリジナル
- 2.4-1 一辺 a の正三角形の3頂点に電荷 q を1つずつ置く配置の静電エネルギーを求めよ。
- 2.4-2 半径 a の球面に全電荷 Q が一様に分布している。静電エネルギーを場のエネルギー密度から求めよ。また、電荷を保ったまま半径を a から a/2 に縮めるのに必要な仕事を求めよ。
- 2.4-3 点電荷 q の電場のエネルギーを、電荷を中心とする半径 b の球の外側についてだけ積分して求めよ。b→0 で何が起きるかを述べよ。
- 2.4-4 2つの電荷分布 ρ1,ρ2 を考える。それぞれが単独で作る電位を ϕ1,ϕ2 とし、電場を E1,E2 とする。両者を重ねたときの静電エネルギーは W=W1+W2+W12 と分かれることを示せ。ここで W1,W2 はそれぞれ単独のエネルギーで、相互作用のエネルギーはW12=ε0∫E1⋅E2d3r=∫ρ1ϕ2d3rである。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com