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Newton 極限

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第9章 測地線
目次
  1. 3つの仮定
  2. 測地線の方程式の主要項と
  3. 時計の進み方と固有時の最大
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第9章 §9.2 ★★★ ゆっくり動く粒子の測地線は Newton の運動方程式に戻り、重力ポテンシャルは g00g_{00} に入る

3つの仮定

測地線の方程式 (9.6) が重力の理論として正しいなら、太陽系の中の惑星や地上の物体のように、重力が弱く運動が遅い場合には Newton の運動方程式

d2xdt2=−∇Φ(9.11)\frac{\mathrm{d}^2\bm{x}}{\mathrm{d} t^2}=-\nabla\Phi\tag{9.11}

に戻らなければならない。ここで Φ\Phi は Newton の重力ポテンシャルで、無限遠で0とする(第7章と同じ)。この要請から、計量のどの成分が Φ\Phi とどう結びつくかが決まる。座標を xμ=(ct,x)x^\mu=(ct,\bm{x}) とし、次の3つを仮定する。

  1. (i) 遅い運動:粒子の速さ v=∣dx/dt∣v=\left\vert \mathrm{d}\bm{x}/\mathrm{d} t\right\vert は光速よりずっと小さい。4元速度の成分は ui/u0=vi/c≪1u^i/u^0=v^i/c\ll1 である。
  2. (ii) 静的な場:計量は時刻によらず(∂0gμν=0\partial_0g_{\mu\nu}=0)、時間と空間の混ざった成分を持たない(g0i=0g_{0i}=0)。
  3. (iii) 弱い場:計量は平らな計量からのずれが小さく、gμν=ημν+hμνg_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu}+h_{\mu\nu}(∣hμν∣≪1\left\vert h_{\mu\nu}\right\vert \ll1)と書ける。ずれについて1次の項だけを残す。

測地線の方程式の主要項と g00g_{00}

測地線の方程式の空間成分を、u0u^0 を含む項と含まない項に分けて書くと

d2xidτ2=−Γi00(u0)2−2Γi0ju0uj−Γijkujuk\frac{\mathrm{d}^2x^i}{\mathrm{d}\tau^2}=-\Gamma^i{}_{00}(u^0)^2-2\Gamma^i{}_{0j}u^0u^j-\Gamma^i{}_{jk}u^ju^k

である。仮定 (i) で uj∼(v/c)u0u^j\sim(v/c)u^0 なので、第1項に比べた大きさは次のとおりである。

  • 第2項は v/cv/c 倍しかない。
  • 第3項は (v/c)2(v/c)^2 倍しかない。

そこで第1項だけを残す。

Γi00\Gamma^i{}_{00} を (9.1) から計算する。仮定 (ii) で ∂0g=0\partial_0g=0 なので

Γi00=12giσ(∂0gσ0+∂0gσ0−∂σg00)=−12giσ∂σg00=−12gij∂jg00\Gamma^i{}_{00}=\frac12g^{i\sigma}\bigl(\partial_0g_{\sigma0}+\partial_0g_{\sigma0}-\partial_\sigma g_{00}\bigr)=-\frac12g^{i\sigma}\partial_\sigma g_{00}=-\frac12g^{ij}\partial_jg_{00}

となる(最後に σ=0\sigma=0 の項が ∂0g00=0\partial_0g_{00}=0 で消えることを使った)。仮定 (iii) では

gij=−δij+O(h),∂jg00=∂jh00g^{ij}=-\delta_{ij}+\mathcal{O}(h),\qquad \partial_jg_{00}=\partial_jh_{00}

なので、hh の1次までで

Γi00=12 ∂ih00(9.12)\Gamma^i{}_{00}=\frac12\,\partial_ih_{00}\tag{9.12}

である。ここで ∂i=∂/∂xi\partial_i=\partial/\partial x^i は通常の空間微分である。

次に、τ\tau による微分を tt による微分に直す。u0=c dt/dτu^0=c\,\mathrm{d} t/\mathrm{d}\tau で、

d2xidτ2=(dtdτ)2d2xidt2+d2tdτ2dxidt\frac{\mathrm{d}^2x^i}{\mathrm{d}\tau^2}=\Bigl(\frac{d t}{d \tau}\Bigr)^2\frac{\mathrm{d}^2x^i}{\mathrm{d} t^2}+\frac{\mathrm{d}^2t}{\mathrm{d}\tau^2}\frac{d x^i}{d t}

