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同時の相対性

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 相対性原理と光速不変
目次
  1. 電車の思考実験
  2. 光時計と時間の遅れ
  3. 確認テスト
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第1章 §1.4 ★★★ 電車の思考実験で同時が観測者によって変わることを、光時計の思考実験で動く時計が遅れることを、2つの原理だけから導く

電車の思考実験

まっすぐな線路の上を電車が一定の速さ vv で走っている。電車の中央にランプがあり、ある瞬間に光を出す。電車の前端と後端には受光器がある。地面に静止した慣性系を KK、電車に静止した慣性系を K′K' とする。

電車の系 K′K' で見る  電車は止まっており、ランプから前端までと後端までの距離は等しい。光速不変の原理から、光は前へも後ろへも速さ cc で進む。したがって光は前端と後端に同時に届く。K′K' の同期した時計で見ると、2つの到着は同じ時刻に起きる。

地面の系 KK で見る  この系でも光は前へも後ろへも速さ cc で進む(光速不変の原理は「光源の速さによらない」ことも含んでいた)。しかし光が進む間に電車は前へ動くので、後端は光に向かって近づき、前端は光から遠ざかる。

KK で測った電車の長さを ℓ\ell とする。光を出した時刻を t=0t=0、そのときのランプの位置を x=0x=0 とする。時刻 tt での各位置は次のとおりである(図 1.3)。

後端: x=−ℓ2+vt,前端: x=ℓ2+vt,後ろへ進む光: x=−ct,前へ進む光: x=ct\begin{aligned}\text{後端}&:\ x=-\frac{\ell}{2}+vt, & \text{前端}&:\ x=\frac{\ell}{2}+vt,\\ \text{後ろへ進む光}&:\ x=-ct, & \text{前へ進む光}&:\ x=ct\end{aligned}

後端に届く時刻 trt_{\mathrm r} と前端に届く時刻 tft_{\mathrm f} は

−ℓ2+vtr=−ctr ⟹ tr=ℓ2(c+v),ℓ2+vtf=ctf ⟹ tf=ℓ2(c−v)(1.16)-\frac{\ell}{2}+vt_{\mathrm r}=-ct_{\mathrm r}\ \Longrightarrow\ t_{\mathrm r}=\frac{\ell}{2(c+v)},\qquad \frac{\ell}{2}+vt_{\mathrm f}=ct_{\mathrm f}\ \Longrightarrow\ t_{\mathrm f}=\frac{\ell}{2(c-v)}\tag{1.16}

である。その差は

Δt=tf−tr=ℓ2(1c−v−1c+v)=ℓvc2−v2=ℓβc (1−β2)(1.17)\Delta t=t_{\mathrm f}-t_{\mathrm r}=\frac{\ell}{2}\Bigl(\frac{1}{c-v}-\frac{1}{c+v}\Bigr)=\frac{\ell v}{c^2-v^2}=\frac{\ell\beta}{c\,(1-\beta^2)}\tag{1.17}

で、v>0v>0 なら正である。KK では、光は後端に先に届き、前端にはそれより Δt\Delta t だけ遅れて届く。

図

図 1.3 地面の系 KK で見た電車の思考実験。光は前後へ同じ速さ cc で進むが、電車が前へ動くので、後端に先に届き(中段)、前端には遅れて届く(下段)。電車の系 K′K' では2つの到着は同時である。

定理 1.5(同時の相対性)

慣性系 K′K' で、異なる場所で同時に起きた2つの出来事を考える。これらは、K′K' に対して動く慣性系 KK では一般に同時ではない。

証明

電車の思考実験がその例を与える。「光が後端に届く」と「光が前端に届く」という2つの出来事は、K′K' では2つの原理によって同時である。一方 KK では、同じ2つの原理によって (1.17) の Δt>0\Delta t>0 だけずれる。この議論では、光の速さが両方の系でどの向きにも cc であることだけを使った。

ここで注意しておくと、(1.17) の ℓ\ell は KK で測った電車の長さで、電車の中で測った長さと等しいとは仮定していない。電車の中で測った長さを L0L_0 とすると、第2章で示すとおり ℓ=L01−β2\ell=L_0\sqrt{1-\beta^2} である。このとき γ=1/1−β2\gamma=1/\sqrt{1-\beta^2} を使って、時間差は次のように書ける。

Δt=γL0vc2\Delta t=\frac{\gamma L_0v}{c^2}

いずれにしても、2つの出来事の場所が離れていれば(ℓ≠0\ell\ne0)、2つの系で同時かどうかの判定が食い違う。同じ場所で同時に起きた出来事(ℓ=0\ell=0)は、どの慣性系でも同時である。

