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離散分布

2026年10月15日21分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第6章 代表的な分布
目次
  1. Bernoulli 分布と二項分布
  2. 幾何分布と負の二項分布
  3. Poisson 分布
  4. 超幾何分布
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第6章 §6.1 ★★★ 成功・失敗の試行の繰り返しから生まれる分布の一族。数えるだけで平均と分散まで出る

第3章で、確率変数の分布は分布関数と一対一に対応し、離散分布は確率関数で、絶対連続分布は密度で書けることを見た。第5章では、その分布に対する期待値を Lebesgue 積分として作った。この章では、その一般論の上で、実際の計算に繰り返し現れる分布を名前つきで並べる。

扱う分布は次の13個である。

  • 離散分布:Bernoulli・二項・幾何・負の二項・Poisson・超幾何の6つ。
  • 連続分布:一様・指数・正規・ガンマ・ベータ・Cauchy と多変量正規の7つ。

どの分布についても、それがどういう試行から生じるか、確率の総和が 1 になること、平均と分散を、途中の計算を省かずに確かめる。最後の節では、これらの分布が互いにどう結びついているか(二項の極限としての Poisson、指数の和としてのガンマ、正規の和がまた正規であること)を示す。

この章で使う前の章の結果を、式の形で先に書いておく。第3章 §3.4 の離散分布の確率関数 p(x)=P(X=x)p(x)=P(X=x) と密度 ff については、

P(X∈B)=∑x∈Bp(x),P(X∈B)=∫Bf(x) dx(B∈B(R))(6.1)P(X\in B)=\sum_{x\in B}p(x),\qquad P(X\in B)=\int_Bf(x)\,\mathrm{d} x\qquad(B\in\mathcal B(\mathbb{R}))\tag{6.1}

が成り立つ。第5章 §5.3 の変数変換公式により、Borel 可測な関数 gg について次が成り立つ(右辺が絶対収束するとき)。

E[g(X)]=∑xg(x) p(x)(離散),E[g(X)]=∫Rg(x)f(x) dx(密度あり)(6.2)E[g(X)]=\sum_xg(x)\,p(x)\quad(\text{離散}),\qquad E[g(X)]=\int_{\mathbb{R}}g(x)f(x)\,\mathrm{d} x\quad(\text{密度あり})\tag{6.2}

分散と共分散は

V[X]=E[(X−E[X])2]=E[X2]−E[X]2,Cov(X,Y)=E[XY]−E[X]E[Y]V[X]=E[(X-E[X])^2]=E[X^2]-E[X]^2,\qquad\mathrm{Cov}(X,Y)=E[XY]-E[X]E[Y]

であり、第5章 §5.4 から

V[aX+b]=a2V[X],V[∑i=1nXi]=∑i=1nV[Xi]+2∑i<jCov(Xi,Xj)(6.3)V[aX+b]=a^2V[X],\qquad V\Bigl[\sum_{i=1}^nX_i\Bigr]=\sum_{i=1}^nV[X_i]+2\sum_{i<j}\mathrm{Cov}(X_i,X_j)\tag{6.3}

が成り立つ。X1,…,XnX_1,\dots,X_n が独立なら、共分散はすべて 0 である。非負の関数の重積分は、積分の順序を交換してよい(第5章の Tonelli の定理)。

独立性については、第4章 §4.3 の次の判定法を使う。独立であることは、同時分布が周辺分布の積であることと同値である。密度があれば、同時密度が周辺密度の積であることと同値である。

この章の分布は以後のほぼすべての章に現れる。

  • 第7章では、変数変換と畳み込みで分布を作り直す。第8章と第9章では、母関数と特性関数でこの章の結果を別の道から導き直す。
  • 第12章・第13章の極限定理では、二項分布と Poisson 分布と正規分布が具体例として使われる。
  • 第14章では、指数分布とガンマ分布と Poisson 分布が Poisson 過程の中で組み合わさる。

