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最内安定円軌道と光子球

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第13章 ブラックホールと重力波
目次
  1. 円軌道の保存量
  2. 安定性と最内安定円軌道
  3. 光子球
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第13章 §13.2 ★★★ 有効ポテンシャルに加わる逆3乗の項のため、安定な円軌道は r=6GM/c2r=6GM/c^2 より内側に無く、光は r=3GM/c2r=3GM/c^2 で不安定な円軌道を描く

円軌道の保存量

第12章 §12.2 で、Schwarzschild 時空の円軌道は Veff′(r)=0V_{\mathrm{eff}}'(r)=0 の点で、その半径と角運動量が

GMr2−L2r+3GML2c2=0GMr^2-L^2r+\frac{3GML^2}{c^2}=0

で結ばれることを見た。今度はこれを L2L^2 について解き、円軌道の角運動量とエネルギーを半径 rr の関数として表す。L2(r−3GM/c2)=GMr2L^2(r-3GM/c^2)=GMr^2 から

L2=GMr2r−3GM/c2(13.15)L^2=\frac{GMr^2}{r-3GM/c^2}\tag{13.15}

である。この式から次の2つがわかる。

  • r≫GM/c2r\gg GM/c^2 では L2≃GMrL^2\simeq GMr となる。これは Newton の円軌道 L=rGM/rL=r\sqrt{GM/r} と同じである。
  • r→3GM/c2r\to3GM/c^2 では L2→∞L^2\to\infty となる。r≤3GM/c2r\le3GM/c^2 には粒子の円軌道が無い。

エネルギーは、円軌道では dr/dτ=0\mathrm{d} r/\mathrm{d}\tau=0 なので (13.5) から c2(E2−1)/2=Veff(r)c^2(\mathcal E^2-1)/2=V_{\mathrm{eff}}(r) である。(13.15) を入れて整理する。

Veff=−GMr+L22r2(1−2GMc2r)=−GMr+GM2r 1−2GM/(c2r)1−3GM/(c2r)V_{\mathrm{eff}}=-\frac{GM}{r}+\frac{L^2}{2r^2}\Bigl(1-\frac{2GM}{c^2r}\Bigr) =-\frac{GM}{r}+\frac{GM}{2r}\,\frac{1-2GM/(c^2r)}{1-3GM/(c^2r)}

であり、E2=1+2Veff/c2\mathcal E^2=1+2V_{\mathrm{eff}}/c^2 に入れて通分すると

E2=(1−rs/r)21−3rs/(2r)(13.16)\mathcal E^2=\frac{\bigl(1-r_{\mathrm s}/r\bigr)^2}{1-3r_{\mathrm s}/(2r)}\tag{13.16}

を得る(分子の展開は確認テスト 13.2-2 で確かめる)。

安定性と最内安定円軌道

円軌道が安定かどうかは、VeffV_{\mathrm{eff}} がそこで極小か極大かで決まる。2階微分は

Veff′′(r)=−2GMr3+3L2r4−12GML2c2r5V_{\mathrm{eff}}''(r)=-\frac{2GM}{r^3}+\frac{3L^2}{r^4}-\frac{12GML^2}{c^2r^5}

である。円軌道の L2L^2 (13.15) を入れる。

定理 13.5(最内安定円軌道 ★★★)

半径 rr の円軌道で

Veff′′(r)=GM (r−6GM/c2)r3 (r−3GM/c2)(13.17)V_{\mathrm{eff}}''(r)=\frac{GM\,(r-6GM/c^2)}{r^3\,(r-3GM/c^2)}\tag{13.17}

である。したがって円軌道は r>6GM/c2r>6GM/c^2 で安定、3GM/c2<r<6GM/c23GM/c^2<r<6GM/c^2 で不安定である。安定な円軌道の最も内側の半径

rISCO=6GMc2=3rs(13.18)r_{\mathrm{ISCO}}=\frac{6GM}{c^2}=3r_{\mathrm s}\tag{13.18}

