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出てくるもの (2):同種粒子の交換と Bose・Fermi 分布

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第1章 量子統計力学
目次
  1. 対称化したトレース
  2. Bose 分布と Fermi 分布
  3. 理想量子気体の状態方程式
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第1章 §5.1.4 ★★★ 同種粒子のトレースは置換の和。ll 個を巡回させる置換は虚時間 lβℏl\beta\hbar の1本の経路で、その和から Bose・Fermi 分布と理想量子気体の状態方程式が出る

対称化したトレース

同じ種類の NN 個の粒子の状態は、粒子を入れ替えても Bose 粒子なら変わらず、Fermi 粒子なら符号が変わる。ZZ のトレースは、この性質を満たす状態だけで取らなければならない。置換を P\mathcal P、位置の組の置換を Pr=(rP(1),…,rP(N))\mathcal P\bm{r}=(\bm{r}_{\mathcal P(1)},\dots,\bm{r}_{\mathcal P(N)}) と書き、Bose 粒子に ++、Fermi 粒子に −- の符号を当てる(以下、複号は上が Bose、下が Fermi)。対称化(反対称化)の射影演算子 1N!∑P(±1)PP^\frac1{N!}\sum_{\mathcal P}(\pm1)^{\mathcal P}\hat{\mathcal P} をトレースの中に入れると

ZN=1N!∑P(±1)P∫d3Nr ⟨Pr∣e−βH^∣r⟩(5.1.20)Z_N=\frac{1}{N!}\sum_{\mathcal P}(\pm1)^{\mathcal P}\int\mathrm{d}^{3N}r\,\langle \mathcal P\bm{r} | \mathrm{e}^{-\beta\hat H} | \bm{r} \rangle\tag{5.1.20}

を得る。(±1)P(\pm1)^{\mathcal P} は Fermi 粒子で置換の偶奇の符号、Bose 粒子で常に +1+1 である(正本に無い記号 P\mathcal P は、圧力 PP と区別するためにこの節だけで使う)。

恒等置換の項だけを残すと、ZN≈1N!∫d3Nr ⟨r∣e−βH^∣r⟩Z_N\approx\frac{1}{N!}\int\mathrm{d}^{3N}r\,\langle \bm{r} | \mathrm{e}^{-\beta\hat H} | \bm{r} \rangle で、高温では前節の結果から第3部の Z=∫e−βHd3Nq d3Np/(h3NN!)Z=\int\mathrm{e}^{-\beta H}\mathrm{d}^{3N}q\,\mathrm{d}^{3N}p/(h^{3N}N!) になる。第3部第2章で Gibbs のパラドックスを避けるために手で入れた 1/N!1/N!(第3部第2章)は、ここでは対称化の射影の規格化として出る。

恒等置換以外の項は、経路積分で読むと図 5.1.1 の右になる。粒子 1 の経路が粒子 2 の出発点に着き、粒子 2 の経路が粒子 1 の出発点に着く。2本をつなぐと、虚時間 2βℏ2\beta\hbar をかけて出発点に戻る1本の経路で、それは温度が半分(β\beta が2倍)の1粒子の経路と同じである。相互作用のない2粒子では、Z1(β)=Tr⁡e−βH^(1)Z_1(\beta)=\operatorname{Tr}\mathrm{e}^{-\beta\hat H^{(1)}}(H^(1)\hat H^{(1)} は1粒子の Hamiltonian)を使って

Z2=12[Z1(β)2±Z1(2β)](5.1.21)Z_2=\frac12\bigl[Z_1(\beta)^2\pm Z_1(2\beta)\bigr]\tag{5.1.21}

である。第1項が恒等置換、第2項が入れ替えで、∫dr1dr2⟨r2∣e−βH^(1)∣r1⟩⟨r1∣e−βH^(1)∣r2⟩=Tr⁡e−2βH^(1)\int\mathrm{d}\bm{r}_1\mathrm{d}\bm{r}_2\langle \bm{r}_2 | \mathrm{e}^{-\beta\hat H^{(1)}} | \bm{r}_1 \rangle \langle \bm{r}_1 | \mathrm{e}^{-\beta\hat H^{(1)}} | \bm{r}_2 \rangle =\operatorname{Tr}\mathrm{e}^{-2\beta\hat H^{(1)}} による。

