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出てくるもの(1):Hong–Ou–Mandel 干渉

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第33章 ビームスプリッタと光子対
目次
  1. 2光子の4つの経路
  2. 波束の重なりと谷
  3. 古典の光の谷は半分まで
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第33章 §33.3 ★★★ 区別できない2個の光子を 50:50 の2つの入口に入れると、2個が別々の出口へ出る2つの経路の振幅が打ち消し合い、同時計数が 00 になる。波束の重なり JJ で同時計数は (1−∣J∣2)/2(1-\lvert J\rvert ^2)/2、古典の光では谷の深さが半分を超えない

2光子の4つの経路

入口1と入口2に光子を1個ずつ入れる。入口の状態は a^1†a^2†∣0,0⟩\hat a_1^\dagger\hat a_2^\dagger| 0,0 \rangle で、式 (33.6) を当てると

a^1†a^2†∣0,0⟩ ⟼ [tr′(b^1†)2+(tt′+rr′) b^1†b^2†+rt′(b^2†)2]∣0,0⟩(33.9)\hat a_1^\dagger\hat a_2^\dagger| 0,0 \rangle \ \longmapsto\ \Bigl[tr'(\hat b_1^\dagger)^2+(tt'+rr')\,\hat b_1^\dagger\hat b_2^\dagger+rt'(\hat b_2^\dagger)^2\Bigr]| 0,0 \rangle\tag{33.9}

になる。真ん中の項は、2個の光子が別々の出口へ出る成分で、その振幅は「2個とも透過する」経路の tt′tt' と「2個とも反射する」経路の rr′rr' の和である(図 33.2)。2個の光子が区別できないので、どちらの経路を通ったかは出口の状態に残らず、2つの経路の振幅が足し合わされる。2つの出口で同時に光子を数える確率(同時計数の確率)は

Pc=∣tt′+rr′∣2(33.10)P_{\mathrm c}=\lvert tt'+rr'\rvert ^2\tag{33.10}

である。対称な素子(t=t′=Tt=t'=\sqrt T, r=r′=iRr=r'=\mathrm{i}\sqrt R)では rr′=−Rrr'=-R なので Pc=(T−R)2P_{\mathrm c}=(T-R)^2 で、50:50 で 00 になる。

50:50 の素子では、(b^1†)2∣0,0⟩=2∣2,0⟩(\hat b_1^\dagger)^2| 0,0 \rangle =\sqrt2| 2,0 \rangle を使って

∣1,1⟩ ⟼ i2(∣2,0⟩+∣0,2⟩)(33.11)| 1,1 \rangle \ \longmapsto\ \frac{\mathrm{i}}{\sqrt2}\bigl(| 2,0 \rangle +| 0,2 \rangle \bigr)\tag{33.11}

になる。2個の光子は必ず同じ出口から出て、どちらの出口かは半々である。この効果を、最初に測った3人の名から Hong–Ou–Mandel 干渉(HOM 干渉)と呼ぶ。

図

図 33.2 入口1(左から、赤)と入口2(下から、青)の光子の4つの経路。左の2つはどちらも「出口1と出口2に1個ずつ」という同じ結果になり、振幅 tt′tt' と rr′rr' が足される。50:50 では tt′=1/2tt'=1/2, rr′=−1/2rr'=-1/2 で打ち消し合う。

打ち消し合いの起源は、反射の位相 i\mathrm{i} が2回掛かって −1-1 になることである。第9章で、この位相はガラスの面の性質でなく、エネルギーが保存するために要るものだと述べた。HOM 干渉の打ち消しも、ユニタリ性 t∗r′+r∗t′=0t^*r'+r^*t'=0 の帰結である。古典の Mach–Zehnder 干渉計の縞は1つの光子の2つの経路の振幅の干渉だったが、HOM 干渉は2個の光子の組の2つの経路(両方透過・両方反射)の振幅の干渉である。2つの入口の光の間の位相は結果に入らない(数状態は位相を持たない)ので、腕の長さを波長の精度で合わせる必要はない。

波束の重なりと谷

実際の光子は単色でなく、周波数の広がりを持つ波束である。周波数 ω\omega の連続なモードの消滅演算子を a^j(ω)\hat a_j(\omega)([a^j(ω), a^k†(ω′)]=δjkδ(ω−ω′)\left[\hat a_j(\omega),\,\hat a_k^\dagger(\omega')\right]=\delta_{jk}\delta(\omega-\omega'))とし、入口 jj の光子を

a^j†[ϕj]∣0⟩=∫dω ϕj(ω)a^j†(ω)∣0⟩,∫dω ∣ϕj(ω)∣2=1\hat a_j^\dagger[\phi_j]| 0 \rangle =\int\mathrm{d}\omega\,\phi_j(\omega)\hat a_j^\dagger(\omega)| 0 \rangle ,\qquad\int\mathrm{d}\omega\,\lvert \phi_j(\omega)\rvert ^2=1

