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微分演算子と場

2026年10月15日15分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第4章 4元ベクトルとテンソル
目次
  1. スカラー場とベクトル場
  2. 微分は下付きの添字を持つ
  3. ダランベルシアン
  4. 場の方程式を共変に書く
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第4章 §4.4 ★★★ ∂μ\partial_\mu が下付きの添字を持つ理由と、ダランベルシアンが不変であること。場の方程式を共変な形に書く出発点

スカラー場とベクトル場

ここまで扱った4元ベクトルは、時空の1点(あるいは1つの粒子)に付随する量であった。電磁場や物質の密度のように、時空の各点に値を持つ量を場と呼ぶ。場の変換則では、値の変換と同時に「どの点の値か」の付け替えが起きる。

定義 4.12(スカラー場とベクトル場)

Lorentz 変換 x′μ=Λμνxνx'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu x^\nu のもとで

ϕ′(x′)=ϕ(x)(4.28)\phi'(x')=\phi(x)\tag{4.28}

を満たす場 ϕ\phi をスカラー場と呼ぶ。同じ事象での値が、どちらの系で読んでも同じという意味である(その事象の座標は、もとの系で xx、新しい系で x′x' と書かれる)。同様に、次の変換を満たす場をそれぞれベクトル場、テンソル場と呼ぶ。

A′μ(x′)=ΛμνAν(x),T′μν(x′)=ΛμαΛνβTαβ(x)A'^\mu(x')=\Lambda^\mu{}_\nu A^\nu(x),\qquad T'^{\mu\nu}(x')=\Lambda^\mu{}_\alpha\Lambda^\nu{}_\beta T^{\alpha\beta}(x)

(4.28) は、関数の形 ϕ′\phi' が ϕ\phi と同じだという意味ではない。たとえばもとの系で ϕ(x)=x1\phi(x)=x^1 という場を考える。逆変換 (4.15) を使うと、新しい系では

ϕ′(x′)=x1=γ(x′1+βx′0)\phi'(x')=x^1=\gamma(x'^1+\beta x'^0)

という別の関数になる。同じ事象での値が等しいことだけを要求している。§4.2 の平面波の位相は、スカラー場の典型例である。

微分は下付きの添字を持つ

スカラー場 ϕ\phi を座標で偏微分した4つの量

∂μϕ≔∂ϕ∂xμ=(1c∂ϕ∂t, ∇ϕ)(4.29)\partial_\mu\phi\coloneqq\frac{\partial \phi}{\partial x^\mu}=\Bigl(\frac1c\frac{\partial \phi}{\partial t},\,\nabla\phi\Bigr)\tag{4.29}

がどう変換するかを調べる。xx を x′x' の関数とみる。逆変換は xν=(Λ−1)νμx′μx^\nu=(\Lambda^{-1})^\nu{}_\mu x'^\mu である。(4.14) と合わせて

∂xν∂x′μ=(Λ−1)νμ=Λμν\frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}=(\Lambda^{-1})^\nu{}_\mu=\Lambda_\mu{}^\nu

を得る。(4.28) の両辺を x′μx'^\mu で微分し、右辺に連鎖律を使うと

∂μ′ϕ′=∂ϕ(x)∂x′μ=∂xν∂x′μ∂ϕ∂xν=Λμν ∂νϕ.(4.30)\partial'_\mu\phi'=\frac{\partial \phi(x)}{\partial x'^\mu}=\frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}\frac{\partial \phi}{\partial x^\nu}=\Lambda_\mu{}^\nu\,\partial_\nu\phi .\tag{4.30}

これはコベクトルの変換則 (4.16) そのものである。座標 xμx^\mu は上付きの添字を持つが、それで微分した ∂μ\partial_\mu は下付きの添字の量として変換する。「分母の上付き添字は下付き添字として数える」と覚えておけばよい。

∂μ\partial_\mu の添字を上げたものは

∂μ=ημν∂ν=(1c∂∂t, −∇)(4.31)\partial^\mu=\eta^{\mu\nu}\partial_\nu=\Bigl(\frac1c\frac{\partial }{\partial t},\,-\nabla\Bigr)\tag{4.31}

である。座標では、反変成分 xμ=(ct,x)x^\mu=(ct,\bm{x}) の空間成分が正の符号を持つ。これに対し微分では、共変成分 ∂μ\partial_\mu の空間成分が +∇+\nabla になる。符号の位置が逆に見えるのはこのためである。

