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井戸型ポテンシャル中の2粒子

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第9部 第1章 同種粒子系
目次
  1. 準備:1粒子を解く
  2. 2粒子系はどう作るか:テンソル積と位置基底の波動関数
  3. 状態空間はテンソル積。
  4. 位置基底では「2変数関数」になる。
  5. エネルギーは1粒子エネルギーの和(=転用の核心)。
  6. 可識別・ボゾン・フェルミオンで何が変わるか
  7. 可識別粒子(参照用)。
  8. 同種粒子:対称化の要請。
  9. スピン フェルミオン:空間スピンで全体を反対称に。
  10. 縮退度の数え方(レシピ)。
  11. ボゾンの場合
  12. フェルミオンの場合
  13. ここまでの物理:「力」ではなく「統計」
  14. 粒子間相互作用を入れる
  15. なぜ分配関数(統計力学)が顔を出さないのか
  16. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学入門 第9部 第1章 §9.1.2 ★★ 統計が波動関数に効く具体例。

いよいよ同種粒子の具体計算に入る。この節の狙いは、1粒子で解いた結果をどう2粒子へ組み立てるかという手続きを、可識別・ボゾン・フェルミオンの3つの場合を並べて体得することである。初めて扱う読者を想定し、「テンソル積とは」「2粒子の波動関数はどう書くか」「縮退度はどう数えるか」「1粒子の結果をどう転用するか」を一つずつ潰していく。舞台は幅 aa の1次元無限井戸 V(x)=0 (0<x<a)V(x)=0\ (0<x<a)、外は ∞\infty。

準備:1粒子を解く

★ 1粒子固有状態。

2粒子系はどう作るか:テンソル積と位置基底の波動関数

★★ テンソル積と位置基底の波動関数。

状態空間はテンソル積。

粒子1の状態空間 H1\mathcal H_1 と粒子2の状態空間 H2\mathcal H_2 を合わせた2粒子系の状態空間は、第0章§9.0.2で見たテンソル積 H1⊗H2\mathcal H_1\otimes\mathcal H_2 である。1粒子の固有状態 ∣φa⟩| \varphi_a \rangle を部品にとれば、2粒子の基底は積 ∣φa⟩⊗∣φb⟩| \varphi_a \rangle \otimes| \varphi_b \rangle(粒子1が状態 aa、粒子2が状態 bb)で張られる。

位置基底では「2変数関数」になる。

1粒子の波動関数が φa(x)=⟨x∣φa⟩\varphi_a(x)=\langle x | \varphi_a \rangle だったように、2粒子の波動関数は2つの位置を引数にとる:

Ψ(x1,x2)=⟨x1∣⊗⟨x2∣ ∣Ψ⟩=(⟨x1,x2∣)∣Ψ⟩.\Psi(x_1,x_2)=\langle x_1 |\otimes\langle x_2 |\,| \Psi \rangle =(\langle x_1,x_2 |)| \Psi \rangle .

∣Ψ(x1,x2)∣2 dx1dx2|\Psi(x_1,x_2)|^2\,\mathrm{d} x_1\mathrm{d} x_2 が「粒子1が x1x_1 付近、粒子2が x2x_2 付近に同時にいる確率」を表す。とくに積状態 ∣φa⟩⊗∣φb⟩| \varphi_a \rangle \otimes| \varphi_b \rangle の位置表示は、各因子の波動関数の単なる積

Ψ(x1,x2)=φa(x1) φb(x2)\Psi(x_1,x_2)=\varphi_a(x_1)\,\varphi_b(x_2)

になる(ケットのテンソル積が、位置表示では関数の積に化ける——これがテンソル積の位置表示での顔)。「粒子1が軌道 aa、粒子2が軌道 bb」を意味する。

エネルギーは1粒子エネルギーの和(=転用の核心)。

相互作用のない2粒子ハミルトニアンは、各粒子が独立に井戸を感じるので

H^=h^1+h^2,h^i=p^i22m+V(xi)\hat H=\hat h_1+\hat h_2,\qquad \hat h_i=\frac{\hat p_i^2}{2m}+V(x_i)

と分離する(h^1\hat h_1 は x1x_1 だけ、h^2\hat h_2 は x2x_2 だけに作用)。積状態に作用させると

H^[φa(x1)φb(x2)]=(h^1φa(x1))φb(x2)+φa(x1)(h^2φb(x2))=(εa+εb) φa(x1)φb(x2).\hat H\bigl[\varphi_a(x_1)\varphi_b(x_2)\bigr] =(\hat h_1\varphi_a(x_1))\varphi_b(x_2)+\varphi_a(x_1)(\hat h_2\varphi_b(x_2)) =(\varepsilon_a+\varepsilon_b)\,\varphi_a(x_1)\varphi_b(x_2).