同時の相対性は、時計が狂っていることや光の伝わる時間を差し引き忘れたことによる見かけの効果ではない。どちらの系も Einstein の同期 (1.15) で正しく時計を合わせており、光の伝わる時間はすでに計算に入っている。「離れた場所で同時」という言葉には、どの慣性系での話かを付けないと意味が定まらない。2つの出来事の時間的な順序まで入れ替わるかどうかは、出来事の間を光で結べるかどうかによって決まり、第3章 §3.2 で光円錐を使って整理する。

光時計と時間の遅れ

同時の相対性から、時間の進み方そのものも慣性系によって違うことが導ける。そのために、2枚の平行な鏡の間を光が往復する光時計を考える。鏡の間隔を L0L_0 とすると、光時計に静止した系で光が1往復する時間は

T0=2L0c(1.18)T_0=\frac{2L_0}{c}\tag{1.18}

である。この1往復を時計の1刻みとする。

この光時計を電車に載せ、鏡の面を線路と平行に置く。光は電車の進行方向と垂直に往復する(図 1.4)。運動と垂直な向きの長さは、どちらの系で測っても L0L_0 のままである。このことを次の補題で先に確かめておく。

補題 1.6(運動と垂直な長さ)

K′K' に静止した棒を、y′y' 方向に置く。この棒の長さは、KK で測っても同じである。

証明

同じ作りの2本の棒を用意する。1本を KK に、もう1本を K′K' に静止させる。どちらも yy 方向に向ける。2本は xx 方向にすれ違い、すれ違う瞬間に互いの上端が相手の棒に印を付けるとする。

仮に KK から見て動いている棒が短く見えるとする。すると、K′K' の棒の上端は KK の棒の上端より下に印を付ける。相対性原理により、K′K' から見ると動いているのは KK の棒である。同じ理由で、KK の棒の上端が K′K' の棒の上端より下に印を付けるはずである。

印は棒の上に残る物理的な痕跡で、どの系から見ても同じ位置にある。2つの主張を同時に満たすことはできないので、長くなる場合も同じ議論で否定され、2本の長さは等しい。この議論では、2本がすれ違う瞬間の出来事が1か所で起きるので、同時の相対性は関係しない。

図

図 1.4 光時計。左は時計に静止した系で、光は鏡の間をまっすぐ往復する。右は時計が速さ vv で右へ動いて見える系で、光は速さ cc のまま斜めに進み、1往復に長い時間がかかる。

地面の系 KK で、光が1往復する時間を TT とする。光が下の鏡を出てから上の鏡に着くまでの時間 T/2T/2 の間に、時計は vT/2vT/2 だけ右へ動く。

光は KK でも速さ cc で進む。その間に進む斜めの距離は cT/2cT/2 である。補題 1.6 より鏡の間隔は KK でも L0L_0 なので、Pythagoras の定理から

(cT2)2=L02+(vT2)2\Bigl(\frac{cT}{2}\Bigr)^2=L_0^2+\Bigl(\frac{vT}{2}\Bigr)^2

が成り立つ。これを TT について解き、(1.18) を使うと

T=2L0c2−v2=T01−β2=γ T0,γ=11−β2(1.19)T=\frac{2L_0}{\sqrt{c^2-v^2}}=\frac{T_0}{\sqrt{1-\beta^2}}=\gamma\,T_0,\qquad \gamma=\frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}\tag{1.19}

を得る。γ>1\gamma>1 なので、KK から見ると、動いている光時計の1刻みは静止しているときの1刻みより長い。これを時間の遅れという。

この結論は光時計という特別な時計に限らない。電車の中に光時計と別の種類の時計(振り子時計、原子時計、人の脈拍)を並べて置いたとする。電車の中の観測者には、2つの時計は同じ速さで進んで見える。

仮に KK から見て光時計だけが遅れて別の時計は遅れないとすると、電車の中の観測者は2つの時計のずれから自分が動いていることを知ることができる。これは相対性原理に反する。したがって電車の中の時間の進み方そのものが、KK から見て γ\gamma 倍に引き延ばされている。

(1.10) の腕2の往復時間と (1.19) は同じ式である。Michelson–Morley の計算ではエーテル系から見た式だったが、ここでは光速不変の原理によってどの慣性系から見ても成り立つ。

また、この効果は対称である。K′K' から見ると、KK に置いた光時計の方が動いている。したがって K′K' からは、KK の時計が遅れて見える。

遅れを比べるには離れた場所の時計どうしを比べる必要があり、そこに同時の相対性が関わるので、互いに相手の時計が遅れて見えても矛盾は生じない。この点は第2章 §2.2 で Lorentz 変換を使って確かめ、第3章 §3.3 の双子のパラドックスで改めて扱う。

