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出てくるもの(1):散乱力と飽和

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第25章 光の力
目次
  1. 量子論の力の式
  2. 散乱力
  3. Doppler のずれと速さに依る力
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第25章 §25.3 ★★★ 光 Bloch 方程式の定常解から、散乱力は ℏkΓρee\hbar k\Gamma\rho_{ee}、強い光で ℏkΓ/2\hbar k\Gamma/2 に飽和する。離調に Doppler のずれが入るので、力は原子の速さに依る

量子論の力の式

式 (25.3) を式 (25.4) に入れる。∇\nabla は Ωc(r)\Omega_{\mathrm c}(\bm{r}) だけに掛かるので、⟨σ+⟩=Tr⁡(ρ^σ+)=ρge\langle \sigma_+ \rangle =\operatorname{Tr}(\hat\rho\sigma_+)=\rho_{ge}(ρge=⟨g∣ρ^∣e⟩\rho_{ge}=\langle g | \hat\rho | e \rangle)と書いて

F=ℏ2(∇Ωc ρge+∇Ωc∗ ρeg)=ℏRe⁡[∇Ωc ρge]\bm{F}=\frac{\hbar}{2}\bigl(\nabla\Omega_{\mathrm c}\,\rho_{ge}+\nabla\Omega_{\mathrm c}^*\,\rho_{eg}\bigr)=\hbar\operatorname{Re}\bigl[\nabla\Omega_{\mathrm c}\,\rho_{ge}\bigr]

となる。∇Ωc=(∇Ω/Ω+i∇φ)Ωc\nabla\Omega_{\mathrm c}=(\nabla\Omega/\Omega+\mathrm{i}\nabla\varphi)\Omega_{\mathrm c} を使うと

F=ℏ∇ΩΩRe⁡[Ωcρge]−ℏ∇φ Im⁡[Ωcρge](25.13)\bm{F}=\hbar\frac{\nabla\Omega}{\Omega}\operatorname{Re}\bigl[\Omega_{\mathrm c}\rho_{ge}\bigr]-\hbar\nabla\varphi\,\operatorname{Im}\bigl[\Omega_{\mathrm c}\rho_{ge}\bigr]\tag{25.13}

で、ここでも振幅の勾配の項と位相の勾配の項に分かれる。Ωcρge\Omega_{\mathrm c}\rho_{ge} は原子の双極子のうち、電場と同じ位相の成分(実部)と 90∘90^\circ ずれた成分(虚部)を表す。

原子の内部の状態は、光 Bloch 方程式(第19章、第19章)に従って時間 1/Γ1/\Gamma の桁で定常状態に落ち着く。原子が動いて Ωc\Omega_{\mathrm c} が変わる時間がそれより長いとき、ρ^\hat\rho を各位置の定常解で置き換えてよい(25.5節の札)。自然放出の速さ Γ\Gamma だけを緩和に入れた定常解は

ρee=s0/21+s0+(2Δ/Γ)2,Ωcρge=−(2Δ+iΓ) Ω2Γ2+4Δ2+2Ω2,s0=2Ω2Γ2(25.14)\rho_{ee}=\frac{s_0/2}{1+s_0+(2\Delta/\Gamma)^2},\qquad\Omega_{\mathrm c}\rho_{ge}=-\frac{(2\Delta+\mathrm{i}\Gamma)\,\Omega^2}{\Gamma^2+4\Delta^2+2\Omega^2},\qquad s_0=\frac{2\Omega^2}{\Gamma^2}\tag{25.14}

である。s0s_0 を飽和パラメータと呼ぶ。Ωcρge\Omega_{\mathrm c}\rho_{ge} は Ωc\Omega_{\mathrm c} の位相に依らない(ρge\rho_{ge} が Ωc∗\Omega_{\mathrm c}^* に比例する)。虚部は −ΓΩ2/(Γ2+4Δ2+2Ω2)=−Γρee-\Gamma\Omega^2/(\Gamma^2+4\Delta^2+2\Omega^2)=-\Gamma\rho_{ee} に等しい。これは励起状態の占有を保つのに要る吸収の速さが、自然放出の速さ Γρee\Gamma\rho_{ee} と等しいことを表している。

散乱力

式 (25.13) の第2項に式 (25.14) の虚部を入れると、

Fscat=ℏ∇φ Γρee=ℏk Γ2 s01+s0+(2Δ/Γ)2(25.15)\bm{F}_{\mathrm{scat}}=\hbar\nabla\varphi\,\Gamma\rho_{ee}=\hbar\bm{k}\,\frac{\Gamma}{2}\,\frac{s_0}{1+s_0+(2\Delta/\Gamma)^2}\tag{25.15}

