光学と量子エレクトロニクス 第32章 §32.4 ★★ 2つの場所の強度の相関は 1+∣g12(1)∣2 で、van Cittert–Zernike の定理と合わせると星の角直径が読める。振幅の位相を使わないので、大気の揺らぎと光路の誤差に強い
空間の強度の相関
第9章(第9章)の van Cittert–Zernike の定理によれば、熱的な光源から来た光の2点 r1, r2 の場の相関 g12(1) は、光源の強度分布の Fourier 変換で、角直径 θD の一様な円盤では
∣g12(1)∣=v2J1(v),v=λπθDd
である(d は2点の間の距離)。熱的な光は同じ時刻の2点の場についても Gauss 型なので、32.3節と同じ分解から
g12(2)(0)=⟨I1⟩⟨I2⟩⟨I1I2⟩=1+∣g12(1)∣2(32.13)
を得る。2台の検出器の間の距離を変えながら光電流の揺らぎの相関を測ると、∣g12(1)∣2 がわかり、最初の零点 d0=1.22λ/θD から角直径が読める。Michelson の星の干渉計(第9章)は2つの鏡の光を1か所に集めて縞の可視度 ∣g12(1)∣ を見るのに対し、この方法は2つの場所の強度を別々に電気信号にし、電気信号の積の平均をとる。これを Hanbury Brown–Twiss(HBT)の強度干渉計と呼ぶ。
Hanbury Brown と Twiss は、水銀灯の光を半透明の鏡で2つに分けて2本の光電子増倍管で受け、光電流の揺らぎに相関があることを示し(R. Hanbury Brown and R. Q. Twiss (1956), Nature 177, 27)、同じ年にこの方法で Sirius の角直径を測った(同 (1956), Nature 178, 1046)。

図 32.3 左:Hanbury Brown–Twiss の強度干渉計。2台の検出器 D1, D2 の光電流の揺らぎ Δi1, Δi2 を掛けて時間平均する。右:一様な円盤の光源で、相関の超過 ∣2J1(v)/v∣2(式 (32.13)。厳密な式なので点線)。最初の零点 v=3.83 が d0=1.22λ/θD に当たる
位相に依らないことの利点と、信号の小ささ
2つの検出器へ来る光が大気の揺らぎで別々の位相 ϕ1(t), ϕ2(t) を受けると、g12(1) には ei(ϕ2−ϕ1) が掛かる。Michelson の干渉計では縞がこの位相で動いて見えなくなるが、式 (32.13) には大きさ ∣g12(1)∣2 しか入らないので、強度干渉計の信号は変わらない。2つの経路の長さの差も、波長の程度でなく、電気信号を区別する時間 td に光が進む距離 ctd の程度までそろえれば十分である。
その代わり、32.3節で述べたとおり、相関の超過は τc/td 倍に縮む。光電流の揺らぎの規格化した相関は
⟨i1⟩⟨i2⟩⟨Δi1Δi2⟩≈tdτc∣g12(1)∣2(32.14)
で、これが光の粒の数え方のばらつき(ショット雑音)に埋もれないようにするには、多くの光を集める大きな鏡と長い測定時間が要る。光子の言葉では、この相関は、光源の2点 A, B から出た2個の光子が「A の光子が D1、B の光子が D2」と「A の光子が D2、B の光子が D1」の2通りの経路で同時計数を作り、その2つの振幅が干渉した結果として読める。光子は Bose 粒子なので2つの振幅は足し合わされ、同じ場所に固まって来る確率が増える。
例題 32.4 強度干渉計で星の角直径を測る ★★
オリジナル角直径 θD=3mas(1mas=10−3′′)の一様な円盤とみなせる星を、波長 440nm、幅 1nm の矩形の透過帯のフィルタを通して、2台の望遠鏡の強度干渉計で観測する。電気信号の時間分解能を td=5ns とする。
- (1) 相関が最初に消える距離 d0 と、相関の超過が d=0 の値の半分になる距離を求めよ。
- (2) フィルタを通した光のコヒーレンス時間と、式 (32.14) の相関の超過の大きさ(d=0)を求めよ。
- (3) 2つの経路の長さをどの程度までそろえればよいかを、振幅の干渉計と比べて述べよ。
解答
(1) θD=3×10−3/206265=1.45×10−8rad。J1 の最初の零点 v=3.832 から d0=(3.832/π)λ/θD=36.9m。∣2J1(v)/v∣2=1/2 は v=1.616 で、d=1.616λ/(πθD)=15.6m である。望遠鏡の間隔を数 m から数十 m まで動かして曲線をなぞる。
(2) 周波数の幅は Δν=cΔλ/λ2=1.55×1012Hz。矩形のスペクトルでは g(1)(τ) が sinc 関数で、τc=∫∣g(1)∣2dτ=1/Δν=6.46×10−13s である。相関の超過は τc/td=1.29×10−4 で、光電流の揺らぎの1万分の1程度の相関を取り出す必要がある。
(3) 強度干渉計では、経路の差が ctd=1.5m より十分小さければよい。振幅の干渉計では、波長 440nm の数分の1までそろえ、しかも大気の位相の揺らぎ(ミリ秒の程度で変わる)の中で保つ必要がある。基線を数十 m に広げることは、強度干渉計のほうが容易である。
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