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多変量の中心極限定理

2026年10月15日14分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第13章 中心極限定理
目次
  1. 確率ベクトルの分布収束
  2. 多変量の連続性定理と Cramér–Wold の方法
  3. 多変量の中心極限定理
  4. 応用:Pearson のカイ二乗統計量
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第13章 §13.3 ★★ 確率ベクトルの分布収束を、すべての1次元射影の分布収束に帰着させる(Cramér–Wold)。これで多変量の中心極限定理が1次元の定理から出る

確率ベクトルの分布収束

確率ベクトル Xn\bm X_n が X\bm X に分布収束するとは、次が成り立つことであった(第11章 §11.4)。

E[g(Xn)]→E[g(X)](すべての有界連続関数 g:Rd→R)E[g(\bm X_n)]\to E[g(\bm X)]\qquad(\text{すべての有界連続関数 }g:\mathbb{R}^d\to\mathbb{R})

この定義からは、連続写像定理がそのまま出る。h:Rd→Rmh:\mathbb{R}^d\to\mathbb{R}^m を連続とする。有界連続な g:Rm→Rg:\mathbb{R}^m\to\mathbb{R} をとると、合成 g∘hg\circ h も有界連続関数である。したがって

Xn→dX ⟹ h(Xn)→dh(X)(13.12)\bm X_n\xrightarrow{d}\bm X\ \Longrightarrow\ h(\bm X_n)\xrightarrow{d}h(\bm X)\tag{13.12}

である。とくに、成分ごとの分布収束 Xn(j)→dX(j)X_n^{(j)}\xrightarrow{d}X^{(j)} は Xn→dX\bm X_n\xrightarrow{d}\bm X から出る。しかし逆は成り立たない(確認テスト 13.3-1)。成分の分布は同時分布を決めないからである。

多変量の連続性定理と Cramér–Wold の方法

定理 13.14(多変量の Lévy の連続性定理)

Rd\mathbb{R}^d 値の確率ベクトルの列 Xn\bm X_n を考え、その特性関数を次のように書く。

φXn(t)=E[eit⊤Xn]\varphi_{\bm X_n}(\bm t)=E[\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm t^\top\bm X_n}]

  1. (i) 次の2つを仮定する。

    • 各点 t∈Rd\bm t\in\mathbb{R}^d で、φXn(t)\varphi_{\bm X_n}(\bm t) がある極限をもつ。極限を φ(t)\varphi(\bm t) と書く。
    • 極限 φ\varphi が t=0\bm t=\bm 0 で連続である。

このとき φ\varphi はある確率ベクトル X\bm X の特性関数である。さらに Xn→dX\bm X_n\xrightarrow{d}\bm X である。2. (ii) 逆に Xn→dX\bm X_n\xrightarrow{d}\bm X なら φXn(t)→φX(t)\varphi_{\bm X_n}(\bm t)\to\varphi_{\bm X}(\bm t) である。

証明の筋を述べる。

  1. 逆向き (ii)。x↦cos⁡(t⊤x)\bm x\mapsto\cos(\bm t^\top\bm x) と x↦sin⁡(t⊤x)\bm x\mapsto\sin(\bm t^\top\bm x) は有界連続なので、命題 13.1 と同じである。
  2. 各成分の緊密性。第 jj 成分の特性関数は s↦φXn(sej)s\mapsto\varphi_{\bm X_n}(s\bm e_j) である。これが 0 で連続な φ(sej)\varphi(s\bm e_j) に収束するので、定理 13.7 の第1段から各成分の列が緊密になる。
  3. ベクトルの緊密性。次の不等式から、ベクトルの列も緊密である。

P(∣Xn∣>M)≤∑jP(∣Xn(j)∣>Md)P(\left\vert \bm X_n\right\vert >M)\le\sum_jP\Bigl(\left\vert X_n^{(j)}\right\vert >\frac M{\sqrt d}\Bigr) 4. 収束する部分列。有理数の座標をもつ点で同時分布関数が収束する部分列を、対角線論法でとる。Helly の選出定理と同じ構成で、ある確率分布に分布収束する部分列が得られる。5. 極限の特定。その極限の特性関数は φ\varphi に等しい。第9章の多変量の一意性定理から、極限の分布は部分列によらない。6. まとめ。補題 13.6 の証明は実数列 E[g(Xn)]E[g(\bm X_n)] の議論だけなので、そのまま Rd\mathbb{R}^d でも成り立つ。

Rd\mathbb{R}^d の Helly の定理の細部(同時分布関数の右連続な修正と、長方形の確率の非負性の確認)は、完全な証明を測度論の本に譲る。

定理 13.15(Cramér–Wold の方法)