になる(2つ目の等号は平面波)。Γρee\Gamma\rho_{ee} は単位時間の散乱の回数なので、25.1節の描像がそのまま式になった。

第19章で定義した飽和パラメータ s0s_0 と飽和強度(式 (19.18))を、この章の記号で書き直すと、Ω=d∣E∣/ℏ\Omega=d\lvert \mathcal E\rvert /\hbar、I=12cε0∣E∣2I=\frac12c\varepsilon_0\lvert \mathcal E\rvert ^2 と式 (25.2) から

s0=IIsat,Isat=ε0cℏ2Γ24d2=ℏω03Γ12πc2=ℏω0Γ2σ0(25.16)s_0=\frac{I}{I_{\mathrm{sat}}},\qquad I_{\mathrm{sat}}=\frac{\varepsilon_0c\hbar^2\Gamma^2}{4d^2}=\frac{\hbar\omega_0^3\Gamma}{12\pi c^2}=\frac{\hbar\omega_0\Gamma}{2\sigma_0}\tag{25.16}

で、IsatI_{\mathrm{sat}} を飽和強度と呼ぶ。最後の形は「断面積 σ0\sigma_0 の円盤が、共鳴で Γ/2\Gamma/2 の速さだけ光子を受け取る強度」と読める。Rb の D2 線では Isat=1.669 mW/cm2I_{\mathrm{sat}}=1.669\,\mathrm{mW/cm^2} である(D. A. Steck, Rubidium 87 D Line Data(http://steck.us/alkalidata)の円偏光の閉じた遷移の値と一致する)。

式 (25.15) は2つの極限を持つ。弱い光(s0≪1s_0\ll1)では Fscat≈(ℏkΓs0/2)/(1+(2Δ/Γ)2)\bm{F}_{\mathrm{scat}}\approx(\hbar\bm{k}\Gamma s_0/2)/(1+(2\Delta/\Gamma)^2) で、共鳴では σ0I/c\sigma_0I/c に等しく、25.2節の古典の式 (25.10) に戻る。強い光(s0≫1s_0\gg1)では ρee→12\rho_{ee}\to\frac12 で、力は

Fmax=ℏkΓ2(25.17)F_{\mathrm{max}}=\frac{\hbar k\Gamma}{2}\tag{25.17}

を超えない。光を強くしても励起状態の占有は半分を超えず、散乱の回数は自然放出の速さで決まる上限 Γ/2\Gamma/2 に達する。古典の振動子にはこの上限が無く、ここが2準位系と Lorentz 振動子の違いが現れる所である(第1章で述べた飽和)。また式 (25.15) を離調の関数として見ると、半値全幅は Γ1+s0\Gamma\sqrt{1+s_0} で、強い光ほど線が広がる(パワー広がり)。図 25.2 にこの形を示す。

図

図 25.2 散乱力 (25.15) を離調の関数として描いたもの。強い光ほど中心の高さは 11(Fmax=ℏkΓ/2F_{\mathrm{max}}=\hbar k\Gamma/2)に近づき、幅は Γ1+s0\Gamma\sqrt{1+s_0} に広がる。

Doppler のずれと速さに依る力

原子が速度 v\bm{v} で動いていると、原子の静止系で見た光の角周波数は ωL−k⋅v\omega_{\mathrm L}-\bm{k}\cdot\bm{v} にずれる(1次の Doppler 効果)。式 (25.15) の Δ\Delta を

Δ  →  Δ−k⋅v(25.18)\Delta\;\to\;\Delta-\bm{k}\cdot\bm{v}\tag{25.18}

に置き換えたものが、動く原子が受ける散乱力である。力が速さに依ることが、第26章(第26章)のレーザー冷却の出発点になる。赤い離調(Δ<0\Delta<0)の光に向かって進む原子(k⋅v<0\bm{k}\cdot\bm{v}<0)は、Doppler のずれで共鳴に近づくので、遠ざかる原子より強く押し返される。向かい合う2本の光の力を足すと、速さに比例する摩擦力が残る。

反対に、原子線を止めるときには、Doppler のずれは邪魔になる。次の例題で見るとおり、原子の速さが Γ/k\Gamma/k の桁より大きく変わると、同じ周波数の光は原子に届かなくなる。

