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確率母関数

2026年10月15日25分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 母関数と特性関数
目次
  1. 定義と、分布を決めること
  2. 階乗モーメント
  3. 独立和は積になる
  4. ランダム和は合成になる
  5. 分枝過程と絶滅確率
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第8章 §8.1 ★★★ 非負整数値の分布を、べき級数の係数として持つ関数。独立和は積に、ランダム和は合成になる

第7章では、独立な確率変数の和の分布を畳み込みで書いた。畳み込みは2つの和なら手で計算できるが、和の項数が増えると計算が急に重くなり、項数が無限大に向かう極限(第12章・第13章)を直接調べる手段にはならない。この章では、分布 PXP_X に1つの関数を対応させる3つの変換を導入する。

  • 非負整数値の確率変数に使う確率母関数 GX(s)=E[sX]G_X(s)=E[s^X]。
  • 0 の近くで有限になる場合に使う積率母関数 MX(t)=E[etX]M_X(t)=E[\mathrm{e}^{tX}]。
  • すべての確率変数に使える特性関数 φX(t)=E[eitX]\varphi_X(t)=E[\mathrm{e}^{\mathrm{i} tX}]。

3つの変換はどれも、指数関数の形をした関数の期待値になっている(sx=exlog⁡ss^x=\mathrm{e}^{x\log s})。この形から2つの性質が出る。

  1. 独立和は積になる。指数関数は et(x+y)=etxety\mathrm{e}^{t(x+y)}=\mathrm{e}^{tx}\mathrm{e}^{ty} を満たす。したがって XX と YY が独立なら

E[et(X+Y)]=E[etX]E[etY]E[\mathrm{e}^{t(X+Y)}]=E[\mathrm{e}^{tX}]E[\mathrm{e}^{tY}]

となり、和の分布を求める畳み込みが変換の積に置き換わる。2. 微分するとモーメントが出る。変換を0のまわりで微分すると、モーメントが得られる。

この2つの性質によって、分布の計算の多くが関数の掛け算と微分に帰着する。

3つの変換の違いは、どの分布に対して有限な値をとるかにある。この章の後半では、積率母関数の対数の Taylor 係数であるキュムラントを導入する。これは独立和で足し算になる量で、分布の形(歪度・尖度)を測る。

この章で使う前の章の結果を、式の形で先に書いておく。第5章 §5.3 の変数変換公式

E[g(X)]=∫Rg(x) PX(dx)={∑kg(xk) P(X=xk)(X が離散で値 x1,x2,… をとる),∫−∞∞g(x)f(x) dx(X が密度 f をもつ)(8.1)E[g(X)]=\int_{\mathbb{R}} g(x)\,P_X(\mathrm{d} x)= \begin{cases}\displaystyle\sum_{k} g(x_k)\,P(X=x_k) & (X\ \text{が離散で値}\ x_1,x_2,\dots\ \text{をとる}),\\[8pt] \displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}g(x)f(x)\,\mathrm{d} x & (X\ \text{が密度}\ f\ \text{をもつ})\end{cases}\tag{8.1}

(g≥0g\ge0 か E[∣g(X)∣]<∞E[\left\vert g(X)\right\vert ]<\infty のとき)を使う。第5章 §5.2 からは、次の収束定理を使う。

  • 単調収束定理:0≤Yn↑Y0\le Y_n\uparrow Y なら E[Yn]↑E[Y]E[Y_n]\uparrow E[Y]。
  • 優収束定理:Yn→YY_n\to Y が各点で成り立つとする。可積分な WW で ∣Yn∣≤W\left\vert Y_n\right\vert \le W と抑えられるとする。このとき E[Yn]→E[Y]E[Y_n]\to E[Y]。
  • Fatou の補題(1か所で使う):Yn≥0Y_n\ge0 なら E[lim inf⁡nYn]≤lim inf⁡nE[Yn]E[\liminf_n Y_n]\le\liminf_n E[Y_n]。