である。2つの項の大きさは次のように比べられる。

  • 第1項の係数は dt/dτ=1+O(h,v2/c2)\mathrm{d} t/\mathrm{d}\tau=1+\mathcal{O}(h,v^2/c^2) で、ほぼ1である。
  • 第2項は d2t/dτ2\mathrm{d}^2t/\mathrm{d}\tau^2 に速度 vv を掛けたものである。この2階微分はそれ自体が hh と v/cv/c の積の大きさなので(確認テスト 9.2-3)、第2項は第1項に比べて小さい。

主要項だけを残すと

d2xidt2=−c2 Γi00=−c22 ∂ih00(9.13)\frac{\mathrm{d}^2x^i}{\mathrm{d} t^2}=-c^2\,\Gamma^i{}_{00}=-\frac{c^2}{2}\,\partial_ih_{00}\tag{9.13}

を得る。これを Newton の運動方程式 (9.11) と比べると

c22h00=Φ+(定数)\frac{c^2}{2}h_{00}=\Phi+(\text{定数})

となる。無限遠で計量が平らになる(h→0h\to0)ことから、定数は0である。

定理 9.5(Newton 極限 ★★★)

遅い運動・静的な場・弱い場の仮定のもとで、測地線の方程式が Newton の運動方程式 x¨=−∇Φ\ddot{\bm{x}}=-\nabla\Phi に一致するための条件は

g00≃1+2Φc2(9.14)g_{00}\simeq1+\frac{2\Phi}{c^2}\tag{9.14}

である。この近似では、粒子の運動を決めるのは g00g_{00} だけである。空間成分 gijg_{ij} のずれは、v2/c2v^2/c^2 だけ小さい補正にしか現れない。

第7章 §7.4 で Rindler 座標の線素から予告した g00≃1+2Φ/c2g_{00}\simeq1+2\Phi/c^2 が、ここで測地線の方程式から導かれた。gijg_{ij} がどう決まるかはこの議論からは分からない。それは場の方程式(第11章の Einstein 方程式)が決める量で、球対称の星のまわりでは

gij≃−(1−2Φc2)δijg_{ij}\simeq-\Bigl(1-\frac{2\Phi}{c^2}\Bigr)\delta_{ij}

になる(第11章 §11.2、第12章)。空間成分は遅い粒子にはほとんど影響しないが、光速で動く光の進路には g00g_{00} と同じ大きさで入る(§9.4)。

時計の進み方と固有時の最大

g00g_{00} が Newton のポテンシャルを含むことは、時計の進み方の言葉で読むことができる。弱い場の中を速さ vv で動く時計の固有時は、gij≃−(1+O(Φ/c2))δijg_{ij}\simeq-(1+\mathcal{O}(\Phi/c^2))\delta_{ij} として

dτdt=g00−(1+O(Φc2))v2c2≃1+Φc2−v22c2(9.15)\frac{d \tau}{d t}=\sqrt{g_{00}-\Bigl(1+\mathcal{O}\bigl(\tfrac{\Phi}{c^2}\bigr)\Bigr)\frac{v^2}{c^2}} \simeq1+\frac{\Phi}{c^2}-\frac{v^2}{2c^2}\tag{9.15}

である(Φ/c2\Phi/c^2 と v2/c2v^2/c^2 の1次まで)。これは第7章 §7.3 の時計の進みの式と同じである。重力ポテンシャルの低い所(Φ\Phi が負で大きい所)の時計は遅れ、速く動く時計も遅れる。

これを固有時の停留(定理 9.4)に入れると、Newton 力学との関係がよく見える。時刻 tAt_A から tBt_B までの世界線の固有時は

τ=∫tAtB(1+Φc2−v22c2)dt=(tB−tA)−1mc2∫tAtB(12mv2−mΦ)dt\tau=\int_{t_A}^{t_B}\Bigl(1+\frac{\Phi}{c^2}-\frac{v^2}{2c^2}\Bigr)\mathrm{d} t=(t_B-t_A)-\frac{1}{mc^2}\int_{t_A}^{t_B}\Bigl(\frac12mv^2-m\Phi\Bigr)\mathrm{d} t