散乱力だけでは原子を捕まえられない

散乱力 (25.15) は、弱い光では強度に比例して Poynting ベクトルの向きに働く。吸収の無い空間で時間に依らない光の Poynting ベクトルの発散は 00 なので、この力の場の発散も 00 になり、力の向きがすべて内向きの点(安定な捕獲の点)は作れない。これは静電場で電荷を捕まえられないという Earnshaw の定理の光の版で、A. Ashkin, J. P. Gordon (1983)、Opt. Lett. 8, 511 が示した。原子を捕まえるには、双極子力(25.4節)を使うか、磁場で原子の準位をずらして散乱力の向きを位置で変える(第26章の磁気光学トラップ)必要がある。

例題 25.3 原子線を正面からの光で止める ★★★

オリジナル例題 25.1 の 87{}^{87}Rb 原子を考える(λ0=780.24 nm\lambda_0=780.24\,\mathrm{nm}、Γ=2π×6.067 MHz\Gamma=2\pi\times6.067\,\mathrm{MHz}、Isat=1.669 mW/cm2I_{\mathrm{sat}}=1.669\,\mathrm{mW/cm^2})。

  1. (1) 散乱力が与える最大の加速度 amax=ℏkΓ/(2m)a_{\mathrm{max}}=\hbar k\Gamma/(2m) を求め、重力加速度と比べよ。
  2. (2) 原子がいつも共鳴(Δ−k⋅v=0\Delta-\bm{k}\cdot\bm{v}=0)にあり、s0=2s_0=2 の光を受け続けるとして、300 m/s300\,\mathrm{m/s} の原子が止まるまでに進む距離を求めよ。
  3. (3) 静止した原子に共鳴するよう周波数を固定した光(Δ=0\Delta=0、s0=2s_0=2)を、300 m/s300\,\mathrm{m/s} の原子に正面から当てる。Doppler のずれ kvkv を Γ\Gamma で表し、力が (2) の何倍になるか求めよ。
  4. (4) s0=0.1s_0=0.1 の共鳴の光で、例題 25.2 (2) の線形の力と式 (25.15) の力を比べよ。
解答

(1) amax=vrecΓ/2=5.885×10−3×1.906×107=1.12×105 m s−2a_{\mathrm{max}}=v_{\mathrm{rec}}\Gamma/2=5.885\times10^{-3}\times1.906\times10^7=1.12\times10^5\,\mathrm{m\,s^{-2}} で、重力加速度の 1.14×1041.14\times10^4 倍である。

(2) s0=2s_0=2、共鳴で s0/(1+s0)=2/3s_0/(1+s_0)=2/3 なので、加速度は a=23amax=7.48×104 m s−2a=\frac23a_{\mathrm{max}}=7.48\times10^4\,\mathrm{m\,s^{-2}} で一定である。等加速度の運動で止まるまでの距離は v2/(2a)=3002/(2×7.48×104)=0.602 mv^2/(2a)=300^2/(2\times7.48\times10^4)=0.602\,\mathrm m。実験室の机の上に収まる長さで、原子線を止められる。

(3) kv=8.053×106×300=2.416×109 s−1kv=8.053\times10^6\times300=2.416\times10^9\,\mathrm{s^{-1}}、kv/(2π)=384 MHzkv/(2\pi)=384\,\mathrm{MHz} で、kv/Γ=63.4kv/\Gamma=63.4 である。正面から来る光なので k⋅v=−kv\bm{k}\cdot\bm{v}=-kv で、原子が感じる離調は +kv+kv(青い側)になる。式 (25.15) の比は

1+s01+s0+(2kv/Γ)2=33+126.82=1.87×10−4\frac{1+s_0}{1+s_0+(2kv/\Gamma)^2}=\frac{3}{3+126.8^2}=1.87\times10^{-4}

で、ほとんど力が働かない。光の周波数を −kv-kv だけ赤い側へずらせば最初は共鳴するが、原子が減速するとすぐ共鳴から外れる。kv=Γ/2kv=\Gamma/2 になる速さの変化は Γ/(2k)=2.37 m/s\Gamma/(2k)=2.37\,\mathrm{m/s}、反跳 400400 回分にすぎない。減速の途中で共鳴を保つには、光の周波数を時間とともに変えるか、磁場で原子の遷移の周波数を場所ごとに変える(Zeeman 減速器。第26章)。

(4) 線形の力は σ0I/c=1.62×10−21 N\sigma_0I/c=1.62\times10^{-21}\,\mathrm N(例題 25.2)、式 (25.15) は ℏkΓ20.11.1=1.47×10−21 N\frac{\hbar k\Gamma}{2}\frac{0.1}{1.1}=1.47\times10^{-21}\,\mathrm N で、比は 1/(1+s0)=0.9091/(1+s_0)=0.909 である。s0=0.1s_0=0.1 でも 9%9\% の飽和があり、線形の式は飽和強度の 1/101/10 の光でも1割の誤差を持つ。

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