一般の置換は巡回置換(サイクル)の積に分かれ、長さ ll のサイクルは虚時間 lβℏl\beta\hbar の1本の経路になって Z1(lβ)Z_1(l\beta) を与え、符号 (±1)l−1(\pm1)^{l-1} を持つ。長さ ll のサイクルが mlm_l 個ある置換の数は N!/∏l(lmlml!)N!/\prod_l(l^{m_l}m_l!) なので、相互作用のない系ではZN=∑{ml}∏l1ml![(±1)l−1Z1(lβ)/l]mlZ_N=\sum_{\{m_l\}}\prod_l\frac{1}{m_l!}\bigl[(\pm1)^{l-1}Z_1(l\beta)/l\bigr]^{m_l}(和は ∑llml=N\sum_llm_l=N の組)となる。粒子数を決めない大分配関数 Ξ=∑NeβμNZN\Xi=\sum_N\mathrm{e}^{\beta\mu N}Z_N をとると、制約 ∑llml=N\sum_llm_l=N が外れて各 mlm_l の和が指数関数になり、

ln⁡Ξ=∑l=1∞(±1)l−1l zl Z1(lβ),z=eβμ(5.1.22)\ln\Xi=\sum_{l=1}^{\infty}\frac{(\pm1)^{l-1}}{l}\,z^l\,Z_1(l\beta),\qquad z=\mathrm{e}^{\beta\mu}\tag{5.1.22}

を得る。zz を逃散能と呼ぶ(第4部第4章の複素振幅 zz とは別物で、この節だけで使う)。

Bose 分布と Fermi 分布

1粒子の準位を εk\varepsilon _k とすると Z1(lβ)=∑ke−lβεkZ_1(l\beta)=\sum_k\mathrm{e}^{-l\beta\varepsilon _k} で、式 (5.1.22) の ll についての和は対数の級数になる。

ln⁡Ξ=∓∑kln⁡(1∓ze−βεk),⟨nk⟩=−1β∂ln⁡Ξ∂εk=1eβ(εk−μ)∓1(5.1.23)\ln\Xi=\mp\sum_k\ln\bigl(1\mp z\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon _k}\bigr),\qquad \langle n_k \rangle =-\frac{1}{\beta}\frac{\partial \ln\Xi}{\partial \varepsilon _k}=\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon _k-\mu)}\mp1}\tag{5.1.23}

上の符号が Bose 分布、下の符号が Fermi 分布 f(ε)f(\varepsilon ) である。Fermi では ⟨nk⟩≤1\langle n_k \rangle \le1 で、Pauli の排他律が出る。Bose では ⟨nk⟩≥0\langle n_k \rangle \ge0 のために μ<min⁡kεk\mu<\min_k\varepsilon _k が要り、μ=0\mu=0 で粒子数が保存しない場合が Planck 分布 nB(ω)=1/(eβℏω−1)n_{\mathrm B}(\omega)=1/(\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1) である(光子とフォノンは第5部第3章で数える。第5部第3章)。授業では式 (5.1.23) を「各準位に粒子を何個置くか」の和として出す(5.1.6節)。ここでは同じ結果が、虚時間の経路のつなぎ方の和として出た。

ze−βεk≪1z\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon _k}\ll1 のとき、つまり eβ(εk−μ)≫1\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon _k-\mu)}\gg1 では、分母の ∓1\mp1 が無視できて ⟨nk⟩≈e−β(εk−μ)\langle n_k \rangle \approx\mathrm{e}^{-\beta(\varepsilon _k-\mu)}(Maxwell–Boltzmann 分布)になる。これは式 (5.1.22) の l=1l=1 の項(恒等置換)だけを残すことに当たる。

理想量子気体の状態方程式

体積 VV の箱の中の自由粒子(スピンの縮重度 gsg_{\mathrm s})では Z1(lβ)=gsV/λT(lβ)3=gsV/(l3/2λT3)Z_1(l\beta)=g_{\mathrm s}V/\lambda_T(l\beta)^3=g_{\mathrm s}V/(l^{3/2}\lambda_T^3) である(λT∝β\lambda_T\propto\sqrt\beta)。PV=kBTln⁡ΞPV= k_{\mathrm B} T\ln\Xi と N=z ∂zln⁡ΞN=z\,\partial_z\ln\Xi から

PλT3gskBT=∑l≥1(±1)l−1zll5/2,nλT3gs=∑l≥1(±1)l−1zll3/2(5.1.24)\frac{P\lambda_T^3}{g_{\mathrm s} k_{\mathrm B} T}=\sum_{l\ge1}(\pm1)^{l-1}\frac{z^l}{l^{5/2}},\qquad \frac{n\lambda_T^3}{g_{\mathrm s}}=\sum_{l\ge1}(\pm1)^{l-1}\frac{z^l}{l^{3/2}}\tag{5.1.24}

を得る(n=N/Vn=N/V)。古典の極限は l=1l=1 だけを残した P=nkBTP=n k_{\mathrm B} T である。2番目の式を zz について解き、z=y∓y2/23/2+⋯z=y\mp y^2/2^{3/2}+\cdots(y=nλT3/gsy=n\lambda_T^3/g_{\mathrm s})を1番目に入れると

