井戸型ポテンシャル中の2粒子
目次
AI 生成・木下が未勉強
量子力学入門 第9部 第1章 §9.1.2 ★★ 統計が波動関数に効く具体例。
いよいよ同種粒子の具体計算に入る。この節の狙いは、1粒子で解いた結果をどう2粒子へ組み立てるかという手続きを、可識別・ボゾン・フェルミオンの3つの場合を並べて体得することである。初めて扱う読者を想定し、「テンソル積とは」「2粒子の波動関数はどう書くか」「縮退度はどう数えるか」「1粒子の結果をどう転用するか」を一つずつ潰していく。舞台は幅 の1次元無限井戸 、外は 。
準備:1粒子を解く
★ 1粒子固有状態。
2粒子系はどう作るか:テンソル積と位置基底の波動関数
★★ テンソル積と位置基底の波動関数。
状態空間はテンソル積。
粒子1の状態空間 と粒子2の状態空間 を合わせた2粒子系の状態空間は、第0章§9.0.2で見たテンソル積 である。1粒子の固有状態 を部品にとれば、2粒子の基底は積 (粒子1が状態 、粒子2が状態 )で張られる。
位置基底では「2変数関数」になる。
1粒子の波動関数が だったように、2粒子の波動関数は2つの位置を引数にとる:
が「粒子1が 付近、粒子2が 付近に同時にいる確率」を表す。とくに積状態 の位置表示は、各因子の波動関数の単なる積
になる(ケットのテンソル積が、位置表示では関数の積に化ける——これがテンソル積の位置表示での顔)。「粒子1が軌道 、粒子2が軌道 」を意味する。
エネルギーは1粒子エネルギーの和(=転用の核心)。
相互作用のない2粒子ハミルトニアンは、各粒子が独立に井戸を感じるので
と分離する( は だけ、 は だけに作用)。積状態に作用させると
すなわち積状態は2粒子系の固有状態で、そのエネルギーは1粒子エネルギーの和 。これが「1粒子の結果を転用する」の具体的な意味である——どの1粒子軌道に各粒子を入れるかを決めれば、エネルギーは足し算で出る。以下の全問題で、エネルギーは結局 の形にしかならない(基底なら 、第一励起なら )。統計性が効くのはどの積状態が許されるかと何通りあるか(縮退度)だけである。
可識別・ボゾン・フェルミオンで何が変わるか
★★ 統計で何が変わるか。
同じ「1粒子軌道に2個を詰める」でも、粒子の素性で許される状態が変わる。
可識別粒子(参照用)。
もし2粒子が区別できるなら、どの積状態 も独立に許される。「粒子1を軌道1・粒子2を軌道2」と「粒子1を軌道2・粒子2を軌道1」は別の状態として数える。
同種粒子:対称化の要請。
ところが同種粒子は交換で区別できない(§1.1)。状態は交換 に対して対称(ボゾン)か反対称(フェルミオン)でなければならない。1粒子軌道 を部品に、対称・反対称な組合せを作るのが基本手順である:
( なら対称は 、反対称は恒等的に零——これが Pauli 排他律:同じ軌道に2個のフェルミオンは入れない。) は の直交規格性から決まる規格化因子である。
スピン フェルミオン:空間スピンで全体を反対称に。
電子のようなスピン 粒子では、全状態は空間部分スピン部分で、交換に対する符号は両者の積で決まる。全体が反対称であるべきなので、組合せは2択に限られる(第0章§9.0.2のスピン合成の表を使う):
スピンの向き( か か)が空間部分の対称性を縛る——この連動が本節のすべてを支配する。
縮退度の数え方(レシピ)。
縮退度=同じエネルギーをもつ、独立で許された状態の総数。数え方は:(1) そのエネルギーを与える1粒子軌道の配置 を挙げる、(2) 各配置で許される空間の対称性を決める、(3) スピン なら、その空間対称性に合うスピン多重項の状態数(1重項=1、3重項=3)を掛ける、(4) 複数の配置があれば足す。次の表が3つの場合の基底・第一励起をまとめたものである(エネルギーはどれも基底 、第一励起 )。
| 粒子の種類 | 基底の縮退度 | 第一励起の縮退度 |
| 可識別(スピンレス、参照) | (両方 ) | ( と が別状態) |
| ボゾン(スピン0) | (対称、両方 ) | (対称化した1状態のみ) |
