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出てくるもの(3):量子の同種粒子と、重なりのある内部状態

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第5章 Gibbs のパラドックス
目次
  1. 同種粒子の状態の数え方
  2. 内部状態が重なる2種類の気体を混ぜる
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.5 ★★ 量子力学では同種粒子の状態の数え方が理論で決まり、希薄な極限で 1/N!1/N! に一致する。内部状態の重なりが cc の2種類の混合では、混合のエントロピーが cc について連続に変わる

同種粒子の状態の数え方

量子力学では、同じ種類の粒子は入れ替えても同じ状態であり、ボソンなら波動関数が対称、フェルミオンなら反対称に限られる。MM 個の1粒子状態に NN 個の粒子を入れる方法の数は、ボソンでは各状態の占有数の組の数、フェルミオンでは占有される状態の選び方の数で、

WBose=(M+N−1N),WFermi=(MN),W古典≔MNN!(2.5.13)W_{\mathrm{Bose}}=\binom{M+N-1}{N},\qquad W_{\mathrm{Fermi}}=\binom{M}{N},\qquad W_{\mathrm{古典}}\coloneqq\frac{M^N}{N!}\tag{2.5.13}

である(3つ目は前の節の、ラベル付きの数 MNM^N を N!N! で割ったもの)。M≫NM\gg N では

WBoseW古典=∏k=0N−1(1+kM)=1+N(N−1)2M+⋯ ,WFermiW古典=∏k=0N−1(1−kM)=1−N(N−1)2M+⋯(2.5.14)\frac{W_{\mathrm{Bose}}}{W_{\mathrm{古典}}}=\prod_{k=0}^{N-1}\Bigl(1+\frac kM\Bigr)=1+\frac{N(N-1)}{2M}+\cdots,\qquad \frac{W_{\mathrm{Fermi}}}{W_{\mathrm{古典}}}=\prod_{k=0}^{N-1}\Bigl(1-\frac kM\Bigr)=1-\frac{N(N-1)}{2M}+\cdots\tag{2.5.14}

となり、どちらも N2/M→0N^2/M\to0 で 11 に近づく。気体では、MM は熱的波長の立方体 λT3\lambda_T^3 の何個分の体積があるか(M∼V/λT3M\sim V/\lambda_T^3)なので、N2/M→0N^2/M\to0 の条件はおよそ nλT3≪1/Nn\lambda_T^3\ll1/N である。ただし相互作用のない気体の熱力学量は、各1粒子状態の占有数の揺らぎで決まり、ln⁡W\ln W の1粒子あたりの値がそろう条件は nλT3≪1n\lambda_T^3\ll1 で足りる(エントロピーは ln⁡\ln を取るので、比の補正 N2/MN^2/M が ln⁡\ln の中で NN に比べて小さければよい)。希薄な気体では、量子力学の正しい数え方が 1/N!1/N! 入りの古典の数え方に一致する。前の節で「記述の選択」とした 1/N!1/N! は、量子力学では選択でなく帰結である。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの nλT3→0n\lambda_T^3\to0(1粒子状態の数が粒子数より十分多い、希薄な極限) | 証明 証明済み(相互作用のない粒子の数え上げ。式 (2.5.14) の積が 11 に近づくことは初等的) | 行き先 近似の数理 第7章

内部状態が重なる2種類の気体を混ぜる

量子力学では、2.5.2 節の「少しだけ違う気体」にも別の答えが出る。各粒子が2つの内部状態を持つとし、気体 A の粒子は内部状態 ∣a⟩| a \rangle、気体 B の粒子は内部状態 ∣b⟩| b \rangle にあるとする(並進の自由度は前と同じ)。∣a⟩| a \rangle と ∣b⟩| b \rangle が直交していれば A と B は完全に見分けられ、∣a⟩=∣b⟩| a \rangle =| b \rangle なら同じ気体である。その間を重なり c≔∣⟨a∣b⟩∣c\coloneqq\lvert \langle a | b \rangle \rvert(0≤c≤10\le c\le1)で表す。この設定は von Neumann が半透膜の思考実験で量子のエントロピーの式を導いたときのものである(J. von Neumann (1932), Mathematische Grundlagen der Quantenmechanik, Springer, 第 V 章)。

