tecktom.com

当てる道具:Liouville の定理と殻の上の測度

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第2章 等重率とミクロカノニカル
目次
  1. 時間で変わらない分布
  2. 殻を薄くした極限
  3. 自由度1では殻の平均は時間平均
  4. 自由度が2以上のとき
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第2章 §3.2.2 ★★★ 相空間の体積で一様な分布だけが時間で形を変えない。自由度1では殻の上の測度が dt\mathrm{d} t そのものになる

時間で変わらない分布

前の章(第3部第1章)で、相空間の密度 ρ(Γ,t)\rho(\Gamma,t) が Liouville 方程式

∂ρ∂t={H,ρ}(3.2.8)\frac{\partial \rho}{\partial t}=\{H,\rho\}\tag{3.2.8}

に従うこと、相空間の流れが体積 dΓ\mathrm{d}\Gamma を保つこと(Liouville の定理)を示した。平衡状態を表す分布は時間で変わらないはずなので、{H,ρ}=0\{H,\rho\}=0 を満たさなければならない。ρ\rho が HH だけの関数 ρ=F(H)\rho=F(H) なら、Poisson 括弧の連鎖律から

{H,F(H)}=F′(H){H,H}=0\{H,F(H)\}=F'(H)\{H,H\}=0

で、この条件は満たされる。ミクロカノニカル分布 (3.2.5) は、殻の中で 1/W(E)1/W(E)、外で 00 という HH の階段関数なので、時間で変わらない。

ここで「相空間の体積で測って一様」であることが要になる。分布 ρ\rho は dΓ\mathrm{d}\Gamma あたりの確率なので、流れが dΓ\mathrm{d}\Gamma を保つなら、殻の中の小さな領域は形を変えながら同じ体積のまま殻の中を流れ、その中の確率も同じまま運ばれる。殻の中で密度が一様な分布は、流れたあとも一様のままである。別の変数(たとえば位置と速度 (q,q˙)(q,\dot q))で一様な分布を置くと、その変数での体積は流れで保たれないので、一般には時間とともに形が変わる(具体例は3.2.6節の例題)。等重率の原理で「何で測って一様か」を問われたら、答えは「Liouville の定理で保たれる体積、すなわち正準変数 (q,p)(q,p) の体積」である。

時間で変わらない分布は F(H)F(H) だけではない。HH 以外の保存量(全運動量・全角運動量など)があれば、その関数も {H,⋅}=0\{H,\cdot\}=0 を満たす。容器に閉じ込めた気体では壁が運動量と角運動量を変えるので、残る保存量は HH だけと考える。保存量が HH だけなら、時間で変わらない分布は HH の関数に限られる、というのがミクロカノニカル分布を選ぶ根拠の1つ目である。

殻を薄くした極限

殻の厚み ΔE\Delta E を小さくすると、W(E)≈g(E) ΔEW(E)\approx g(E)\,\Delta E と書ける。ここで

g(E)=dΦdE=∫δ(E−H(Γ)) dΓ(3.2.9)g(E)=\frac{\mathrm{d} \Phi}{\mathrm{d} E}=\int\delta\bigl(E-H(\Gamma)\bigr)\,\mathrm{d}\Gamma\tag{3.2.9}

は状態密度である(2つ目の等号は Φ(E)=∫θ(E−H) dΓ\Phi(E)=\int\theta(E-H)\,\mathrm{d}\Gamma を EE で微分したもの。θ\theta は階段関数)。殻の上の平均は

⟨A⟩mc=1g(E)∫A(Γ) δ(E−H(Γ)) dΓ(3.2.10)\langle A \rangle _{\mathrm{mc}}=\frac{1}{g(E)}\int A(\Gamma)\,\delta\bigl(E-H(\Gamma)\bigr)\,\mathrm{d}\Gamma\tag{3.2.10}