第5章 §5.4 からは、次の事実を借りる。X,YX,Y が独立で、g(X),h(Y)g(X),h(Y) が非負または可積分なら

E[g(X)h(Y)]=E[g(X)] E[h(Y)](8.2)E[g(X)h(Y)]=E[g(X)]\,E[h(Y)]\tag{8.2}

が成り立つ(g(X)g(X) と h(Y)h(Y) が独立であることは、第4章 §4.2 のまとめ方の補題による)。第7章からは、次の2つも参照する。

P(X+Y=n)=∑k=0nP(X=k)P(Y=n−k)(§7.3 の離散の畳み込み)E[SN]=E[N]E[X1](§7.4 の Wald の等式)\begin{aligned}P(X+Y=n)&=\sum_{k=0}^{n}P(X=k)P(Y=n-k) &&\text{(§7.3 の離散の畳み込み)}\\ E[S_N]&=E[N]E[X_1] &&\text{(§7.4 の Wald の等式)}\end{aligned}

分布の名前と密度は第6章のものを使う。

この章の結果の使い道も先に書いておく。

  • 特性関数が分布をただ1つに定めること(一意性定理)と、特性関数から分布を復元する反転公式は第9章で示す。
  • 積率母関数は第10章 §10.3 で Chernoff 限界 P(X≥a)≤e−taMX(t)P(X\ge a)\le\mathrm{e}^{-ta}M_X(t) を作る材料になる。
  • §8.3 の「特性関数の0のまわりの Taylor 展開」は、第13章で中心極限定理を証明するときの出発点になる。
  • 確率母関数は第15章 §15.1 のランダムウォークの再帰の判定でも使う。第7章 §7.4 では Poisson の間引きを示すのに先回りして使い、それが第14章 §14.3 の Poisson 過程の間引きの土台になる。

定義と、分布を決めること

この節では、値が 0,1,2,…0,1,2,\dots のどれかである確率変数(非負整数値の確率変数)だけを扱う。pk=P(X=k)p_k=P(X=k) と書く。分布は数列 (p0,p1,p2,… )(p_0,p_1,p_2,\dots) で決まるので、この数列を係数とするべき級数を考えるのが自然である。

確率母関数の定義と「独立和は積」「ランダム和は合成」の2つの性質は、第7章 §7.4 で複合分布を扱うために先に使った。この節では、それを階乗モーメント・分枝過程まで含めて体系的に整える。

定義 8.1(確率母関数)

非負整数値の確率変数 XX に対して、

GX(s)≔E[sX]=∑k=0∞pksk(∣s∣≤1)(8.3)G_X(s)\coloneqq E[s^X]=\sum_{k=0}^{\infty}p_k s^k\qquad(\left\vert s\right\vert \le1)\tag{8.3}

を XX の確率母関数と呼ぶ。ただし 00=10^0=1 と約束する。

右辺の級数は ∣s∣≤1\left\vert s\right\vert \le1 で絶対収束する。実際、∑k∣pksk∣≤∑kpk=1\sum_k\left\vert p_ks^k\right\vert \le\sum_kp_k=1 である。

2つ目の等号は、変数変換公式 (8.1) の離散の場合である。g(x)=sxg(x)=s^x は ∣s∣≤1\left\vert s\right\vert \le1 で有界だから可積分である。定義からすぐに GX(0)=p0G_X(0)=p_0、GX(1)=1G_X(1)=1 が分かる。

確率母関数は、べき級数としての性質から分布を完全に決める。

命題 8.2(確率母関数は分布を決める)

pk=GX(k)(0)/k!p_k=G_X^{(k)}(0)/k! が成り立つ。とくに、2つの非負整数値の確率変数 X,YX,Y について、0以上1未満の範囲で GX=GYG_X=G_Y とする。このとき XX と YY は同分布である。

証明

べき級数 ∑kpksk\sum_kp_ks^k の収束半径は1以上である。収束半径の内側では、べき級数は項別に何回でも微分でき、

GX(k)(s)=∑j=k∞j(j−1)⋯(j−k+1) pj sj−kG_X^{(k)}(s)=\sum_{j=k}^{\infty}j(j-1)\cdots(j-k+1)\,p_j\,s^{j-k}

となる。s=0s=0 を代入すると j=kj=k の項だけが残る。したがって GX(k)(0)=k! pkG_X^{(k)}(0)=k!\,p_k を得る。

後半を示す。h=GX−GYh=G_X-G_Y も収束半径1以上のべき級数で、[0,1)[0,1) で0である。すると (0,1)(0,1) の各点で、hh のすべての導関数が0になる。