∂μ\partial_\mu の符号の確かめ方

  • 符号に迷ったら、∂μxν=δνμ\partial_\mu x^\nu=\delta^\nu{}_\mu を確かめる。∂1x1=∂x/∂x=1\partial_1x^1=\partial x/\partial x=1 であり、これは ∂1=+∂/∂x\partial_1=+\partial/\partial x と合っている。
  • 平面波 e−ikμxμ\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k_\mu x^\mu} に微分 i∂μ\mathrm{i}\partial_\mu を作用させると、もとの平面波に4元波数の共変成分を掛けたものになる。成分では i∂0→ω/c\mathrm{i}\partial_0\to\omega/c、i∂j→−kj\mathrm{i}\partial_j\to-k^j である。
  • 量子力学の p^=−iℏ∇\hat{\bm{p}}=-\mathrm{i}\hbar\nabla と対応させるときは、上付きで読む。

iℏ∂μ=(iℏc∂t, −iℏ∇)→(Ec, p)\mathrm{i}\hbar\partial^\mu=\Bigl(\frac{\mathrm{i}\hbar}{c}\partial_t,\,-\mathrm{i}\hbar\nabla\Bigr)\to\Bigl(\frac Ec,\,\bm{p}\Bigr)

ベクトル場 AμA^\mu に ∂μ\partial_\mu を作用させて縮約した4元発散

∂μAμ=1c∂A0∂t+∇⋅A(4.32)\partial_\mu A^\mu=\frac1c\frac{\partial A^0}{\partial t}+\nabla\cdot\bm{A}\tag{4.32}

はスカラー場である。(4.30) をベクトル場の各成分に当てはめると、微分はコベクトルとして変換する。あとは命題 4.8 と同じ計算で、変換の行列が打ち消し合う。4元電流 Jμ=(cρ,J)J^\mu=(c\rho,\bm{J}) に当てはめると、電荷の保存則

∂μJμ=∂ρ∂t+∇⋅J=0(4.33)\partial_\mu J^\mu=\frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla\cdot\bm{J}=0\tag{4.33}

が1本の式にまとまる。左辺がスカラーなので、ある慣性系で電荷が保存すれば、すべての慣性系で保存する。

ダランベルシアン

∂μ\partial_\mu と ∂μ\partial^\mu を縮約すると、2階の微分演算子

□≔∂μ∂μ=ημν∂μ∂ν=1c2∂2∂t2−∇2(4.34)\Box\coloneqq\partial_\mu\partial^\mu=\eta^{\mu\nu}\partial_\mu\partial_\nu=\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2}{\partial t^2}-\nabla^2\tag{4.34}

を得る。これをダランベルシアン(名前は J. le R. d'Alembert に由来する)と呼ぶ。添字がすべて縮約されているので、□\Box はスカラーの演算子である。スカラー場に作用させた □ϕ\Box\phi は、またスカラー場になる。したがって波動方程式

□ϕ=1c2∂2ϕ∂t2−∇2ϕ=0(4.35)\Box\phi=\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2\phi}{\partial t^2}-\nabla^2\phi=0\tag{4.35}

は、ある慣性系で成り立てばすべての慣性系で同じ形で成り立つ。

第1章 §1.2 で述べた電磁気学と Galilei 変換の食い違いは、ここでは次の形で現れる。この方程式は Galilei 変換 x′=x−vtx'=x-vt のもとでは、交差項 ∂t∂x\partial_t\partial_x を生じて形を変える(例題 4.4)。光の伝わり方が観測者によらないという要請と、波動方程式の形が保たれることとは同じ内容である。

図

図 4.3 時間的な4元ベクトルのノルムの等高線(双曲線)。Lorentz 変換は、同じ双曲線の上で矢印の先を動かす(赤の3本は同じノルムを持つ)。β=0.5\beta=0.5 の K′K' 系の軸も描いた。□\Box が不変であることは、この双曲線を保つ変換で2階微分の組み合わせ ∂02−∂12\partial_0^2-\partial_1^2 が保たれることに対応する。

例題 4.4 ダランベルシアンの不変性を連鎖律で確かめる ★★

オリジナル簡単のため x2,x3x^2,x^3 は省き、2次元の時空 (x0,x1)(x^0,x^1) で考える。スカラー場 ϕ′(x′)=ϕ(x)\phi'(x')=\phi(x) を考える。xx 方向のブーストのもとで次の式が成り立つことを、(4.30) を2回使って示せ。

∂0′2ϕ′−∂1′2ϕ′=∂02ϕ−∂12ϕ\partial'^2_0\phi'-\partial'^2_1\phi'=\partial_0^2\phi-\partial_1^2\phi