粒子1個の状態を、内部状態と「どちら側にいるか」∣L⟩,∣R⟩| \mathrm L \rangle ,| \mathrm R \rangle の密度行列で書く。混ぜる前と後は

ρ^前=x ∣a⟩ ⁣⟨a∣⊗∣L⟩ ⁣⟨L∣+(1−x) ∣b⟩ ⁣⟨b∣⊗∣R⟩ ⁣⟨R∣,ρ^後=ρˉ⊗(x∣L⟩ ⁣⟨L∣+(1−x)∣R⟩ ⁣⟨R∣)(2.5.15)\hat\rho_{\mathrm{前}}=x\,| a \rangle \!\langle a |\otimes| \mathrm L \rangle \!\langle \mathrm L |+(1-x)\,| b \rangle \!\langle b |\otimes| \mathrm R \rangle \!\langle \mathrm R |,\qquad \hat\rho_{\mathrm{後}}=\bar\rho\otimes\bigl(x| \mathrm L \rangle \!\langle \mathrm L |+(1-x)| \mathrm R \rangle \!\langle \mathrm R |\bigr)\tag{2.5.15}

で、ρˉ≔x∣a⟩ ⁣⟨a∣+(1−x)∣b⟩ ⁣⟨b∣\bar\rho\coloneqq x| a \rangle \!\langle a |+(1-x)| b \rangle \!\langle b | は内部状態の平均の密度行列である(記号は帽子を省いたが密度行列であり、この節の中だけの略記)。後の状態は前の状態の2つの部分の周辺の積なので、古典の式 (2.5.4) と同じく、相対エントロピーは量子相互情報量になる。von Neumann エントロピーで書くと(量子相対エントロピーと量子相互情報量は 第3部第2章 で扱う)、

ΔSmixNkB=D(ρ^前 ∥ ρ^後)=S(ρ^後)−S(ρ^前)=S(ρˉ)=x D(∣a⟩ ⁣⟨a∣ ∥ ρˉ)+(1−x) D(∣b⟩ ⁣⟨b∣ ∥ ρˉ).(2.5.16)\frac{\Delta S_{\mathrm{mix}}}{N k_{\mathrm B}}=D(\hat\rho_{\mathrm{前}}\,\|\,\hat\rho_{\mathrm{後}})=S(\hat\rho_{\mathrm{後}})-S(\hat\rho_{\mathrm{前}})=S(\bar\rho) =x\,D\bigl(| a \rangle \!\langle a |\,\big\|\,\bar\rho\bigr)+(1-x)\,D\bigl(| b \rangle \!\langle b |\,\big\|\,\bar\rho\bigr).\tag{2.5.16}

2つ目の等号は、前と後で ln⁡ρ^後\ln\hat\rho_{\mathrm{後}} の期待値が等しいこと(ρ^後\hat\rho_{\mathrm{後}} は ∣L⟩,∣R⟩| \mathrm L \rangle ,| \mathrm R \rangle の対角成分と ρˉ\bar\rho だけで決まり、前の状態のその部分の周辺はちょうど ρˉ\bar\rho と (x,1−x)(x,1-x) である)から出る。3つ目は、ρ^前\hat\rho_{\mathrm{前}} の固有値が x,1−xx,1-x でエントロピーが hb(x)h_{\mathrm b}(x)、ρ^後\hat\rho_{\mathrm{後}} のエントロピーが S(ρˉ)+hb(x)S(\bar\rho)+h_{\mathrm b}(x) であることから出る。最後の形は Holevo 量 χ({x,1−x;∣a⟩ ⁣⟨a∣,∣b⟩ ⁣⟨b∣})\chi(\{x,1-x;| a \rangle \!\langle a |,| b \rangle \!\langle b |\}) と呼ばれる量で、第3部第7章 で通信の上限として再び出てくる。