導関数 h(k)h^{(k)} は (−1,1)(-1,1) で連続である。したがって s↓0s\downarrow0 として h(k)(0)=0h^{(k)}(0)=0 を得る。前半の式から、すべての kk で

P(X=k)−P(Y=k)=h(k)(0)k!=0P(X=k)-P(Y=k)=\frac{h^{(k)}(0)}{k!}=0

が成り立つ。

階乗モーメント

GXG_X を s=1s=1 で微分するとモーメントが得られる。そのためには、通常のモーメント E[Xk]E[X^k] よりも、下降階乗

(x)k≔x(x−1)⋯(x−k+1)(k≥1),(x)0≔1(x)_k\coloneqq x(x-1)\cdots(x-k+1)\qquad(k\ge1),\qquad (x)_0\coloneqq1

の期待値 E[(X)k]E[(X)_k] が扱いやすい。これを kk 次の階乗モーメントと呼ぶ。sxs^x を微分しても xkx^k は出てこない。一方 (x)k(x)_k は

dkdsksx=(x)k sx−k\frac{d ^k}{d s^k}s^x=(x)_k\,s^{x-k}

として直接現れるからである。

定理 8.3(階乗モーメントは s=1s=1 での微分係数)

各 k≥1k\ge1 について次が成り立つ。

  • GX(k)G_X^{(k)} は [0,1)[0,1) で単調非減少である。
  • 次の等式が成り立つ。

GX(k)(1−)≔lim⁡s↑1GX(k)(s)=E[(X)k](両辺が +∞ の場合も含む)(8.4)G_X^{(k)}(1-)\coloneqq\lim_{s\uparrow1}G_X^{(k)}(s)=E[(X)_k]\qquad(\text{両辺が}\ +\infty\ \text{の場合も含む})\tag{8.4}

とくに E[X]=GX′(1−)E[X]=G_X'(1-) であり、E[X2]<∞E[X^2]<\infty なら

V[X]=GX′′(1−)+GX′(1−)−GX′(1−)2.(8.5)V[X]=G_X''(1-)+G_X'(1-)-G_X'(1-)^2 .\tag{8.5}

証明

命題 8.2 の証明の式から、0≤s<10\le s<1 で

GX(k)(s)=∑j≥k(j)k pj sj−kG_X^{(k)}(s)=\sum_{j\ge k}(j)_k\,p_j\,s^{j-k}

である。各項は非負で、ss について非減少だから、GX(k)G_X^{(k)} も非減少である。sm↑1s_m\uparrow1 となる列をとると、各項は (j)kpj(j)_kp_j に単調に増加する。級数を数え上げ測度による積分とみれば、単調収束定理から

lim⁡m→∞GX(k)(sm)=∑j≥k(j)kpj=∑j≥0(j)kpj=E[(X)k]\lim_{m\to\infty}G_X^{(k)}(s_m)=\sum_{j\ge k}(j)_kp_j=\sum_{j\ge0}(j)_kp_j=E[(X)_k]

となる。2つ目の等号は、j<kj<k では下降階乗の因子に0が入って (j)k=0(j)_k=0 になることによる。最後の等号は (8.1) である。

分散の式は次のように得られる。

E[X2]=E[(X)2]+E[(X)1]=GX′′(1−)+GX′(1−)(X2=X(X−1)+X を使った)V[X]=E[X2]−E[X]2=GX′′(1−)+GX′(1−)−GX′(1−)2\begin{aligned}E[X^2]&=E[(X)_2]+E[(X)_1]=G_X''(1-)+G_X'(1-) &&\text{(}{X^2=X(X-1)+X}\text{ を使った)}\\ V[X]&=E[X^2]-E[X]^2=G_X''(1-)+G_X'(1-)-G_X'(1-)^2\end{aligned}

s=1s=1 は収束半径の端

  • 収束半径がちょうど1のとき、GXG_X は1の右側では定義されない。したがって GX′(1)G'_X(1) を通常の微分係数として書くことはできない。(8.4) が左極限で書いてあるのはそのためである。
  • 平均が無限大の分布では、s↑1s\uparrow1 で GX′(s)→∞G_X'(s)\to\infty となる。たとえば pk=1k(k+1)p_k=\frac{1}{k(k+1)}(k≥1k\ge1)がそうである。一方、GX(s)→1G_X(s)\to1 は常に成り立つ(k=0k=0 の場合と同じ単調収束の議論による)。