この節の分布は、Poisson 分布を除いて、すべて「成功か失敗かが決まる試行」から作られる。同じ試行を独立に繰り返すとき、何を数えるかで分布が決まる。

  • 何回のうち何回成功したかを数えれば、二項分布になる。
  • 初めて成功するまで何回かかったかを数えれば、幾何分布になる。
  • rr 回目の成功まで何回かかったかを数えれば、負の二項分布になる。

試行が独立でなく、有限個のものから戻さずに取り出す場合が超幾何分布である。

Bernoulli 分布と二項分布

定義 6.1(Bernoulli 分布・二項分布)

0≤p≤10\le p\le1 とする。P(X=1)=p, P(X=0)=1−pP(X=1)=p,\ P(X=0)=1-p を満たす確率変数の分布をBernoulli 分布と呼ぶ。これを X∼Ber(p)X\sim\mathrm{Ber}(p) と書く。自然数 nn について、確率関数が

P(X=k)=(nk)pk(1−p)n−k(k=0,1,…,n)(6.4)P(X=k)=\binom nk p^k(1-p)^{n-k}\qquad(k=0,1,\dots,n)\tag{6.4}

で与えられる分布を二項分布と呼び、X∼Bin(n,p)X\sim\mathrm{Bin}(n,p) と書く。

(6.4) の総和が 1 になることは、二項定理そのものである。

∑k(nk)pk(1−p)n−k=(p+(1−p))n=1\sum_k\binom nkp^k(1-p)^{n-k}=(p+(1-p))^n=1

二項分布がどこから来るかを確かめておく。X1,…,XnX_1,\dots,X_n を独立で、どれも Ber(p)\mathrm{Ber}(p) に従うとする。Sn=X1+⋯+XnS_n=X_1+\dots+X_n と置く。Sn=kS_n=k となるのは、ちょうど kk 個が 1 で残りが 0 のときである。

1 になる番号の組を1つ決めると、独立性からその並びの確率は pk(1−p)n−kp^k(1-p)^{n-k} である。番号の組の選び方は (nk)\binom nk 通りある。異なる並びは互いに素な事象なので、

P(Sn=k)=(nk)pk(1−p)n−kP(S_n=k)=\binom nkp^k(1-p)^{n-k}

となり、Sn∼Bin(n,p)S_n\sim\mathrm{Bin}(n,p) である。成功確率 pp の試行を独立に nn 回行ったときの成功の回数が二項分布に従う、と言い換えてもよい。

命題 6.2(二項分布の平均と分散)

X∼Ber(p)X\sim\mathrm{Ber}(p) なら、E[X]=p, V[X]=p(1−p)E[X]=p,\ V[X]=p(1-p) である。X∼Bin(n,p)X\sim\mathrm{Bin}(n,p) なら

E[X]=np,V[X]=np(1−p).(6.5)E[X]=np,\qquad V[X]=np(1-p).\tag{6.5}

証明

Bernoulli 分布では E[X]=1⋅p+0⋅(1−p)=pE[X]=1\cdot p+0\cdot(1-p)=p、E[X2]=pE[X^2]=p である。よって V[X]=p−p2V[X]=p-p^2 である。

二項分布の平均と分散は分布だけで決まるので、上の和 SnS_n で計算してよい。期待値の線形性から E[Sn]=npE[S_n]=np である。独立性と (6.3) から V[Sn]=np(1−p)V[S_n]=np(1-p) である。

和に分けずに確率関数から直接計算することもできる。k≥1k\ge1 について k(nk)=n(n−1k−1)k\binom nk=n\binom{n-1}{k-1} が成り立つので、

E[X]=∑k=1nk(nk)pk(1−p)n−k=np∑k=1n(n−1k−1)pk−1(1−p)(n−1)−(k−1)=npE[X]=\sum_{k=1}^nk\binom nkp^k(1-p)^{n-k}=np\sum_{k=1}^{n}\binom{n-1}{k-1}p^{k-1}(1-p)^{(n-1)-(k-1)}=np

となる(最後の和は Bin(n−1,p)\mathrm{Bin}(n-1,p) の確率の総和)。同じく k(k−1)(nk)=n(n−1)(n−2k−2)k(k-1)\binom nk=n(n-1)\binom{n-2}{k-2} から、E[X(X−1)]=n(n−1)p2E[X(X-1)]=n(n-1)p^2 である。よって