になる。δ(E−H)\delta(E-H) の重みは等エネルギー面の上で一様ではない。面の上の小さな面積を dσ\mathrm{d}\sigma とすると、HH が EE から E+dEE+\mathrm{d} E まで変わる厚みは dE/∣∇ΓH∣\mathrm{d} E/\lvert \nabla_\Gamma H\rvert なので、δ(E−H) dΓ\delta(E-H)\,\mathrm{d}\Gamma は面の上の dσ/∣∇ΓH∣\mathrm{d}\sigma/\lvert \nabla_\Gamma H\rvert に比例する。HH の傾きが緩い所(殻が厚い所)ほど重みが大きい。図 3.2.1 はこの様子を調和振動子で描いたものである。

図

図 3.2.1 1次元の調和振動子(m=1m=1, ω=12\omega=\frac12)の相空間で、エネルギーの殻 E<H≤E+ΔEE<H\le E+\Delta E(E=1E=1, ΔE=0.3\Delta E=0.3)を塗った図。HH の傾きは転回点(p=0p=0)で緩いので、殻はそこで厚い。殻の上で一様な分布は転回点の近くに多くの重みを置き、振動子が転回点の近くでゆっくり動くことと対応する。矢印は運動の向き(時計回り)。

自由度1では殻の平均は時間平均

命題 3.2.2(自由度1の殻の平均 ★★★)

自由度1の系で、エネルギー EE の等エネルギー線が1本の閉曲線で、運動が周期 tpt_{\mathrm p} の周期運動であるとする。このとき、相空間の測度を dΓ=dq dp/h\mathrm{d}\Gamma=\mathrm{d} q\,\mathrm{d} p/h として

∫A(q,p) δ(E−H(q,p)) dΓ=1h∮A dt,g(E)=tph(3.2.11)\int A(q,p)\,\delta\bigl(E-H(q,p)\bigr)\,\mathrm{d}\Gamma=\frac{1}{h}\oint A\,\mathrm{d} t,\qquad g(E)=\frac{t_{\mathrm p}}{h}\tag{3.2.11}

が成り立つ。したがって ⟨A⟩mc\langle A \rangle _{\mathrm{mc}} は1周期にわたる時間平均 A‾\overline{A} に等しい。

証明

pp についての積分を先に行う。qq を止めると、H(q,p)=EH(q,p)=E を満たす pp は閉曲線の上の枝と下の枝の2つ p±(q)p_\pm(q) で、デルタ関数の公式からδ(E−H)=∑±δ(p−p±(q))/∣∂H/∂p∣\delta(E-H)=\sum_\pm\delta(p-p_\pm(q))/\lvert \partial H/\partial p\rvert である。Hamilton 方程式 ∂H/∂p=q˙\partial H/\partial p=\dot q を使うと

∫dq∫dp A δ(E−H)=∑±∫A(q,p±(q))∣q˙∣ dq.\int\mathrm{d} q\int\mathrm{d} p\,A\,\delta(E-H)=\sum_\pm\int\frac{A(q,p_\pm(q))}{\lvert \dot q\rvert }\,\mathrm{d} q.

右辺の dq/∣q˙∣\mathrm{d} q/\lvert \dot q\rvert は、軌道が dq\mathrm{d} q を通るのにかかる時間 dt\mathrm{d} t そのものである。上の枝と下の枝を合わせると軌道を1周するので、右辺は ∮A dt\oint A\,\mathrm{d} t になる。A=1A=1 と置けば h g(E)=∮dt=tph\,g(E)=\oint\mathrm{d} t=t_{\mathrm p} を得る。

この命題は、第1部の結果と合っている。第1部第14章で、作用変数 J=12π∮p dqJ=\frac{1}{2\pi}\oint p\,\mathrm{d} q が dJdE=tp/(2π)\frac{\mathrm{d} J}{\mathrm{d} E}=t_{\mathrm p}/(2\pi) を満たすことを見た。JJ は等エネルギー線の囲む面積を 2π2\pi で割ったものなので Φ(E)=2πJ/h=J/ℏ\Phi(E)=2\pi J/h=J/\hbar で、これを EE で微分すれば g(E)=tp/hg(E)=t_{\mathrm p}/h である。自由度1では、殻の上の平均は力学から導かれる結果で、仮定は要らない。殻の上の重み dσ/∣∇ΓH∣\mathrm{d}\sigma/\lvert \nabla_\Gamma H\rvert が、軌道がそこに滞在する時間 dt\mathrm{d} t と一致するからである。

