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宇宙論的赤方偏移と Hubble の法則

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第14章 宇宙論の入口
目次
  1. 赤方偏移はスケール因子の比
  2. Hubble の法則
  3. 光度距離
  4. 背景放射の温度
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第14章 §14.3 ★★ 遠くの銀河の光の波長は、光が出た時刻と届いた時刻のスケール因子の比だけ伸びる。距離との関係は低い赤方偏移で Hubble の法則になる

赤方偏移はスケール因子の比

共動座標 χe\chi_{\mathrm e} にいる銀河が、時刻 tet_{\mathrm e} に光を出す。この光が、原点の観測者に時刻 t0t_0 に届くとする。等方性により、光は動径方向にまっすぐ進むので、θ,ϕ\theta,\phi は一定である。光的な世界線では ds2=0\mathrm{d} s^2=0 なので、(14.5) の形の計量から c2dt2=a2dχ2c^2\mathrm{d} t^2=a^2\mathrm{d}\chi^2、原点へ向かう光では

c dta(t)=−dχ(14.22)\frac{c\,\mathrm{d} t}{a(t)}=-\mathrm{d}\chi\tag{14.22}

である。銀河から原点までを積分すると

∫tet0c dta(t)=χe(14.23)\int_{t_{\mathrm e}}^{t_0}\frac{c\,\mathrm{d} t}{a(t)}=\chi_{\mathrm e}\tag{14.23}

を得る。

光の波の2つの山を考える。

  • 1つの山が tet_{\mathrm e} に出て、t0t_0 に届く。
  • 次の山が te+δtet_{\mathrm e}+\delta t_{\mathrm e} に出て、t0+δt0t_0+\delta t_0 に届く。

銀河の共動座標 χe\chi_{\mathrm e} は変わらないので、次の山についても (14.23) の右辺は同じである。2つの式の差をとると

∫t0t0+δt0c dta−∫tete+δtec dta=0\int_{t_0}^{t_0+\delta t_0}\frac{c\,\mathrm{d} t}{a}-\int_{t_{\mathrm e}}^{t_{\mathrm e}+\delta t_{\mathrm e}}\frac{c\,\mathrm{d} t}{a}=0

である。δt\delta t は光の周期で、宇宙の膨張の時間尺度に比べてはるかに短いので、それぞれの積分の中で aa は一定とみなせる。したがって δt0/a(t0)=δte/a(te)\delta t_0/a(t_0)=\delta t_{\mathrm e}/a(t_{\mathrm e}) であり、波長 λ=c δt\lambda=c\,\delta t の比は

1+z≡λ0λe=a(t0)a(te)=1a(te)(14.24)1+z\equiv\frac{\lambda_0}{\lambda_{\mathrm e}}=\frac{a(t_0)}{a(t_{\mathrm e})}=\frac{1}{a(t_{\mathrm e})}\tag{14.24}

となる。zz を赤方偏移と呼ぶ。過去の宇宙は小さかったので z>0z>0 であり、光は赤い側へずれる。

この結果は、光が飛ぶ途中の各瞬間に波長が空間とともに伸びると読むこともできる。同じことを測地線の方程式から確かめると、光子の4元運動量の時間成分(エネルギー)が 1/a1/a に比例して減ることが分かる(確認テスト 14.3-1)。宇宙論的赤方偏移は、源の速度による Doppler 効果(第3章 §3.5)や重力赤方偏移(第9章 §9.4)とは別の、時空の時間変化による偏移である。ただし、近くの銀河では次に見るとおり Doppler 効果の式と同じ形になる。

Hubble の法則

固有距離 D(t)=a(t)χD(t)=a(t)\chi を時間で微分すると、共動観測者では χ\chi が一定なので

D˙=a˙ χ=a˙a D=H D(14.25)\dot D=\dot a\,\chi=\frac{\dot a}{a}\,D=H\,D\tag{14.25}

である。どの共動観測者から見ても、ほかの共動観測者は距離に比例する速さで遠ざかる。これが Hubble の法則であり、(14.25) は固有距離について厳密に成り立つ。

