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キュムラント

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 母関数と特性関数
目次
  1. 定義
  2. モーメントとの関係
  3. 独立和で足し算になる
  4. 歪度と尖度
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第8章 §8.4 ★★ 積率母関数の対数の Taylor 係数。独立和で足し算になり、3次と4次で分布の形(歪度・尖度)を測る

定義

独立和では積率母関数が積になる(命題 8.11)。積は対数をとると和になる。したがって、積率母関数の対数の Taylor 係数は、独立和で足し算になる量になる。これがキュムラントである。

定義 8.21(キュムラント)

ある δ>0\delta>0 について (−δ,δ)⊂DX(-\delta,\delta)\subset D_X とする。∣t∣<δ\left\vert t\right\vert <\delta で

KX(t)≔log⁡MX(t)(8.20)K_X(t)\coloneqq\log M_X(t)\tag{8.20}

を XX のキュムラント母関数と呼ぶ。また次の値を nn 次のキュムラントと呼ぶ。

κn=κn(X)≔KX(n)(0)\kappa_n=\kappa_n(X)\coloneqq K_X^{(n)}(0)

MX>0M_X>0 である。定理 8.10 から MXM_X は無限回微分可能だから、KXK_X も無限回微分可能である。さらに MX(t)−1M_X(t)-1 は、0の近くで絶対値が1より小さい収束べき級数である。これを log⁡(1+u)=u−u22+⋯\log(1+u)=u-\frac{u^2}{2}+\cdots に代入した級数も収束する。したがって原点の近くで

KX(t)=∑n=1∞κnn! tnK_X(t)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{\kappa_n}{n!}\,t^n

と展開できる。定数項は KX(0)=log⁡1=0K_X(0)=\log1=0 である。

積率母関数が無い場合のキュムラント

  • E[∣X∣n]<∞E[\left\vert X\right\vert ^n]<\infty だけを仮定する場合も、nn 次までのキュムラントは定義できる。定理 8.18 から、原点に近づくと特性関数は1に近づく。したがって0の近くで主値の対数 log⁡φX(t)\log\varphi_X(t) が定まり、nn 回微分可能である。
  • 次の展開によって κ1,…,κn\kappa_1,\dots,\kappa_n を定める。

log⁡φX(t)=∑k=1nκkk!(it)k+o(∣t∣n)\log\varphi_X(t)=\sum_{k=1}^n\frac{\kappa_k}{k!}(\mathrm{i} t)^k+ o(\left\vert t\right\vert ^n)

積率母関数がある場合は、次の小節のモーメントとの関係式が同じになるので、2つの定義は一致する。

モーメントとの関係

キュムラントはモーメントの多項式で書ける。平均を E[X]E[X]、平均のまわりの kk 次モーメントを

μk≔E[(X−E[X])k]\mu_k\coloneqq E\bigl[(X-E[X])^k\bigr]

と書く。μ2=V[X]\mu_2=V[X] である。正規分布の平均の μ\mu とは、添字の有無で区別する。

命題 8.22(低次のキュムラント)

κ1=E[X],κ2=V[X]=μ2,κ3=μ3,κ4=μ4−3μ22.(8.21)\kappa_1=E[X],\qquad\kappa_2=V[X]=\mu_2,\qquad\kappa_3=\mu_3,\qquad\kappa_4=\mu_4-3\mu_2^2 .\tag{8.21}

証明

まず平行移動の効果を調べる。定数 cc について MX+c(t)=ectMX(t)M_{X+c}(t)=\mathrm{e}^{ct}M_X(t) だから、次が成り立つ。

KX+c(t)=ct+KX(t)K_{X+c}(t)=ct+K_X(t)

したがって κ1\kappa_1 だけが cc ずれ、2次以上のキュムラントは変わらない。

κ1=KX′(0)=MX′(0)/MX(0)=E[X]\kappa_1=K_X'(0)=M_X'(0)/M_X(0)=E[X] である。2次以上については、XX を X−E[X]X-E[X] に置き換えてよい。そこで E[X]=0E[X]=0 とする。このとき E[Xk]=μkE[X^k]=\mu_k である。

