統計熱力学入門 第9章 §9.1 ★★ ∑j⟨nj⟩=(V/λT3)F1/2(−βμ)、F1/2(0)=ζ(3/2) の有限性が鍵。
一辺 L の周期境界条件下の 3 次元空間中に、スピン 0 の理想 Bose 気体を N 粒子考える。1 粒子エネルギー固有値は ε(k)=2mℏ2k2 で、小さい方から固有状態をj=1,2,… とラベルする。基底状態 j=1 は ε1=0 をもつ。g=1 とする。本章の目標は、低温で基底状態に巨視的な数の粒子が集まる Bose–Einstein 凝縮(BEC)を、状態密度による積分近似の「破綻」として理解することにある。
まず、すべての j で ⟨nj⟩/V が粒子密度 ρ=N/V より十分小さいと仮定する。この仮定は準位和を積分に置き換えるための条件である――どの 1 準位も全体のごく一部しか担わないからこそ、D(ε)∝ε1/2 が ε→0 で 0 になって基底状態を取りこぼす連続近似が許される。逆に言えば、この仮定が破れる(ある単一準位が ⟨nj⟩/V∼ρ の巨視的な占有をもつ)とき、その準位に粒子が溜まる=Bose–Einstein 凝縮が起きる。後で見るとおり破れるのは基底状態 j=1(ε1=0)ただ一つで、破れ始める境目が臨界温度 Tc である(次節以降)。仮定が成り立つ間は準位和を状態密度積分に置き換えてよく、α≡−βμ≥0 と置くと(μ≤0 より α≥0)
j∑⟨nj⟩=∫0∞D(ε)eβε+α−11dε=2π2ℏ3m3/2Vβ−3/2∫0∞ex+α−1x1/2dx
(x=βε)。ここで与えられた関数F1/2(α)=π2∫0∞ex+α−1x1/2dx を用いると∫0∞ex+α−1x1/2dx=2πF1/2(α)。前係数は λT−3 にちょうど等しく(§ 1.3 の λT3=h3β3/2/(2πm)3/2 を代入して確認できる)、
★★ 粒子数期待値の積分近似の結果
j∑⟨nj⟩=λT3VF1/2(−βμ)
F1/2(α)=Li3/2−(e−α)=∑l≥1e−lα/l3/2 は α≥0 の減少関数で、α=0(μ=0)で最大値をとる。この最大値 F1/2(0) が、励起状態の収容能力の上限を与える鍵で、その正体は 1 つの定積分である:F1/2(0)=π2∫0∞x1/2(ex−1)−1dx。これがなぜ ζ と結びつくかは、分母を等比展開して項別積分するだけで見える。ex−11=∑l≥1e−lx と開き ∫0∞x1/2e−lxdx=Γ(3/2)/l3/2 を使うと、
∫0∞ex−1x1/2dx=Γ(23)l≥1∑l3/21,F1/2(0)=l≥1∑l3/21≡ζ(23)≃2.612.
ζ(ν)≡∑l≥1l−ν はこの「1/lν の無限和」の略記にすぎず、特殊関数論を持ち込んでいるわけではない(ζ(ν)=Liν(1)、§5.4)。ζ を使わず積分や級数のまま書いてもよい。物理的に効くのは値の中身ではなく、この和(=積分)が有限であること――指数 3/2>1 ゆえ収束する(積分側では x→0 で被積分関数が x−1/2 となり可積分)。この「最大値が有限」という一点が、次節以降で凝縮を生む鍵である(2 次元ではこの積分が対数発散して上限が無く、凝縮が起きない。本章の最後の節で扱う)。
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