光学と量子エレクトロニクス 第16章 §16.3 ★★★ 電場に比例する位相差を、干渉計か直交した偏光子で強度の変化に直す。半波長電圧 Vπ が変調器の性能を決め、横型の配置では長さと電極の間隔の比で Vπ を下げられる
位相変調器
1つの主軸の向きに偏った光だけを通すと、Pockels 効果は位相だけを変える。屈折率 n、Pockels 係数 r の向きに偏った光が長さ L の結晶を通るとき、電極の間隔 d に電圧 V を掛けた横型の配置(電場 V/d が光の進む向きに垂直)では、位相の変化は
Δϕ=λ2πΔnL=−λπn3rdVL(16.13)
で、∣Δϕ∣=π になる電圧は
Vπ=n3rλLd(16.14)
である。縦型(例題 16.2)と違い、d/L を小さくすれば Vπ はいくらでも下がる。光導波路の幅を μm の桁に絞り、そのすぐ脇に電極を置いて長さを cm の桁にすると、d/L∼10−3 になり、Vπ は数 V まで下がる。光通信の変調器が数 V の駆動電圧で動くのはこのためである。
強度変調器:干渉計か偏光子で位相を強度に直す
位相の変化は強度の検出器では見えないので、干渉で強度に直す。Mach–Zehnder 干渉計(第9章 第9章)の片方の腕に位相変調器を置くと、出力の透過率は2つの腕の位相差 ϕb+πV/Vπ で決まり
T(V)=cos2(2ϕb+2VππV)(16.15)
になる(ϕb は電圧を掛けないときの位相差。損失は無視する)。同じ式は、例題 16.2 の結晶を直交した2枚の偏光子の間に 45∘ の向きで置いた場合にも出る(ϕb=π、偏光の位相差 Γ が干渉計の位相差の役をする)。
ϕb=π では T=sin2(πV/(2Vπ)) で、V=0 の近くの変化は V2 に比例する。小さな交流の電圧を掛けると、透過率は電圧の2乗で変わり、出力の周波数は入力の2倍になる。信号をそのまま強度に写したいときは、位相差に π/2 を足して ϕb=−π/2 にする(偏光子の配置では λ/4 板を1枚加える)。このとき
T(V)=21[1+sin(VππV)](16.16)
で、V=0 の近くで T は V に比例する(図 16.1)。この点を直交点と呼ぶ。直交点では T−21 が V の奇関数なので、正弦波の電圧で変調しても偶数次の高調波は出ない。

図 16.1 Pockels 効果の強度変調器の透過率(式 (16.15))。実線は電圧 0 で暗くなる配置で、V=0 の近くで T∝V2。破線は位相差を π/2 ずらした直交点の配置(式 (16.16))で、V=0 の近くで T が V に比例する。
変調の速さ
Pockels 効果の応答は、電子の変位(光の周期より速い)と、結晶の格子のイオンの変位(格子振動の周期、10−13s の桁)の和である。どちらも GHz の変調に比べて十分速いので、変調の速さを決めるのは結晶の応答でなく、電極を駆動する回路(電極の容量と配線の抵抗)と、光が変調器を通り抜ける時間の間に電圧が変わってしまうことである。後者を避けるため、高速の変調器では電極を伝送線路にして、電圧の波を光と同じ速さで進ませる。
例題 16.3 導波路型の変調器の半波長電圧と高調波 ★★
オリジナル屈折率 n=2.14、Pockels 係数 r=30pmV−1 の仮の結晶で、波長 1.55μm の光を通す導波路を作り、間隔 d=10μm の電極を長さ L=20mm にわたって置く。
- (1) 位相変調器としての Vπ を求めよ。
- (2) これを Mach–Zehnder 干渉計の片方の腕に入れ、直交点(式 (16.16))で使う。電圧 V=Vmsinωmt、Vm=0.1Vπ のとき、透過率の基本波(周波数 ωm)と3倍波の振幅を求め、3倍波が基本波より何 dB 小さいかを答えよ。公式 sin(βsinx)=2∑k≥0J2k+1(β)sin((2k+1)x) を使ってよい。
- (3) 同じ電圧を ϕb=π の配置に掛けたとき、透過率の最大値と、透過率が振動する周波数を答えよ。
解答
(1) 式 (16.14) から Vπ=2.143×30×10−121.55×10−6×20×10−310×10−6=2.64V。
(2) β=πVm/Vπ=0.1π=0.314 として、T=21+21sin(βsinωmt)=21+J1(β)sinωmt+J3(β)sin3ωmt+⋯。J1(0.314)=0.155、J3(0.314)=6.42×10−4 で、比は 20log10(J3/J1)=−47.7dB である。偶数次の高調波は出ない。J3/J1≈β2/24 なので、駆動の振幅を半分にすると3倍波の比はさらに 12dB 下がる。
(3) T=sin2(2π⋅0.1sinωmt) の最大は sin2(0.05π)=0.0245 で、sin2 は sinωmt の符号によらないので、透過率は 2ωm で振動する。同じ変調器でも、動作点を選ばないと信号の周波数が2倍に化け、振幅も β の2乗に落ちる。
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