と書く。ビームスプリッタの SS が周波数に依らないなら、式 (33.6) は周波数ごとに成り立つ。出口で1個ずつ見つかる成分は tt′b^1†[ϕ1]b^2†[ϕ2]+rr′b^2†[ϕ1]b^1†[ϕ2]tt'\hat b_1^\dagger[\phi_1]\hat b_2^\dagger[\phi_2]+rr'\hat b_2^\dagger[\phi_1]\hat b_1^\dagger[\phi_2] で、そのノルムの2乗を、交換関係 [b^[ϕ], b^†[ψ]]=∫ϕ∗ψ dω\left[\hat b[\phi],\,\hat b^\dagger[\psi]\right]=\int\phi^*\psi\,\mathrm{d}\omega を使って計算すると

Pc=T2+R2−2TR∣J∣2,J=∫dω ϕ1∗(ω)ϕ2(ω)(33.12)P_{\mathrm c}=T^2+R^2-2TR\lvert J\rvert ^2,\qquad J=\int\mathrm{d}\omega\,\phi_1^*(\omega)\phi_2(\omega)\tag{33.12}

になる。50:50 では Pc=12(1−∣J∣2)P_{\mathrm c}=\frac12(1-\lvert J\rvert ^2) である。JJ は2つの波束の重なりで、2個の光子がどれだけ区別できないかを測る。周波数の分布・到着の時刻・偏光が同じなら ∣J∣=1\lvert J\rvert =1 で同時計数は 00、どれかで完全に区別できれば J=0J=0 で Pc=T2+R2P_{\mathrm c}=T^2+R^2(50:50 で 1/21/2、2個がそれぞれ独立に出口を選んだ値)になる。

入口2の光子を時間 τ\tau だけ遅らせると、§1 の Fourier の流儀で ϕ2(ω)=ϕ1(ω)eiωτ\phi_2(\omega)=\phi_1(\omega)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega\tau} になる。∣ϕ1(ω)∣2\lvert \phi_1(\omega)\rvert ^2 が中心 ω0\omega_0・標準偏差 σ\sigma の Gauss 分布なら、

∣J(τ)∣2=∣∫dω ∣ϕ1(ω)∣2eiωτ∣2=e−σ2τ2,Pc(τ)=12(1−e−σ2τ2)(33.13)\lvert J(\tau)\rvert ^2=\Bigl\lvert\int\mathrm{d}\omega\,\lvert \phi_1(\omega)\rvert ^2\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega\tau}\Bigr\rvert^2=\mathrm{e}^{-\sigma^2\tau^2},\qquad P_{\mathrm c}(\tau)=\frac12\bigl(1-\mathrm{e}^{-\sigma^2\tau^2}\bigr)\tag{33.13}

である。遅れ τ\tau を走査すると、同時計数は τ=0\tau=0 のまわりで 00 まで下がる谷を描く(図 33.3)。谷の半値全幅(同時計数が平らな所の半分になる幅)は 2ln⁡2/σ2\sqrt{\ln2}/\sigma で、光の帯域の逆数の桁、つまり第9章のコヒーレンス時間の桁である。谷の幅は光の周期(フェムト秒の桁)でなくコヒーレンス時間で決まり、谷の形は2つの腕の長さが波長の程度ゆらいでも変わらない。

古典の光の谷は半分まで

同じ配置に古典の光を入れると、谷の深さはどこまで行くか。入口の古典の場の強度を I1I_1, I2I_2、2つの場の相対的な位相を φ\varphi とすると、50:50 の出口の強度は

I3=I1+I22−I1I2sin⁡φ,I4=I1+I22+I1I2sin⁡φI_{3}=\frac{I_1+I_2}{2}-\sqrt{I_1I_2}\sin\varphi,\qquad I_{4}=\frac{I_1+I_2}{2}+\sqrt{I_1I_2}\sin\varphi

である(出口を 33, 44 と呼んだ)。同時計数は強度の積の平均 ⟨I3I4⟩\langle I_3I_4 \rangle に比例する。独立な2つの光源では φ\varphi はでたらめで ⟨sin⁡2φ⟩=1/2\langle \sin^2\varphi \rangle =1/2 なので

⟨I3I4⟩=⟨I12⟩+⟨I22⟩4(33.14)\langle I_3I_4 \rangle =\frac{\langle I_1^2 \rangle +\langle I_2^2 \rangle }{4}\tag{33.14}