あわせて、Galilei 変換 t′=tt'=t、x′=x−vtx'=x-vt では同じ組み合わせが保たれないことを示せ。

解答

(4.30) を成分で書く。(4.13) から(§4.2 の計算と同じ)

Λ00=Λ11=γ,Λ01=Λ10=γβ\Lambda_0{}^0=\Lambda_1{}^1=\gamma,\qquad \Lambda_0{}^1=\Lambda_1{}^0=\gamma\beta

なので

∂0′=γ(∂0+β∂1),∂1′=γ(∂1+β∂0).\partial'_0=\gamma(\partial_0+\beta\partial_1),\qquad \partial'_1=\gamma(\partial_1+\beta\partial_0).

これは微分演算子どうしの関係であり、係数が定数なので2回続けて作用させることができる。

∂0′2=γ2(∂02+2β∂0∂1+β2∂12),∂1′2=γ2(∂12+2β∂0∂1+β2∂02).\partial'^2_0=\gamma^2\bigl(\partial_0^2+2\beta\partial_0\partial_1+\beta^2\partial_1^2\bigr),\qquad \partial'^2_1=\gamma^2\bigl(\partial_1^2+2\beta\partial_0\partial_1+\beta^2\partial_0^2\bigr).

引き算すると交差項 2β∂0∂12\beta\partial_0\partial_1 が打ち消し合い、

∂0′2−∂1′2=γ2(1−β2)(∂02−∂12)=∂02−∂12.\partial'^2_0-\partial'^2_1=\gamma^2(1-\beta^2)\bigl(\partial_0^2-\partial_1^2\bigr)=\partial_0^2-\partial_1^2 .

最後に γ2(1−β2)=1\gamma^2(1-\beta^2)=1 を使った。

Galilei 変換では t=t′t=t'、x=x′+vt′x=x'+vt' である。連鎖律から

∂∂t′=∂t+v∂x,∂∂x′=∂x\frac{\partial }{\partial t'}=\partial_t+v\partial_x,\qquad \frac{\partial }{\partial x'}=\partial_x

となる。x0=ctx^0=ct の記号で書くと、次のようになる。

∂0′=∂0+β∂1,∂1′=∂1\partial'_0=\partial_0+\beta\partial_1,\qquad \partial'_1=\partial_1

したがって

∂0′2−∂1′2=∂02+2β∂0∂1+β2∂12−∂12.\partial'^2_0-\partial'^2_1=\partial_0^2+2\beta\partial_0\partial_1+\beta^2\partial_1^2-\partial_1^2 .

交差項 2β∂0∂12\beta\partial_0\partial_1 と β2∂12\beta^2\partial_1^2 が残るので、もとの組み合わせとは異なる。Lorentz 変換では ∂1′\partial'_1 にも β∂0\beta\partial_0 の項が入り、交差項はこの項によって打ち消される。この項は、時刻が位置によってずれる「同時の相対性」(第1章 §1.4)の微分版である。

場の方程式を共変に書く

物理法則を「すべての慣性系で同じ形」に書く方法は、ここまでの道具でまとめることができる。方程式の両辺を同じ型のテンソル(場)として書き、自由添字をそろえておけば、ある系で成り立つ式は変換したあとも同じ形で成り立つ。たとえば両辺が4元ベクトル場の式 Xμ=YμX^\mu=Y^\mu は、別の系で次の形になる。

X′μ=ΛμνXν=ΛμνYν=Y′μX'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu X^\nu=\Lambda^\mu{}_\nu Y^\nu=Y'^\mu

このような式を共変な式と呼ぶ。第6章の Maxwell 方程式 ∂μFμν=μ0Jν\partial_\mu F^{\mu\nu}=\mu_0J^\nu はその代表例である。

最も簡単な例として、スカラー場の方程式

(□+m2c2ℏ2)ϕ=0(4.36)\Bigl(\Box+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\Bigr)\phi=0\tag{4.36}

を考える(Klein–Gordon 方程式。名前は O. Klein と W. Gordon に由来する)。mm は不変な定数で、m=0m=0 なら波動方程式に戻る。平面波 ϕ=e−ikμxμ\phi=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k_\mu x^\mu} を入れると、∂μϕ=−ikμϕ\partial_\mu\phi=-\mathrm{i} k_\mu\phi である。したがって

