量子力学入門 第1部 第5章 §1.5.3 ★★★ A˙=[A,H^]/iℏ。演算子の時間発展。
Heisenberg 描像の演算子はどんな方程式に従うか。A^H=U^†A^U^ を微分する。U^˙=−ℏiH^U^、U^˙†=+ℏiU^†H^ を使うと(A^ 自身が時間を含まない場合)
dtdA^H=ℏiU^†H^A^U^−ℏiU^†A^H^U^=ℏiU^†[H^,A^]U^= ℏi[H^,A^H]
(最後は H^ が U^ と可換なので U^†[H^,A^]U^=[H^,A^H]。)これがHeisenberg の運動方程式。A^ があらわに時間を含む場合(例:外場 cosωt が定義に入っている)は右辺に (∂A^/∂t)H が加わる。古典力学の正準方程式 A˙={A,H}PB(Poisson 括弧)と見比べると、対応 {⋅,⋅}PB↔iℏ1[⋅,⋅] が読み取れる——交換子は Poisson 括弧の量子版である。
重要な即座の帰結:[H^,A^]=0 なら A^H は時間に依らず、A^ は保存量。「対称性・保存量」の議論が Heisenberg 描像で見通しよくなる理由がこれだ。
例題 5.1
オリジナル★★★ aH(t),xH(t)。Heisenberg 方程式の計算例。調和振動子 H^=ℏω(a^†a^+21) について a^H(t) と x^H(t) を求めよ。
解答
[H^,a^]=ℏω[a^†a^,a^]=ℏω[a^†,a^]a^=−ℏωa^ より、運動方程式は
a^˙H=ℏi[H^,a^H]=−iωa^H⟹ a^H(t)=a^e−iωt,a^H†(t)=a^†eiωt
演算子の微分方程式が、古典と同じ1階線形方程式として解けた。位置は
x^H(t)=2x0(a^e−iωt+a^†eiωt)=x^cosωt+Mωp^sinωt
となり、古典解 x(t)=x(0)cosωt+Mωp(0)sinωt と同じ形で初期条件が演算子になっただけ。この a^H(t)=a^e−iωt は第8部『時間依存摂動論とダイナミクス』の強制振動子でそのまま使う。
定石:交差結合した2式は複素結合で対角化する
上の計算でa^がなぜx^,p^のあの組み合わせで定義されるのかは、次の一般的なテクニックの帰結として理解できる。実演算子(実変数)A,Bの運動方程式が
dtdA=−ωB,dtdB=+ωA
という交差結合(行列で書けば回転の生成子 ω(01−10))の形をしていたら、複素結合 ζ=A+iB を作ると
dtdζ=dtdA+idtdB=−ωB+iωA=iω(A+iB)=iωζ
と自動的に対角化され、ζ(t)=ζ(0)eiωt と即座に解ける。これは(01−10) の固有値が ±i、固有ベクトルが (1,∓i) であるという線形代数の事実そのものである(A−iB を作れば e−iωt の方が出る)。
調和振動子では x^˙=p^/M, p^˙=−Mω2x^ がまさにこの交差結合の形(x^,p^/Mω をA,Bと見ればよい)で、a^∝Mωx^+ip^ という複素結合がa^˙H=−iωa^Hに対角化されるのはこのテクニックの一例である。同じ型は、スピンの歳差運動(第1.6章、σ^˙x=−ωσ^y, σ^˙y=+ωσ^xから σ^x+iσ^y を作る)や、角運動量の昇降演算子 J^±=J^x±iJ^yにも共通する発想である。逆符号で交差結合した2式を見たら A±iB を試す、という一つの型として持っておくとよい。
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