すなわち積状態は2粒子系の固有状態で、そのエネルギーは1粒子エネルギーの和 εa+εb\varepsilon_a+\varepsilon_b。これが「1粒子の結果を転用する」の具体的な意味である——どの1粒子軌道に各粒子を入れるかを決めれば、エネルギーは足し算で出る。以下の全問題で、エネルギーは結局 εa+εb\varepsilon_a+\varepsilon_b の形にしかならない(基底なら ε1+ε1=2ε1\varepsilon_1+\varepsilon_1=2\varepsilon_1、第一励起なら ε1+ε2=5ε1\varepsilon_1+\varepsilon_2=5\varepsilon_1)。統計性が効くのはどの積状態が許されるかと何通りあるか(縮退度)だけである。

可識別・ボゾン・フェルミオンで何が変わるか

★★ 統計で何が変わるか。

同じ「1粒子軌道に2個を詰める」でも、粒子の素性で許される状態が変わる。

可識別粒子(参照用)。

もし2粒子が区別できるなら、どの積状態 φa(x1)φb(x2)\varphi_a(x_1)\varphi_b(x_2) も独立に許される。「粒子1を軌道1・粒子2を軌道2」と「粒子1を軌道2・粒子2を軌道1」は別の状態として数える。

同種粒子:対称化の要請。

ところが同種粒子は交換で区別できない(§1.1)。状態は交換 P^12\hat P_{12} に対して対称(ボゾン)か反対称(フェルミオン)でなければならない。1粒子軌道 a,ba,b を部品に、対称・反対称な組合せを作るのが基本手順である:

Ψ対称=12[φa(x1)φb(x2)+φb(x1)φa(x2)],Ψ反対称=12[φa(x1)φb(x2)−φb(x1)φa(x2)].\Psi_{\text{対称}}=\frac{1}{\sqrt2}\bigl[\varphi_a(x_1)\varphi_b(x_2)+\varphi_b(x_1)\varphi_a(x_2)\bigr],\quad \Psi_{\text{反対称}}=\frac{1}{\sqrt2}\bigl[\varphi_a(x_1)\varphi_b(x_2)-\varphi_b(x_1)\varphi_a(x_2)\bigr].

(a=ba=b なら対称は φa(x1)φa(x2)\varphi_a(x_1)\varphi_a(x_2)、反対称は恒等的に零——これが Pauli 排他律:同じ軌道に2個のフェルミオンは入れない。)1/21/\sqrt2 は φa,φb\varphi_a,\varphi_b の直交規格性から決まる規格化因子である。

スピン 12\tfrac12 フェルミオン:空間×\timesスピンで全体を反対称に。

電子のようなスピン 12\tfrac12 粒子では、全状態は空間部分×\timesスピン部分で、交換に対する符号は両者の積で決まる。全体が反対称であるべきなので、組合せは2択に限られる(第0章§9.0.2のスピン合成の表を使う):

空間対称⏟×スピン反対称(1重項 S=0)⏟∣0,0⟩,空間反対称⏟×スピン対称(3重項 S=1)⏟∣1,M⟩.\underbrace{\text{空間\textbf{対称}}}_{}\times\underbrace{\text{スピン\textbf{反対称}(1重項 }S=0)}_{| 0,0 \rangle },\qquad \underbrace{\text{空間\textbf{反対称}}}_{}\times\underbrace{\text{スピン\textbf{対称}(3重項 }S=1)}_{| 1,M \rangle }.

スピンの向き(S=0S=0 か 11 か)が空間部分の対称性を縛る——この連動が本節のすべてを支配する。

縮退度の数え方(レシピ)。

縮退度=同じエネルギーをもつ、独立で許された状態の総数。数え方は:(1) そのエネルギーを与える1粒子軌道の配置 {a,b}\{a,b\} を挙げる、(2) 各配置で許される空間の対称性を決める、(3) スピン 12\tfrac12 なら、その空間対称性に合うスピン多重項の状態数(1重項=1、3重項=3)を掛ける、(4) 複数の配置があれば足す。次の表が3つの場合の基底・第一励起をまとめたものである(エネルギーはどれも基底 2ε12\varepsilon_1、第一励起 5ε15\varepsilon_1)。

粒子の種類基底の縮退度第一励起の縮退度
可識別(スピンレス、参照)11(両方 n=1n{=}1)22((1,2)(1,2) と (2,1)(2,1) が別状態)
ボゾン(スピン0)11(対称、両方 n=1n{=}1)11(対称化した1状態のみ)
フェルミオン(スピン 12\tfrac12)11(空間対称$\times$1重項)44(空間対称$\times$1重項 ++ 空間反対称$\times$3重項 =1+3=1+3)