定理 8.10 から、次のように書ける。

MX(t)=1+u(t),u(t)=μ22t2+μ36t3+μ424t4+O(t5)M_X(t)=1+u(t),\qquad u(t)=\frac{\mu_2}{2}t^2+\frac{\mu_3}{6}t^3+\frac{\mu_4}{24}t^4+\mathcal{O}(t^5)

u=O(t2)u=\mathcal{O}(t^2) なので、次が成り立つ。

u2=μ224t4+O(t5),u3=O(t6)u^2=\frac{\mu_2^2}{4}t^4+\mathcal{O}(t^5),\qquad u^3=\mathcal{O}(t^6) log⁡(1+u)=u−u22+O(u3)\log(1+u)=u-\frac{u^2}{2}+\mathcal{O}(u^3) に代入すると

KX(t)=μ22t2+μ36t3+(μ424−μ228)t4+O(t5)K_X(t)=\frac{\mu_2}{2}t^2+\frac{\mu_3}{6}t^3+\Bigl(\frac{\mu_4}{24}-\frac{\mu_2^2}{8}\Bigr)t^4+\mathcal{O}(t^5)

となる。κnn!tn\frac{\kappa_n}{n!}t^n と係数を比べると、次を得る。

κ2=μ2,κ3=μ3,κ4=24(μ424−μ228)=μ4−3μ22\kappa_2=\mu_2,\qquad\kappa_3=\mu_3,\qquad\kappa_4=24\Bigl(\frac{\mu_4}{24}-\frac{\mu_2^2}{8}\Bigr)=\mu_4-3\mu_2^2

高次の関係も、展開を続ければ求められる。一般の次数では、次の漸化式を使うほうが計算が短い。

命題 8.23(モーメントとキュムラントの漸化式)

mk=E[Xk]m_k=E[X^k] と書く(m0=1m_0=1)。n≥1n\ge1 で

mn=∑k=1n(n−1k−1)κk mn−k.(8.22)m_n=\sum_{k=1}^{n}\binom{n-1}{k-1}\kappa_k\,m_{n-k}.\tag{8.22}

平均のまわりのモーメントについても、κ1=0\kappa_1=0 として同じ式が成り立つ。ただし μ0=1\mu_0=1、μ1=0\mu_1=0 とする。

μn=∑k=2n(n−1k−1)κk μn−k\mu_n=\sum_{k=2}^{n}\binom{n-1}{k-1}\kappa_k\,\mu_{n-k}

証明

MX=eKXM_X=\mathrm{e}^{K_X} を微分すると MX′=KX′MXM_X'=K_X'M_X である。この両辺を n−1n-1 回微分し、右辺に Leibniz の公式を使うと

MX(n)=∑j=0n−1(n−1j)KX(j+1)MX(n−1−j)M_X^{(n)}=\sum_{j=0}^{n-1}\binom{n-1}{j}K_X^{(j+1)}M_X^{(n-1-j)}

となる。原点を代入して k=j+1k=j+1 と置けば、(8.22) を得る。後半は、X−E[X]X-E[X] に前半を使えばよい。そのキュムラントは、2次以上では XX のものに等しく、1次は0である。

たとえば4次の後半の式は、次のとおりである。これは (8.21) を逆向きに書いたものになる。

μ4=3κ2μ2+3κ3μ1+κ4=3κ22+κ4\mu_4=3\kappa_2\mu_2+3\kappa_3\mu_1+\kappa_4=3\kappa_2^2+\kappa_4

(8.22) を n=1,2,…n=1,2,\dots と順に使えば、キュムラントを1つずつ求めることもできる。

κn=mn−∑k=1n−1(n−1k−1)κkmn−k\kappa_n=m_n-\sum_{k=1}^{n-1}\binom{n-1}{k-1}\kappa_km_{n-k}

独立和で足し算になる

命題 8.24(キュムラントの加法性と斉次性)

X,YX,Y が独立で、どちらも0の近くで積率母関数が有限なら、すべての次数で

κn(X+Y)=κn(X)+κn(Y).(8.23)\kappa_n(X+Y)=\kappa_n(X)+\kappa_n(Y).\tag{8.23}

また定数 a,ca,c について、次が成り立つ(2つ目は n≥2n\ge2 で)。

κn(aX)=anκn(X),κn(X+c)=κn(X)\kappa_n(aX)=a^n\kappa_n(X),\qquad \kappa_n(X+c)=\kappa_n(X)