D>c/HD>c/H では D˙>c\dot D>c となるが、これは特殊相対論と矛盾しない。光速の制限は局所慣性系で測った速さについてのもので、遠く離れた2点の固有距離の変化率はこれに当たらないからである。

ただし、固有距離と D˙\dot D は直接は測れない。観測で得られるのは赤方偏移 zz と、明るさから推定する距離である。近くの銀河で両者を結ぶ。

光が飛ぶ時間を τ=t0−te\tau=t_0-t_{\mathrm e} と書く。これが 1/H01/H_0 に比べて短いとき、スケール因子を現在のまわりで展開する。

a(t0−τ)=1−H0τ−q02H02τ2+⋯ ,q≡−a¨aa˙2(14.26)a(t_0-\tau)=1-H_0\tau-\frac{q_0}{2}H_0^2\tau^2+\cdots,\qquad q\equiv-\frac{\ddot aa}{\dot a^2}\tag{14.26}

qq を減速パラメータと呼ぶ(膨張が減速していれば正)。(14.24) から

z=1a(t0−τ)−1=H0τ+(1+q02)H02τ2+⋯z=\frac{1}{a(t_0-\tau)}-1=H_0\tau+\Bigl(1+\frac{q_0}{2}\Bigr)H_0^2\tau^2+\cdots

であり、(14.23) の被積分関数も展開して

χ=∫0τc dτ′a(t0−τ′)=c∫0τ(1+H0τ′+⋯ )dτ′=cτ+c2H0τ2+⋯\chi=\int_0^\tau\frac{c\,\mathrm{d}\tau'}{a(t_0-\tau')}=c\int_0^\tau\bigl(1+H_0\tau'+\cdots\bigr)\mathrm{d}\tau'=c\tau+\frac c2H_0\tau^2+\cdots

を得る。1つ目の式を τ\tau について逆に解くと

H0τ=z−(1+q02)z2+⋯H_0\tau=z-\Bigl(1+\frac{q_0}{2}\Bigr)z^2+\cdots

である。これを2つ目に入れると、現在の固有距離 D0=χD_0=\chi(a(t0)=1a(t_0)=1)は

D0=cH0[z−1+q02z2+⋯ ](14.27)D_0=\frac{c}{H_0}\Bigl[z-\frac{1+q_0}{2}z^2+\cdots\Bigr]\tag{14.27}

となる。1次の項だけをとると

cz≃H0D(14.28)cz\simeq H_0D\tag{14.28}

で、v=czv=cz を後退速度と読めば、Doppler 効果の1次の式と Hubble の法則 v=H0Dv=H_0D の組み合わせになる。2次の項は q0q_0 を含むので、距離と赤方偏移の関係を少し遠くまで測ると、膨張が減速しているか加速しているかが分かる。

光度距離

遠くの天体の距離は、本来の明るさ(光度)LL が分かっている天体の見かけの明るさ(単位面積を単位時間に通るエネルギー)FF から

F=L4πdL2(14.29)F=\frac{L}{4\pi d_L^2}\tag{14.29}

で定める光度距離 dLd_L で測られる。

膨張する宇宙で dLd_L を求める。源を出た光は、現在の時刻には、源を中心とする半径 χe\chi_{\mathrm e}(共動座標)の球面全体に広がっている。この球面の現在の面積は (14.5) から 4πSk(χe)24\pi S_k(\chi_{\mathrm e})^2 である。さらに次の2つの理由で FF は小さくなる。

  1. 光子1個のエネルギーが 1/(1+z)1/(1+z) 倍になる((14.24))。
  2. 光子が届く時間間隔が δt0=(1+z)δte\delta t_0=(1+z)\delta t_{\mathrm e} に伸びるので、単位時間に届く光子の数が 1/(1+z)1/(1+z) 倍になる。

