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磁気双極子

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第5章 定常電流と静磁場
目次
  1. 遠方でのベクトルポテンシャルの展開
  2. 磁場の中の磁気双極子:トルク・エネルギー・力
  3. 磁気モーメントと角運動量
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第5章 §5.5 ★★ 小さな電流ループの遠方の場は磁気モーメント μ\bm{\mu} だけで決まり、電気双極子と同じ形になる。磁性体と原子の磁性の出発点

遠方でのベクトルポテンシャルの展開

第3章 §3.5 では、有界な範囲にある電荷分布の電位を 1/∣r−r′∣1/\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert の展開から多重極に分けた。ベクトルポテンシャルにも同じ展開を使う。

原点の近くにある細い閉じた導線に、電流 II が流れているとする。観測点 r\bm{r} は、導線上の点 r′\bm{r}' に比べて十分遠いとする。つまり r≫r′r\gg r' である。展開

1∣r−r′∣=1r+r^⋅r′r2+O(r′2r3)\frac{1}{\left\vert \bm{r}-\bm{r}'\right\vert }=\frac1r+\frac{\hat{\bm{r}}\cdot\bm{r}'}{r^2}+\mathcal{O}\Bigl(\frac{r'^2}{r^3}\Bigr)

(r^=r/r\hat{\bm{r}}=\bm{r}/r)を (5.21) の線電流の形に入れると

A(r)=μ0I4π[1r∮dl′+1r2∮(r^⋅r′) dl′+⋯ ](5.35)\bm{A}(\bm{r})=\frac{\mu_0I}{4\pi}\Bigl[\frac1r\oint\mathrm{d}\bm{l}'+\frac{1}{r^2}\oint(\hat{\bm{r}}\cdot\bm{r}')\,\mathrm{d}\bm{l}'+\cdots\Bigr]\tag{5.35}

となる。第1項の ∮dl′\oint\mathrm{d}\bm{l}' は閉曲線を1周したときの変位なので 0\bm{0} である。電位の展開で全電荷に当たる「磁荷」の項は現れない。第2項を計算するために、次の補題を用意する。

補題 5.12(閉曲線に沿ったスカラー関数の線積分)

閉曲線 CC を縁とする面を SS とする。滑らかな関数 ff について

∮Cf dl=∫SdS×∇f.(5.36)\oint_Cf\,\mathrm{d}\bm{l}=\int_S\mathrm{d}\bm{S}\times\nabla f .\tag{5.36}

特に、定ベクトル c\bm{c} を使って f=c⋅rf=\bm{c}\cdot\bm{r} とすると

∮C(c⋅r) dl=a×c\oint_C(\bm{c}\cdot\bm{r})\,\mathrm{d}\bm{l}=\bm{a}\times\bm{c}

である。ここで a=∫SdS\bm{a}=\int_S\mathrm{d}\bm{S} は閉曲線のベクトル面積で、

a=12∮Cr×dl(5.37)\bm{a}=\frac12\oint_C\bm{r}\times\mathrm{d}\bm{l}\tag{5.37}

とも書ける。平面上の閉曲線なら、a\bm{a} は大きさが囲む面積、向きが周回の向きと右ねじの関係にある法線のベクトルである。

証明

任意の定ベクトル c\bm{c} との内積をとる。Stokes の定理を fcf\bm{c} に使い、∇×(fc)=∇f×c\nabla\times(f\bm{c})=\nabla f\times\bm{c} を使うと

c⋅∮Cf dl=∮C(fc)⋅dl=∫S(∇f×c)⋅dS=c⋅∫SdS×∇f\bm{c}\cdot\oint_Cf\,\mathrm{d}\bm{l}=\oint_C(f\bm{c})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=\int_S(\nabla f\times\bm{c})\cdot\mathrm{d}\bm{S}=\bm{c}\cdot\int_S\mathrm{d}\bm{S}\times\nabla f