β≪1\beta\ll1 では γ≃1+β2/2\gamma\simeq1+\beta^2/2 である。したがって、動く時計が時間 TT の間に遅れる量は

T−T0=(1−1γ)T≃β22 T(1.20)T-T_0=\Bigl(1-\frac1\gamma\Bigr)T\simeq\frac{\beta^2}{2}\,T\tag{1.20}

である。日常の速さでは β2\beta^2 が極めて小さいので、時間の遅れに気づくことはない。

例題 1.4 人工衛星の時計の遅れ ★★★

オリジナル地上の慣性系から見て速さ v=3.87 km/sv=3.87\,\mathrm{km/s} で飛ぶ人工衛星に、地上と同じ作りの原子時計が積まれている。地球の自転と重力の影響は考えない。

  1. 衛星の時計の進み方は地上の時計に比べて相対的にどれだけ遅いか。1−1/γ1-1/\gamma を求めよ。
  2. 地上の1日(86400 s86400\,\mathrm s)の間に、衛星の時計は地上の時計より何マイクロ秒遅れるか。
  3. 位置を光の到着時刻から求める装置では、時計の誤差に cc を掛けたものが距離の誤差になる。この遅れを補正しないと、1日で距離の誤差がどれほどになるか。
解答

1.  β=v/c=3.87×103/(3.00×108)=1.29×10−5\beta=v/c=3.87\times10^3/(3.00\times10^8)=1.29\times10^{-5} である。β≪1\beta\ll1 なので

1−1γ=1−1−β2≃β22=(1.29×10−5)22=1.664×10−102=8.32×10−111-\frac1\gamma=1-\sqrt{1-\beta^2}\simeq\frac{\beta^2}{2}=\frac{(1.29\times10^{-5})^2}{2}=\frac{1.664\times10^{-10}}{2}=8.32\times10^{-11}

となる。次の項 β4/8≈2×10−21\beta^4/8\approx2\times10^{-21} は無視できる。

2.  (1.20) より、遅れは

8.32×10−11×86400 s=7.19×10−6 s≈7.2 μs8.32\times10^{-11}\times86400\,\mathrm s=7.19\times10^{-6}\,\mathrm s\approx7.2\,\mu\mathrm s

である。

3.  距離の誤差は c×7.19×10−6 s=3.00×108×7.19×10−6 m=2.16×103 mc\times7.19\times10^{-6}\,\mathrm s=3.00\times10^8\times7.19\times10^{-6}\,\mathrm m=2.16\times10^3\,\mathrm m、つまり1日で約 2 km2\,\mathrm{km} ずつ増える。実際の衛星測位では、このほかに重力による時計の進みの補正(第7章 §7.3)も必要で、2つを合わせた補正が衛星の時計に組み込まれている。

確認テスト

オリジナル

  1. 1.4-1 「慣性系 KK で2つの出来事が同時である」とはどういうことか、Einstein の同期を使って1文で述べよ。

  2. 1.4-2 地面の系で測った長さが ℓ=200 m\ell=200\,\mathrm m の電車が v=0.60cv=0.60c で走っている。電車の中央で出た光が後端と前端に届く時刻の差 Δt\Delta t を、地面の系で求めよ。また電車の中で測った長さを L0=ℓ/1−β2L_0=\ell/\sqrt{1-\beta^2} として、Δt=γL0v/c2\Delta t=\gamma L_0v/c^2 と書けることを確かめよ。

  3. 1.4-3 鏡の間隔 L0=1.5 mL_0=1.5\,\mathrm m の光時計が速さ v=0.80cv=0.80c で動いている。時計に静止した系での1往復の時間 T0T_0 と、時計が動いて見える系での1往復の時間 TT を求めよ。

  4. 1.4-4 光時計の鏡の面を運動の向きと垂直に置き、光を運動の向きに往復させる。補題 1.6 の代わりに、地面の系で測った鏡の間隔を LL とおく。

    • (a) 地面の系での1往復の時間を、L,c,vL,c,v で表せ。
    • (b) この時間は、光の向きを変えても同じ時計の刻み γT0\gamma T_0 にならなければならない。このことから LL と L0L_0 の関係を導け。
  5. 1.4-5 旅客機が地面に対して v=250 m/sv=250\,\mathrm{m/s} で 1010 時間飛ぶ。機内の時計は地面の時計よりどれだけ遅れるか。ナノ秒の単位で求めよ(重力と地球の自転は考えない)。

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