V[X]=E[X(X−1)]+E[X]−E[X]2=n(n−1)p2+np−n2p2=np(1−p)V[X]=E[X(X-1)]+E[X]-E[X]^2=n(n-1)p^2+np-n^2p^2=np(1-p)

を得る。

E[X(X−1)]E[X(X-1)] のように、X(X−1)⋯(X−r+1)X(X-1)\cdots(X-r+1) の期待値を階乗モーメントと呼ぶ。整数値の分布では、二項係数や階乗と相性がよいので、E[X2]E[X^2] を直接計算するより短く済むことが多い。

幾何分布と負の二項分布

成功確率 p∈(0,1]p\in(0,1] の試行を独立に繰り返す。初めて成功した回の番号を XX とする。X=kX=k となるのは、最初の k−1k-1 回が失敗し、その次が成功したときである。よって P(X=k)=(1−p)k−1pP(X=k)=(1-p)^{k-1}p である。

定義 6.3(幾何分布・負の二項分布)

確率関数が

P(X=k)=(1−p)k−1p(k=1,2,… )(6.6)P(X=k)=(1-p)^{k-1}p\qquad(k=1,2,\dots)\tag{6.6}

の分布を幾何分布と呼び、X∼Geo(p)X\sim\mathrm{Geo}(p) と書く。自然数 rr について、確率関数が

P(X=k)=(k−1r−1)pr(1−p)k−r(k=r,r+1,… )(6.7)P(X=k)=\binom{k-1}{r-1}p^r(1-p)^{k-r}\qquad(k=r,r+1,\dots)\tag{6.7}

の分布を負の二項分布と呼び、X∼NB(r,p)X\sim\mathrm{NB}(r,p) と書く。NB(1,p)=Geo(p)\mathrm{NB}(1,p)=\mathrm{Geo}(p) である。

(6.7) が「rr 回目の成功が kk 回目に起きる確率」であることを確かめる。そうなるのは、kk 回目が成功で、それより前にちょうど r−1r-1 回の成功があるときである。前の k−1k-1 回の中の成功の位置の選び方は、(k−1r−1)\binom{k-1}{r-1} 通りある。どの並びも確率 pr(1−p)k−rp^r(1-p)^{k-r} を持つ。

総和が 1 になることは、幾何分布では等比級数で確かめられる。

∑k≥1(1−p)k−1p=p1−(1−p)=1\sum_{k\ge1}(1-p)^{k-1}p=\frac{p}{1-(1-p)}=1

負の二項分布の総和は、次の命題の表し方から自動的に従う。

命題 6.4(負の二項分布は独立な幾何分布の和)

成功確率 pp の試行の独立な列を考える。jj 回目の成功の回の番号を TjT_j とする。ただし T0=0T_0=0 とする。Gj=Tj−Tj−1G_j=T_j-T_{j-1} と置く。

このとき G1,…,GrG_1,\dots,G_r は独立で、どれも Geo(p)\mathrm{Geo}(p) に従う。したがって Tr=G1+⋯+GrT_r=G_1+\dots+G_r は NB(r,p)\mathrm{NB}(r,p) に従い、

E[G1]=1p,V[G1]=1−pp2,E[Tr]=rp,V[Tr]=r(1−p)p2.(6.8)E[G_1]=\frac1p,\quad V[G_1]=\frac{1-p}{p^2},\qquad E[T_r]=\frac rp,\quad V[T_r]=\frac{r(1-p)}{p^2}.\tag{6.8}

証明

自然数 k1,…,krk_1,\dots,k_r を固定する。事象 {G1=k1,…,Gr=kr}\{G_1=k_1,\dots,G_r=k_r\} は、最初の k1+⋯+krk_1+\dots+k_r 回の並びを1通りに決める。その並びは rr 個の成功と ∑j(kj−1)\sum_j(k_j-1) 個の失敗からなる。独立性から

P(G1=k1,…,Gr=kr)=∏j=1r(1−p)kj−1pP(G_1=k_1,\dots,G_r=k_r)=\prod_{j=1}^r(1-p)^{k_j-1}p