になる。2つの光が干渉しないほど遅らせたときの値は ⟨(I1+I2)2⟩/4\langle (I_1+I_2)^2 \rangle /4 で、比は ⟨I12+I22⟩/⟨(I1+I2)2⟩\langle I_1^2+I_2^2 \rangle /\langle (I_1+I_2)^2 \rangle である。2I1I2≤I12+I222I_1I_2\le I_1^2+I_2^2 からこの比は 1/21/2 以上で、等号は強度がゆらがず I1=I2I_1=I_2 のときに限る。古典の光の HOM の谷は、平らな所の半分より深くならない。谷の深さの割合(可視度)V=1−Pc(0)/Pc(∞)V=1-P_{\mathrm c}(0)/P_{\mathrm c}(\infty) が 1/21/2 を超えることが、2光子の量子的な干渉のしるしになる。同じ Gauss の波束の古典のパルスでは、同時計数の比は 1−12∣J(τ)∣21-\frac12\lvert J(\tau)\rvert ^2 になり、谷の幅は量子の場合と同じで、深さだけが半分になる。

図

図 33.3 HOM の谷。区別できない2個の光子(実線)は τ=0\tau=0 で同時計数が 00 になり、強度がゆらがない古典のパルス(破線)は半分までしか下がらない。どちらも式 (33.13) と式 (33.14) の厳密な形で、横軸は Gauss の帯域の標準偏差 σ\sigma で測った遅れ。

例題 33.3 反射率のずれと、フィルタの帯域で決まる谷の幅 ★★

オリジナル

  1. (1) 対称なビームスプリッタの反射率が R=0.45R=0.45 だった。区別できない2個の光子の Pc(0)P_{\mathrm c}(0) と Pc(∞)P_{\mathrm c}(\infty)、谷の可視度 VV を求めよ。
  2. (2) 中心波長 702 nm702\,\mathrm{nm} の光子を、透過の形が Gauss で半値全幅 5 nm5\,\mathrm{nm} の干渉フィルタで切り出す(∣ϕ(ω)∣2\lvert \phi(\omega)\rvert ^2 の半値全幅が 5 nm5\,\mathrm{nm} に当たるとする)。角周波数の半値全幅 Δω\Delta\omega、標準偏差 σ\sigma、谷の半値全幅を時間と光路差で求めよ。
  3. (3) (1) の可視度を古典の上限と比べよ。
解答

(1) 式 (33.12) で ∣J∣=1\lvert J\rvert =1 とおくと Pc(0)=(T−R)2=(0.55−0.45)2=0.01P_{\mathrm c}(0)=(T-R)^2=(0.55-0.45)^2=0.01、∣J∣=0\lvert J\rvert =0 で Pc(∞)=T2+R2=0.505P_{\mathrm c}(\infty)=T^2+R^2=0.505 である。V=1−0.01/0.505=0.980V=1-0.01/0.505=0.980 で、反射率が 5%5\% ずれても谷は 98%98\% の深さを保つ。Pc(0)P_{\mathrm c}(0) は (T−R)2(T-R)^2 と、ずれの2乗でしか増えない。

(2) Δω=2πcΔλ/λ2=2π×3.00×108×5×10−9/(702×10−9)2=1.911×1013 s−1\Delta\omega=2\pi c\Delta\lambda/\lambda^2=2\pi\times3.00\times10^8\times5\times10^{-9}/(702\times10^{-9})^2=1.911\times10^{13}\,\mathrm{s^{-1}}、σ=Δω/(22ln⁡2)=8.12×1012 s−1\sigma=\Delta\omega/(2\sqrt{2\ln2})=8.12\times10^{12}\,\mathrm{s^{-1}}。谷の半値全幅は 2ln⁡2/σ=2.05×10−13 s=205 fs2\sqrt{\ln2}/\sigma=2.05\times10^{-13}\,\mathrm s=205\,\mathrm{fs} で、光路差にすると c×205 fs=61.5 μmc\times205\,\mathrm{fs}=61.5\,\mu\mathrm m である。帯域の半値全幅で書けば 42ln⁡2/Δω=3.92/Δω4\sqrt2\ln2/\Delta\omega=3.92/\Delta\omega になる。702 nm702\,\mathrm{nm} の光の周期 2.3 fs2.3\,\mathrm{fs} の約 9090 倍で、腕の長さを μm\mu\mathrm m の精度で合わせれば谷が見える。

(3) 古典の光の可視度は 1/21/2 以下なので、V=0.980V=0.980 はその2倍近い。谷の深さそのものが、2個の光子の状態が古典の光で書けないことの証拠になる。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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