自由度が2以上のとき

自由度が2以上になると、等エネルギー面は2次元以上の広がりを持ち、1本の軌道が面全体をくまなく回るかどうかは力学系によって違う。軌道がほとんどすべての初期値から面全体を回り、面のどの部分にもその測度に比例した時間だけ滞在する性質をエルゴード性と呼ぶ。エルゴード性があれば、自由度1の命題と同じく、時間平均はミクロカノニカル平均に等しい。しかし、HH 以外の保存量がある系ではエルゴード性は成り立たない(次の例題)。弱い結合を入れたときにエネルギーの行き来が面全体へ広がるかどうかも一般には保証されず、結合が十分弱い系では、軌道が面の一部(不変トーラス)に閉じ込められ続けることが KAM の定理で知られている。

実際の気体のように粒子が互いに衝突する系について、エルゴード性を力学から示すことは一般にはできていない。統計力学は、ここを等重率の原理として仮定して先へ進む。仮定の根拠は3つある。第1に、Liouville の定理から、保存量が HH だけなら時間で変わらない分布はミクロカノニカル分布に限られる。第2に、EE 以外に何も知らないとき、殻の中のある部分をほかより重く見る理由がない(この「知らなさを最大にする」見方は、エントロピーを最大にする分布として第3部第3章で使う)。第3に、この仮定から導いた結果(次の節以降)が実験と合う。

例題 3.2.2 結合のない2つの振動子 ★★

オリジナル角振動数 ω1=1\omega_1=1 と ω2=2\omega_2=\sqrt2 の2つの調和振動子(質量 11)を考え、H=H1+H2H=H_1+H_2、Hj=12(pj2+ωj2qj2)H_j=\frac12(p_j^2+\omega_j^2q_j^2) とする。全エネルギーを EE とする。

  1. (1) 1つ目の振動子のエネルギー E1=H1E_1=H_1 の、殻 H=EH=E の上の分布を求めよ。平均と分散も求めよ。
  2. (2) 初めに E1=0.2EE_1=0.2E だったとき、E1E_1 の時間平均を求めよ。(1) と比べて、何が等重率の原理の前提を満たしていないかを述べよ。
解答

(1) 2つの振動子の測度は積 dΓ=dΓ1 dΓ2\mathrm{d}\Gamma=\mathrm{d}\Gamma_1\,\mathrm{d}\Gamma_2 で、殻の上の重みは δ(E−H1−H2)\delta(E-H_1-H_2) である。E1E_1 の分布は

P(E1)=1g(E)∫δ(E1−H1) δ(E−H1−H2) dΓ1 dΓ2=g1(E1) g2(E−E1)g(E).P(E_1)=\frac{1}{g(E)}\int\delta(E_1-H_1)\,\delta(E-H_1-H_2)\,\mathrm{d}\Gamma_1\,\mathrm{d}\Gamma_2=\frac{g_1(E_1)\,g_2(E-E_1)}{g(E)}.

命題 3.2.2 から1つの振動子の状態密度は gj=tp,j/h=2π/(ωjh)g_j=t_{\mathrm p,j}/h=2\pi/(\omega_jh) で、エネルギーによらない。よって P(E1)P(E_1) は 0≤E1≤E0\le E_1\le E で一様で、P(E1)=1/EP(E_1)=1/E である。平均は E/2E/2、分散は ∫0E(E1−E/2)2 dE1/E=E2/12\int_0^E(E_1-E/2)^2\,\mathrm{d} E_1/E=E^2/12 になる。

(2) 結合がないので H1H_1 は保存量で、E1E_1 は時間がたっても 0.2E0.2E のままである。時間平均は 0.2E0.2E で、(1) の 0.5E0.5E と一致しない(数値積分でも、時刻 00 から 200200 までの E1E_1 の平均は 0.2E0.2E になる)。軌道は殻 H=EH=E の全体でなく、H1=0.2EH_1=0.2E かつ H2=0.8EH_2=0.8E の部分(2次元のトーラス)だけを回っている。等重率の原理の前提「保存量が HH だけ」が満たされていない。2つの振動子のあいだでエネルギーをやり取りさせる結合が無ければ、E1E_1 は殻の上に広がらない。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