PnkBT=1∓125/2 nλT3gs+O((nλT3)2)(5.1.25)\frac{P}{n k_{\mathrm B} T}=1\mp\frac{1}{2^{5/2}}\,\frac{n\lambda_T^3}{g_{\mathrm s}}+\mathcal{O}\bigl((n\lambda_T^3)^2\bigr)\tag{5.1.25}

となる。Bose 粒子は古典より圧力が低く、Fermi 粒子は高い。粒子の間に力は無いが、交換の項が Bose 粒子では引力、Fermi 粒子では斥力のように働く。展開のパラメータ nλT3n\lambda_T^3 は「粒子1個あたりの体積に熱的波長の立方体が何個入るか」の逆数で、虚時間の経路の幅 λT\lambda_T が隣の粒子に届くかどうかを測っている。図 5.1.3 に厳密な曲線と式 (5.1.25) を並べた。Bose 気体は nλT3/gs=ζ(3/2)=2.612n\lambda_T^3/g_{\mathrm s}=\zeta(3/2)=2.612 で z=1z=1 に達し、そこから先は Bose–Einstein 凝縮で、この級数では扱えない。

図

図 5.1.3 理想量子気体の状態方程式。点線は式 (5.1.24) の厳密な曲線(赤が Fermi、青が Bose)、実線は2次まで打ち切った式 (5.1.25) の 1±nλT3/(25/2gs)1\pm n\lambda_T^3/(2^{5/2}g_{\mathrm s})。nλT3/gs≲0.5n\lambda_T^3/g_{\mathrm s}\lesssim0.5 では両者はほとんど重なる。

例題 5.1.4 ヘリウムの気体と金属の電子 ★★

オリジナル

  1. (1) 4{}^4He(質量 4.0026 u4.0026\,\mathrm u、Bose 粒子、gs=1g_{\mathrm s}=1)の気体が 300 K300\,\mathrm K, 1.013×105 Pa1.013\times10^5\,\mathrm{Pa} にある。λT\lambda_T と nλT3n\lambda_T^3、式 (5.1.25) による圧力の補正の割合を求めよ。
  2. (2) 数密度 n=1.0×1029 m−3n=1.0\times10^{29}\,\mathrm m^{-3} の電子(gs=2g_{\mathrm s}=2)が 300 K300\,\mathrm K にあるとする。nλT3/gsn\lambda_T^3/g_{\mathrm s} を求め、それが 11 になる温度を求めよ。
解答

(1) λT=h/2πmkBT=5.04×10−11 m\lambda_T=h/\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B} T}=5.04\times10^{-11}\,\mathrm m、n=P/kBT=2.45×1025 m−3n=P/ k_{\mathrm B} T=2.45\times10^{25}\,\mathrm m^{-3} で nλT3=3.13×10−6n\lambda_T^3=3.13\times10^{-6}。圧力は古典より nλT3/25/2=5.5×10−7n\lambda_T^3/2^{5/2}=5.5\times10^{-7} の割合だけ低い。室温・大気圧の気体では、量子統計による補正は 10−610^{-6} の程度で、測定にはかからない。

(2) 電子は軽いので λT=4.30×10−9 m\lambda_T=4.30\times10^{-9}\,\mathrm m と長く、nλT3/gs=3.98×103n\lambda_T^3/g_{\mathrm s}=3.98\times10^3 である。式 (5.1.25) の展開はまったく使えず、電子は Fermi 分布の ⟨nk⟩≈1\langle n_k \rangle \approx1 の準位を下から詰めた状態にある。nλT3/gs=1n\lambda_T^3/g_{\mathrm s}=1 となる温度は λT∝T−1/2\lambda_T\propto T^{-1/2} からT=2πℏ2mekB(n/gs)2/3=7.54×104 KT=\frac{2\pi\hbar^2}{m_{\mathrm e} k_{\mathrm B}}(n/g_{\mathrm s})^{2/3}=7.54\times10^4\,\mathrm K で、室温はその 1/2501/250 である。金属の電子の比熱が古典の等分配則の値よりはるかに小さいのはこのためで、詳しい計算(Sommerfeld 展開で電子比熱を出す)は ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部第1章で行う。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの nλT3/gs→0n\lambda_T^3/g_{\mathrm s}\to0(熱的波長の立方体が粒子1個あたりの体積より小さい) | 証明 証明済み(相互作用のない気体では zz の級数 (5.1.24) が ∣z∣<1\lvert z\rvert <1 で収束し、式 (5.1.25) はその正則な展開。相互作用のある気体へは別の議論が要る) | 行き先 近似の数理 第7章

ほかの巻では

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