代表的な分布の確率母関数を、定義 (8.3) の級数を和の公式で計算して求めておく。

  • Bernoulli 分布は、確率 pp で1、残りの確率で0をとる。確率母関数は 1−p+ps1-p+ps である。
  • Poisson 分布 Po(λ)\mathrm{Po}(\lambda) は、指数関数の級数から

G(s)=∑k=0∞e−λλkk!sk=e−λeλs=eλ(s−1)G(s)=\sum_{k=0}^{\infty}\mathrm{e}^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}s^k=\mathrm{e}^{-\lambda}\mathrm{e}^{\lambda s}=\mathrm{e}^{\lambda(s-1)}

となる。これを微分すると G′(1)=λG'(1)=\lambda、G′′(1)=λ2G''(1)=\lambda^2 である。(8.5) より

E[X]=λ,V[X]=λ2+λ−λ2=λ.E[X]=\lambda,\qquad V[X]=\lambda^2+\lambda-\lambda^2=\lambda.

  • 幾何分布は、値 k=1,2,…k=1,2,\dots を確率 (1−p)k−1p(1-p)^{k-1}p でとる分布である。等比級数の和から、次のようになる(確認テスト 8.1-2)。

G(s)=ps1−(1−p)sG(s)=\frac{ps}{1-(1-p)s}

  • 二項分布 Bin(n,p)\mathrm{Bin}(n,p) の確率母関数 (1−p+ps)n(1-p+ps)^n は、次の小節の積の公式から得られる。

独立和は積になる

命題 8.4(独立和の確率母関数)

X,YX,Y が独立な非負整数値の確率変数なら、∣s∣≤1\left\vert s\right\vert \le1 で

GX+Y(s)=GX(s) GY(s).(8.6)G_{X+Y}(s)=G_X(s)\,G_Y(s).\tag{8.6}

証明

sX+Y=sX⋅sYs^{X+Y}=s^X\cdot s^Y であり、2つの因子はそれぞれの確率変数の有界な関数である。(8.2) からE[sX+Y]=E[sX]E[sY]E[s^{X+Y}]=E[s^X]E[s^Y] を得る。s<0s<0 のときも、有界な関数なので可積分である。

qk=P(Y=k)q_k=P(Y=k) と書く。(8.6) の両辺の sns^n の係数を比べると、次のようになる。

P(X+Y=n)=∑k=0npkqn−kP(X+Y=n)=\sum_{k=0}^np_kq_{n-k}

これは第7章 §7.3 の畳み込みの式そのものである。つまり、確率母関数の世界では、畳み込みは関数の掛け算として現れる。命題 8.2 と合わせると、分布の再生性がただちに示せる。

二項分布と Poisson 分布の再生性

Bernoulli 分布に従う独立な nn 個の確率変数の和は、成功の回数だから Bin(n,p)\mathrm{Bin}(n,p) に従う。(8.6) を繰り返し使うと、その確率母関数は (1−p+ps)n(1-p+ps)^n である。

  • 二項分布。X∼Bin(m,p)X\sim\mathrm{Bin}(m,p) と Y∼Bin(n,p)Y\sim\mathrm{Bin}(n,p) が独立であるとする。和の確率母関数は (1−p+ps)m+n(1-p+ps)^{m+n} である。これは Bin(m+n,p)\mathrm{Bin}(m+n,p) の確率母関数である。命題 8.2 により、和はこの分布に従う。
  • Poisson 分布。独立な X∼Po(λ)X\sim\mathrm{Po}(\lambda)、Y∼Po(μ)Y\sim\mathrm{Po}(\mu) について

GX+Y(s)=eλ(s−1)eμ(s−1)=e(λ+μ)(s−1)G_{X+Y}(s)=\mathrm{e}^{\lambda(s-1)}\mathrm{e}^{\mu(s-1)}=\mathrm{e}^{(\lambda+\mu)(s-1)}

だから、X+Y∼Po(λ+μ)X+Y\sim\mathrm{Po}(\lambda+\mu) である。

例題 8.1 3個のサイコロの目の和 ★★

オリジナル公正なサイコロを3個振り、目の和を SS とする。

  1. 1個のサイコロの目 XX の確率母関数を閉じた形で書け。
  2. SS の確率母関数を用いて、和が9になる確率と10になる確率を求めよ。
  3. E[S]E[S] と V[S]V[S] を確率母関数から求めよ。
解答
  1. XX は 1,…,61,\dots,6 を確率1/6ずつとるので、等比級数の和の公式から

