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この章で選ぶ HH:孤立系と、知らない微視的状態

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第2章 等重率とミクロカノニカル
目次
  1. 孤立系の Hamiltonian
  2. 分かっていることと、知らないこと
  3. 測定は時間平均である
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第2章 §3.2.1 ★★★ 分かっているのは E,V,NE,V,N だけで、相空間のどの点にいるかは知らない。その知らなさを分布 ρ\rho で表す

統計力学の出発点として、多くの教科書は「孤立系では、エネルギーが等しい微視的状態はすべて同じ確率で実現する」という等重率の原理を置く。この一文は短いが、読み返すと分からないことが2つ残る。1つは、数えている「微視的状態」とは何か、という問いである。古典力学の状態は相空間の点で、点は連続に分布しているので、そのままでは数えられない。もう1つは、なぜ「同じ確率」なのか、という問いである。同じ確率といっても、どの変数で測って一様なのか(位置と速度で一様なのか、位置と運動量で一様なのか)で答えが変わる。

この章では、選ぶものは前の章と同じで、NN 個の粒子からなる孤立系の Hamiltonian H(Γ)H(\Gamma) である。当てる道具は前の章(第3部第1章)の Liouville の定理と、第1部の作用変数(第1部第14章)である。Liouville の定理は、相空間の体積 dΓ\mathrm{d}\Gamma が時間発展で保たれることを言う。そのため「相空間の体積で測って一様」という分布だけが、時間がたっても形を変えない。等重率の「何で測って一様か」への答えはこれで決まる。数える単位は、量子化の条件から1状態あたり hh の面積と決まり、同じ種類の粒子を入れ替えた状態を数え直さないために N!N! で割る。こうして数えた体積の対数がエントロピーで、そのエネルギー微分が温度の逆数になる。

3.2.1節で孤立系の HH と、この章で定義する分布(ミクロカノニカル分布)を書く。3.2.2節では Liouville の定理から、エネルギーの殻の上で一様な分布が時間で変わらないこと、自由度1ではその平均が時間平均と厳密に一致することを示す。3.2.3節から3.2.5節が「出てくるもの」で、理想気体の状態の数え方(hh と N!N!)、2つの系を触れさせたときの温度、殻で数えても体積で数えても結果が変わらない理由を順に扱う。3.2.6節で量子の状態を数える授業の形と並べる。

この章では温度 TT を使うので、運動エネルギーには TT の字を使わず ∑i∣pi∣2/(2m)\sum_i\lvert \bm{p}_i\rvert ^2/(2m) と書き、周期は tpt_{\mathrm p} と書く。ポテンシャルは体積 VV と区別するため、必ず引数をつけて V(r1,…,rN)V(\bm{r}_1,\dots,\bm{r}_N) と書く。

孤立系の Hamiltonian

体積 VV の容器に閉じ込めた NN 個の同じ粒子(質量 mm)を考える。Hamiltonian は

H(Γ)=∑i=1N∣pi∣22m+V(r1,…,rN)(3.2.1)H(\Gamma)=\sum_{i=1}^{N}\frac{\lvert \bm{p}_i\rvert ^2}{2m}+V(\bm{r}_1,\dots,\bm{r}_N)\tag{3.2.1}

で、Γ=(r1,…,rN,p1,…,pN)\Gamma=(\bm{r}_1,\dots,\bm{r}_N,\bm{p}_1,\dots,\bm{p}_N) は 6N6N 次元の相空間の点である。ポテンシャル V(r1,…,rN)V(\bm{r}_1,\dots,\bm{r}_N) には粒子どうしの相互作用と、容器の壁(壁の外では無限大になる)を含める。系は外とエネルギーをやり取りしない(孤立系)ので、HH は時刻を含まず、Hamilton 方程式の解の上でH(Γ(t))=EH(\Gamma(t))=E が保たれる(第1部第8章)。相空間の点は、エネルギー EE の等エネルギー面 H(Γ)=EH(\Gamma)=E の上を動き続ける。

分かっていることと、知らないこと

実験で決められるのは、全エネルギー EE、体積 VV、粒子数 NN といった少数の量だけである。102310^{23} 個の粒子の位置と運動量、つまり相空間のどの点 Γ\Gamma に系がいるかは分からないし、分かっても使いようがない。そこで、どの点にいるかを確率で表す。相空間の上の確率密度 ρ(Γ)\rho(\Gamma) を与え、測りたい量 A(Γ)A(\Gamma) の値を平均

⟨A⟩=∫A(Γ) ρ(Γ) dΓ(3.2.2)\langle A \rangle =\int A(\Gamma)\,\rho(\Gamma)\,\mathrm{d}\Gamma\tag{3.2.2}