| フェルミオン(スピン ) | (空間対称$\times$1重項) | (空間対称$\times$1重項 空間反対称$\times$3重項 ) |
同じエネルギー準位でも、統計性で縮退度が と違うのが見て取れる。以下の例題は、この表の各マス目を一つずつ丁寧に導く作業にほかならない。
ボゾンの場合
★★ 対称化=引き寄せ。
フェルミオンの場合
★★ 反対称化=排他。
ここまでの物理:「力」ではなく「統計」
★★ 交換相互作用=統計効果。
相互作用をまだ一切入れていないことを強調しておく。 には粒子間の力の項がない。それでも と でエネルギーが違った( 対 )。原因は対称化の要請という統計則だけである。フェルミオンは「同じ状態を避ける」ため、スピンを揃える()と空間的に離れざるを得ず、運動エネルギーが上がる。この見かけの反発は力ではなく、波動関数の反対称性が生む幾何学的な帰結だ。次にこの上へ本物の相互作用を乗せると、統計と力が協働する様子が見える。
粒子間相互作用を入れる
★ 相互作用の摂動。
この対比が交換相互作用の本質を最も鮮やかに示す。反対称な空間波動関数()は で恒等的に零——フェルミオンは互いを避け合う(交換相関の穴、exchange–correlation hole)。だから「同じ点でだけ効く」接触斥力を一切感じず、エネルギーが上がらない。一方 (空間対称)は同じ点に居られるので斥力をまともに受け、 だけ上がる。スピンの向きが、空間分布を通じて相互作用エネルギーを左右する——磁性の起源がここにある。「電子間に磁気的な力は働いていないのに、スピンの向きでエネルギーが変わる」交換相互作用の正体は、(i) 反対称化の統計則が空間分布を決め、(ii) その空間分布が相互作用エネルギーを変える、という二段構えなのだ。相互作用がなければ のほうが低い(自由な2粒子の場合)が、強い斥力があれば が有利になり得る、という競合も見える( は斥力を避けられるから)。 が、スピン配置に依存する実効的なエネルギー差=有効スピン相互作用であり、Heisenberg 模型 の交換定数 の微視的起源である。
なぜ分配関数(統計力学)が顔を出さないのか
★ 統計力学との切り分け。
統計力学を学んだ読者は、「同種粒子といえば Bose–Einstein/Fermi–Dirac 分布や分配関数のはずなのに、なぜここでは出てこないのか」と戸惑うかもしれない。理由は、本章と統計力学が扱っている段階が違うからである。
本章がやっているのは、個々の量子状態(微視状態)を厳密に構成し数えること、しかも温度ゼロ(基底状態と第一励起状態)の話である。温度も熱平均も登場しない。ここで確立した占有規則——フェルミオンは各1粒子状態に高々1個(Pauli 排他律)、ボゾンは制限なし、そして対称化の要請——こそが、統計力学の入力になる。
分配関数 は、本章で数えたような微視状態を温度 で Boltzmann 重み付けして足し上げる操作である。その和を、フェルミオン/ボゾンの占有規則を尊重して実行すると、古典(Maxwell–Boltzmann)とは違う量子統計が出る:1粒子準位 の平均占有数が
分母の (各準位1個まで)と (何個でも)は、本章の で見た「同じ軌道に逆スピンで2個」や、ボゾンの「同じ軌道に制限なく」という規則が、有限温度に持ち上がったものにほかならない。
つまり両者の関係は上流と下流だ——本章(、厳密な微視状態と統計則)が上流の土台を与え、統計力学(、分配関数による熱平均)がその上に築かれる。橋渡しになるのが次節§1.3の 粒子系で、フェルミオンが低い準位から順に詰まって基底エネルギーが と大きくなる(Fermi 縮退圧)様子は、温度ゼロでの Fermi–Dirac 分布( の準位が占有数1、 が0の階段関数)そのものである。本章で「なぜ分配関数が出ないのか」の答えは、分配関数が使う占有規則を、本章がまさに作っているから、である。
木下の勉強ステータス
木下はまだこの記事を勉強していません。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com
← AI生成教科書『基礎理論』の記事一覧へ