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当てる道具:屈折率楕円体の変形と2つの対称性

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第16章 電気光学と磁気光学
目次
  1. 屈折率楕円体
  2. 空間反転:反転対称な物質に Pockels 効果は無い
  3. 時間反転:磁場の項は反対称になる(Onsager の関係)
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第16章 §16.2 ★★★ 外場による変化を Δ(εr−1)ij=∑krijkE0k+∑klsijklE0kE0l\Delta(\varepsilon_{\mathrm r}^{-1})_{ij}=\sum_kr_{ijk}E_{0k}+\sum_{kl}s_{ijkl}E_{0k}E_{0l} と書く。空間反転は反転対称な物質で rr を消し、時間反転(Onsager の関係)は磁場の項を反対称に限る

屈折率楕円体

損失の無い異方性の媒質では、比誘電率テンソル εr\varepsilon_{\mathrm r} は実対称で、その逆行列 η=εr−1\eta=\varepsilon_{\mathrm r}^{-1} を使って

∑ijηijxixj=1(16.8)\sum_{ij}\eta_{ij}x_ix_j=1\tag{16.8}

と書いた楕円体を屈折率楕円体と呼ぶ(第15章 第15章)。η\eta の主軸の向きに偏った光の屈折率は、その主軸の方向の半径 1/η主1/\sqrt{\eta_{\mathrm{主}}} に等しい。εr\varepsilon_{\mathrm r} でなく逆行列 η\eta を使うのは、D\bm{D} を与えて E\bm{E} を出す向き(E=ηD/ε0\bm{E}=\eta\bm{D}/\varepsilon_0)が横波の条件 k⋅D=0\bm{k}\cdot\bm{D}=0 と相性がよく、進む向きに垂直な断面の楕円の軸の向きと長さが、そのまま2つの固有偏光と屈折率になるからである。

外場による変化は、この η\eta の変化で書くのが慣例である:

Δηij=∑krijkE0k+∑klsijklE0kE0l.(16.9)\Delta\eta_{ij}=\sum_kr_{ijk}E_{0k}+\sum_{kl}s_{ijkl}E_{0k}E_{0l}.\tag{16.9}

rijkr_{ijk} を Pockels 係数(1次の電気光学係数)、sijkls_{ijkl} を2次の電気光学係数(Kerr 係数)と呼ぶ。η\eta が対称なので rijk=rjikr_{ijk}=r_{jik} で、対称な対 (ij)(ij) をxx→1xx\to1, yy→2yy\to2, zz→3zz\to3, yz→4yz\to4, zx→5zx\to5, xy→6xy\to6 の1つの添字にまとめ(Voigt の記法)、rxyzr_{xyz} を r63r_{63} のように書く。1つの主軸の屈折率 nn で書けば η=1/n2\eta=1/n^2 なので、Δη\Delta\eta が小さいとき屈折率の変化は

Δn=−n32 Δη(16.10)\Delta n=-\frac{n^3}{2}\,\Delta\eta\tag{16.10}

である。例題 16.1 の (3) の rr はこの定義に合わせたものである。

空間反転:反転対称な物質に Pockels 効果は無い

空間反転 x→−x\bm{x}\to-\bm{x} で、電場 E0\bm{E}_0 は向きが反転する(極性ベクトル)。光の偏光の楕円体 ηij\eta_{ij} は2つの添字を持つテンソルで、反転では符号を変えない。物質の結晶構造が反転対称であれば、反転した物質は元の物質と同じなので、Δη(E0)=Δη(−E0)\Delta\eta(\bm{E}_0)=\Delta\eta(-\bm{E}_0) でなければならない。式 (16.9) の1次の項は E0\bm{E}_0 の符号で反転するので、反転対称な物質では rijk=0r_{ijk}=0 である。2次の項 sijklE0kE0ls_{ijkl}E_{0k}E_{0l} はこの制約を受けない。