□ϕ=∂μ∂μϕ=−kμkμϕ\Box\phi=\partial_\mu\partial^\mu\phi=-k_\mu k^\mu\phi

となり、方程式から

kμkμ=m2c2ℏ2⟺ω2=c2∣k∣2+m2c4ℏ2(4.37)k_\mu k^\mu=\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\qquad\Longleftrightarrow\qquad \omega^2=c^2\left\vert \bm{k}\right\vert ^2+\frac{m^2c^4}{\hbar^2}\tag{4.37}

を得る。E=ℏωE=\hbar\omega、p=ℏk\bm{p}=\hbar\bm{k} と読めば、これは第5章で導く式と同じ形である。

E2=(pc)2+(mc2)2E^2=(pc)^2+(mc^2)^2

(4.37) の左の式は「4元波数のノルムが一定」という不変な条件なので、分散関係がどの慣性系でも同じ形になることは計算するまでもなく分かる。

例題 4.5 Klein–Gordon 方程式の波束の速さ ★★

オリジナル分散関係 (4.37) について、次の位相速度と群速度を求めよ。

vp=ω∣k∣,vg=dωd∣k∣v_{\mathrm p}=\frac{\omega}{\left\vert \bm{k}\right\vert },\qquad v_{\mathrm g}=\frac{d \omega}{d \left\vert \bm{k}\right\vert }

さらに vpvg=c2v_{\mathrm p}v_{\mathrm g}=c^2 と vg<cv_{\mathrm g}<c を示せ。∣k∣=mc/ℏ\left\vert \bm{k}\right\vert =mc/\hbar のときの vg/cv_{\mathrm g}/c を求めよ。

解答

k=∣k∣k=\left\vert \bm{k}\right\vert と書く。ω=c2k2+m2c4/ℏ2\omega=\sqrt{c^2k^2+m^2c^4/\hbar^2} を波数で微分すると

vg=dωdk=12ω⋅2c2k=c2kω.v_{\mathrm g}=\frac{d \omega}{d k}=\frac{1}{2\omega}\cdot2c^2k=\frac{c^2k}{\omega}.

したがって vpvg=ωk⋅c2kω=c2v_{\mathrm p}v_{\mathrm g}=\dfrac{\omega}{k}\cdot\dfrac{c^2k}{\omega}=c^2 である。また m>0m>0 のとき ω>ck\omega>ck である。そのため vg=c⋅ck/ω<cv_{\mathrm g}=c\cdot ck/\omega<c となる。これと積の関係から、位相速度は vp>cv_{\mathrm p}>c である。

位相速度が cc を超えても、エネルギーや信号を運ぶ波束は群速度で進むので因果律とは矛盾しない。k=mc/ℏk=mc/\hbar のとき

ω=c2m2c2ℏ2+m2c4ℏ2=2 mc2ℏ\omega=\sqrt{\frac{c^2m^2c^2}{\hbar^2}+\frac{m^2c^4}{\hbar^2}}=\frac{\sqrt2\,mc^2}{\hbar}

で、

vgc=ckω=mc2/ℏ2 mc2/ℏ=12≈0.707.\frac{v_{\mathrm g}}{c}=\frac{ck}{\omega}=\frac{mc^2/\hbar}{\sqrt2\,mc^2/\hbar}=\frac{1}{\sqrt2}\approx0.707 .

第5章の言葉では、運動量 p=mcp=mc の粒子の速さ v=pc2/Ev=pc^2/E を考える。それが c/2c/\sqrt2 になることに対応する。

確認テスト

オリジナル

  1. 4.4-1 ∂μxμ\partial_\mu x^\mu と ∂μxν\partial_\mu x^\nu を求めよ。
  2. 4.4-2 スカラー場 s=xνxνs=x_\nu x^\nu について、∂μs=2xμ\partial_\mu s=2x_\mu を示せ。また □s=8\Box s=8 を示せ。
  3. 4.4-3 kμk^\mu を光的な定数4元ベクトル(k⋅k=0k\cdot k=0)とする。ff を任意の2回微分可能な関数とする。このとき ϕ(x)=f(kμxμ)\phi(x)=f(k_\mu x^\mu) が、波動方程式 □ϕ=0\Box\phi=0 を満たすことを示せ。
  4. 4.4-4 AμA^\mu がベクトル場のとき、4元発散 ∂μAμ\partial_\mu A^\mu がスカラー場であることを、(4.30) を使って証明せよ。
  5. 4.4-5 質量 mm の Klein–Gordon 方程式の平面波を考える。ω=2mc2/ℏ\omega=2mc^2/\hbar のときの、波数の大きさと群速度 vg/cv_{\mathrm g}/c を求めよ。

木下の勉強ステータス

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