同じエネルギー準位でも、統計性で縮退度が 2,1,42,1,4 と違うのが見て取れる。以下の例題は、この表の各マス目を一つずつ丁寧に導く作業にほかならない。

ボゾンの場合

★★ 対称化=引き寄せ。

フェルミオンの場合

★★ 反対称化=排他。

ここまでの物理:「力」ではなく「統計」

★★ 交換相互作用=統計効果。

相互作用をまだ一切入れていないことを強調しておく。H^=h^1+h^2\hat H=\hat h_1+\hat h_2 には粒子間の力の項がない。それでも S=0S=0 と S=1S=1 でエネルギーが違った(2ε12\varepsilon_1 対 5ε15\varepsilon_1)。原因は対称化の要請という統計則だけである。フェルミオンは「同じ状態を避ける」ため、スピンを揃える(S=1S=1)と空間的に離れざるを得ず、運動エネルギーが上がる。この見かけの反発は力ではなく、波動関数の反対称性が生む幾何学的な帰結だ。次にこの上へ本物の相互作用を乗せると、統計と力が協働する様子が見える。

粒子間相互作用を入れる

★ 相互作用の摂動。

この対比が交換相互作用の本質を最も鮮やかに示す。反対称な空間波動関数(S=1S=1)は x1=x2x_1=x_2 で恒等的に零——フェルミオンは互いを避け合う(交換相関の穴、exchange–correlation hole)。だから「同じ点でだけ効く」接触斥力を一切感じず、エネルギーが上がらない。一方 S=0S=0(空間対称)は同じ点に居られるので斥力をまともに受け、3λ/(2a)3\lambda/(2a) だけ上がる。スピンの向きが、空間分布を通じて相互作用エネルギーを左右する——磁性の起源がここにある。「電子間に磁気的な力は働いていないのに、スピンの向きでエネルギーが変わる」交換相互作用の正体は、(i) 反対称化の統計則が空間分布を決め、(ii) その空間分布が相互作用エネルギーを変える、という二段構えなのだ。相互作用がなければ S=0S=0 のほうが低い(自由な2粒子の場合)が、強い斥力があれば S=1S=1 が有利になり得る、という競合も見える(S=1S=1 は斥力を避けられるから)。ΔE=ES=0(1)−ES=1(1)=3λ/2a\Delta E=E^{(1)}_{S=0}-E^{(1)}_{S=1}=3\lambda/2a が、スピン配置に依存する実効的なエネルギー差=有効スピン相互作用であり、Heisenberg 模型 −J S^1⋅S^2-J\,\hat{\bm{S}}_1\cdot\hat{\bm{S}}_2 の交換定数 JJ の微視的起源である。

なぜ分配関数(統計力学)が顔を出さないのか

★ 統計力学との切り分け。

統計力学を学んだ読者は、「同種粒子といえば Bose–Einstein/Fermi–Dirac 分布や分配関数のはずなのに、なぜここでは出てこないのか」と戸惑うかもしれない。理由は、本章と統計力学が扱っている段階が違うからである。

本章がやっているのは、個々の量子状態(微視状態)を厳密に構成し数えること、しかも温度ゼロ(基底状態と第一励起状態)の話である。温度も熱平均も登場しない。ここで確立した占有規則——フェルミオンは各1粒子状態に高々1個(Pauli 排他律)、ボゾンは制限なし、そして対称化の要請——こそが、統計力学の入力になる。

分配関数 Z=∑微視状態e−βEZ=\sum_{\text{微視状態}}\mathrm{e}^{-\beta E} は、本章で数えたような微視状態を温度 T>0T>0 で Boltzmann 重み付けして足し上げる操作である。その和を、フェルミオン/ボゾンの占有規則を尊重して実行すると、古典(Maxwell–Boltzmann)とは違う量子統計が出る:1粒子準位 ε\varepsilon の平均占有数が

⟨n⟩FD=1eβ(ε−μ)+1 (フェルミオン),⟨n⟩BE=1eβ(ε−μ)−1 (ボゾン).\langle n\rangle_{\text{FD}}=\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon-\mu)}+1}\ (\text{フェルミオン}),\qquad \langle n\rangle_{\text{BE}}=\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon-\mu)}-1}\ (\text{ボゾン}).

分母の +1+1(各準位1個まで)と −1-1(何個でも)は、本章の S=0S=0 で見た「同じ軌道に逆スピンで2個」や、ボゾンの「同じ軌道に制限なく」という規則が、有限温度に持ち上がったものにほかならない。

つまり両者の関係は上流と下流だ——本章(T=0T=0、厳密な微視状態と統計則)が上流の土台を与え、統計力学(T>0T>0、分配関数による熱平均)がその上に築かれる。橋渡しになるのが次節§1.3の NN 粒子系で、フェルミオンが低い準位から順に詰まって基底エネルギーが E0∝N2E_0\propto N^2 と大きくなる(Fermi 縮退圧)様子は、温度ゼロでの Fermi–Dirac 分布(ε<μ\varepsilon<\mu の準位が占有数1、ε>μ\varepsilon>\mu が0の階段関数)そのものである。本章で「なぜ分配関数が出ないのか」の答えは、分配関数が使う占有規則を、本章がまさに作っているから、である。

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