16.1節の非調和な振動子の aa(ポテンシャルの x3x^3 の項)は、この対称性を破る項そのものだった。Pockels 効果を示すのは反転対称の無い結晶(水晶・リン酸二水素カリウム KDP・ニオブ酸リチウムなど)に限られ、気体・液体・ガラスのような等方的な媒質と、反転対称な結晶では、電場の効果は Kerr 効果から始まる。同じ対称性の議論は第17章の χ(2)\chi^{(2)}(第二高調波)にもそのまま当てはまり、Pockels 効果は「光の周波数 ω\omega と静的な場(周波数 00)の2つを入れて周波数 ω\omega の分極を出す χ(2)\chi^{(2)}」とみなすことができる。

時間反転:磁場の項は反対称になる(Onsager の関係)

時間反転では、電場 E0\bm{E}_0 は変わらず、磁場 B0\bm{B}_0 は向きが反転する(磁場を作る電流の向きが逆になる)。微視的な運動方程式が時間反転について対称であることから、線形応答の係数は Onsager の相反関係

εij(ω;B0)=εji(ω;−B0)(16.11)\varepsilon_{ij}(\omega;\bm{B}_0)=\varepsilon_{ji}(\omega;-\bm{B}_0)\tag{16.11}

を満たす。式 (16.7) は確かにこれを満たす(χxy(B0)\chi_{xy}(B_0) は B0B_0 の奇関数で χyx=−χxy\chi_{yx}=-\chi_{xy} なので、χxy(B0)=−χxy(−B0)=χyx(−B0)\chi_{xy}(B_0)=-\chi_{xy}(-B_0)=\chi_{yx}(-B_0))。式 (16.11) を εij\varepsilon_{ij} の対称な部分と反対称な部分に分けると、対称な部分は B0\bm{B}_0 の偶関数、反対称な部分は奇関数である。したがって B0\bm{B}_0 の1次の効果は反対称な成分にしか入らない。損失が無ければ εij\varepsilon_{ij} はエルミート行列なので(第10章 第10章 の受動性で Im⁡χ=0\operatorname{Im}\chi=0 の場合)、反対称な部分は純虚数になり、

εr=(ε1ig0−igε1000ε3),g は B0 の奇関数で実数(16.12)\varepsilon_{\mathrm r}=\begin{pmatrix}\varepsilon_1&\mathrm{i} g&0\\ -\mathrm{i} g&\varepsilon_1&0\\ 0&0&\varepsilon_3\end{pmatrix},\qquad g\ \text{は}\ B_0\ \text{の奇関数で実数}\tag{16.12}

の形になる(B0∥ez\bm{B}_0\parallel\bm{e}_z)。gg をジャイレーションと呼ぶ。この行列の xyxy ブロックの固有ベクトルは円偏光 e±\bm{e}_\pm で、εre±=(ε1∓g)e±\varepsilon_{\mathrm r}\bm{e}_\pm=(\varepsilon_1\mp g)\bm{e}_\pm だからn±2=ε1∓gn_\pm^2=\varepsilon_1\mp g である。式 (16.7) の γ=0\gamma=0 の場合、g=ωp2ωωc/(D2−ω2ωc2)g=\omega_{\mathrm p}^2\omega\omega_{\mathrm c}/(D^2-\omega^2\omega_{\mathrm c}^2) で、ε1∓g=1+χ±\varepsilon_1\mp g=1+\chi_\pm は式 (16.6) に一致する。

電場の効果と磁場の効果の違いは、第15章の Poincaré 球の上で見ると分かりやすい。対称なテンソルの変化は2つの直線偏光(または楕円偏光)の間の屈折率の差で、偏光の状態を赤道面の中の軸のまわりに回す。反対称な純虚数の変化は2つの円偏光の間の屈折率の差で、偏光の状態を北極と南極を結ぶ軸(S3S_3 の軸)のまわりに回す。S3S_3 の軸のまわりの回転は、直線偏光を直線偏光のまま、その向きだけを回す。