GX(s)=16(s+s2+⋯+s6)=s(1−s6)6(1−s)(s≠1).G_X(s)=\frac16(s+s^2+\cdots+s^6)=\frac{s(1-s^6)}{6(1-s)}\qquad(s\neq1). 2. 3個の目は独立なので、(8.6) を2回使って

GS(s)=GX(s)3=s3216 (1−s6)3 (1−s)−3G_S(s)=G_X(s)^3=\frac{s^3}{216}\,(1-s^6)^3\,(1-s)^{-3}

となる。次の2つの展開を使う。

(1−s6)3=1−3s6+3s12−s18,(1−s)−3=∑j≥0(j+22)sj(負の二項展開)(1-s^6)^3=1-3s^6+3s^{12}-s^{18},\qquad (1-s)^{-3}=\sum_{j\ge0}\binom{j+2}{2}s^j\quad(\text{負の二項展開})

P(S=n)P(S=n) は、確率母関数の sns^n の係数である。したがって、(1−s6)3(1−s)−3(1-s^6)^3(1-s)^{-3} の sn−3s^{n-3} の係数を216で割ればよい。

  • n=9n=9 では s6s^6 の係数を求める。寄与は2つある。(1−s)−3(1-s)^{-3} の6次の項と、−3s6-3s^6 と定数項の積である。

(82)−3(22)=28−3=25,P(S=9)=25216\binom{8}{2}-3\binom{2}{2}=28-3=25,\qquad P(S=9)=\frac{25}{216}

を得る。

  • n=10n=10 では s7s^7 の係数を求める。

(92)−3(32)=36−9=27,P(S=10)=27216=18\binom{9}{2}-3\binom{3}{2}=36-9=27,\qquad P(S=10)=\frac{27}{216}=\frac18

である。

目の組み合わせの数(9 も 10 も、和に分ける方法は6通りずつ)は同じでも、並べ方の数が違うので確率が異なる。この差は Galilei が説明した問題として知られている。3. まず1個のサイコロについて計算する。

GX′(1−)=E[X]=1+⋯+66=72,GX′′(1−)=16∑k=16k(k−1)=706=353,V[X]=353+72−494=3512((8.5) を使った)\begin{aligned}G_X'(1-)&=E[X]=\frac{1+\cdots+6}{6}=\frac72,\\ G_X''(1-)&=\frac16\sum_{k=1}^6k(k-1)=\frac{70}{6}=\frac{35}{3},\\ V[X]&=\frac{35}{3}+\frac72-\frac{49}{4}=\frac{35}{12} &&\text{((8.5) を使った)}\end{aligned}

次に GS=GX3G_S=G_X^3 を微分し、s↑1s\uparrow1 とする。

GS′=3GX2GX′⟹E[S]=3⋅72=212,GS′′=6GX(GX′)2+3GX2GX′′⟹GS′′(1−)=6⋅494+3⋅353=1472+35=2172\begin{aligned}G_S'&=3G_X^2G_X' &&\Longrightarrow\quad E[S]=3\cdot\frac72=\frac{21}{2},\\ G_S''&=6G_X(G_X')^2+3G_X^2G_X'' &&\Longrightarrow\quad G_S''(1-)=6\cdot\frac{49}{4}+3\cdot\frac{35}{3}=\frac{147}{2}+35=\frac{217}{2}\end{aligned}

したがって

V[S]=2172+212−4414=476−4414=354V[S]=\frac{217}{2}+\frac{21}{2}-\frac{441}{4}=\frac{476-441}{4}=\frac{35}{4}

となり、独立な3個の分散の和 3⋅35123\cdot\frac{35}{12} と一致する。

ランダム和は合成になる

項数そのものが確率変数である和をランダム和と呼ぶ(第7章 §7.4 の複合分布)。保険の請求の総額(請求の件数も1件の額も確率的)や、次の小節の分枝過程がその例である。

ランダム和の確率母関数が関数の合成で書けることは、第7章 §7.4 で示した。ここでは定理として再掲し、平均と分散を階乗モーメントから導き直す。

定理 8.5(ランダム和の確率母関数)