確率ベクトル Xn\bm X_n と X\bm X について

Xn→dX  ⟺  すべての t∈Rd について t⊤Xn→dt⊤X(13.13)\bm X_n\xrightarrow{d}\bm X\iff\text{すべての }\bm t\in\mathbb{R}^d\text{ について }\bm t^\top\bm X_n\xrightarrow{d}\bm t^\top\bm X\tag{13.13}

が成り立つ。

証明

⇒\Rightarrow は (13.12) で h(x)=t⊤xh(\bm x)=\bm t^\top\bm x としたものである。

⇐\Leftarrow を示す。t\bm t を固定する。仮定と命題 13.1 から、1次元の確率変数 t⊤Xn\bm t^\top\bm X_n の特性関数の s=1s=1 での値が収束する。

φXn(t)=E[ei⋅1⋅t⊤Xn]=φt⊤Xn(1)→φt⊤X(1)=φX(t).\varphi_{\bm X_n}(\bm t)=E\bigl[\mathrm{e}^{\mathrm{i}\cdot1\cdot\bm t^\top\bm X_n}\bigr]=\varphi_{\bm t^\top\bm X_n}(1)\to\varphi_{\bm t^\top\bm X}(1)=\varphi_{\bm X}(\bm t).

極限 φX\varphi_{\bm X} は特性関数なので 0\bm 0 で連続である。定理 13.14 から Xn→dX\bm X_n\xrightarrow{d}\bm X である。

この定理は、第9章 §9.2 で示した「分布は1次元射影の分布の全体で決まる」ことの分布収束版である。ベクトルの問題を、すべての方向 t\bm t についての1次元の問題に置き換えることができる。

多変量の中心極限定理

定理 13.16(多変量の中心極限定理)

X1,X2,…\bm X_1,\bm X_2,\dots を Rd\mathbb{R}^d 値の独立同分布の確率ベクトルとし、各成分の2次モーメントが有限であるとする。平均ベクトルと共分散行列を次のように書く。

μ=E[X1],Σ=E[(X1−μ)(X1−μ)⊤]\bm\mu=E[\bm X_1],\qquad\Sigma=E[(\bm X_1-\bm\mu)(\bm X_1-\bm\mu)^\top]

このとき、Xˉn=1n∑k=1nXk\bar{\bm X}_n=\frac1n\sum_{k=1}^n\bm X_k について

n (Xˉn−μ)→dNd(0,Σ)(13.14)\sqrt n\,(\bar{\bm X}_n-\bm\mu)\xrightarrow{d}\mathrm N_d(\bm 0,\Sigma)\tag{13.14}

が成り立つ(Σ\Sigma は正則でなくてよい)。

証明

Z∼Nd(0,Σ)\bm Z\sim\mathrm N_d(\bm0,\Sigma) とし、t∈Rd\bm t\in\mathbb{R}^d を固定する。Yk=t⊤XkY_k=\bm t^\top\bm X_k は独立同分布の実数値確率変数で、

E[Yk]=t⊤μ,V[Yk]=E[(t⊤(Xk−μ))2]=t⊤ΣtE[Y_k]=\bm t^\top\bm\mu,\qquad V[Y_k]=E\bigl[(\bm t^\top(\bm X_k-\bm\mu))^2\bigr]=\bm t^\top\Sigma\bm t

である。t⊤n(Xˉn−μ)=n(Yˉn−t⊤μ)\bm t^\top\sqrt n(\bar{\bm X}_n-\bm\mu)=\sqrt n(\bar Y_n-\bm t^\top\bm\mu) と書ける。

分散 t⊤Σt\bm t^\top\Sigma\bm t が正か 0 かで分ける。

  • t⊤Σt>0\bm t^\top\Sigma\bm t>0 のとき。定理 13.10 と定数倍の連続写像から

n(Yˉn−t⊤μ)t⊤Σt→dN(0,1),n(Yˉn−t⊤μ)→dN(0,t⊤Σt)\frac{\sqrt n(\bar Y_n-\bm t^\top\bm\mu)}{\sqrt{\bm t^\top\Sigma\bm t}}\xrightarrow{d}\mathrm N(0,1),\qquad \sqrt n(\bar Y_n-\bm t^\top\bm\mu)\xrightarrow{d}\mathrm N(0,\bm t^\top\Sigma\bm t)

である。

  • t⊤Σt=0\bm t^\top\Sigma\bm t=0 のとき。Yk=t⊤μY_k=\bm t^\top\bm\mu がほとんど確実に成り立つ。したがって左辺は恒等的に 0 であり、N(0,0)\mathrm N(0,0)(定数 0)に収束する。