となる(最後はスカラー三重積の巡回)。c\bm{c} は任意なので (5.36) を得る。f=c⋅rf=\bm{c}\cdot\bm{r} なら ∇f=c\nabla f=\bm{c} である。このとき右辺は a×c\bm{a}\times\bm{c} になる。

(5.37) を示す。c⋅(r×dl)=(c×r)⋅dl\bm{c}\cdot(\bm{r}\times\mathrm{d}\bm{l})=(\bm{c}\times\bm{r})\cdot\mathrm{d}\bm{l} に Stokes の定理を使う。さらに ∇×(c×r)=2c\nabla\times(\bm{c}\times\bm{r})=2\bm{c}(一様な磁場の例と同じ計算)を使うと

c⋅∮r×dl=∫2c⋅dS=2c⋅a\bm{c}\cdot\oint\bm{r}\times\mathrm{d}\bm{l}=\int2\bm{c}\cdot\mathrm{d}\bm{S}=2\bm{c}\cdot\bm{a}

である。平面の閉曲線では面 SS を平面の中にとれば、dS\mathrm{d}\bm{S} はすべて同じ法線を向くので最後の主張が従う。

補題を c=r^\bm{c}=\hat{\bm{r}} として (5.35) の第2項に使うと、∮(r^⋅r′) dl′=a×r^\oint(\hat{\bm{r}}\cdot\bm{r}')\,\mathrm{d}\bm{l}'=\bm{a}\times\hat{\bm{r}} なので、次の定義と定理を得る。

定義 5.13(磁気モーメント)

ベクトル面積 a\bm{a} の閉じたループを流れる電流 II の磁気モーメント(磁気双極子モーメント)を

μ=Ia=I2∮r′×dl′(5.38)\bm{\mu}=I\bm{a}=\frac I2\oint\bm{r}'\times\mathrm{d}\bm{l}'\tag{5.38}

と定義する。一般の電流分布では μ=12∫r′×J(r′) dV′\bm{\mu}=\frac12\int\bm{r}'\times\bm{J}(\bm{r}')\,\mathrm{d} V' である。単位は A⋅m2\mathrm{A\cdot m^2} で、J/T\mathrm{J/T} と同じである。

定理 5.14(磁気双極子の場 ★★★)

磁気モーメント μ\bm{\mu} のループから十分遠い点のベクトルポテンシャルと磁場は、最も低い次数で

A=μ04πμ×r^r2,(5.39)\bm{A}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{\bm{\mu}\times\hat{\bm{r}}}{r^2},\tag{5.39}

B=μ04π3(μ⋅r^)r^−μr3(5.40)\bm{B}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{3(\bm{\mu}\cdot\hat{\bm{r}})\hat{\bm{r}}-\bm{\mu}}{r^3}\tag{5.40}

である。

証明

(5.35) の第2項に補題を使うと A=μ0I4πr2a×r^=μ04πμ×r^r2\bm{A}=\frac{\mu_0I}{4\pi r^2}\bm{a}\times\hat{\bm{r}}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{\bm{\mu}\times\hat{\bm{r}}}{r^2} である。磁場を計算するため A=μ04πμ×g\bm{A}=\frac{\mu_0}{4\pi}\bm{\mu}\times\bm{g}、g=r/r3\bm{g}=\bm{r}/r^3 と書く。μ\bm{\mu} は定ベクトルなので、恒等式∇×(μ×g)=μ(∇⋅g)−(μ⋅∇)g\nabla\times(\bm{\mu}\times\bm{g})=\bm{\mu}(\nabla\cdot\bm{g})-(\bm{\mu}\cdot\nabla)\bm{g} が使える。r≠0r\neq0 では ∇⋅(r/r3)=0\nabla\cdot(\bm{r}/r^3)=0 で、

(μ⋅∇)rr3=(μ⋅∇)rr3+r (μ⋅∇)r−3=μr3−3(μ⋅r)rr5(\bm{\mu}\cdot\nabla)\frac{\bm{r}}{r^3}=\frac{(\bm{\mu}\cdot\nabla)\bm{r}}{r^3}+\bm{r}\,(\bm{\mu}\cdot\nabla)r^{-3}=\frac{\bm{\mu}}{r^3}-\frac{3(\bm{\mu}\cdot\bm{r})\bm{r}}{r^5}