である。右辺は各 kjk_j の関数の積になっている。1つの番号以外について和をとると、各 GjG_j の確率関数が (6.6) だと分かる。同時確率関数が周辺確率関数の積に分かれるので、G1,…,GrG_1,\dots,G_r は独立である(第4章 §4.3)。

平均と分散を計算する。∣x∣<1|x|<1 で ∑k≥0xk=1/(1−x)\sum_{k\ge0}x^k=1/(1-x) を項別に微分すると、

∑k≥1kxk−1=1(1−x)2,∑k≥2k(k−1)xk−2=2(1−x)3\sum_{k\ge1}kx^{k-1}=\frac1{(1-x)^2},\qquad\sum_{k\ge2}k(k-1)x^{k-2}=\frac2{(1-x)^3}

である。q=1−pq=1-p と置くと

E[G1]=∑k≥1kqk−1p=p(1−q)2=1p,E[G1(G1−1)]=pq∑k≥2k(k−1)qk−2=2pqp3=2qp2E[G_1]=\sum_{k\ge1}kq^{k-1}p=\frac{p}{(1-q)^2}=\frac1p,\qquad E[G_1(G_1-1)]=pq\sum_{k\ge2}k(k-1)q^{k-2}=\frac{2pq}{p^3}=\frac{2q}{p^2}

となり、

V[G1]=2qp2+1p−1p2=qp2V[G_1]=\frac{2q}{p^2}+\frac1p-\frac1{p^2}=\frac{q}{p^2}

を得る。和の平均と分散は線形性と (6.3) から出る。

幾何分布は「すでに mm 回失敗した」という情報を受けても、残りの待ち回数の分布が変わらない。実際、最初の nn 回がすべて失敗する確率は P(X>n)=(1−p)nP(X>n)=(1-p)^n なので

P(X>m+n∣X>m)=(1−p)m+n(1−p)m=(1−p)n=P(X>n)(6.9)P(X>m+n\mid X>m)=\frac{(1-p)^{m+n}}{(1-p)^m}=(1-p)^n=P(X>n)\tag{6.9}

が成り立つ。この性質を無記憶性と呼ぶ。正の整数に値をとる分布で無記憶性を持つものは、幾何分布に限られる(確認テスト 6.1-4)。連続分布での同じ性質は §6.2 で指数分布を特徴づける。

パラメータの流儀

同じ名前の分布でも、本によって何を数えるかが違う。

  • 幾何分布を「初めて成功するまでの失敗の回数」Y=X−1Y=X-1 で定める流儀がある。そのとき値は 0, 1, 2, … で、E[Y]=(1−p)/pE[Y]=(1-p)/p になる。
  • 負の二項分布も「rr 回成功するまでの失敗の回数」で定めることが多い。そのときは j≥0j\ge0 で次の形になる。

P(Y=j)=(j+r−1j)pr(1−p)jP(Y=j)=\binom{j+r-1}{j}p^r(1-p)^j

この形では、rr を正の実数にまで広げることができる。

  • 指数分布とガンマ分布にも、パラメータをレート λ\lambda にするか平均 1/λ1/\lambda にするかの2つの流儀がある。本書はレートを使う。

公式を本から借りるときは、分布の名前でなく確率関数・密度の式を照らし合わせる。

例題 6.1 サイコロで6の目が3回出るまで ★★

オリジナル公正なサイコロを、6の目が3回出るまで振り続ける。振った回数を XX とする。

  1. P(X=5)P(X=5) を求めよ。
  2. E[X]E[X] と V[X]V[X] を求めよ。
  3. P(X>6)P(X>6) を、最初の6回の中の6の目の回数に言い換えて求めよ。
解答

X∼NB(3,1/6)X\sim\mathrm{NB}(3,1/6) である。

  1. (6.7) で r=3, k=5r=3,\ k=5 と置くと

P(X=5)=(42)(16)3(56)2=6⋅2565=1507776=251296≈0.0193.P(X=5)=\binom42\Bigl(\frac16\Bigr)^3\Bigl(\frac56\Bigr)^2=6\cdot\frac{25}{6^5}=\frac{150}{7776}=\frac{25}{1296}\approx0.0193. 2. 命題 6.4 から、E[X]=3/(1/6)=18E[X]=3/(1/6)=18、V[X]=3⋅56⋅36=90V[X]=3\cdot\frac56\cdot36=90 である。3. X>6X>6 は「6回振り終えた時点で6の目がまだ2回以下」と同じ事象である。最初の6回の中の6の目の回数を YY とすると、Y∼Bin(6,1/6)Y\sim\mathrm{Bin}(6,1/6) である。よって

