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当てる道具:振幅の勾配と位相の勾配

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第25章 光の力
目次
  1. 誘起された双極子に働く力
  2. 双極子力のポテンシャルと散乱力の大きさ
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第25章 §25.2 ★★★ 誘起された双極子に働く力の時間平均は 12Re⁡[α E ∇E∗]\frac12\operatorname{Re}[\alpha\,\mathcal E\,\nabla\mathcal E^*] で、分極率の実部が振幅の勾配に、虚部が位相の勾配に掛かる。平面波の力は吸収の断面積×強度/c/c

誘起された双極子に働く力

まず原子を古典的な振動子とみなし、第1章・第11章の分極率 α(ω)\alpha(\omega) だけを使って力を求める。量子論での計算(25.3節)は、ここで得た形に飽和を足すだけになる。

位置 r\bm{r} の点双極子 d(t)\bm{d}(t) に働く Lorentz 力は、電荷の分布を双極子まで展開して

F=(d⋅∇)E+d˙×B(25.6)\bm{F}=(\bm{d}\cdot\nabla)\bm{E}+\dot{\bm{d}}\times\bm{B}\tag{25.6}

である。Faraday の法則 ∇×E=−∂tB\nabla\times\bm{E}=-\partial_t\bm{B} を使うと、d\bm{d} を定数とみなして微分した恒等式 ∇(d⋅E)=(d⋅∇)E+d×(∇×E)\nabla(\bm{d}\cdot\bm{E})=(\bm{d}\cdot\nabla)\bm{E}+\bm{d}\times(\nabla\times\bm{E}) から

F=∇(d⋅E)∣d を固定+d×∂tB+d˙×B=∑jdj∇Ej+ddt(d×B)\bm{F}=\nabla(\bm{d}\cdot\bm{E})\big|_{\bm{d}\text{ を固定}}+\bm{d}\times\partial_t\bm{B}+\dot{\bm{d}}\times\bm{B}=\sum_jd_j\nabla E_j+\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}(\bm{d}\times\bm{B})

を得る。最後の項は時間の全微分なので、光の周期で平均すると 00 になる。誘起された双極子は d(t)=Re⁡[α e Ee−iωLt]\bm{d}(t)=\operatorname{Re}[\alpha\,\bm{e}\,\mathcal E\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}] で、§1 の時間平均の公式 ⟨Re⁡[Ae−iωt]Re⁡[Be−iωt]⟩=12Re⁡(AB∗)\langle \operatorname{Re}[A\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}]\operatorname{Re}[B\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}] \rangle =\frac12\operatorname{Re}(AB^*) を使うと

⟨F⟩=12Re⁡[α E (∇E)∗](25.7)\langle \bm{F} \rangle =\frac12\operatorname{Re}\bigl[\alpha\,\mathcal E\,(\nabla\mathcal E)^*\bigr]\tag{25.7}

になる。

ここに E=∣E∣eiφ\mathcal E=\lvert \mathcal E\rvert \mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi} を入れる。∇E=(∇∣E∣+i∣E∣∇φ)eiφ\nabla\mathcal E=(\nabla\lvert \mathcal E\rvert +\mathrm{i}\lvert \mathcal E\rvert \nabla\varphi)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi} なので E(∇E)∗=∣E∣∇∣E∣−i∣E∣2∇φ\mathcal E(\nabla\mathcal E)^*=\lvert \mathcal E\rvert \nabla\lvert \mathcal E\rvert -\mathrm{i}\lvert \mathcal E\rvert ^2\nabla\varphi で、α=α′+iα′′\alpha=\alpha'+\mathrm{i}\alpha'' と書くと

⟨F⟩=14α′∇∣E∣2⏟双極子力+12α′′∣E∣2∇φ⏟散乱力(25.8)\langle \bm{F} \rangle =\underbrace{\frac14\alpha'\nabla\lvert \mathcal E\rvert ^2}_{\text{双極子力}}+\underbrace{\frac12\alpha''\lvert \mathcal E\rvert ^2\nabla\varphi}_{\text{散乱力}}\tag{25.8}

