光学と量子エレクトロニクス 第17章 §17.2 ★★★ 非線形な分極を源にした波動方程式を、包絡線がゆっくり変わるとして1階の方程式に直す。3つの波の光子の流れは、1つ消えれば2つ生まれる形でつり合う
非線形な分極を源にした波動方程式
分極を線形な部分と非線形な部分 PNL に分ける。線形な部分は第10章どおり比誘電率 εr(ω)=n(ω)2 にまとめ(吸収は無視する)、z 方向に進む横波について Maxwell 方程式から E を消去すると、各周波数の成分は
∂z2∂2E−c2n2∂t2∂2E=μ0∂t2∂2PNL
に従う。右辺の PNL が、新しい周波数の波の源になる。
角周波数 ωj の波を Ej=Re[Aj(z)ei(kjz−ωjt)]、kj=njωj/c と書き、PNL の ωj の成分を Re[Pj(z)e−iωjt] と書く。Aj(z) は、非線形な分極がなければ一定の振幅で、波の位相 eikjz を除いた残りである(正本の包絡線 E を z だけの関数にしたもの)。左辺に入れると ∂z2(Ajeikjz)=(Aj′′+2ikjAj′−kj2Aj)eikjz の最後の項が nj2ωj2/c2 の項と打ち消し合う。さらに Aj が波長の距離ではほとんど変わらない(∣Aj′′∣≪kj∣Aj′∣)として Aj′′ を落とすと、
dzdAj=2njcε0iωjPj(z)e−ikjz(17.6)
を得る(μ0ωj2/(2kj)=ωj/(2njcε0) を使った)。これを包絡線をゆっくり変わるとする近似(slowly varying envelope approximation)と呼ぶ。2階の波動方程式が、z について1階の方程式になった。
式 (17.6) の係数の i は、分極が作る波と分極の位相が π/2 ずれることを表す。また右辺の e−ikjz は、分極の位相 Pj(z) と、その周波数で自由に進む波の位相 eikjz の差を測る因子である。分極の位相が z とともに自由な波と同じ割合で進めば右辺の位相は一定で、各点の分極が作る波は足し合わさって Aj が z に比例して増える。2つの位相の進み方が違えば、足し合わせは打ち消し合う。
3つの波の結合波方程式
ω3=ω1+ω2 を満たす3つの波を考える。式 (17.3) から、ω3 の分極は和周波 ε0χ(2)A1A2ei(k1+k2)z、ω1 の分極は差周波 ω3−ω2 の ε0χ(2)A3A2∗ei(k3−k2)z で、ω2 も同様である。共鳴から離れていて、3つの過程の χ(2) が同じ値を取るとすると、式 (17.6) は
dzdA1=iκ1A3A2∗eiΔkz,dzdA2=iκ2A3A1∗eiΔkz,dzdA3=iκ3A1A2e−iΔkz(17.7)
になる。ここで κj=ωjχ(2)/(2njc)(消衰係数 κ とは別の、章内だけの記号)、Δk=k3−k1−k2 は位相の不整合である。
第二高調波(ω1=ω2=ω、ω3=2ω)では2つの低い周波数の波が同じものになり、振幅を Aω、A2ω と書くと、式 (17.3) の 21 を入れて
dzdA2ω=2n2ωciωχ(2)Aω2eiΔkz,dzdAω=2nωciωχ(2)A2ωAω∗e−iΔkz,Δk=2kω−k2ω(17.8)
である。
光子の流れの保存:Manley–Rowe の関係
平面波の強度は Ij=21njcε0∣Aj∣2 である。式 (17.7) から d∣Aj∣2/dz=2Re(Aj∗dAj/dz) を計算すると、Q=Im(A1∗A2∗A3eiΔkz) を使ってd∣A1∣2/dz=−2κ1Q、d∣A2∣2/dz=−2κ2Q、d∣A3∣2/dz=+2κ3Q になる。21njcε0⋅2κj=21ωjε0χ(2) なので、
dzd(ℏω1I1)=dzd(ℏω2I2)=−dzd(ℏω3I3)=−2ℏε0χ(2)Q(17.9)
を得る。Ij/(ℏωj) は単位面積・単位時間あたりに通る角周波数 ωj の光子の数である。ω3 の光子が1個減ると、ω1 と ω2 の光子が1個ずつ増える。これを Manley–Rowe の関係と呼ぶ(J. M. Manley, H. E. Rowe(1956)、Proc. IRE 44, 904 が非線形なリアクタンスの回路で示した)。ω3=ω1+ω2 なので、強度の和 I1+I2+I3 も z に依らない。
この関係は古典的な振幅の方程式から出たが、光子の言葉で読むと、エネルギーの保存 ℏω3=ℏω1+ℏω2 である。運動量の保存 ℏk3=ℏk1+ℏk2 は Δk=0 にあたり、次の節の位相整合の条件になる。媒質は光子を受け渡す仲立ちをするだけで、エネルギーを蓄えない。これは共鳴から離れて吸収が無いとしたことの帰結で、非線形な過程の中で媒質の状態が変わらないことから、この種の過程をパラメトリック過程と呼ぶ。
例題 17.3 第二高調波が増えるか減るかは位相で決まる ★★
オリジナル式 (17.8) で Δk=0、nω=n2ω とし、Aω=aeiϕ1、A2ω=beiϕ2(a,b≥0)と書く。
- (1) db2/dz を a,b と相対位相 θ=ϕ2−2ϕ1 で表せ。
- (2) 結晶の入口で b=0 のとき、生まれる第二高調波の θ はいくらか。
- (3) 入口で基本波と第二高調波の両方があり、θ=−π/2 のとき何が起こるか。
解答
(1) κ=ωχ(2)/(2nc) とおくと d∣A2ω∣2/dz=2Re(A2ω∗iκAω2)=−2κIm(A2ω∗Aω2)=−2κa2bsin(2ϕ1−ϕ2)。したがって
dzdb2=2κa2bsinθ.
(2) b=0 の所では dA2ω/dz=iκAω2 なので、生まれる振幅は iAω2=a2ei(2ϕ1+π/2) に比例し、θ=π/2。このとき sinθ=1 で b は増え続ける。
(3) sinθ=−1 なので b2 は減り、第二高調波のエネルギーが基本波へ戻る(逆変換)。同じ結晶でも、入ってくる2つの波の相対位相によって変換の向きが逆になる。位相の不整合 Δk=0 があると、相対位相が Δkz の割合で進むので、θ は π/2 から出発して距離 π/∣Δk∣ 進むごとに π ずつずれ、増える区間と減る区間が交互に来る。これが次の節のコヒーレンス長の意味である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com