P(X>6)=P(Y≤2)=56+6⋅55+15⋅5466=15625+18750+937546656=4375046656=2187523328≈0.938.\begin{aligned}P(X>6)=P(Y\le2)&=\frac{5^6+6\cdot5^5+15\cdot5^4}{6^6}=\frac{15625+18750+9375}{46656}\\ &=\frac{43750}{46656}=\frac{21875}{23328}\approx0.938.\end{aligned}

負の二項分布の裾の確率を、二項分布の分布関数で書く言い換えである。一般に次の形で成り立つ。

P(Tr>n)=P(Bin(n,p)≤r−1)P(T_r>n)=P(\mathrm{Bin}(n,p)\le r-1)

Poisson 分布

定義 6.5(Poisson 分布)

λ>0\lambda>0 とする。確率関数が

P(X=k)=e−λλkk!(k=0,1,2,… )(6.10)P(X=k)=\mathrm{e}^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}\qquad(k=0,1,2,\dots)\tag{6.10}

の分布をPoisson 分布と呼び、X∼Po(λ)X\sim\mathrm{Po}(\lambda) と書く。

総和が 1 になることは、指数関数の級数 ∑kλk/k!=eλ\sum_k\lambda^k/k!=\mathrm{e}^\lambda から従う。Poisson 分布は、多数回の独立な試行のそれぞれで、まれにしか起きない事象が起きる回数の分布として現れる。これは §6.3 で、npnp を一定に保って n→∞n\to\infty とした二項分布の極限として示す。

一定時間内の放射性崩壊の数、ある日の問い合わせの件数のように、機会は多いが1回ごとの確率が小さい数え上げの標準的なモデルになっている。

命題 6.6(Poisson 分布の平均と分散)

X∼Po(λ)X\sim\mathrm{Po}(\lambda) なら E[X]=V[X]=λE[X]=V[X]=\lambda である。より一般に、r=1,2,…r=1,2,\dots について

E[X(X−1)⋯(X−r+1)]=λr.E[X(X-1)\cdots(X-r+1)]=\lambda^r.

証明

k<rk<r の項は k(k−1)⋯(k−r+1)=0k(k-1)\cdots(k-r+1)=0 なので、

E[X(X−1)⋯(X−r+1)]=∑k≥rk!(k−r)!e−λλkk!=λre−λ∑k≥rλk−r(k−r)!=λr.E[X(X-1)\cdots(X-r+1)]=\sum_{k\ge r}\frac{k!}{(k-r)!}\mathrm{e}^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}=\lambda^r\mathrm{e}^{-\lambda}\sum_{k\ge r}\frac{\lambda^{k-r}}{(k-r)!}=\lambda^r.

とくに E[X]=λE[X]=\lambda、E[X(X−1)]=λ2E[X(X-1)]=\lambda^2 である。よって V[X]=λ2+λ−λ2=λV[X]=\lambda^2+\lambda-\lambda^2=\lambda である。

平均と分散が等しいことは、Poisson 分布をデータに当てはめるときの簡単な点検に使われる。数えたデータの分散が平均より明らかに大きければ(過分散)、Poisson 分布より裾の広い負の二項分布などを考える。

超幾何分布

NN 個のもののうち KK 個に印がついているとする。そこから nn 個を戻さずに無作為に取り出す。どの組も同じ確率 1/(Nn)1/\binom Nn で選ばれるとし、取り出した中の印つきの個数を XX とする。印つきから kk 個、印なしから n−kn-k 個を選ぶ組の数を数えると、次の確率関数を得る。