証明

命題 8.11 から、0の近くで MX+Y=MXMYM_{X+Y}=M_XM_Y である。対数をとって KX+Y=KX+KYK_{X+Y}=K_X+K_Y となる。nn 回微分して原点を代入すればよい。

MaX(t)=MX(at)M_{aX}(t)=M_X(at) から KaX(t)=KX(at)K_{aX}(t)=K_X(at) である。連鎖律により KaX(n)(0)=anKX(n)(0)K_{aX}^{(n)}(0)=a^nK_X^{(n)}(0) である。平行移動は命題 8.22 の証明で示した。

分散が独立和で足し算になることはよく知られているが、これは κ2\kappa_2 の加法性の特別な場合である。モーメント E[(X+Y)k]E[(X+Y)^k] そのものは交差項を含むので、足し算にならない。

  • 平均のまわりの3次モーメント μ3=κ3\mu_3=\kappa_3 は加法的である。
  • 4次の μ4\mu_4 は κ4+3κ22\kappa_4+3\kappa_2^2 なので、加法的でない。

代表的な分布のキュムラントを、表 8.1 の積率母関数の対数から求めておく。

  • 正規分布 N(μ,σ2)\mathrm N(\mu,\sigma^2):K(t)=μt+σ22t2K(t)=\mu t+\frac{\sigma^2}{2}t^2 は2次式である。したがって κ1=μ\kappa_1=\mu、κ2=σ2\kappa_2=\sigma^2 で、3次以上はすべて0である。
  • Poisson 分布 Po(λ)\mathrm{Po}(\lambda):次の展開から、すべてのキュムラントが λ\lambda に等しい。

K(t)=λ(et−1)=λ∑n≥1tnn!K(t)=\lambda(\mathrm{e}^t-1)=\lambda\sum_{n\ge1}\frac{t^n}{n!}

  • ガンマ分布 Ga(α,λ)\mathrm{Ga}(\alpha,\lambda):次の展開から、κn=α (n−1)!/λn\kappa_n=\alpha\,(n-1)!/\lambda^n である。

K(t)=−αlog⁡(1−t/λ)=α∑n≥11n(tλ)nK(t)=-\alpha\log(1-t/\lambda)=\alpha\sum_{n\ge1}\frac{1}{n}\Bigl(\frac{t}{\lambda}\Bigr)^n

3次以上のキュムラントがすべて0になるのは正規分布(と定数)の特徴である。より強く、次の主張が知られている。

定理 8.25(Marcinkiewicz の定理(主張))

ある確率変数について log⁡φX(t)\log\varphi_X(t) が多項式なら、その次数は2以下である。つまりその確率変数は、正規分布に従うか定数である。

証明の筋を3段で書く。完全な証明は確率論の専門書に譲る。

  1. 特性関数の対数が、dd 次の多項式 PP だとする。特性関数は、複素平面全体で正則な関数 eP(z)\mathrm{e}^{P(z)} に延長される。
  2. 整関数に延長される特性関数には、次の不等式が成り立つ。左辺は ∣E[eixXe−yX]∣≤E[e−yX]\left\vert E[\mathrm{e}^{\mathrm{i} xX}\mathrm{e}^{-yX}]\right\vert \le E[\mathrm{e}^{-yX}] で評価できる。

∣φX(x+iy)∣≤φX(iy)\left\vert \varphi_X(x+\mathrm{i} y)\right\vert \le\varphi_X(\mathrm{i} y) 3. これを Re⁡P(x+iy)≤Re⁡P(iy)\operatorname{Re} P(x+\mathrm{i} y)\le\operatorname{Re} P(\mathrm{i} y) と書き直す。d≥3d\ge3 のとき、最高次の項が実部を大きくする方向を選ぶと、この不等式が破れる。