で予言する。この ρ\rho を統計集団(アンサンブル)と呼ぶ。

ここで問題は、どの ρ\rho を選ぶかである。孤立系について分かっているのは「エネルギーが EE である」ことだけなので、ρ\rho はエネルギー EE の等エネルギー面の外では 00 にする。面そのものは 6N6N 次元の空間の中の 6N−16N-1 次元の面で体積が 00 なので、厚み ΔE\Delta E を持たせた殻 E<H(Γ)≤E+ΔEE<H(\Gamma)\le E+\Delta E を考え、後で ΔE\Delta E の大きさは結果に関係しないことを確かめる(3.2.5節)。殻の中でどう分布させるかについて、この章の答えは「相空間の体積 dΓ\mathrm{d}\Gamma で測って一様」である。

定義 3.2.1(ミクロカノニカル分布と状態数)

相空間の測度を

dΓ=d3Nq d3Nph3NN!(3.2.3)\mathrm{d}\Gamma=\frac{\mathrm{d}^{3N}q\,\mathrm{d}^{3N}p}{h^{3N}N!}\tag{3.2.3}

とする(hh は Planck 定数。hh と N!N! を入れる理由は3.2.3節で述べる)。エネルギーが EE 以下の相空間の体積を

Φ(E)=∫H(Γ)≤EdΓ,(3.2.4)\Phi(E)=\int_{H(\Gamma)\le E}\mathrm{d}\Gamma,\tag{3.2.4}

厚み ΔE\Delta E の殻の体積を状態数 W(E)=Φ(E+ΔE)−Φ(E)W(E)=\Phi(E+\Delta E)-\Phi(E) と呼ぶ。殻の中で一様な分布

ρmc(Γ)={1/W(E)(E<H(Γ)≤E+ΔE)0(それ以外)(3.2.5)\rho_{\mathrm{mc}}(\Gamma)=\begin{cases}1/W(E) & (E<H(\Gamma)\le E+\Delta E)\\ 0 & (\text{それ以外})\end{cases}\tag{3.2.5}

をミクロカノニカル分布と呼び、状態数の対数に kBk_{\mathrm B} を掛けた

S=kBln⁡W(E)(3.2.6)S= k_{\mathrm B}\ln W(E)\tag{3.2.6}

をエントロピーと呼ぶ。

式 (3.2.3) の dΓ\mathrm{d}\Gamma は次元のない量なので、Φ(E)\Phi(E) と W(E)W(E) はただの数になり、対数を取ることができる。「殻の中で一様」という仮定が等重率の原理の中身で、エントロピーの式 (3.2.6) は Boltzmann の名で呼ばれる。この時点ではどちらも定義と仮定にすぎない。SS が熱力学のエントロピーと同じふるまいをすることは3.2.4節で確かめる。

測定は時間平均である

ρ\rho を導入する理由を、もう1つの面から見ておく。実際の測定(圧力計の読み、温度計の読み)は、粒子の運動の時間尺度(衝突の間隔は気体で 10−10 s10^{-10}\,\mathrm{s} 程度)よりずっと長い時間にわたる平均である。測っているのは、1つの軌道に沿った時間平均

A‾=lim⁡tf→∞1tf∫0tfA(Γ(t)) dt(3.2.7)\overline{A}=\lim_{t_{\mathrm f}\to\infty}\frac{1}{t_{\mathrm f}}\int_0^{t_{\mathrm f}}A(\Gamma(t))\,\mathrm{d} t\tag{3.2.7}

に近い。時間平均を計算するには運動方程式を解かなければならないが、102310^{23} 個の粒子では解けない。そこで、時間平均を殻の上の平均⟨A⟩mc=∫Aρmc dΓ\langle A \rangle _{\mathrm{mc}}=\int A\rho_{\mathrm{mc}}\,\mathrm{d}\Gamma で置き換える。これが統計力学の基本の手続きである。この置き換えが正しいかどうかは力学の問いで、自由度1なら厳密に正しい(3.2.2節)。まず自由度1の例で、両者が一致する様子を手で確かめる。

例題 3.2.1 4次ポテンシャルの時間平均と殻の平均 ★★

オリジナル1次元の粒子 H=p22m+aq4H=\frac{p^2}{2m}+aq^4(a>0a>0)がエネルギー EE で往復している。転回点を Q=(E/a)1/4Q=(E/a)^{1/4} とする。

  1. (1) qq が dq\mathrm{d} q を通る時間 dt=dq/∣q˙∣\mathrm{d} t=\mathrm{d} q/\lvert \dot q\rvert を重みにして、q2q^2 の時間平均 q2‾\overline{q^2} を u=q/Qu=q/Q の積分で表せ。
  2. (2) 殻 E<H≤E+ΔEE<H\le E+\Delta E の中で (q,p)(q,p) の面積について一様な分布を考える。qq を止めたときの殻の pp 方向の幅を ΔE\Delta E の1次まで求め、qq の分布の重みが (1) の dt\mathrm{d} t に比例することを示せ。これから ⟨q2⟩mc=q2‾\langle q^2 \rangle _{\mathrm{mc}}=\overline{q^2} を結論せよ(ΔE→0\Delta E\to0)。
  3. (3) 積分をベータ関数で表し、⟨q2⟩mc\langle q^2 \rangle _{\mathrm{mc}} を (E/a)1/2(E/a)^{1/2} の倍数で出せ。調和振動子の A2/2A^2/2(AA は転回点)と比べよ。
解答