((μ⋅∇)r=μ(\bm{\mu}\cdot\nabla)\bm{r}=\bm{\mu}、∇r−3=−3r/r5\nabla r^{-3}=-3\bm{r}/r^5)。したがって

B=μ04π(3(μ⋅r)rr5−μr3)\bm{B}=\frac{\mu_0}{4\pi}\Bigl(\frac{3(\bm{\mu}\cdot\bm{r})\bm{r}}{r^5}-\frac{\bm{\mu}}{r^3}\Bigr)

で、(5.40) を得る。

磁気双極子の場 (5.40) は、第3章 §3.5 の電気双極子の電場

E=14πε03(p⋅r^)r^−pr3\bm{E}=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{3(\bm{p}\cdot\hat{\bm{r}})\hat{\bm{r}}-\bm{p}}{r^3}

で p/ε0\bm{p}/\varepsilon_0 を μ0μ\mu_0\bm{\mu} に置き換えたものと同じ形をしている。μ=μz^\bm{\mu}=\mu\hat{\bm{z}} とすると、極座標の成分は

Br=μ0μ4π2cos⁡θr3,Bθ=μ0μ4πsin⁡θr3B_r=\frac{\mu_0\mu}{4\pi}\frac{2\cos\theta}{r^3},\qquad B_\theta=\frac{\mu_0\mu}{4\pi}\frac{\sin\theta}{r^3}

である。磁力線の方程式は

drr dθ=BrBθ=2cot⁡θ\frac{\mathrm{d} r}{r\,\mathrm{d}\theta}=\frac{B_r}{B_\theta}=2\cot\theta

で、これを解くと r=Csin⁡2θr=C\sin^2\theta の形の曲線になる(図 5.3)。

軸上の円電流の場 (5.20) で確かめる。磁気モーメントは μ=Iπa2z^\bm{\mu}=I\pi a^2\hat{\bm{z}} で、軸上の正の側では r^=z^\hat{\bm{r}}=\hat{\bm{z}} である。したがって (5.40) は

μ04π2Iπa2z3z^=μ0Ia22z3z^\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{2I\pi a^2}{z^3}\hat{\bm{z}}=\frac{\mu_0Ia^2}{2z^3}\hat{\bm{z}}

となり、(5.20) の z≫az\gg a の極限と一致する。

図

図 5.3 磁気双極子(μ=μz^\bm{\mu}=\mu\hat{\bm{z}})の磁力線 r=Csin⁡2θr=C\sin^2\theta(C=1, 2, 3.5C=1,\,2,\,3.5 の任意の長さの単位)。xzxz 平面での断面で、全体は zz 軸のまわりの回転で得られる。磁力線は双極子の上側から出て、外を回って下側へ戻る。ループの内側を通る部分(原点の近く)は遠方の近似の外にある。

原点での磁場とデルタ関数の項

  • (5.40) は r≠0r\neq0 での式である。小さなループを点状の双極子とみなすと、ループの内側を通る磁場は原点に集中した項として残り、全空間で B=μ04π3(μ⋅r^)r^−μr3+2μ03μ δ3(r)\bm{B}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{3(\bm{\mu}\cdot\hat{\bm{r}})\hat{\bm{r}}-\bm{\mu}}{r^3}+\frac{2\mu_0}{3}\bm{\mu}\,\delta^3(\bm{r}) と書ける。
  • 電気双極子の場合の原点の項は −13ε0p δ3(r)-\frac{1}{3\varepsilon_0}\bm{p}\,\delta^3(\bm{r}) で、符号が逆になる。電気双極子の電場は内側で双極子と逆向き、ループの磁場は内側で μ\bm{\mu} と同じ向きだからである。この違いは、水素原子の超微細構造(21 cm 線)の計算に現れる。

