信号処理論入門 第7章 §7.5 ★ 標本化定理のz変換版
離散時間信号から偶数番目の標本だけを取り出す操作y[n]=x[2n] を2倍間引き(デシメーション)と呼ぶ。標本を半分捨てるのだから折り返しが起きるはずで、実際その折り返しが z 領域の式にはっきり見える形で現れる。第5章で連続時間の標本化について述べたことの離散版であり、道具立ては §5.1 の双対表の第1行だけである。
まず Y(z)=∑nx[2n]z−n の変数を z2 に取り替える。(z2)−n=z−2n なので k=2n と置き直せて
Y(z2)=n=−∞∑∞x[2n]z−2n=k: 偶数∑x[k]z−k
となる。これはX(z)=∑kx[k]z−k のうち k が偶数の項だけを残した部分和である。z の指数が元の信号の添字とそろった点が肝心で、ここまで来れば「偶数番だけを残す」という操作を式で書くだけでよい。(−1)k は k が偶数のとき 1、奇数のとき −1 だから
21+(−1)k={10(k 偶数)(k 奇数)
が偶数番だけを通すふるいになる。これを掛けて全 k で和を取ると
Y(z2)=21k∑x[k]z−k+21k∑(−1)kx[k]z−k=21[X(z)+X(−z)]
を得る。第2項で X(−z) が出るのは、(−z)−k=(−1)−kz−k=(−1)kz−k より∑k(−1)kx[k]z−k=∑kx[k](−z)−k=X(−z) となるからで、これは指数重みの性質 Z[αnx[n]]=X(z/α) の α=−1 の場合にほかならない。最後に z→z1/2 と読み替えれば Y そのものが X で書ける。
要点
定石:2倍間引きの z 領域公式
Y(z)=21[X(z1/2)+X(−z1/2)],y[n]=x[2n].(7.1)
- 平方根の枝は気にしなくてよい。z の一方の平方根を w とすると他方は −w で、右辺は w↔−w の入れ替えで不変な対称式だから、Y(z) は一意に定まる。
- 折り返しは第2項 X(−z1/2) に入っている。単位円上で z=ejΩ と置くと−z1/2=ej(Ω/2+π)=ej(Ω+2π)/2 なので、第2項は「Ω 軸を2倍に引き伸ばしたスペクトルを 2π ずらした複製」である。第1項 X(ejΩ/2) が主成分で、複製が主成分に重なるとエイリアシングになる。
- 折り返しが消える条件が標本化定理の z 変換版である。X(ejΩ)=0 (∣Ω∣≥π/2) と帯域制限されていれば、Ω∈(−π,π] に対し Ω/2+π は帯域の外に落ちるので第2項は恒等的に 0 になり
Y(z)=21X(z1/2).
「標本を半分に間引くなら帯域も半分(π/2 以下)でなければならない」という、fs≥2fmax とまったく同じ内容の主張である。
- DFT で書けばもっと見やすい。長さ N の X[k] に対し、間引いた列の DFT はY[m]=21(X[m]+X[m+N/2])(m=0,…,N/2−1)で、第2項が半周ずれた複製である。
検算=検算スクリプト の第3節。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com