例題 16.2 KDP 型の結晶に光軸方向の電場を掛ける ★★★

オリジナル光軸を zz に持つ一軸性の結晶(常光線の屈折率 non_{\mathrm o}、異常光線の屈折率 nen_{\mathrm e})で、Pockels 係数のうち r63r_{63}(=rxyz=r_{xyz})だけが 00 でないとする。zz 方向に電場 E0zE_{0z} を掛け、光を zz 方向に通す。

  1. (1) 屈折率楕円体の z=0z=0 の断面の式を書き、主軸が xx, yy 軸から 45∘45^\circ 回った向きになることと、主軸の屈折率 nx′n_{x'}, ny′n_{y'} を r63E0zr_{63}E_{0z} の1次で求めよ。
  2. (2) 結晶の厚さを LL、電極の間の電圧を VV(E0z=V/LE_{0z}=V/L)とする。2つの主軸の間の位相差 Γ\Gamma が厚さ LL によらないことを示し、Γ=π\Gamma=\pi になる電圧(半波長電圧)VπV_\pi を求めよ。
  3. (3) no=1.51n_{\mathrm o}=1.51, r63=10 pm V−1r_{63}=10\,\mathrm{pm\,V^{-1}}, 波長 633 nm633\,\mathrm{nm} の仮の結晶で VπV_\pi を求めよ。
解答

(1) 電場が無いとき η=diag(1/no2,1/no2,1/ne2)\eta=\mathrm{diag}(1/n_{\mathrm o}^2,1/n_{\mathrm o}^2,1/n_{\mathrm e}^2) で、式 (16.9) から Δηxy=Δηyx=r63E0z\Delta\eta_{xy}=\Delta\eta_{yx}=r_{63}E_{0z} が加わる。z=0z=0 の断面は

x2+y2no2+2r63E0z xy=1\frac{x^2+y^2}{n_{\mathrm o}^2}+2r_{63}E_{0z}\,xy=1

である。2×22\times2 の行列 (1/no2r63E0zr63E0z1/no2)\begin{pmatrix}1/n_{\mathrm o}^2&r_{63}E_{0z}\\ r_{63}E_{0z}&1/n_{\mathrm o}^2\end{pmatrix} の固有ベクトルは (1,±1)/2(1,\pm1)/\sqrt2(45∘45^\circ 回った x′x', y′y' 軸)で、固有値は 1/no2±r63E0z1/n_{\mathrm o}^2\pm r_{63}E_{0z}。式 (16.10) から nx′=no−12no3r63E0zn_{x'}=n_{\mathrm o}-\frac12n_{\mathrm o}^3r_{63}E_{0z}、ny′=no+12no3r63E0zn_{y'}=n_{\mathrm o}+\frac12n_{\mathrm o}^3r_{63}E_{0z} である。電場は等方的だった断面を、45∘45^\circ の向きの楕円に変形する。

(2) Γ=2πλ(ny′−nx′)L=2πλno3r63E0zL=2πλno3r63V\Gamma=\frac{2\pi}{\lambda}(n_{y'}-n_{x'})L=\frac{2\pi}{\lambda}n_{\mathrm o}^3r_{63}E_{0z}L=\frac{2\pi}{\lambda}n_{\mathrm o}^3r_{63}V。電場は V/LV/L で厚さに反比例し、位相差は厚さに比例するので、積は電圧だけで決まる。Γ=π\Gamma=\pi から Vπ=λ/(2no3r63)V_\pi=\lambda/(2n_{\mathrm o}^3r_{63})。

(3) Vπ=633×10−9/(2×1.513×10×10−12)=9.2×103 VV_\pi=633\times10^{-9}/(2\times1.51^3\times10\times10^{-12})=9.2\times10^{3}\,\mathrm V。光と電場が同じ向きの配置(縦型)では厚さを変えても VπV_\pi が下がらず、数 kV\mathrm{kV} の電圧が要る。これを下げるのが、電場を光と垂直に掛ける横型の配置である(16.3節)。

ほかの巻では

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