となる。最後の積分は Newton 力学の作用 ∫(T−V) dt\int(T-V)\,\mathrm{d} t(V=mΦV=m\Phi)そのものである。固有時を最大にすることは、Newton の作用を停留させることと同じになる。

投げ上げた物体の放物線の軌道では、高い所ほど時計が速く進むことによる固有時の増加と、速く動くことによる固有時の減少が釣り合っている、と読むことができる。この見方を作用の言葉で詳しく扱ったものは虎の巻『解析力学から様々な理論分野を組み立てる』第2部第12章にある。

近似の大きさ

地表で ∣Φ∣/c2≈7×10−10\left\vert \Phi\right\vert /c^2\approx7\times10^{-10}、太陽の表面で 2×10−62\times10^{-6} である(例題 9.2)。Newton 極限で捨てた項は、残した項に比べて ∣Φ∣/c2\left\vert \Phi\right\vert /c^2 や v2/c2v^2/c^2 の大きさである。太陽系の中では、どれも 10−610^{-6} 以下である。水星の近日点移動(第12章 §12.2)は、この小さな補正が長い時間をかけて積み重なって観測にかかる例である。

例題 9.2 地球・太陽・中性子星の表面での弱い場の目安 ★★

オリジナル次の3つの天体の表面での ∣Φ∣/c2=GM/(Rc2)\left\vert \Phi\right\vert /c^2=GM/(Rc^2) を計算し、Newton 極限の仮定 (iii) がどこまで成り立つかを判定せよ。

  1. 地球:GM⊕=3.986004×1014 m3/s2GM_\oplus=3.986004\times10^{14}\,\mathrm{m^3/s^2}、R⊕=6.371×106 mR_\oplus=6.371\times10^6\,\mathrm{m}。
  2. 太陽:GM⊙=1.32712×1020 m3/s2GM_\odot=1.32712\times10^{20}\,\mathrm{m^3/s^2}、R⊙=6.957×108 mR_\odot=6.957\times10^8\,\mathrm{m}。
  3. 中性子星:質量 1.4M⊙1.4M_\odot、半径 12 km12\,\mathrm{km}。

さらに地球について、(9.13) から表面の重力加速度を求め、地表に静止した時計が無限遠に静止した時計に比べて1日に何秒遅れるかを求めよ。c=2.99792458×108 m/sc=2.99792458\times10^8\,\mathrm{m/s} とする。

解答

c2=8.98755×1016 m2/s2c^2=8.98755\times10^{16}\,\mathrm{m^2/s^2} である。

  1. 地球:GM⊕/(R⊕c2)=3.986004×1014/(6.371×106×8.98755×1016)=6.961×10−10GM_\oplus/(R_\oplus c^2)=3.986004\times10^{14}/(6.371\times10^6\times8.98755\times10^{16})=6.961\times10^{-10}。
  2. 太陽:1.32712×1020/(6.957×108×8.98755×1016)=2.122×10−61.32712\times10^{20}/(6.957\times10^8\times8.98755\times10^{16})=2.122\times10^{-6}。
  3. 中性子星:GM⊙/c2=1.32712×1020/8.98755×1016=1476.6 mGM_\odot/c^2=1.32712\times10^{20}/8.98755\times10^{16}=1476.6\,\mathrm m である。したがって

1.4×1476.612000=0.172.\frac{1.4\times1476.6}{12000}=0.172 .

地球と太陽では h00=2Φ/c2h_{00}=2\Phi/c^2 が小さい。地球で 10−910^{-9}、太陽で 10−610^{-6} の程度で、仮定 (iii) は十分よく成り立つ。

中性子星では h00≈−0.34h_{00}\approx-0.34 で、1に比べて小さくない。2次の項(h2≈0.1h^2\approx0.1)を捨てることができないので、Newton 極限は使えない。中性子星の表面は Schwarzschild 解(第12章)で扱う必要がある。