N,X1,X2,…N,X_1,X_2,\dots を独立な非負整数値の確率変数とする。X1,X2,…X_1,X_2,\dots は同分布で、確率母関数 GXG_X をもつとする。S=X1+⋯+XNS=X_1+\cdots+X_N と置く。項数が0のときは0とする。このとき ∣s∣≤1\left\vert s\right\vert \le1 で

GS(s)=GN(GX(s)).(8.7)G_S(s)=G_N\bigl(G_X(s)\bigr).\tag{8.7}

証明は第7章 §7.4 で与えた(NN の値で場合分けし、独立和の確率母関数が積になることを nn 個の和に使う)。

系 8.6(ランダム和の平均と分散)

定理 8.5 の設定で、E[N2]<∞E[N^2]<\infty かつ E[X12]<∞E[X_1^2]<\infty なら

E[S]=E[N] E[X1],V[S]=E[N] V[X1]+V[N] E[X1]2.(8.8)E[S]=E[N]\,E[X_1],\qquad V[S]=E[N]\,V[X_1]+V[N]\,E[X_1]^2 .\tag{8.8}

証明

0≤s<10\le s<1 で (8.7) を連鎖律で微分すると

GS′(s)=GN′(GX(s))GX′(s),GS′′(s)=GN′′(GX(s))GX′(s)2+GN′(GX(s))GX′′(s)G_S'(s)=G_N'\bigl(G_X(s)\bigr)G_X'(s),\qquad G_S''(s)=G_N''\bigl(G_X(s)\bigr)G_X'(s)^2+G_N'\bigl(G_X(s)\bigr)G_X''(s)

となる。X1≡0X_1\equiv0 の場合は S≡0S\equiv0 で主張は自明なので、除いてよい。このとき s<1s<1 で GX(s)<1G_X(s)<1 である。

s↑1s\uparrow1 のとき GX(s)↑1G_X(s)\uparrow1 である。また GN′,GN′′G_N',G_N'' は単調非減少である。したがって

GN′(GX(s))→GN′(1−),GN′′(GX(s))→GN′′(1−).G_N'(G_X(s))\to G_N'(1-),\qquad G_N''(G_X(s))\to G_N''(1-).

定理 8.3 から、次の2式を得る。

E[S]=E[N]E[X1],E[(S)2]=E[(N)2] E[X1]2+E[N] E[(X1)2]E[S]=E[N]E[X_1],\qquad E[(S)_2]=E[(N)_2]\,E[X_1]^2+E[N]\,E[(X_1)_2]

これを V[S]=E[(S)2]+E[S]−E[S]2V[S]=E[(S)_2]+E[S]-E[S]^2 に代入すると

V[S]=(E[N2]−E[N])E[X1]2+E[N](E[X12]−E[X1])+E[N]E[X1]−E[N]2E[X1]2=(E[N2]−E[N]2)E[X1]2+E[N](E[X12]−E[X1]2)\begin{aligned}V[S]&=\bigl(E[N^2]-E[N]\bigr)E[X_1]^2+E[N]\bigl(E[X_1^2]-E[X_1]\bigr)+E[N]E[X_1]-E[N]^2E[X_1]^2\\ &=\bigl(E[N^2]-E[N]^2\bigr)E[X_1]^2+E[N]\bigl(E[X_1^2]-E[X_1]^2\bigr)\end{aligned}

となり、(8.8) の第2式を得る。

2つの式は第7章 §7.4 で場合分けから求めたものと同じで、平均の式は Wald の等式の特別な場合でもある。分散の式は2つの揺らぎの和になっている。

  • 第1項は、項数を固定したときの各項の揺らぎである。
  • 第2項は、項数そのものの揺らぎに、1項あたりの平均の2乗を掛けたものである。

分枝過程と絶滅確率

ランダム和の公式の応用として、Galton–Watson 過程(分枝過程)を考える。1個体から始め、各個体はそれぞれ独立に、共通の分布 pk=P(ξ=k)p_k=P(\xi=k) に従う数の子を残して消える。第 nn 世代の個体数を ZnZ_n とする。Z0=1Z_0=1 であり、