を最内安定円軌道(ISCO)と呼ぶ。そこでは L2=12G2M2/c2L^2=12G^2M^2/c^2、E=8/9\mathcal E=\sqrt{8/9} である。

証明

(13.15) の L2L^2 を入れ、分母を r5(r−3GM/c2)r^5(r-3GM/c^2) にそろえて書くと、分子は

−2GMr2(r−3GMc2)+3GMr3−12G2M2r2c2=GMr3−6G2M2r2c2=GMr2(r−6GMc2)-2GMr^2\Bigl(r-\frac{3GM}{c^2}\Bigr)+3GMr^3-\frac{12G^2M^2r^2}{c^2} =GMr^3-\frac{6G^2M^2r^2}{c^2}=GMr^2\Bigl(r-\frac{6GM}{c^2}\Bigr)

である。各項のそろえ方は次のとおりである。

  • 第1項は、−2GM/r3-2GM/r^3 に r5(r−3GM/c2)/r5r^5(r-3GM/c^2)/r^5 を掛けた形にそろえた。
  • 第2項と第3項は、L2r2(r−3GM/c2)=GMr4L^2r^2(r-3GM/c^2)=GMr^4 を使った。

分母と合わせて (13.17) を得る。r>3GM/c2r>3GM/c^2 では分母は正である。したがって V′′V'' の符号は r−6GM/c2r-6GM/c^2 の符号に一致する。

r=6GM/c2r=6GM/c^2 を (13.15) と (13.16) に入れると

L2=GM⋅36G2M2/c43GM/c2=12G2M2c2,E2=(1−1/3)21−1/2=89\begin{aligned}L^2&=\frac{GM\cdot36G^2M^2/c^4}{3GM/c^2}=\frac{12G^2M^2}{c^2},\\ \mathcal E^2&=\frac{(1-1/3)^2}{1-1/2}=\frac89\end{aligned}

である。

第12章では、円軌道の半径を2つの根 r±r_\pm として求めた。安定なものが r+r_+、不安定なものが r−r_- である。その言葉で言い直すと次のようになる。

  • L2=12G2M2/c2L^2=12G^2M^2/c^2 では、2つの根が 6GM/c26GM/c^2 で重なる。
  • それより小さな LL では、円軌道そのものが無い。

図 13.2 は3つの LL で有効ポテンシャルを比べたものである。

図

図 13.2 有効ポテンシャル (13.5)。L2L^2 の単位は (GM/c)2(GM/c)^2。L2=16L^2=16 では極小(安定な円軌道 r=12GM/c2r=12GM/c^2)と極大(不安定な円軌道 r=4GM/c2r=4GM/c^2)がある。L2=12L^2=12 では2つが r=6GM/c2r=6GM/c^2 で重なって変曲点になり(ISCO)、L2=10L^2=10 では極値が無く、粒子は中心へ落ちる。

ISCO はブラックホールのまわりのガスの円盤(降着円盤)の内縁を決める。ガスは粘性で角運動量を外へ運びながら、ほぼ円軌道を保ってゆっくり内側へ移り、ISCO に達すると安定な円軌道を失って地平面へ落ちる。

ガスが無限遠の静止状態から ISCO まで移る間に放つエネルギーは、静止エネルギーあたり 1−EISCO=1−8/9=0.05721-\mathcal E_{\mathrm{ISCO}}=1-\sqrt{8/9}=0.0572 で、静止エネルギーの約 5.7%5.7\% である。水素の核融合で取り出せるのが静止エネルギーの約 0.7%0.7\% であることと比べると、ブラックホールへの降着は桁違いに効率のよいエネルギー源である。クエーサーの明るさはこの機構で説明される。

例題 13.2 ISCO の公転の振動数 ★★

オリジナル質量 MM のブラックホールの ISCO を回る粒子を考える。無限遠の観測者の時計で測った公転の振動数 forbf_{\mathrm{orb}} を MM で表せ。M=10M⊙M=10M_\odot と M=65M⊙M=65M_\odot の値を求めよ。