どちらの場合も、極限は t⊤Z∼N(0,t⊤Σt)\bm t^\top\bm Z\sim\mathrm N(0,\bm t^\top\Sigma\bm t) の分布である。t\bm t は任意なので、定理 13.15 から結論を得る。

応用:Pearson のカイ二乗統計量

結果が kk 通りある試行を考える。結果 jj の起きる確率を pjp_j とする(すべて正、和は 1)。この試行を独立に nn 回くり返す。結果 jj の起きた回数を NjN_j とする。仮定した確率と観測が合っているかを測る量として、Pearson の統計量

Qn=∑j=1k(Nj−npj)2npj(13.15)Q_n=\sum_{j=1}^{k}\frac{(N_j-np_j)^2}{np_j}\tag{13.15}

がある。この極限分布を多変量の中心極限定理から導く。

命題 13.17

QnQ_n は自由度 k−1k-1 のカイ二乗分布に分布収束する。

Qn→dχk−12=Ga(k−12,12)Q_n\xrightarrow{d}\chi^2_{k-1}=\mathrm{Ga}\Bigl(\frac{k-1}2,\frac12\Bigr)

証明

ej\bm e_j を第 jj 成分だけが 1 の単位ベクトルとする。各回の試行で起きた結果を単位ベクトルで表し、mm 回目のものを ξm\bm\xi_m と書く。結果が jj のときは ξm=ej\bm\xi_m=\bm e_j である。

ξm\bm\xi_m は独立同分布で、(N1,…,Nk)⊤=∑m=1nξm(N_1,\dots,N_k)^\top=\sum_{m=1}^n\bm\xi_m である。平均は E[ξm]=p=(p1,…,pk)⊤E[\bm\xi_m]=\bm p=(p_1,\dots,p_k)^\top である。ξ(i)ξ(j)=δijξ(i)\xi^{(i)}\xi^{(j)}=\delta_{ij}\xi^{(i)} だから

Σ=E[ξξ⊤]−pp⊤=diag(p)−pp⊤\Sigma=E[\bm\xi\bm\xi^\top]-\bm p\bm p^\top=\mathrm{diag}(\bm p)-\bm p\bm p^\top

である。定理 13.16 から次が成り立つ。

Wn=n(Nn−p)→dW∼Nk(0,Σ)\bm W_n=\sqrt n\Bigl(\frac{\bm N}n-\bm p\Bigr)\xrightarrow{d}\bm W\sim\mathrm N_k(\bm0,\Sigma)

D=diag(p1−1/2,…,pk−1/2)D=\mathrm{diag}(p_1^{-1/2},\dots,p_k^{-1/2}) と置くと Qn=∣DWn∣2Q_n=\left\vert D\bm W_n\right\vert ^2 である。x↦∣Dx∣2\bm x\mapsto\left\vert D\bm x\right\vert ^2 は連続なので、(13.12) から Qn→d∣DW∣2Q_n\xrightarrow{d}\left\vert D\bm W\right\vert ^2 である。

DWD\bm W の分布は Nk(0,DΣD)\mathrm N_k(\bm0,D\Sigma D) である。u=(p1,…,pk)⊤\bm u=(\sqrt{p_1},\dots,\sqrt{p_k})^\top と置くと、DΣD=I−uu⊤D\Sigma D=I-\bm u\bm u^\top である。

∣u∣2=∑pj=1\left\vert \bm u\right\vert ^2=\sum p_j=1 なので、Π=I−uu⊤\Pi=I-\bm u\bm u^\top は直交射影である。像は u\bm u に直交する (k−1)(k-1) 次元部分空間である。とくに Π⊤=Π=Π2\Pi^\top=\Pi=\Pi^2 を満たす。

u1,…,uk−1,u\bm u_1,\dots,\bm u_{k-1},\bm u を正規直交基底とし、G∼Nk(0,I)\bm G\sim\mathrm N_k(\bm0,I) をとる。ΠG\Pi\bm G の共分散は ΠIΠ⊤=Π\Pi I\Pi^\top=\Pi である。多変量正規の分布は共分散で決まるので(第9章)、DW=dΠGD\bm W\overset d=\Pi\bm G である。

ΠG\Pi\bm G は次のように展開できる。

ΠG=∑i=1k−1(ui⊤G)ui\Pi\bm G=\sum_{i=1}^{k-1}(\bm u_i^\top\bm G)\bm u_i

係数の組 (u1⊤G,…,uk−1⊤G)(\bm u_1^\top\bm G,\dots,\bm u_{k-1}^\top\bm G) は共分散が単位行列の多変量正規なので、独立な N(0,1)\mathrm N(0,1) である。したがって