Zn+1=ξn,1+ξn,2+⋯+ξn,ZnZ_{n+1}=\xi_{n,1}+\xi_{n,2}+\cdots+\xi_{n,Z_n}

である。ここで ξn,i\xi_{n,i} は、その世代の ii 番目の個体の子の数である。これらはすべて独立に ξ\xi と同じ分布に従う。

ξ\xi の確率母関数を GG と書く。平均を m=E[ξ]m=E[\xi] と書く。mm はこの小節だけの記号である。

ZnZ_n はそれより前の世代の子の数だけで決まるので、同じ世代の子の数 ξn,⋅\xi_{n,\cdot} とは独立である。定理 8.5 から GZn+1=GZn∘GG_{Z_{n+1}}=G_{Z_n}\circ G となる。GZ0(s)=sG_{Z_0}(s)=s から始めて帰納的に

GZn=G∘G∘⋯∘G⏟n 回(8.9)G_{Z_n}=\underbrace{G\circ G\circ\cdots\circ G}_{n\ \text{回}}\tag{8.9}

を得る。系 8.6 の平均の式を繰り返せば E[Zn]=mnE[Z_n]=m^n である。

いつか個体がいなくなる事象 {ある n で Zn=0}\{\text{ある}\ n\ \text{で}\ Z_n=0\} の確率 qq を絶滅確率と呼ぶ。

定理 8.7(絶滅確率は最小の不動点)

絶滅確率 qq は、方程式 G(s)=sG(s)=s の0以上1以下の解のうち、最小のものである。さらに p1<1p_1<1 なら、次の2つは同値である。

q=1  ⟺  m≤1q=1\iff m\le1

証明

ある世代で0になれば、その後もずっと0である。したがって事象 An={Zn=0}A_n=\{Z_n=0\} は nn について増加し、その和集合が絶滅の事象である。確率の連続性(第1章 §1.4)から q=lim⁡nP(An)q=\lim_nP(A_n) である。qn=P(Zn=0)=GZn(0)q_n=P(Z_n=0)=G_{Z_n}(0) と置くと、(8.9) から

qn+1=G(qn),q0=0.q_{n+1}=G(q_n),\qquad q_0=0.

GG は [0,1][0,1] で連続である。この漸化式で n→∞n\to\infty として、q=G(q)q=G(q) を得る。つまり qq は不動点である。

r∈[0,1]r\in[0,1] を G(r)=rG(r)=r の任意の解とする。GG は [0,1][0,1] で非減少である(係数が非負)。したがって qn≤rq_n\le r なら

qn+1=G(qn)≤G(r)=r.q_{n+1}=G(q_n)\le G(r)=r.

q0=0≤rq_0=0\le r から帰納的に、すべての番号で qn≤rq_n\le r となる。したがって q≤rq\le r で、qq は最小の解である。

後半を示す。p1<1p_1<1 を仮定し、h(s)=G(s)−sh(s)=G(s)-s と置く。h(1)=0h(1)=0 である。

  • m≤1m\le1 の場合。さらに2つに分ける。

    • pj>0p_j>0 となる j≥2j\ge2 が無いとき。G(s)=p0+p1sG(s)=p_0+p_1s で、p0=1−p1>0p_0=1-p_1>0 である。したがって s<1s<1 で h(s)=p0(1−s)>0h(s)=p_0(1-s)>0 である。
    • pj>0p_j>0 となる j≥2j\ge2 があるとき。(0,1)(0,1) で G′′>0G''>0 が成り立つ。したがって G′G' は狭義増加である。平均値の定理から、1−G(s)=G′(c)(1−s)1-G(s)=G'(c)(1-s) となる c∈(s,1)c\in(s,1) がある。G′(c)<G′(1−)=m≤1G'(c)<G'(1-)=m\le1 だから 1−G(s)<1−s1-G(s)<1-s である。つまり h(s)>0h(s)>0 である。

どちらの場合も [0,1)[0,1) に解は無く、q=1q=1 となる。

  • m>1m>1 の場合。s↑1s\uparrow1 で h′(s)=G′(s)−1→m−1>0h'(s)=G'(s)-1\to m-1>0 である。したがって、1より少し小さい s0s_0 で h(s0)<h(1)=0h(s_0)<h(1)=0 となる。これは平均値の定理を区間 [s0,1][s_0,1] に使えば分かる。一方 h(0)=p0≥0h(0)=p_0\ge0 である。中間値の定理により、[0,s0)[0,s_0) に解がある。よって q<1q<1 となる。