この定理から、3次以上のキュムラントの有限個だけが0でない分布は存在しない。3次以上のキュムラントは「正規分布からのずれ」を測る量とみなせる。

統計力学の分配関数とキュムラント

  • カノニカル分布では、エネルギー EE の値 ϵ\epsilon の重みと分配関数は次のとおりである。

g(ϵ)e−βϵZ(β),Z(β)=∑ϵg(ϵ)e−βϵ\frac{g(\epsilon)\mathrm{e}^{-\beta\epsilon}}{Z(\beta)},\qquad Z(\beta)=\sum_\epsilon g(\epsilon)\mathrm{e}^{-\beta\epsilon}

エネルギーの積率母関数とキュムラント母関数は、次のようになる。

ME(t)=Z(β−t)Z(β),KE(t)=log⁡Z(β−t)−log⁡Z(β)M_E(t)=\frac{Z(\beta-t)}{Z(\beta)},\qquad K_E(t)=\log Z(\beta-t)-\log Z(\beta)

  • したがって、キュムラントは log⁡Z\log Z の微分で書ける。

κn=(−1)n∂n∂βnlog⁡Z,⟨E⟩=−∂∂βlog⁡Z,V[E]=∂2∂β2log⁡Z=kBT2CV\kappa_n=(-1)^n\frac{\partial ^n}{\partial \beta^n}\log Z,\qquad \langle E\rangle=-\frac{\partial }{\partial \beta}\log Z,\qquad V[E]=\frac{\partial ^2}{\partial \beta^2}\log Z= k_{\mathrm B} T^2C_V

エネルギーの揺らぎが熱容量に比例するという関係は、2次のキュムラントの式である。

  • 相互作用の無い2つの部分系では Z=Z1Z2Z=Z_1Z_2 で、log⁡Z\log Z が足し算になる。これは独立和でキュムラントが足し算になる (8.23) と同じ構造である。

歪度と尖度

3次と4次のキュムラントを、尺度に依存しない形に直したものが歪度と尖度である。

定義 8.26(歪度と尖度)

κ2=V[X]>0\kappa_2=V[X]>0 のとき、

γ1≔κ3κ23/2=μ3μ23/2,γ2≔κ4κ22=μ4μ22−3(8.24)\gamma_1\coloneqq\frac{\kappa_3}{\kappa_2^{3/2}}=\frac{\mu_3}{\mu_2^{3/2}},\qquad \gamma_2\coloneqq\frac{\kappa_4}{\kappa_2^{2}}=\frac{\mu_4}{\mu_2^{2}}-3\tag{8.24}

をそれぞれ歪度・尖度と呼ぶ。

μ4/μ22\mu_4/\mu_2^2 を尖度と呼び、γ2\gamma_2 を超過尖度と呼ぶ流儀もある。本書では、正規分布で0になる γ2\gamma_2 を尖度と呼ぶ。

a>0a>0 とし、X↦aX+cX\mapsto aX+c と変換する。命題 8.24 から、2次以上のキュムラントは ana^n 倍になる。(8.24) の分子と分母が同じ冪で変わるので、歪度と尖度は変わらない(a<0a<0 では歪度の符号だけが反転する)。つまり、歪度と尖度は、位置と尺度を取り除いた「分布の形」だけを測る量である。

2つの量の符号は、次のことを表す。

  • 歪度 γ1>0\gamma_1>0。平均から右へ離れた値の3乗が、左側より大きく寄与する。つまり右に長い裾をもつ。対称な分布では μ3=0\mu_3=0 で、歪度は0である。
  • 尖度 γ2>0\gamma_2>0。同じ分散をもつ正規分布より、4次モーメントが大きい。つまり平均から大きく離れた値が出やすい(裾が重い)。

尖度には下限がある。V[(X−E[X])2]=μ4−μ22≥0V\bigl[(X-E[X])^2\bigr]=\mu_4-\mu_2^2\ge0 から μ4/μ22≥1\mu_4/\mu_2^2\ge1 である。つまり γ2≥−2\gamma_2\ge-2 である。等号は (X−E[X])2(X-E[X])^2 が定数のとき、すなわち2点を等確率でとるときに限る。

