命題 (一般化不確定性関係)
任意の状態で
ΔAΔB ≥ 21⟨[A^,B^]⟩
ここで (ΔA)2=⟨(A^−⟨A^⟩)2⟩ は分散。
証明
偏差演算子 δA^=A^−⟨A^⟩、δB^=B^−⟨B^⟩(ともにエルミート)を導入し、∣f⟩=δA^∣ψ⟩, ∣g⟩=δB^∣ψ⟩ とおく。分散は (ΔA)2=∥f∥2, (ΔB)2=∥g∥2。
Step 1(Cauchy–Schwarz の不等式).
(ΔA)2(ΔB)2=∥f∥2∥g∥2 ≥ ∣⟨f∣g⟩∣2.
Step 2(積を対称部と反対称部に分ける).
⟨f∣g⟩=⟨δA^δB^⟩=21⟨{δA^,δB^}⟩+21⟨[A^,B^]⟩.
第1項の反交換子はエルミートなので期待値は実数、第2項の交換子は反エルミートなので期待値は純虚数([δA^,δB^]=[A^,B^] を使った)。
Step 3(実部と虚部は独立に効く). 実部と純虚部は直交するから、∣⟨f∣g⟩∣2 は両者の2乗和以上、とくに純虚部だけでも下から評価できて
∣⟨f∣g⟩∣2 ≥ (21⟨[A^,B^]⟩)2.
Step 4(まとめ). Step 1 と Step 3 をつなぎ、平方根をとれば
(ΔA)2(ΔB)2 ≥ 41⟨[A^,B^]⟩2 ⟹ ΔAΔB ≥ 21⟨[A^,B^]⟩.
例題 2.3
オリジナル★★ 不確定性から零点エネルギー ℏω/2 を見積もる。不確定性関係だけから、調和振動子 H^=2Mp^2+2Mω2x^2 の基底エネルギーの下限を見積もれ。
解答
基底状態では対称性から ⟨x^⟩=⟨p^⟩=0 とでき、⟨x^2⟩=(Δx)2、⟨p^2⟩=(Δp)2。エネルギー期待値は
E=2M(Δp)2+2Mω2(Δx)2 ≥ 2M(Δp)2+2Mω2⋅4(Δp)2ℏ2
(Δx≥ℏ/2Δp を使った)。右辺を (Δp)2 について最小化すると(相加相乗平均でもよい)最小値は
E ≥ 2ℏω
これは§1.4で厳密に求める零点エネルギーそのものである。「粒子を狭く閉じ込めるほど運動量が暴れ、運動エネルギーが上がる」——ポテンシャルの底に静止できない理由が不確定性で、そのせめぎ合いの妥協点が零点エネルギー ℏω/2 だ。