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出てくるもの(1):2準位では反転できない・吸収の飽和

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第21章 レート方程式と反転分布
目次
  1. 定常状態は半分ずつに近づくだけ
  2. 吸収の飽和
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第21章 §21.3 ★★★ 2準位の定常状態では、光をどれだけ強くしても N2/g2N_2/g_2 は N1/g1N_1/g_1 に下から近づくだけで超えない。光は吸収を弱めるだけで(飽和)、吸収係数は α0/(1+I/Isat)\alpha_0/(1+I/I_{\mathrm{sat}}) になる

定常状態は半分ずつに近づくだけ

縮退が無い場合(g1=g2g_1=g_2)の (21.5) の定常解は、N1=N−N2N_1=N-N_2 を使って

ΔN≔N2−N1=−N1+I/Isat,Isat=ℏω2σ21τ,τ=1A21(21.15)\Delta N\coloneqq N_2-N_1=-\frac{N}{1+I/I_{\mathrm{sat}}},\qquad I_{\mathrm{sat}}=\frac{\hbar\omega}{2\sigma_{21}\tau},\quad \tau=\frac{1}{A_{21}}\tag{21.15}

である。ΔN\Delta N は占有の差(反転の量)で、ΔN>0\Delta N>0 が反転である。IsatI_{\mathrm{sat}} は飽和強度で、I=IsatI=I_{\mathrm{sat}} のとき光による遷移の割合 σ21Φ\sigma_{21}\Phi が自然放出の割合 A21A_{21} の半分になる。(21.14) の ss は I/IsatI/I_{\mathrm{sat}} と同じもので、例題 21.1 の (2) の向きのそろった原子では Isat=ℏωA21/(2σ0)=16.7 W m−2I_{\mathrm{sat}}=\hbar\omega A_{21}/(2\sigma_0)=16.7\,\mathrm{W\,m^{-2}}(1.67 mW cm−21.67\,\mathrm{mW\,cm^{-2}})である。

(21.15) の ΔN\Delta N は、I→∞I\to\infty で 00 に下から近づき、正にならない。理由は式の形から読める。光による遷移は σ21Φ(N2−N1)\sigma_{21}\Phi(N_2-N_1) の形で入り、吸収と誘導放出の係数が同じなので、光は占有の差を 00 に近づける向きにしか働かない。そこへ自然放出が一方向(上から下)にだけ働くので、定常の占有の差は必ず負に残る。上の準位に原子を上げる手段が、上の準位から原子を下ろす手段と同じ係数を持っている限り、反転を作ることはできない。これは熱放射(第20章の黒体)で照らしても、どんなに強いレーザーで照らしても同じである。

縮退がある場合も同じ結論になる。(21.5) は N2−(g2/g1)N1N_2-(g_2/g_1)N_1 に比例する光の項を持つので、強い光の極限で N2/g2→N1/g1N_2/g_2\to N_1/g_1 に近づき、(21.7) の不等号は成り立たない。たとえば g1=1g_1=1, g2=3g_2=3 なら、強い光で上の準位の占有は全体の 3/43/4 に近づき、N2>N1N_2>N_1 にはなる。それでも (21.6) の利得係数は 00 に近づくだけで、光は増幅されない。利得を決めるのは縮退度で割った占有だからである。

落とし穴

「2準位では反転できない」はレート方程式の定常状態についての主張である。コヒーレンスが生きている時間(T2T_2 より短い時間)なら、光 Bloch 方程式の π\pi パルス(Ωt=π\Omega t=\pi の共鳴パルス)で原子をすべて上の準位に上げることができる(第19章)。図 21.1 の右の山はその名残である。しかし反転はコヒーレンスと一緒に T2T_2 で崩れるので、連続して光を増幅する媒質には使うことができない。レーザーの媒質に要るのは、コヒーレンスが消えたあとも残る反転、つまりレート方程式の意味での反転である。

吸収の飽和

(21.15) を利得係数 (21.6) に入れると、2準位の媒質の吸収係数は

αabs(I)=α01+I/Isat,α0=σ21N(21.16)\alpha_{\mathrm{abs}}(I)=\frac{\alpha_0}{1+I/I_{\mathrm{sat}}},\qquad \alpha_0=\sigma_{21}N\tag{21.16}

になる。弱い光では α0\alpha_0 で吸収されるが、IsatI_{\mathrm{sat}} を超える光では上の準位が埋まって吸収が弱まる。これを吸収の飽和と呼ぶ。ビームが媒質を進むと強度が変わるので、(21.16) を dI/dz=−αabs(I)I\mathrm{d} I/\mathrm{d} z=-\alpha_{\mathrm{abs}}(I)I に入れて積分する。変数を分けると

ln⁡I(L)I(0)+I(L)−I(0)Isat=−α0L(21.17)\ln\frac{I(L)}{I(0)}+\frac{I(L)-I(0)}{I_{\mathrm{sat}}}=-\alpha_0L\tag{21.17}