ρˉ\bar\rho の固有値は 2×22\times2 の行列の計算で

λ±=12(1±1−4x(1−x)(1−c2))(2.5.17)\lambda_\pm=\frac12\Bigl(1\pm\sqrt{1-4x(1-x)(1-c^2)}\Bigr)\tag{2.5.17}

になり、S(ρˉ)=hb(λ+)S(\bar\rho)=h_{\mathrm b}(\lambda_+) である。x=1/2x=1/2 なら λ±=(1±c)/2\lambda_\pm=(1\pm c)/2 で、ΔSmix/(NkB)=hb((1+c)/2)\Delta S_{\mathrm{mix}}/(N k_{\mathrm B})=h_{\mathrm b}((1+c)/2)。これは c=0c=0 で ln⁡2\ln2、c=1c=1 で 00 になり、その間を連続に動く(図 2.5.4)。内部状態がわずかに違うだけなら(cc が 11 に近い)、混合のエントロピーも小さい。

この連続性は、2.5.2 節の「誤り確率 ε\varepsilon の装置」と同じ構造を持っている。重なりのある2つの状態は、どんな測定をしても完全には見分けられない。両者を見分ける能力が cc で上から押さえられていて、その能力の分だけ仕事が取り出せる。古典の場合は見分ける能力が装置の性能という観測者の側の事情だったが、量子力学では状態の重なりという系の側の事情で決まり、どの観測者にも共通の上限になる。

図

図 2.5.4 内部状態の重なりが cc の2種類の気体を混ぜたときの、1粒子あたりの混合のエントロピー S(ρˉ)S(\bar\rho)(実線、式 (2.5.17) から)。破線と c=1c=1 の黒丸は、種類が違うか同じかの2通りだけで考えた場合の値で、c=1c=1 で不連続に跳ぶ

例題 2.5.5 2個の粒子を4つの状態に入れる ★★

オリジナル1粒子状態が M=4M=4 個ある系に、同じ種類の粒子を N=2N=2 個入れる。

  1. (1) ボソン、フェルミオン、ラベル付きの古典粒子、1/N!1/N! 入りの古典の数え方のそれぞれで、状態の数を求めよ。
  2. (2) ボソンとフェルミオンの数の平均が、1/N!1/N! 入りの古典の数に等しいことを確かめ、N=2N=2 ならどの MM でも成り立つことを示せ。
  3. (3) 内部状態の重なりが c=0.6c=0.6、x=1/2x=1/2 のとき、1粒子あたりの混合のエントロピーを nat で求めよ。
解答

(1) ボソンは占有数の組の数で (52)=10\binom{5}{2}=10(2個が同じ状態に入る4通りと、別の状態に入る6通り)。フェルミオンは別の状態に入る (42)=6\binom42=6 通り。ラベル付きの古典粒子は 42=164^2=16 通り、1/N!1/N! 入りの古典は 16/2=816/2=8。

(2) (10+6)/2=8(10+6)/2=8 で等しい。一般の MM では 12(M(M+1)2+M(M−1)2)=M22=MNN!\frac12\bigl(\frac{M(M+1)}2+\frac{M(M-1)}2\bigr)=\frac{M^2}{2}=\frac{M^N}{N!}。ラベル付きの M2M^2 通りのうち、2個が同じ状態に入る MM 通りは N!=2N!=2 で割ると半分に数えられてしまう。ボソンはそれを1通りとして正しく数え(多めに数える側)、フェルミオンは0通り(少なめに数える側)とするので、2つの平均が古典の値になる。

(3) x=1/2x=1/2 では λ+=(1+0.6)/2=0.8\lambda_+=(1+0.6)/2=0.8 なので hb(0.8)=−0.8ln⁡0.8−0.2ln⁡0.2=0.1785+0.3219=0.5004h_{\mathrm b}(0.8)=-0.8\ln0.8-0.2\ln0.2=0.1785+0.3219=0.5004 nat。完全に見分けられる場合の ln⁡2\ln2 の約 72% である。

ほかの巻では

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