磁場の中の磁気双極子:トルク・エネルギー・力

磁気双極子が外部の磁場 B\bm{B} から受ける作用を求める。一様な磁場の中では、ループが受ける力の合計は 0\bm{0} である(確認テスト 5.2-4)。しかしトルクは 0 にならない。

定理 5.15(トルクとエネルギー ★★★)

一様な磁場 B\bm{B} の中の磁気モーメント μ\bm{\mu} のループが受けるトルク(原点のまわりの力のモーメント)は

N=μ×B(5.41)\bm{N}=\bm{\mu}\times\bm{B}\tag{5.41}

である。磁気モーメントと磁場のなす角を θ\theta とする。ループを回転させるのに要する仕事から定まるエネルギーは

U=−μ⋅B=−μBcos⁡θ(5.42)U=-\bm{\mu}\cdot\bm{B}=-\mu B\cos\theta\tag{5.42}

である。

証明

線素 dl\mathrm{d}\bm{l} が受ける力は I dl×BI\,\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{B} である。そのモーメントは r×(I dl×B)\bm{r}\times(I\,\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{B}) である。ベクトル三重積の公式から

r×(dl×B)=dl (r⋅B)−B (r⋅dl)\bm{r}\times(\mathrm{d}\bm{l}\times\bm{B})=\mathrm{d}\bm{l}\,(\bm{r}\cdot\bm{B})-\bm{B}\,(\bm{r}\cdot\mathrm{d}\bm{l})

となる。第2項の r⋅dl=d(r2/2)\bm{r}\cdot\mathrm{d}\bm{l}=\mathrm{d}(r^2/2) は全微分なので、閉曲線を1周すると 0 になる。第1項は補題 5.12 で c=B\bm{c}=\bm{B} とおいたものなので

N=I∮(B⋅r) dl=I a×B=μ×B\bm{N}=I\oint(\bm{B}\cdot\bm{r})\,\mathrm{d}\bm{l}=I\,\bm{a}\times\bm{B}=\bm{\mu}\times\bm{B}

を得る。トルクの大きさは μBsin⁡θ\mu B\sin\theta である。向きは角を減らす向き、つまり μ\bm{\mu} を B\bm{B} にそろえる向きである。

角を dθ\mathrm{d}\theta だけ増やすのに外から加える仕事は μBsin⁡θ dθ\mu B\sin\theta\,\mathrm{d}\theta である。したがって、定数を除いて

U(θ)=∫μBsin⁡θ dθ=−μBcos⁡θU(\theta)=\int\mu B\sin\theta\,\mathrm{d}\theta=-\mu B\cos\theta

である。

磁場が場所によって変わる場合は、トルクに加えて力が働く。

定理 5.16(非一様な磁場の中の磁気双極子に働く力)

小さなループ(磁気モーメント μ\bm{\mu})の位置の近くで磁場が緩やかに変わるとき、ループが受ける力は

F=∇(μ⋅B)(5.43)\bm{F}=\nabla(\bm{\mu}\cdot\bm{B})\tag{5.43}

である。ここで微分は μ\bm{\mu} を定ベクトルとして B\bm{B} にだけ作用させる。

証明

ループの中心を原点にとり、B(r)≃B(0)+(r⋅∇)B\bm{B}(\bm{r})\simeq\bm{B}(\bm{0})+(\bm{r}\cdot\nabla)\bm{B} と1次まで展開する。一様な部分の力の合計は 0\bm{0} なので、成分で書くと(同じ添字について和をとる)

Fi=I∮ϵijk dlj rl ∂lBk=Iϵijk ∂lBk∮rl dljF_i=I\oint\epsilon_{ijk}\,\mathrm{d} l_j\,r_l\,\partial_lB_k=I\epsilon_{ijk}\,\partial_lB_k\oint r_l\,\mathrm{d} l_j

である(∂lBk\partial_lB_k は原点での値で定数)。補題 5.12 で c=e^l\bm{c}=\hat{\bm{e}}_l とおくと ∮rl dl=a×e^l\oint r_l\,\mathrm{d}\bm{l}=\bm{a}\times\hat{\bm{e}}_l となる。その jj 成分は ϵjmlam\epsilon_{jml}a_m である。第1章の公式