連星が重力波を出すとき、重力波の振動数は公転の振動数の2倍になる(§13.4)。重力波の振動数も求めよ。

解答

第12章 §12.2 で、円軌道の座標時刻での角速度は近似なしに (dφ/dt)2=GM/r3(\mathrm{d}\varphi/\mathrm{d} t)^2=GM/r^3 を満たすことを見た。r=6GM/c2r=6GM/c^2 を入れると

forb=12πGM(6GM/c2)3=c32π⋅63/2 GMf_{\mathrm{orb}}=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{GM}{(6GM/c^2)^3}}=\frac{c^3}{2\pi\cdot6^{3/2}\,GM}

である。M=10M⊙M=10M_\odot では GM=1.327×1021 m3/s2GM=1.327\times10^{21}\,\mathrm{m^3/s^2} で

forb=(2.998×108)32π×14.70×1.327×1021=220 Hzf_{\mathrm{orb}}=\frac{(2.998\times10^8)^3}{2\pi\times14.70\times1.327\times10^{21}}=220\,\mathrm{Hz}

で、重力波の振動数は 440 Hz440\,\mathrm{Hz} である。forb∝1/Mf_{\mathrm{orb}}\propto1/M なので、M=65M⊙M=65M_\odot では

forb=220×1065=33.8 Hzf_{\mathrm{orb}}=220\times\frac{10}{65}=33.8\,\mathrm{Hz}

で、重力波は 67.6 Hz67.6\,\mathrm{Hz} である。地上の重力波の検出器が感度をもつ 10 Hz10\,\mathrm{Hz} から数 kHz の帯域は、太陽の数倍から数百倍の質量の天体の合体に対応する。

光子球

光の軌道は第12章 §12.3 の式

(dudφ)2=1b2−u2(1−rsu),u=1r(13.19)\Bigl(\frac{d u}{d \varphi}\Bigr)^2=\frac{1}{b^2}-u^2\bigl(1-r_{\mathrm s}u\bigr),\qquad u=\frac1r\tag{13.19}

に従う。bb は衝突径数である。右辺の第2項を半径の関数として

W(r)≡1r2(1−rsr)W(r)\equiv\frac{1}{r^2}\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)

と書くと、(13.19) は (du/dφ)2=1/b2−W(r)(\mathrm{d} u/\mathrm{d}\varphi)^2=1/b^2-W(r) で、光は W(r)≤1/b2W(r)\le1/b^2 の範囲しか動けない。WW は光にとっての有効ポテンシャルの役割を果たす。W′(r)=−2/r3+3rs/r4=0W'(r)=-2/r^3+3r_{\mathrm s}/r^4=0 から、WW は

rph=32rs=3GMc2(13.20)r_{\mathrm{ph}}=\frac32r_{\mathrm s}=\frac{3GM}{c^2}\tag{13.20}

で最大値

W(rph)=427rs2W(r_{\mathrm{ph}})=\frac{4}{27r_{\mathrm s}^2}

をとる。両端の r→rsr\to r_{\mathrm s} と r→∞r\to\infty では、どちらも 0 に近づく。

1/b2=W(rph)1/b^2=W(r_{\mathrm{ph}}) の光は r=rphr=r_{\mathrm{ph}} に円軌道を描くことができる。この球面を光子球と呼ぶ。WW の最大の点なので、この円軌道は不安定で、わずかにずれた光は渦を巻いて外へ逃げるか内へ落ちる。円軌道の条件 (13.15) が r→3GM/c2r\to3GM/c^2 で L→∞L\to\infty になったのは、粒子の円軌道が光速に近づく極限で光子球に達することを表している。

対応する衝突径数

bc=1W(rph)=332 rs=33 GMc2≈5.20 GMc2(13.21)b_{\mathrm c}=\frac{1}{\sqrt{W(r_{\mathrm{ph}})}}=\frac{3\sqrt3}{2}\,r_{\mathrm s}=\frac{3\sqrt3\,GM}{c^2}\approx5.20\,\frac{GM}{c^2}\tag{13.21}