定義 6.7(超幾何分布)

自然数 NN と、0≤K≤N, 1≤n≤N0\le K\le N,\ 1\le n\le N を満たす整数について、確率関数が

P(X=k)=(Kk)(N−Kn−k)(Nn)(max⁡(0,n−N+K)≤k≤min⁡(n,K))(6.11)P(X=k)=\frac{\binom Kk\binom{N-K}{n-k}}{\binom Nn}\qquad(\max(0,n-N+K)\le k\le\min(n,K))\tag{6.11}

の分布を超幾何分布と呼び、X∼HG(N,K,n)X\sim\mathrm{HG}(N,K,n) と書く。

総和が 1 であることは、選ぶ組を「印つきから何個選んだか」で分類したと考えれば明らかである。式としては Vandermonde の恒等式 ∑k(Kk)(N−Kn−k)=(Nn)\sum_k\binom Kk\binom{N-K}{n-k}=\binom Nn である。

命題 6.8(超幾何分布の平均と分散)

X∼HG(N,K,n)X\sim\mathrm{HG}(N,K,n) とし、p=K/Np=K/N と置くと

E[X]=np,V[X]=np(1−p) N−nN−1(N≥2).(6.12)E[X]=np,\qquad V[X]=np(1-p)\,\frac{N-n}{N-1}\quad(N\ge2).\tag{6.12}

証明

取り出す操作を「全部を無作為に1列に並べ、先頭の nn 個を取る」と言い換える。番号 ii のものが印つきなら Ii=1I_i=1、そうでなければ 0 と置く。X=I1+⋯+InX=I_1+\dots+I_n である。並べ方の対称性から、次のようになる。

  • ii 番目が印つきである確率は K/NK/N。
  • i≠ji\ne j のとき、2つがともに印つきである確率は KN⋅K−1N−1\frac{K}{N}\cdot\frac{K-1}{N-1}。

よって E[X]=nK/N=npE[X]=nK/N=np で、

Cov(Ii,Ij)=K(K−1)N(N−1)−K2N2=KN⋅N(K−1)−K(N−1)N(N−1)=−K(N−K)N2(N−1)=−p(1−p)N−1.\mathrm{Cov}(I_i,I_j)=\frac{K(K-1)}{N(N-1)}-\frac{K^2}{N^2}=\frac{K}{N}\cdot\frac{N(K-1)-K(N-1)}{N(N-1)}=-\frac{K(N-K)}{N^2(N-1)}=-\frac{p(1-p)}{N-1}.

(6.3) に V[Ii]=p(1−p)V[I_i]=p(1-p) と、組の数 n(n−1)/2n(n-1)/2 を入れると

V[X]=np(1−p)−n(n−1)p(1−p)N−1=np(1−p)(1−n−1N−1)=np(1−p)N−nN−1V[X]=np(1-p)-n(n-1)\frac{p(1-p)}{N-1}=np(1-p)\Bigl(1-\frac{n-1}{N-1}\Bigr)=np(1-p)\frac{N-n}{N-1}

となる。

平均は戻して取り出す場合(Bin(n,p)\mathrm{Bin}(n,p))と同じだが、分散には N−nN−1\frac{N-n}{N-1} という 1 以下の因子がつく。戻さずに取り出すと、印つきを1つ取ったぶんだけ次に印つきを取る確率が下がる。そのため IiI_i どうしが負の相関を持つからである。

この因子を有限母集団修正と呼ぶ。n=Nn=N なら全部を取り出すので X=KX=K が確定し、分散は 0 になる。

例題 6.2 抜き取り検査 ★★

オリジナル50個の部品の中に不良品が5個混じっている。10個を戻さずに無作為に抜き取る。抜き取った中の不良品の個数を XX とする。

  1. P(X=0)P(X=0) を求め、戻して抜き取る場合の値と比べよ。
  2. E[X]E[X] と V[X]V[X] を求めよ。
解答

X∼HG(50,5,10)X\sim\mathrm{HG}(50,5,10) であり、p=5/50=0.1p=5/50=0.1 である。

  1. (6.11) から

P(X=0)=(4510)(5010)=40⋅39⋅38⋅37⋅3650⋅49⋅48⋅47⋅46≈0.3106.P(X=0)=\frac{\binom{45}{10}}{\binom{50}{10}}=\frac{40\cdot39\cdot38\cdot37\cdot36}{50\cdot49\cdot48\cdot47\cdot46}\approx0.3106.