ϵijkϵjml=ϵjkiϵjml=δkmδil−δklδim\epsilon_{ijk}\epsilon_{jml}=\epsilon_{jki}\epsilon_{jml}=\delta_{km}\delta_{il}-\delta_{kl}\delta_{im}

を使うと

Fi=Iam ∂lBk (δkmδil−δklδim)=μk ∂iBk−μi ∂kBk.F_i=Ia_m\,\partial_lB_k\,(\delta_{km}\delta_{il}-\delta_{kl}\delta_{im})=\mu_k\,\partial_iB_k-\mu_i\,\partial_kB_k .

第2項は ∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 により 0 で、第1項は ∂i(μ⋅B)\partial_i(\bm{\mu}\cdot\bm{B}) である。

(5.43) は F=−∇U\bm{F}=-\nabla U と U=−μ⋅BU=-\bm{\mu}\cdot\bm{B} が一致することを示している。磁気モーメントが磁場と同じ向きにそろった双極子は、磁場の強い所へ引き寄せられる。Stern と Gerlach の実験(1922年)は、非一様な磁場で銀原子のビームを曲げ、原子の磁気モーメントの成分がとびとびの値しかとらないことを示した。

磁気モーメントと角運動量

電荷 qq、質量 mm の粒子を考える。この粒子が半径 rr の円軌道を速さ vv で回っているとする。1周の時間は 2πr/v2\pi r/v なので、軌道を流れる電流は I=qv/(2πr)I=qv/(2\pi r) である。磁気モーメントの大きさは

μ=Iπr2=qvr2\mu=I\pi r^2=\frac{qvr}{2}

である。軌道の角運動量 L=mr×v\bm{L}=m\bm{r}\times\bm{v} の大きさは mvrmvr である。向きは、電荷が正なら磁気モーメントと同じなので

μ=q2mL(5.44)\bm{\mu}=\frac{q}{2m}\bm{L}\tag{5.44}

が成り立つ。比 q/(2m)q/(2m) を磁気回転比と呼ぶ。電子(q=−eq=-e)では磁気モーメントは角運動量と逆向きである。量子力学では軌道角運動量は ℏ\hbar を単位とするので、電子の軌道運動の磁気モーメントの自然な単位は

μB=eℏ2me=9.274×10−24 J/T(5.45)\mu_{\mathrm B}=\frac{e\hbar}{2m_{\mathrm e}}=9.274\times10^{-24}\,\mathrm{J/T}\tag{5.45}

になる。これを Bohr 磁子と呼ぶ。電子のスピンも磁気モーメントを持つが、その大きさは (5.44) の約2倍(gg 因子 ≃2\simeq2)で、古典的な電流ループの模型では説明できない。第6章では、物質中の原子が持つこれらの磁気モーメントの集まりとして磁化を扱う。

例題 5.6 地球の磁気双極子モーメント ★★

オリジナル地球の磁場を、中心に置いた磁気双極子の場で近似する。赤道上の地表(RE=6.37×106 mR_{\mathrm E}=6.37\times10^{6}\,\mathrm m)での磁場の大きさを Beq=3.1×10−5 TB_{\mathrm{eq}}=3.1\times10^{-5}\,\mathrm T とする。

  1. 地球の磁気モーメントの大きさ μ\mu を求めよ。
  2. 磁極での地表の磁場の大きさを求めよ。
  3. この磁気モーメントを、地球の中心を中心とする半径 RE/2R_{\mathrm E}/2 の円電流で作るとすると、電流はいくらか。
解答
  1. 赤道上では μ⊥r^\bm{\mu}\perp\hat{\bm{r}} なので (5.40) の第1項は 0 で、Beq=μ04πμRE3B_{\mathrm{eq}}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{\mu}{R_{\mathrm E}^3} である。よって

μ=4πBeqRE3μ0=4π(3.1×10−5)(6.37×106)31.2566×10−6 A⋅m2=8.0×1022 A⋅m2.\mu=\frac{4\pi B_{\mathrm{eq}}R_{\mathrm E}^3}{\mu_0}=\frac{4\pi(3.1\times10^{-5})(6.37\times10^{6})^3}{1.2566\times10^{-6}}\ \mathrm{A\cdot m^2}=8.0\times10^{22}\,\mathrm{A\cdot m^2}.