例題 8.2 分枝過程の絶滅確率 ★★

オリジナル各個体が子を0個・1個・2個残す確率が、それぞれ1/4、1/4、1/2である Galton–Watson 過程を考える(Z0=1Z_0=1)。

  1. 子の数の確率母関数 GG と平均 mm を求めよ。また E[Zn]E[Z_n] を書け。
  2. 第2世代で絶滅している確率 P(Z2=0)P(Z_2=0) を求めよ。
  3. 絶滅確率 qq を求めよ。また Z0=3Z_0=3 から始めたときの絶滅確率を求めよ。
解答
  1. 確率母関数と平均は

G(s)=14+14s+12s2,m=G′(1)=14+1=54G(s)=\frac14+\frac14s+\frac12s^2,\qquad m=G'(1)=\frac14+1=\frac54

である。E[Zn]=mn=(5/4)nE[Z_n]=m^n=(5/4)^n となり、平均は指数的に増える。2. 1世代目と2世代目で順に計算する。

P(Z1=0)=G(0)=14,P(Z2=0)=G(G(0))=G(14)=14+116+132=1132P(Z_1=0)=G(0)=\frac14,\qquad P(Z_2=0)=G(G(0))=G(\tfrac14)=\frac14+\frac1{16}+\frac1{32}=\frac{11}{32} 3. 方程式 G(s)=sG(s)=s を整理する。

12s2−34s+14=0  ⟺  2s2−3s+1=(2s−1)(s−1)=0\frac12s^2-\frac34s+\frac14=0\iff 2s^2-3s+1=(2s-1)(s-1)=0

解は s=12, 1s=\frac12,\,1 である。定理 8.7 から q=12q=\frac12 となる。m>1m>1 と q<1q<1 が整合している。

3個体から始めると、3個体それぞれの子孫の系統は、互いに独立に同じ過程に従う。全体が絶滅するのは、3つの系統がすべて絶滅するときである。したがって確率は q3=18q^3=\frac18 である。

平均 E[Zn]E[Z_n] が増え続けても、確率1/2で絶滅する。平均は「生き残った場合の大きな個体数」と「絶滅した場合の0」を混ぜた量なので、典型的な振る舞いを表しているとは限らない。数列 qnq_n が1/2に近づく様子を図 8.1 に示す。

図

図 8.1 例題 8.2 の G(s)=14+14s+12s2G(s)=\frac14+\frac14s+\frac12s^2(太線)と対角線 y=sy=s。階段状の細線は q0=0q_0=0 から qn+1=G(qn)q_{n+1}=G(q_n) を繰り返す様子で、qn=P(Zn=0)q_n=P(Z_n=0) は最小の交点 q=12q=\frac12 へ単調に近づく。もう1つの交点 s=1s=1 には近づかない。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.1-1 非負整数値の確率変数 XX について、次を示せ。

P(X が偶数)=12(1+GX(−1))P(X\ \text{が偶数})=\frac12\bigl(1+G_X(-1)\bigr)

また X∼Po(λ)X\sim\mathrm{Po}(\lambda) のとき、この確率を求めよ。2. 8.1-2 p∈(0,1)p\in(0,1) とする。成功確率 pp の幾何分布の確率母関数を求めよ。これは値 k=1,2,…k=1,2,\dots を確率 (1−p)k−1p(1-p)^{k-1}p でとる分布である。それを用いて平均と分散を求めよ。3. 8.1-3 N∼Po(λ)N\sim\mathrm{Po}(\lambda) とする。成功確率 pp の Bernoulli 分布に従う独立な X1,X2,…X_1,X_2,\dots を、回数と独立に用意する。S=X1+⋯+XNS=X_1+\cdots+X_N の分布を求めよ。Poisson 分布に従う数の事象を、確率 pp で独立に選んで残す操作を間引きと呼ぶ。4. 8.1-4 非負整数値の確率変数 XX について、∣s∣<1\left\vert s\right\vert <1 で次を示せ。

∑k=0∞P(X>k) sk=1−GX(s)1−s\sum_{k=0}^{\infty}P(X>k)\,s^k=\frac{1-G_X(s)}{1-s}

これから E[X]=∑k=0∞P(X>k)E[X]=\sum_{k=0}^{\infty}P(X>k) を導け。

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