2つ目の等号では、(4510)/(5010)=45! 40!35! 50!\binom{45}{10}/\binom{50}{10}=\frac{45!\,40!}{35!\,50!} を約分して分子と分母に5個ずつの因子を残した。戻して抜き取るなら Bin(10,0.1)\mathrm{Bin}(10,0.1) なので、確率は 0.910≈0.34870.9^{10}\approx0.3487 である。戻さない場合は良品を1つ取るたびに残りの不良品の割合が上がるので、不良品を1つも引かない確率は小さくなる。2. (6.12) から、E[X]=10×0.1=1E[X]=10\times0.1=1 であり、

V[X]=10×0.1×0.9×50−1050−1=0.9×4049=3649≈0.735V[X]=10\times0.1\times0.9\times\frac{50-10}{50-1}=0.9\times\frac{40}{49}=\frac{36}{49}\approx0.735

である。戻す場合の分散 0.9 より約 18% 小さい。

表 6.1 この節の離散分布の一覧。
分布値確率関数平均分散
Ber(p)\mathrm{Ber}(p)0,10,1pk(1−p)1−kp^k(1-p)^{1-k}ppp(1−p)p(1-p)
Bin(n,p)\mathrm{Bin}(n,p)0,…,n0,\dots,n(nk)pk(1−p)n−k\binom nkp^k(1-p)^{n-k}npnpnp(1−p)np(1-p)
Geo(p)\mathrm{Geo}(p)1,2,…1,2,\dots(1−p)k−1p(1-p)^{k-1}p1/p1/p(1−p)/p2(1-p)/p^2
NB(r,p)\mathrm{NB}(r,p)r,r+1,…r,r+1,\dots(k−1r−1)pr(1−p)k−r\binom{k-1}{r-1}p^r(1-p)^{k-r}r/pr/pr(1−p)/p2r(1-p)/p^2
Po(λ)\mathrm{Po}(\lambda)0,1,…0,1,\dotse−λλk/k!\mathrm{e}^{-\lambda}\lambda^k/k!λ\lambdaλ\lambda
HG(N,K,n)\mathrm{HG}(N,K,n)式 (6.11) の範囲(Kk)(N−Kn−k)/(Nn)\binom Kk\binom{N-K}{n-k}/\binom NnnK/NnK/NnKNN−KNN−nN−1n\frac KN\frac{N-K}{N}\frac{N-n}{N-1}

確認テスト

オリジナル

  1. 6.1-1 X∼Ber(p)X\sim\mathrm{Ber}(p) なら X2=XX^2=X である。これを使って V[X]=p(1−p)V[X]=p(1-p) を示せ。また分散が最大になる pp と最大値を答えよ。
  2. 6.1-2 X∼Po(λ)X\sim\mathrm{Po}(\lambda) とする。(a) P(X=k)/P(X=k−1)P(X=k)/P(X=k-1) を計算せよ。λ=3.5\lambda=3.5 のとき、確率を最大にする kk とその確率(小数第4位まで)を求めよ。(b) E[X3]E[X^3] を λ\lambda で表せ。
  3. 6.1-3 X∼Geo(p)X\sim\mathrm{Geo}(p) とする。非負整数値の確率変数について成り立つ E[X]=∑n≥0P(X>n)E[X]=\sum_{n\ge0}P(X>n) を示せ。これを使って E[X]=1/pE[X]=1/p を導け。
  4. 6.1-4 正の整数に値をとる確率変数 XX が、すべての非負整数 m,nm,n で次を満たすとする。

P(X>m)>0,P(X>m+n∣X>m)=P(X>n)P(X>m)>0,\qquad P(X>m+n\mid X>m)=P(X>n)

XX が幾何分布に従うことを示せ。

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