を得る。弱い光(I≪IsatI\ll I_{\mathrm{sat}})では第2項が消えて Beer–Lambert の法則 I(L)=I(0)e−α0LI(L)=I(0)\mathrm{e}^{-\alpha_0L} に戻り、強い光(I≫IsatI\gg I_{\mathrm{sat}})では第1項が小さくなって I(L)≈I(0)−α0LIsatI(L)\approx I(0)-\alpha_0LI_{\mathrm{sat}} になる。強い光の極限で媒質が吸収するのは、単位面積あたり α0LIsat=NL⋅ℏωA21/2\alpha_0LI_{\mathrm{sat}}=NL\cdot\hbar\omega A_{21}/2 の一定の電力で、これは長さ LL の柱の中の原子の半分が自然放出で出す電力に等しい。飽和した媒質は、原子が光を吸収して自然放出で放出する繰り返しの速さで決まる電力しか吸収することができない。

図

図 21.2 2準位の媒質(縮退なし)の定常状態。光の強度を上げると、上の準位の占有 N2/NN_2/N は 1/21/2 に下から近づき、吸収係数 αabs/α0\alpha_{\mathrm{abs}}/\alpha_0 は 1/(1+I/Isat)1/(1+I/I_{\mathrm{sat}}) で 00 に近づく。反転(N2/N>1/2N_2/N>1/2)にはならない。

吸収の飽和は、線の形にも現れる。均一な広がりの線で離調 Δ\Delta の光の吸収を考えると、s=Ω2T1T2/(1+Δ2T22)s=\Omega^2T_1T_2/(1+\Delta^2T_2^2) を使って αabs∝S/(1+s)∝1/(1+Δ2T22+Ω2T1T2)\alpha_{\mathrm{abs}}\propto\mathcal S/(1+s)\propto1/(1+\Delta^2T_2^2+\Omega^2T_1T_2) になり、吸収の線の幅は 1+Ω2T1T2\sqrt{1+\Omega^2T_1T_2} 倍に広がる(パワー広がり)。線の中心ほど強く飽和するので、山が削れて幅が広がる。不均一な広がりの線の飽和(スペクトルの一部だけが削れるホールバーニング)と、それを使う飽和吸収分光は第24章で扱う。

例題 21.3 飽和吸収体を通る光 ★★

オリジナル縮退の無い2準位の媒質で、弱い光の光学的厚さが α0L=2\alpha_0L=2 のセルを考える。

  1. (1) 弱い光の透過率を求めよ。
  2. (2) 入口の強度が I(0)=3IsatI(0)=3I_{\mathrm{sat}} のとき、(21.17) から出口の強度と透過率を求めよ。
  3. (3) I(0)=30IsatI(0)=30I_{\mathrm{sat}} のときの透過率を求め、強い光の近似 I(L)≈I(0)−α0LIsatI(L)\approx I(0)-\alpha_0LI_{\mathrm{sat}} と比べよ。
  4. (4) 縮退が g1=1g_1=1, g2=3g_2=3 の媒質で、強い光の極限の上の準位の占有の割合を求め、そのとき媒質が光を増幅するかを述べよ。
解答

(1) e−2=0.135\mathrm{e}^{-2}=0.135 である。

(2) x=I(L)/Isatx=I(L)/I_{\mathrm{sat}} と置くと ln⁡(x/3)+x−3=−2\ln(x/3)+x-3=-2 で、数値で解くと x=1.618x=1.618、透過率は 1.618/3=0.5391.618/3=0.539 である。弱い光の4倍の割合が通り抜ける。

(3) ln⁡(x/30)+x−30=−2\ln(x/30)+x-30=-2 を解くと x=28.08x=28.08、透過率は 0.9360.936 である。強い光の近似は x≈30−2=28x\approx30-2=28、透過率 0.9330.933 で、第1項 ln⁡(28/30)=−0.07\ln(28/30)=-0.07 の分だけずれる。強い光では、媒質が吸収する電力は入口の強度によらず α0LIsat=2Isat\alpha_0LI_{\mathrm{sat}}=2I_{\mathrm{sat}} ほどで頭打ちになる。

(4) 強い光の極限で N2/g2=N1/g1N_2/g_2=N_1/g_1、つまり N2=3N1N_2=3N_1 なので、上の準位の占有は全体の 3/43/4 である。N2>N1N_2>N_1 だが、利得係数 σ21(N2−3N1)\sigma_{21}(N_2-3N_1) は 00 に近づくだけで正にならないので、光は増幅されない。

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