  1. 磁極では r^=±μ^\hat{\bm{r}}=\pm\hat{\bm{\mu}} なので ∣3(μ⋅r^)r^−μ∣=2μ\left\vert 3(\bm{\mu}\cdot\hat{\bm{r}})\hat{\bm{r}}-\bm{\mu}\right\vert =2\mu である。磁場は赤道の2倍の 6.2×10−5 T6.2\times10^{-5}\,\mathrm T になる。

  2. μ=Iπr2\mu=I\pi r^2 で r=RE/2=3.185×106 mr=R_{\mathrm E}/2=3.185\times10^{6}\,\mathrm m とすると

I=μπr2=8.0×1022π(3.185×106)2 A=2.5×109 A.I=\frac{\mu}{\pi r^2}=\frac{8.0\times10^{22}}{\pi(3.185\times10^{6})^2}\ \mathrm A=2.5\times10^{9}\,\mathrm A .

実際の地球の磁場は、外核の液体金属の流れが作る電流で維持されている。

確認テスト

オリジナル

  1. 5.5-1 磁気モーメントの単位 A⋅m2\mathrm{A\cdot m^2} が J/T\mathrm{J/T} と同じであることを確かめよ。エネルギーの式 U=−μ⋅BU=-\bm{\mu}\cdot\bm{B} と Lorentz 力の式を使え。
  2. 5.5-2 水素原子の Bohr 模型で、電子が半径 a0=5.29×10−11 ma_0=5.29\times10^{-11}\,\mathrm m の円軌道を速さ v=2.19×106 m/sv=2.19\times10^{6}\,\mathrm{m/s} で回っている。軌道の磁気モーメントの大きさを求め、Bohr 磁子 (5.45) と比べよ。また、角運動量 meva0m_{\mathrm e}va_0 が ℏ=1.055×10−34 J⋅s\hbar=1.055\times10^{-34}\,\mathrm{J\cdot s} にほぼ等しいことを確かめよ。2つの結果の関係を (5.44) で説明せよ。
  3. 5.5-3 円電流の軸上の磁場 (5.20) を a/za/z について展開し、次の式を示せ。

Bz=μ0Ia22z3[1−32(az)2+O((az)4)]B_z=\frac{\mu_0Ia^2}{2z^3}\Bigl[1-\frac32\Bigl(\frac az\Bigr)^2+\mathcal{O}\Bigl(\Bigl(\frac az\Bigr)^4\Bigr)\Bigr]

z=5az=5a で、双極子の近似 (5.40) は正確な値を何パーセント上回るか。4. 5.5-4 xyxy 平面に長方形のループがある。xx 方向の辺の長さは aa である。yy 方向の辺の長さは bb である。ループには電流 II が、+z+z から見て反時計回りに流れている。一様な磁場 B=Bx^\bm{B}=B\hat{\bm{x}} の中で、4つの辺に働く力を求めよ。ループの中心のまわりのトルクを直接計算し、μ×B\bm{\mu}\times\bm{B} に等しいことを確かめよ。5. 5.5-5 磁気モーメントの大きさが μ1=μ2=1.0 A⋅m2\mu_1=\mu_2=1.0\,\mathrm{A\cdot m^2} の2つの小さな磁石がある。モーメントを同じ向きにそろえ、共通の軸の上に距離 zz だけ離して置く。相互作用のエネルギー U(z)U(z) と力を求め、z=5.0 cmz=5.0\,\mathrm{cm} での力の大きさを求めよ。引力か斥力かも答えよ。

木下の勉強ステータス

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