したがって F=L/[4πSk(χe)2(1+z)2]F=L/[4\pi S_k(\chi_{\mathrm e})^2(1+z)^2] であり、

dL=(1+z) Sk(χe)(14.30)d_L=(1+z)\,S_k(\chi_{\mathrm e})\tag{14.30}

である。共動座標は (14.23) で変数を aa から zz に替えて求める。1+z=1/a1+z=1/a から

dz=−daa2,dt=daaH\mathrm{d} z=-\frac{\mathrm{d} a}{a^2},\qquad \mathrm{d} t=\frac{\mathrm{d} a}{aH}

なので、c dt/a=−c dz/Hc\,\mathrm{d} t/a=-c\,\mathrm{d} z/H となり、

χe=∫0zc dz′H(z′),H(z)=H0Ωr(1+z)4+Ωm(1+z)3+Ωk(1+z)2+ΩΛ(14.31)\chi_{\mathrm e}=\int_0^z\frac{c\,\mathrm{d} z'}{H(z')},\qquad H(z)=H_0\sqrt{\Omega_{\mathrm r}(1+z)^4+\Omega_{\mathrm m}(1+z)^3+\Omega_k(1+z)^2+\Omega_\Lambda}\tag{14.31}

を得る。z≪1z\ll1 では Sk(χ)≃χS_k(\chi)\simeq\chi である。曲率の補正は z3z^3 の程度なので、(14.27) に 1+z1+z を掛けて

dL≃cH0[z+1−q02z2](14.32)d_L\simeq\frac{c}{H_0}\Bigl[z+\frac{1-q_0}{2}z^2\Bigr]\tag{14.32}

となる(確認テスト 14.3-3)。同じ zz で比べると、加速している宇宙(q0<0q_0<0)では天体がより遠く、したがってより暗く見える。1998年に、明るさのそろった Ia 型超新星が予想より暗いことから加速膨張が報告されたのは、この関係を使った観測である(図 14.2)。

図

図 14.2 平坦な宇宙での光度距離(c/H0c/H_0 を単位とする)。実線は物質 0.30.3 と宇宙定数 0.70.7 の宇宙、破線は物質だけの宇宙 2(1+z)[1−(1+z)−1/2]2(1+z)[1-(1+z)^{-1/2}](確認テスト 14.3-2)、点線は Hubble の法則の1次の近似 zz。座標は (14.31) の数値積分による。

背景放射の温度

宇宙を満たす熱放射は、膨張とともに温度を下げる。温度 TeT_{\mathrm e} の黒体放射の光子を考える。膨張によって各光子の振動数は aa に反比例して下がり、光子の数密度は体積に反比例して a−3a^{-3} で下がる。Planck 分布には、次の2つの性質がある。

  • 振動数と温度は、組 hν/(kBT)h\nu/(k_{\mathrm B}T) の形でだけ入る。
  • 単位体積あたりの光子の数は ν2dν\nu^2\mathrm{d}\nu に比例する。

このため、振動数がすべて 1/a1/a 倍になり数密度が体積に反比例して減った分布は、温度 Te ae/aT_{\mathrm e}\,a_{\mathrm e}/a の Planck 分布そのものである。したがって黒体放射は形を保ったまま

T∝1a,T(z)=T0(1+z)(14.33)T\propto\frac1a,\qquad T(z)=T_0(1+z)\tag{14.33}

で冷える。現在の CMB の温度は T0=2.7255 KT_0=2.7255\,\mathrm K と測られている。

例題 14.4 近くの銀河の距離と昔の宇宙の温度 ★★

オリジナルH0=70 km s−1 Mpc−1H_0=70\,\mathrm{km\,s^{-1}\,Mpc^{-1}}、q0=−0.55q_0=-0.55 とし、例題 14.2 の数値を使う。