(1) エネルギーの保存から ∣q˙∣=2(E−aq4)/m\lvert \dot q\rvert =\sqrt{2(E-aq^4)/m} である。1周期の間に qq の各値を往きと帰りの2回通り、往きと帰りの時間は等しいので、時間平均は q>0q>0 の片道 [0,Q][0,Q] の重み dq/∣q˙∣\mathrm{d} q/\lvert \dot q\rvert で取ればよい。q=Quq=Qu と置くと E−aq4=E(1−u4)E-aq^4=E(1-u^4) なので

q2‾=∫0Qq2 dq/∣q˙∣∫0Qdq/∣q˙∣=Q2 I2I0,Ik=∫01uk du1−u4\overline{q^2}=\frac{\int_0^Q q^2\,\mathrm{d} q/\lvert \dot q\rvert }{\int_0^Q\mathrm{d} q/\lvert \dot q\rvert } =Q^2\,\frac{I_2}{I_0},\qquad I_k=\int_0^1\frac{u^k\,\mathrm{d} u}{\sqrt{1-u^4}}

となる。分母と分子に共通の m/(2E) Q\sqrt{m/(2E)}\,Q は約分で消えた。

(2) qq を止めると、殻の中の pp は 2m(E−aq4)<∣p∣≤2m(E+ΔE−aq4)\sqrt{2m(E-aq^4)}<\lvert p\rvert \le\sqrt{2m(E+\Delta E-aq^4)} の範囲にある。ΔE\Delta E の1次まで展開すると、正の側の幅は dp/dE⋅ΔE=mΔE/∣p∣=ΔE/∣q˙∣\mathrm{d} p/\mathrm{d} E\cdot\Delta E=m\Delta E/\lvert p\rvert =\Delta E/\lvert \dot q\rvert で、負の側も同じ幅がある。殻の面積を qq で切った重みは

2ΔE dq∣q˙∣ ∝ dt2\Delta E\,\frac{\mathrm{d} q}{\lvert \dot q\rvert }\ \propto\ \mathrm{d} t

で、(1) の重みと定数倍しか違わない。q2q^2 は pp によらないので、殻の一様な分布での平均は qq の分布だけで決まり、⟨q2⟩mc=q2‾\langle q^2 \rangle _{\mathrm{mc}}=\overline{q^2} である。重みが dt\mathrm{d} t になるのは ∣p∣=m∣q˙∣\lvert p\rvert =m\lvert \dot q\rvert で、殻の幅 ΔE/∣q˙∣\Delta E/\lvert \dot q\rvert が「遅いところほど厚い」ためである。この形は VV の形によらない(3.2.2節で一般の形にする)。

(3) u4=su^4=s と置くと Ik=14∫01s(k+1)/4−1(1−s)−1/2 ds=14B(k+14,12)I_k=\frac14\int_0^1s^{(k+1)/4-1}(1-s)^{-1/2}\,\mathrm{d} s=\frac14B\bigl(\tfrac{k+1}4,\tfrac12\bigr) である。Γ(54)=14Γ(14)\Gamma(\tfrac54)=\tfrac14\Gamma(\tfrac14) と Γ(14)Γ(34)=π2\Gamma(\tfrac14)\Gamma(\tfrac34)=\pi\sqrt2 を使うと

I2I0=Γ(34)2Γ(54)Γ(14)=4Γ(34)2Γ(14)2=8π2Γ(14)4=0.457,⟨q2⟩mc=q2‾=0.457(Ea)1/2\frac{I_2}{I_0}=\frac{\Gamma(\frac34)^2}{\Gamma(\frac54)\Gamma(\frac14)}=\frac{4\Gamma(\frac34)^2}{\Gamma(\frac14)^2}=\frac{8\pi^2}{\Gamma(\frac14)^4}=0.457, \qquad \langle q^2 \rangle _{\mathrm{mc}}=\overline{q^2}=0.457\Bigl(\frac{E}{a}\Bigr)^{1/2}

を得る(I2=0.599I_2=0.599、I0=1.311I_0=1.311)。転回点で測ると q2‾=0.457 Q2\overline{q^2}=0.457\,Q^2 で、調和振動子の 0.5 A20.5\,A^2 より小さい。4次の井戸は底が平らで壁が急なので、粒子は転回点の近くで速さを落とす区間が短く、中央に長くいる。値の E1/2E^{1/2} への比例は、qq の大きさが Q∝E1/4Q\propto E^{1/4} で決まることだけから出る。

木下の勉強ステータス

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