∣DW∣2=d∣ΠG∣2=∑i=1k−1(ui⊤G)2∼χk−12\left\vert D\bm W\right\vert ^2\overset d=\left\vert \Pi\bm G\right\vert ^2=\sum_{i=1}^{k-1}(\bm u_i^\top\bm G)^2\sim\chi^2_{k-1}

である(独立な標準正規の2乗の和。第9章 §9.3 のカイ二乗分布の再生性)。

自由度が1つ減るのは、∑jNj=n\sum_jN_j=n という1本の拘束があるからである。この拘束のために、DWD\bm W は u\bm u の方向にゆらがない。Σ\Sigma が正則でないことがその現れである。

例題 13.4 サイコロの公正さとカイ二乗統計量 ★★

オリジナルサイコロを 600 回投げたところ、1から6の目の回数が順に 90,110,95,105,92,10890,110,95,105,92,108 であった。

  1. (1) すべての目の確率が 16\frac16 であるとして、Pearson の統計量 QQ を計算せよ。
  2. (2) 命題 13.17 の極限分布を使い、公正なサイコロで QQ がこの値以上になる確率を近似せよ。χ52\chi^2_5 の上側 5%5\% 点は約 11.07 である。
  3. (3) k=6k=6 のとき、射影 Π=I−uu⊤\Pi=I-\bm u\bm u^\top の跡(対角成分の和)を計算し、それが自由度に等しいことを確かめよ。
解答

(1) 期待される回数はどの目も npj=100np_j=100 なので、

Q=(−10)2+102+(−5)2+52+(−8)2+82100=100+100+25+25+64+64100=3.78Q=\frac{(-10)^2+10^2+(-5)^2+5^2+(-8)^2+8^2}{100}=\frac{100+100+25+25+64+64}{100}=3.78

である。

(2) Q≈χ52Q\approx\chi^2_5 と近似すると、P(χ52≥3.78)≈0.58P(\chi^2_5\ge3.78)\approx0.58 である(数値積分による)。3.78 は上側 5%5\% 点 11.07 よりずっと小さく、この観測は公正なサイコロで普通に起きる程度のばらつきである。なお χ52\chi^2_5 の平均は 5 で、観測値 3.78 はむしろ平均より小さい。

(3) tr Π=tr I−tr(uu⊤)=6−∣u∣2=6−1=5\mathrm{tr}\,\Pi=\mathrm{tr}\,I-\mathrm{tr}(\bm u\bm u^\top)=6-\left\vert \bm u\right\vert ^2=6-1=5 である。直交射影の跡はその像の次元に等しいので、像は 5 次元であり、自由度 k−1=5k-1=5 と一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 13.3-1 Z∼N(0,1)Z\sim\mathrm N(0,1) とし、Xn=(Z,(−1)nZ)⊤\bm X_n=(Z,(-1)^nZ)^\top と置く。各成分は N(0,1)\mathrm N(0,1) に分布収束するが、Xn\bm X_n はどんな確率ベクトルにも分布収束しないことを、定理 13.15 を使って示せ。
  2. 13.3-2 U1,U2,…U_1,U_2,\dots を独立な U(0,1)\mathrm U(0,1) とする。Xk=(Uk,Uk2)⊤\bm X_k=(U_k,U_k^2)^\top と置く。n(Xˉn−μ)\sqrt n(\bar{\bm X}_n-\bm\mu) の極限分布の共分散行列 Σ\Sigma と、2成分の相関係数を求めよ。また次の量の極限分布の分散を求めよ。

n(1n∑Uk2−Uˉn−(13−12))\sqrt n\Bigl(\frac1n\sum U_k^2-\bar U_n-\Bigl(\frac13-\frac12\Bigr)\Bigr) 3. 13.3-3 3つの結果の確率が p=(12,13,16)\bm p=(\frac12,\frac13,\frac16) のとき、n(N/n−p)\sqrt n(\bm N/n-\bm p) の極限の共分散行列を書き下し、各行の和が 0 であることを確かめよ。また n((N1−N2)/n−(p1−p2))\sqrt n\bigl((N_1-N_2)/n-(p_1-p_2)\bigr) の極限分布の分散を求めよ。4. 13.3-4 Rd\mathbb{R}^d 値の確率ベクトルが Xn→dNd(0,Σ)\bm X_n\xrightarrow{d}\mathrm N_d(\bm0,\Sigma) を満たすとする。AA を m×dm\times d 行列とする。ベクトル b∈Rm\bm b\in\mathbb{R}^m をとる。次を Cramér–Wold の方法で示せ。

AXn+b→dNm(b,AΣA⊤)A\bm X_n+\bm b\xrightarrow{d}\mathrm N_m(\bm b,A\Sigma A^\top)

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

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