量子力学入門 第1部 第8章 §1.8.1 ★★★ 縮退/非縮退摂動論。量子力学で最もよく使う近似の道具。
厳密に解ける H^0(固有値 En(0)、固有状態 ∣ϕn(0)⟩ は既知)に小さな摂動 V^ を加えた H^=H^0+V^ を考える。Vmn≡⟨ϕm(0)∣V^∣ϕn(0)⟩ とおく。En(0) が非縮退なら、固有値・固有状態を V^ のべきで展開して
En(1)=Vnn,En(2)=m=n∑En(0)−Em(0)∣Vmn∣2,∣ϕn(1)⟩=m=n∑En(0)−Em(0)Vmn∣ϕm(0)⟩
を得る。1次のエネルギー補正は摂動の期待値という要点は、ヘリウム原子で電子間反発の効果を評価する際の主役になる。2次式の構造も読んでおく:分母が小さい(準位が近い)ほど混ざりが大きく、基底状態では分母がすべて負なので2次補正は必ずエネルギーを下げる(準位反発)。
E(0) が縮退している場合、上の分母が消えて破綻する。そのときは縮退部分空間内で V^ を行列 Vab=⟨a∣V^∣b⟩(a,b は同じ E(0) の状態)として対角化する(永年方程式 det(Vab−E(1)δab)=0)。固有値が1次のエネルギー補正、固有ベクトルが「正しい0次状態」を与える。これは§1.2の命題の証明で見た「縮退空間内で対角化する」操作そのもので、V^ 自身に良い基底を選ばせる手続きである。同種粒子系でスピン多重項ごとにエネルギーが分裂する構造も、「対称性(入れ替え)で先に基底を分類してから摂動を評価する」というこの考え方の延長線上にある。
なお、時間に依存しない摂動論が定常状態のエネルギー補正を与えるのに対し、第8部『時間依存摂動論とダイナミクス』で扱う時間に依存する摂動論は、摂動によって状態が別の状態へ遷移する確率を与える。同じ「摂動論」でも問いが異なる点に注意されたい。非縮退・縮退摂動論のフルの導出と、Stark 効果・磁気異方性への適用は、第6部『摂動論と変分法』で正面から扱っている。
本章のまとめ
- 測定:値は固有値、確率は Born 則 P(a)=∣⟨a∣ψ⟩∣2、測定後は収縮。「遷移確率」は Born 則そのもの。
- 不確定性:ΔAΔB≥21∣⟨[A^,B^]⟩∣。零点エネルギーは閉じ込めと運動量の暴れの妥協点。
- 時間発展:固有基底に展開して各成分の位相を回す。単一固有状態=定常、重ね合わせ=相対位相が動く。
- 調和振動子:[a^,a^†]=1 だけから En=ℏω(n+21)(非負性+梯子)。a^∣0⟩=0 を解けば Gauss 基底、a^† で Hermite 多項式 × Gauss。⟨x^⟩(t) は厳密に角振動数 ω で単振動。
- 描像:時間依存の置き場所の簿記。S=状態が動く(波動関数向き)、H=演算子が動く(代数・保存量向き)、相互作用描像=中間(摂動論向き、第8部『時間依存摂動論とダイナミクス』)。期待値はどれでも同じ。
- スピン:σz=選んだ軸で対角、σx=位相なしスワップ、σy=90∘ 位相。状態⇔Bloch 球面上の向き、b⋅σ の固有値は ±∣b∣。
- スピン合成:21⊗21=1⊕0。てっぺん ∣↑↑⟩ から S^− で降りて3重項(対称)、直交する残りが1重項(反対称)。
- 摂動論:非縮退は Vnn と ∑∣Vmn∣2/ΔE、縮退は永年方程式。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com