  1. (a) ある銀河の水素の Hα\alpha 線(静止系の波長 656.28 nm656.28\,\mathrm{nm})を観測する。観測された波長は 671.00 nm671.00\,\mathrm{nm} だった。赤方偏移 zz、Hubble の法則の1次の距離 D=cz/H0D=cz/H_0、2次の補正を含めた現在の固有距離 (14.27) を求めよ。光がおよそ何年前に出たかも答えよ。
  2. (b) CMB の光は z=1090z=1090 で物質から離れて自由に飛び始めた。そのときの放射の温度を求めよ。
解答

(a) 1+z=671.00/656.28=1.022431+z=671.00/656.28=1.02243 なので z=0.02243z=0.02243 である。後退速度の目安は cz=6724 km/scz=6724\,\mathrm{km/s} で、

D=czH0=6724 km/s70 km s−1 Mpc−1=96.1 MpcD=\frac{cz}{H_0}=\frac{6724\,\mathrm{km/s}}{70\,\mathrm{km\,s^{-1}\,Mpc^{-1}}}=96.1\,\mathrm{Mpc}

である。2次の補正は、括弧の中が z−1+q02z2=0.02243−0.225×0.022432=0.02232z-\frac{1+q_0}{2}z^2=0.02243-0.225\times0.02243^2=0.02232 になるので

D0=4283 Mpc×0.02232=95.6 MpcD_0=4283\,\mathrm{Mpc}\times0.02232=95.6\,\mathrm{Mpc}

で、1次の値との差は 0.5%0.5\% である。z=0.02z=0.02 の程度では Hubble の法則の1次の式で十分であり、q0q_0 を測るにはもっと遠くの天体が必要になる。光が飛んだ時間は、1次の近似で τ≃D/c=96.1 Mpc/c\tau\simeq D/c=96.1\,\mathrm{Mpc}/c である。1 Mpc/c=3.26×1061\,\mathrm{Mpc}/c=3.26\times10^6 年を使うと、約 3.1×1083.1\times10^8 年前である。

(b) (14.33) から T=2.7255 K×1091=2974 KT=2.7255\,\mathrm K\times1091=2974\,\mathrm K である。この温度では水素原子がもう電離せず、光子が自由電子に散乱されなくなる。そのときの光が、波長が1091倍に伸びたマイクロ波として現在届いている。

確認テスト

オリジナル

  1. 14.3-1 平坦な FLRW 時空で xx 方向に進む光の測地線を考える。接ベクトルを kμ=dxμ/dλk^\mu=\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\lambda とする。その時間成分について、測地線の方程式と光的の条件

dk0dλ+Γ0ijkikj=0,(k0)2=a2(kx)2\frac{d k^0}{d \lambda}+\Gamma^0{}_{ij}k^ik^j=0,\qquad (k^0)^2=a^2(k^x)^2

から k0∝1/ak^0\propto1/a を導け。これが (14.24) と一致することを確かめよ。2. 14.3-2 物質だけの平坦な宇宙(Ωm=1\Omega_{\mathrm m}=1)で、共動座標が χ=(2c/H0)[1−(1+z)−1/2]\chi=(2c/H_0)\bigl[1-(1+z)^{-1/2}\bigr] となることを示し、光度距離を求めよ。z→∞z\to\infty で χ\chi はいくらに近づくか。3. 14.3-3 平坦な宇宙で dL=(1+z)D0d_L=(1+z)D_0 と (14.27) から、(14.32) を導け。4. 14.3-4 H0=70 km s−1 Mpc−1H_0=70\,\mathrm{km\,s^{-1}\,Mpc^{-1}} の Hubble 距離 c/H0c/H_0 を光年で表せ。1 光年は 9.4607×1015 m9.4607\times10^{15}\,\mathrm m である。また、Ωm=0.3\Omega_{\mathrm m}=0.3、ΩΛ=0.7\Omega_\Lambda=0.7 の平坦な宇宙を考える。現在の固有距離が c/H0c/H_0 に等しい銀河は、現在 D˙=c\dot D=c で遠ざかっている。この銀河の赤方偏移は z=1.46z=1.46 である。この銀河の光が現在届いていることが光速の制限と矛盾しない理由を述べよ。

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