ガンマ分布では、歪度と尖度は次のようになり、レートによらない。

γ1=2α/λ3(α/λ2)3/2=2α,γ2=6α/λ4α2/λ4=6α\gamma_1=\frac{2\alpha/\lambda^3}{(\alpha/\lambda^2)^{3/2}}=\frac{2}{\sqrt\alpha},\qquad \gamma_2=\frac{6\alpha/\lambda^4}{\alpha^2/\lambda^4}=\frac{6}{\alpha}

形のパラメータが大きくなるほど0に近づくことは、次の独立和の性質から理解できる。

命題 8.27(独立同分布の和の歪度と尖度)

X1,…,XnX_1,\dots,X_n が独立で XX と同分布であるとする。Sn=X1+⋯+XnS_n=X_1+\cdots+X_n とすると

γ1(Sn)=γ1(X)n,γ2(Sn)=γ2(X)n.(8.25)\gamma_1(S_n)=\frac{\gamma_1(X)}{\sqrt n},\qquad\gamma_2(S_n)=\frac{\gamma_2(X)}{n}.\tag{8.25}

より一般に、標準化した和 (Sn−nE[X])/nκ2(S_n-nE[X])/\sqrt{n\kappa_2} の3次以上のキュムラントは、次の値をとる。

n1−k/2κkκ2k/2(k≥3)n^{1-k/2}\frac{\kappa_k}{\kappa_2^{k/2}}\qquad(k\ge3)

これは n→∞n\to\infty で0に収束する。

証明

(8.23) から κk(Sn)=nκk\kappa_k(S_n)=n\kappa_k である。標準化は、和を平行移動して (nκ2)−1/2(n\kappa_2)^{-1/2} 倍することである。したがって2次以上のキュムラントは

nκk⋅(nκ2)−k/2=n1−k/2κkκ2k/2n\kappa_k\cdot(n\kappa_2)^{-k/2}=n^{1-k/2}\frac{\kappa_k}{\kappa_2^{k/2}}

となる。3次と4次が、それぞれ (8.25) である。

標準化した和のキュムラントは、2次が1、3次以上が0に近づく。これは標準正規分布のキュムラントの並び(2次が1、それ以外は0)である。

独立和が正規分布に近づくという中心極限定理の主張を、キュムラントの言葉で見たものになっている。ただし「キュムラントが収束すれば分布が収束する」ことは、ここでは示していない。厳密な証明は第13章 §13.2 で特性関数を使って行う。

形のパラメータ α\alpha が整数のとき、Ga(α,λ)\mathrm{Ga}(\alpha,\lambda) は、独立な指数分布をその個数だけ足した和である。指数分布の歪度2・尖度6に (8.25) を使えば、上で求めた 2/α2/\sqrt\alpha、6/α6/\alpha が再現される。3次以上のキュムラントを独立性の判定に使う考え方は、第9章 §9.4 の独立成分分析で扱う。

例題 8.7 二項分布のキュムラントと形 ★★

オリジナル

  1. 成功確率 pp の Bernoulli 分布の、4次までのキュムラントを求めよ。q=1−pq=1-p を用いて書け。
  2. Bin(n,p)\mathrm{Bin}(n,p) の歪度と尖度を求めよ。
  3. n=10n=10、p=0.1p=0.1 のときの値を小数第3位まで求めよ。また、n→∞n\to\infty での振る舞いと、p=12p=\frac12 の場合を述べよ。
解答
  1. K(t)=log⁡(q+pet)K(t)=\log(q+p\mathrm{e}^t) である。次のように置く。

π(t)≔K′(t)=petq+pet\pi(t)\coloneqq K'(t)=\dfrac{p\mathrm{e}^t}{q+p\mathrm{e}^t}

商の微分から

π′=pet(q+pet)−pet⋅pet(q+pet)2=π(1−π)\pi'=\frac{p\mathrm{e}^t(q+p\mathrm{e}^t)-p\mathrm{e}^t\cdot p\mathrm{e}^t}{(q+p\mathrm{e}^t)^2}=\pi(1-\pi)