を臨界の衝突径数と呼ぶ。遠くから来た光は、衝突径数の大きさで次の2つに分かれる。

  • b>bcb>b_{\mathrm c} の光は、W=1/b2W=1/b^2 の点で跳ね返されて遠くへ戻る。第12章で曲がりの角を求めたのはこの場合で、b≫bcb\gg b_{\mathrm c} である。
  • b<bcb<b_{\mathrm c} の光は、WW の山を越えて地平面に落ちる。

この結果を逆向きに使うと、ブラックホールの見え方がわかる。ブラックホールの向こう側に明るい光源(光るガス)があるとき、観測者から見て中心から bcb_{\mathrm c} 以内の方向へ視線を逆にたどると、その光線は地平面に吸い込まれる。

そのため、その方向からは光が届かず、半径 bcb_{\mathrm c} の暗い円盤が見える。これをブラックホールの影と呼ぶ。影の半径は地平面の半径 rsr_{\mathrm s} の 2.6 倍で、光の曲がりのため地平面より大きく見える。

例題 13.3 M87 の中心のブラックホールの影 ★★

オリジナル銀河 M87 の中心のブラックホールの質量を M=6.5×109M⊙M=6.5\times10^9M_\odot、距離を D=16.8 MpcD=16.8\,\mathrm{Mpc} とする。1 pc=3.086×1016 m1\,\mathrm{pc}=3.086\times10^{16}\,\mathrm m である。影の視直径 2bc/D2b_{\mathrm c}/D をマイクロ秒角(μas\mu\mathrm{as})で求めよ。

解答

太陽の GM⊙/c2=1.477 kmGM_\odot/c^2=1.477\,\mathrm{km} を使うと

GMc2=6.5×109×1.477×103 m=9.60×1012 m,D=16.8×106×3.086×1016 m=5.18×1023 m\begin{aligned}\frac{GM}{c^2}&=6.5\times10^9\times1.477\times10^3\,\mathrm m=9.60\times10^{12}\,\mathrm m,\\ D&=16.8\times10^6\times3.086\times10^{16}\,\mathrm m=5.18\times10^{23}\,\mathrm m\end{aligned}

である。視直径は

2bcD=2×33×9.60×10125.18×1023=1.92×10−10 rad\frac{2b_{\mathrm c}}{D}=\frac{2\times3\sqrt3\times9.60\times10^{12}}{5.18\times10^{23}}=1.92\times10^{-10}\,\mathrm{rad}

である。1 μas=4.848×10−12 rad1\,\mu\mathrm{as}=4.848\times10^{-12}\,\mathrm{rad} で割ると 39.7 μas39.7\,\mu\mathrm{as} を得る。Event Horizon Telescope が 2019 年に公表した M87 の中心の光の環の直径は 42±3 μas42\pm3\,\mu\mathrm{as} で、この値に近い。観測される環は影の縁をめぐる光で作られ、環の大きさは主に bcb_{\mathrm c} で決まるので、環の直径からブラックホールの質量を読み取ることができる。

確認テスト

オリジナル

  1. 13.2-1 光子球 r=3GM/c2r=3GM/c^2 より内側に、質量のある粒子の円軌道が無い理由を (13.15) から1文で述べよ。
  2. 13.2-2 (13.16) を導け。さらに E=1\mathcal E=1 となる円軌道(無限遠から静止状態で落ちてきた粒子がぎりぎり捕らえられる円軌道)の半径を求めよ。
  3. 13.2-3 r=12GM/c2r=12GM/c^2、L2=16G2M2/c2L^2=16G^2M^2/c^2 の円軌道(図 13.2)を考える。定理 13.5 の Veff′′V_{\mathrm{eff}}'' の式 (13.17) を、この円軌道について数値で確かめよ。また、この軌道の近くで動径の向きに小さく振動するときの角振動数(固有時で測る)を c3/(GM)c^3/(GM) の単位で求めよ。
  4. 13.2-4 天の川銀河の中心のブラックホールの質量を M=4.0×106M⊙M=4.0\times10^6M_\odot、距離を D=8.2 kpcD=8.2\,\mathrm{kpc} とする。影の視直径を μas\mu\mathrm{as} で求めよ。

木下の勉強ステータス

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