となる。分極率の実部 α′\alpha' は強度の勾配に、虚部 α′′\alpha'' は位相の勾配に掛かる。

なぜ実部と虚部が別の勾配に掛かるか

α′\alpha' は電場と同じ位相で振動する双極子の成分、α′′\alpha'' は電場から 90∘90^\circ ずれた成分である。同じ位相の成分は、場が強いほどエネルギー −d⋅E-\bm{d}\cdot\bm{E} が下がる(α′>0\alpha'>0 のとき)ので、強い所へ引かれる。これは振幅の勾配だけを見る。90∘90^\circ ずれた成分は、時間平均のエネルギーには寄与しないが、場から仕事を受け取る(吸収)。受け取った運動量の向きは、場の位相が進む向き、つまり光の進む向きになる。定在波では位相が一定なので散乱力が消え(2本の光の散乱力が打ち消し合う)、強度が一定の平面波では双極子力が消える。

双極子力のポテンシャルと散乱力の大きさ

第1項は α′\alpha' が位置に依らないので勾配の形に書けて、

Fdip=−∇Udip,Udip=−14α′(ωL)∣E∣2(25.9)\bm{F}_{\mathrm{dip}}=-\nabla U_{\mathrm{dip}},\qquad U_{\mathrm{dip}}=-\frac14\alpha'(\omega_{\mathrm L})\lvert \mathcal E\rvert ^2\tag{25.9}

になる。第1章の式(第1章)の双極子力のポテンシャルが、ここで力の式から導けた。

第2項を平面波(∇φ=k\nabla\varphi=\bm{k})で見る。双極子が場から吸収する仕事率は Pabs=⟨d˙⋅E⟩=12ωLα′′∣E∣2P_{\mathrm{abs}}=\langle \dot{\bm{d}}\cdot\bm{E} \rangle =\frac12\omega_{\mathrm L}\alpha''\lvert \mathcal E\rvert ^2 なので、

Fscat=PabsωLk=PabsℏωL ℏk=σIckk,σ(ω)=ωα′′(ω)ε0c(25.10)\bm{F}_{\mathrm{scat}}=\frac{P_{\mathrm{abs}}}{\omega_{\mathrm L}}\bm{k}=\frac{P_{\mathrm{abs}}}{\hbar\omega_{\mathrm L}}\,\hbar\bm{k}=\frac{\sigma I}{c}\frac{\bm{k}}{k},\qquad\sigma(\omega)=\frac{\omega\alpha''(\omega)}{\varepsilon_0c}\tag{25.10}

である。I=12cε0∣E∣2I=\frac12c\varepsilon_0\lvert \mathcal E\rvert ^2 は強度、σ\sigma は吸収の断面積である。Pabs/(ℏωL)P_{\mathrm{abs}}/(\hbar\omega_{\mathrm L}) は単位時間に吸収する光子の数なので、式 (25.10) は 25.1節の「散乱の回数×ℏk\hbar\bm{k}」と同じである。吸収したエネルギーは原子にたまらず、散乱光として全方向へ出ていく。出ていく光の運動量の平均は 00 なので、入ってきた光の運動量がすべて原子に残る。

2準位原子の分極率は、共鳴の近く(∣Δ∣,Γ≪ω0\lvert \Delta\rvert ,\Gamma\ll\omega_0)で、第1章の α2\alpha_2 に減衰 Γ\Gamma を入れた Lorentz の形

α(ωL)≈−d2ℏ 1Δ+iΓ/2=d2ℏ −Δ+iΓ/2Δ2+Γ2/4(25.11)\alpha(\omega_{\mathrm L})\approx-\frac{d^2}{\hbar}\,\frac{1}{\Delta+\mathrm{i}\Gamma/2}=\frac{d^2}{\hbar}\,\frac{-\Delta+\mathrm{i}\Gamma/2}{\Delta^2+\Gamma^2/4}\tag{25.11}

になる(弱い光の線形応答。第19章の光 Bloch 方程式で Ω→0\Omega\to0 とした定常解と同じ)。式 (25.10) に入れ、式 (25.2) で d2d^2 を Γ\Gamma に書き換えると、共鳴の断面積は