となる。これを繰り返し微分すると

π′′=π′(1−π)−ππ′=π(1−π)(1−2π),π′′′=π′[(1−2π)2−2π(1−π)]=π(1−π)(1−6π(1−π))\begin{aligned}\pi''&=\pi'(1-\pi)-\pi\pi'=\pi(1-\pi)(1-2\pi),\\ \pi'''&=\pi'\bigl[(1-2\pi)^2-2\pi(1-\pi)\bigr]=\pi(1-\pi)\bigl(1-6\pi(1-\pi)\bigr)\end{aligned}

を得る。π(0)=p\pi(0)=p だから

κ1=p,κ2=pq,κ3=pq(1−2p)=pq(q−p),κ4=pq(1−6pq)\kappa_1=p,\qquad\kappa_2=pq,\qquad\kappa_3=pq(1-2p)=pq(q-p),\qquad\kappa_4=pq(1-6pq)

である。2. 二項分布は独立な nn 個の Bernoulli の和なので、(8.23) から各キュムラントは nn 倍になる。したがって

γ1=npq(q−p)(npq)3/2=q−pnpq,γ2=npq(1−6pq)(npq)2=1−6pqnpq.\gamma_1=\frac{npq(q-p)}{(npq)^{3/2}}=\frac{q-p}{\sqrt{npq}},\qquad\gamma_2=\frac{npq(1-6pq)}{(npq)^2}=\frac{1-6pq}{npq}. 3. npq=0.9npq=0.9 だから、次のようになる。

γ1=0.80.9≈0.843,γ2=1−0.540.9≈0.511\gamma_1=\frac{0.8}{\sqrt{0.9}}\approx0.843,\qquad \gamma_2=\frac{1-0.54}{0.9}\approx0.511

成功が少ない側に分布が寄り、右に裾を引く。

  • 試行回数を増やすと、γ1=O(n−1/2)\gamma_1=\mathcal{O}(n^{-1/2})、γ2=O(n−1)\gamma_2=\mathcal{O}(n^{-1}) である。どちらも0に近づく(命題 8.27)。
  • p=12p=\frac12 では、分布は n/2n/2 について対称で、歪度は0である。尖度は γ2=1−3/2n/4=−2n\gamma_2=\frac{1-3/2}{n/4}=-\frac{2}{n} である。n=1n=1 では γ2=−2\gamma_2=-2 となり、2点が等確率の場合の下限に一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.4-1 a≠0a\neq0 とし、Y=aX+cY=aX+c と置く。κ2(Y)=a2κ2(X)\kappa_2(Y)=a^2\kappa_2(X) と κ3(Y)=a3κ3(X)\kappa_3(Y)=a^3\kappa_3(X) を使って、次を確かめよ。

γ1(Y)=sgn(a) γ1(X),γ2(Y)=γ2(X)\gamma_1(Y)=\mathrm{sgn}(a)\,\gamma_1(X),\qquad \gamma_2(Y)=\gamma_2(X) 2. 8.4-2 X∼Po(λ)X\sim\mathrm{Po}(\lambda) の歪度と尖度を求めよ。λ=4\lambda=4 のときの値を答えよ。3. 8.4-3 X∼U(−12,12)X\sim\mathrm U\bigl(-\frac12,\frac12\bigr) の積率母関数は、MX(t)=sinh⁡(t/2)t/2M_X(t)=\dfrac{\sinh(t/2)}{t/2} である。KX(t)K_X(t) を4次の項まで展開せよ。それを使って κ2\kappa_2、κ4\kappa_4 を求め、尖度を求めよ。4. 8.4-4 漸化式 (8.22) の後半を用いて、次の2式を導け。

μ5=κ5+10κ2κ3,μ6=κ6+15κ2κ4+10κ32+15κ23\mu_5=\kappa_5+10\kappa_2\kappa_3,\qquad \mu_6=\kappa_6+15\kappa_2\kappa_4+10\kappa_3^2+15\kappa_2^3 5. 8.4-5 密度 12e−∣x∣\frac12\mathrm{e}^{-\left\vert x\right\vert } の Laplace 分布を考える。KX(t)=−log⁡(1−t2)K_X(t)=-\log(1-t^2) から、2次と4次のキュムラントと尖度を求めよ。また独立な nn 個の和の尖度を求めよ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

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