地球の重力加速度を求める。Φ=−GM/r\Phi=-GM/r から h00=−2GM/(c2r)h_{00}=-2GM/(c^2r) で、(9.13) の動径成分は

d2rdt2=−c22∂h00∂r=−c22⋅2GMc2r2=−GMr2\frac{\mathrm{d}^2r}{\mathrm{d} t^2}=-\frac{c^2}{2}\frac{\partial h_{00}}{\partial r}=-\frac{c^2}{2}\cdot\frac{2GM}{c^2r^2}=-\frac{GM}{r^2}

である。地表 r=R⊕r=R_\oplus では

GM⊕R⊕2=3.986004×1014(6.371×106)2=9.820 m/s2\frac{GM_\oplus}{R_\oplus^2}=\frac{3.986004\times10^{14}}{(6.371\times10^6)^2}=9.820\,\mathrm{m/s^2}

を得る(地球の自転による遠心力を除いた値)。

静止した時計は、(9.15) で v=0v=0 として

dτdt=1+Φc2=1−6.961×10−10\frac{d \tau}{d t}=1+\frac{\Phi}{c^2}=1-6.961\times10^{-10}

である。1日(86400 s)では

6.961×10−10×86400 s=6.01×10−5 s=60.1 μs6.961\times10^{-10}\times86400\,\mathrm s=6.01\times10^{-5}\,\mathrm s=60.1\,\mu\mathrm s

だけ無限遠の時計より遅れる。

確認テスト

オリジナル

  1. 9.2-1 太陽の表面に静止した時計は、太陽から十分遠くに静止した時計に比べて1年(365.25 日)に何秒遅れるか。例題 9.2 の ∣Φ∣/c2\left\vert \Phi\right\vert /c^2 を使え。
  2. 9.2-2 第7章の Rindler 座標の線素

ds2=N2c2dT2−dξ2,N=1+αξc2\mathrm{d} s^2=N^2c^2\mathrm{d} T^2-\mathrm{d}\xi^2,\qquad N=1+\frac{\alpha\xi}{c^2}

を考える(y,zy,z は省く)。x0=cTx^0=cT として、Christoffel 記号は Γξ00=Nα/c2\Gamma^\xi{}_{00}=N\alpha/c^2 である(第8章 §8.3)。高さ ξ\xi で静止状態から放した粒子について、次に答えよ。

  1. (a) 座標の加速度 d2ξ/dT2\mathrm{d}^2\xi/\mathrm{d} T^2 を求めよ。

  2. (b) その場所に静止した観測者が、自分の時計と物差しで測る加速度を求めよ。

  3. (c) αξ≪c2\alpha\xi\ll c^2 で、Φ=αξ\Phi=\alpha\xi の一様な重力に戻ることを確かめよ。

  4. 9.2-3 仮定 (ii) の静的な計量(∂0gμν=0\partial_0g_{\mu\nu}=0、g0i=0g_{0i}=0)を考える。

    1. (a) 測地線の方程式の時間成分が d(g00 dt/dτ)/dτ=0\mathrm{d}(g_{00}\,\mathrm{d} t/\mathrm{d}\tau)/\mathrm{d}\tau=0 と同値であることを示せ。
    2. (b) 弱い場で g00 dt/dτ≃1+Φ/c2+v2/(2c2)g_{00}\,\mathrm{d} t/\mathrm{d}\tau\simeq1+\Phi/c^2+v^2/(2c^2) となることを示せ。
    3. (c) (b) と Newton 力学のエネルギー保存 12v2+Φ=一定\frac12v^2+\Phi=\text{一定} との関係を述べよ。
  5. 9.2-4 次に答えよ。

    1. (a) 地表で高さが 1 m 違う2つの時計の進み方の比は 1+gh/c21+gh/c^2 である。重力加速度を g=9.81 m/s2g=9.81\,\mathrm{m/s^2} として、ずれ gh/c2gh/c^2 を求めよ。
    2. (b) 例題 9.2 の中性子星の表面について、2つの値を比べ、差が何 % かを求めよ。1つは弱い場の式 dτ/dt≃1+Φ/c2\mathrm{d}\tau/\mathrm{d} t\simeq1+\Phi/c^2 である。もう1つは g00=1+2Φ/c2g_{00}=1+2\Phi/c^2 をそのまま使った g00\sqrt{g_{00}} である。

木下の勉強ステータス

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