σ0=σ(ω0)=2ω0d2ε0cℏΓ=6πc2ω02=3λ022π(25.12)\sigma_0=\sigma(\omega_0)=\frac{2\omega_0d^2}{\varepsilon_0c\hbar\Gamma}=\frac{6\pi c^2}{\omega_0^2}=\frac{3\lambda_0^2}{2\pi}\tag{25.12}

になる。dd も原子の大きさも消え、断面積は波長の2乗の桁だけで決まる。原子の大きさ(10−10 m10^{-10}\,\mathrm m の桁)より4桁大きな 10−6 m10^{-6}\,\mathrm m の桁の「円盤」が、共鳴の光を遮る。

例題 25.2 共鳴の断面積と、原子と鏡の受ける力 ★★

オリジナル例題 25.1 の 87{}^{87}Rb の D2 線を考える。

  1. (1) 式 (25.2) から双極子 dd を求め、共鳴の断面積 σ0\sigma_0 を求めよ。
  2. (2) 強度 I=1.669 W m−2I=1.669\,\mathrm{W\,m^{-2}}(0.1669 mW/cm20.1669\,\mathrm{mW/cm^2})の共鳴の平面波が1個の原子に及ぼす散乱力を、式 (25.10) で求め、原子の加速度を重力加速度 g=9.81 m s−2g=9.81\,\mathrm{m\,s^{-2}} と比べよ。
  3. (3) パワー 1 W1\,\mathrm W の光をすべて反射する鏡が受ける力と比べ、原子1個あたりの力が大きいか小さいかを、断面積の言葉で説明せよ。
解答

(1) ω0=2πc/λ0=2.414×1015 s−1\omega_0=2\pi c/\lambda_0=2.414\times10^{15}\,\mathrm{s^{-1}}、Γ=3.812×107 s−1\Gamma=3.812\times10^7\,\mathrm{s^{-1}} を式 (25.2) に入れるとd2=3πε0ℏc3Γ/ω03d^2=3\pi\varepsilon_0\hbar c^3\Gamma/\omega_0^3、d=2.53×10−29 C m=2.99 ea0d=2.53\times10^{-29}\,\mathrm{C\,m}=2.99\,ea_0 である(a0a_0 は Bohr 半径)。これは Rb の D2 線のうち、円偏光で同じ準位の対を往復する遷移(閉じた遷移)の値で、第1章の例題で使った 2.5 ea02.5\,ea_0 より少し大きい。式 (25.12) から σ0=3×(780.24×10−9)2/(2π)=2.91×10−13 m2\sigma_0=3\times(780.24\times10^{-9})^2/(2\pi)=2.91\times10^{-13}\,\mathrm{m^2}。

(2) F=σ0I/c=2.91×10−13×1.669/(3.00×108)=1.62×10−21 NF=\sigma_0I/c=2.91\times10^{-13}\times1.669/(3.00\times10^8)=1.62\times10^{-21}\,\mathrm N で、加速度は F/m=1.12×104 m s−2F/m=1.12\times10^4\,\mathrm{m\,s^{-2}}、重力加速度の約 11401140 倍である。光の強度は 0.17 mW/cm20.17\,\mathrm{mW/cm^2} と、目に入れても害の無い程度の弱い光でしかない。

(3) 鏡は入ってくる光の運動量 P/cP/c を逆向きに返すので、受ける力は 2P/c=6.67×10−9 N2P/c=6.67\times10^{-9}\,\mathrm N である。原子が受ける力 σ0I/c\sigma_0I/c は「断面積の中を通る光の運動量」なので、鏡の力を鏡の面積で割った量と比べると、原子は面積 σ0\sigma_0 の黒い円盤と同じだけ力を受ける。原子の力が小さな質量に対して大きいのは、σ0\sigma_0 が原子の大きさの 10410^4 倍もあり、しかも質量が 10−25 kg10^{-25}\,\mathrm{kg} と軽いからである。ここでは強度を弱く取ったが、強度を上げると (2) の線形の式は成り立たなくなる。その限界は 25.3節の飽和である。

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