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この章で作る道具:作用変数と角変数

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第14章 作用角変数と断熱不変量
目次
  1. 周期運動と相空間の閉曲線
  2. 作用角変数の主張
  3. 調和振動子
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第14章 §1.14.1 ★★★ 周期運動の軌道が囲む面積を 2π2\pi で割ったものを運動量に、軌道の上の位置を角度にとる

周期運動をする系では、相空間の軌道は閉じた曲線になる。前の章(第1部第13章)では、その曲線に沿った積分 ∮p dq\oint p\,\mathrm{d} q が軌道の囲む面積で、エネルギーで微分すると周期になることを見た。この章では、この面積を 2π2\pi で割った量

J=12π∮p dqJ=\frac{1}{2\pi}\oint p\,\mathrm{d} q

を新しい運動量に選ぶ正準変換を作る。新しい座標は1周で 2π2\pi だけ増える角度 θ\theta になり、運動は「JJ は一定、θ\theta は一定の速さで増える」という最も簡単な形に書き直される。この組 (θ,J)(\theta,J) を作用角変数と呼ぶ。

作用角変数を作る価値は、運動を解くこと自体よりも、系のパラメータ(振り子の糸の長さ、ばね定数、箱の幅)をゆっくり変えたときにはっきりする。パラメータを変えるとエネルギーも周期も変わるが、JJ だけはほとんど変わらない。このように、ゆっくりした変化のもとでほぼ一定に保たれる量を断熱不変量と呼ぶ。JJ が断熱不変量であることは、量子力学では「ゆっくり変えても量子数が変わらない」こと(Bohr–Sommerfeld の量子化条件 J=(n+12)ℏJ=(n+\frac12)\hbar と断熱定理)に対応し、統計力学では「ゆっくり圧縮した気体の状態の数が変わらない」こと(断熱変化でエントロピーが一定)に対応する。

1.14.1節で作用変数と角変数を定義し、調和振動子で具体的な形を書く。1.14.2節では前の章の特性関数 W(q)W(q) を母関数に使って、(θ,J)(\theta,J) が正準変数になること、角変数が1周で 2π2\pi 増えること、θ˙\dot\theta が周期から決まることを示す。1.14.3節から1.14.5節が「出てくるもの」で、断熱不変量の主張とその理由、長さを変える振り子の数値積分による確認、量子化の条件と箱の断熱圧縮を順に扱う。1.14.6節では、糸の張力のする仕事から振幅の変化を出す初等的な計算、前期量子論の ∮p dq=nh\oint p\,\mathrm{d} q=nh、熱力学の PV5/3=PV^{5/3}= 一定、磁場中の荷電粒子の磁気モーメントの保存を、この章の式と並べる。

この章では自由度1の系だけを扱う。自由度が2以上の系で作用角変数を作ることができるのは、保存量が自由度と同じ数だけあって変数が分離できる場合(可積分系)に限られ、その一般論は、定理 1.14.2 の後の箱で要点だけ述べる。

周期運動と相空間の閉曲線

自由度1で、Hamiltonian H(q,p)H(q,p) が時刻を含まない系を考える。エネルギー EE が保存するので、運動は相空間の等エネルギー線 H(q,p)=EH(q,p)=E の上に限られる。この線が有界な閉曲線になるとき、運動は周期的である。ポテンシャルの谷を左右の転回点の間で往復する運動(秤動)がその典型で、調和振動子・振り子の小さな振れ・箱の中の粒子がこれにあたる。振り子が上を越えて回り続ける運動(回転)では、等エネルギー線は閉じないが、角度を 2π2\pi ごとに同じ点とみなせば、やはり1周で元に戻る曲線になる(第1部第8章の振り子の相図)。

どちらの場合も、1周のあいだに相空間の曲線に沿って p dqp\,\mathrm{d} q を積分した量が定まる。秤動ならこれは閉曲線の囲む面積で、運動の向き(qq を横軸、pp を縦軸にとると時計回り)に沿って積分すると正になる。

定義 1.14.1(作用変数)

エネルギー EE の周期運動の1周に沿って

J(E)=12π∮H(q,p)=Ep dq(1.14.1)J(E)=\frac{1}{2\pi}\oint_{H(q,p)=E}p\,\mathrm{d} q\tag{1.14.1}

と定めた量を作用変数と呼ぶ。秤動では JJ は等エネルギー線の囲む面積を 2π2\pi で割ったもの、回転では qq の1周期にわたる pp の積分を 2π2\pi で割ったものである。

JJ の次元は作用(エネルギー×時間、運動量×長さ)で、ℏ\hbar と同じである。2π2\pi で割るのは、後で角変数の周期を 2π2\pi にそろえるためで、この本の流儀(Landau–Lifshitz と同じ)である。2π2\pi で割らずに ∮p dq\oint p\,\mathrm{d} q そのものを作用変数と呼ぶ教科書もあり、その対応は1.14.6節で述べる。

前の章の式から、JJ をエネルギーで微分すると周期 TT が出る。前の章の結果は、周期が等エネルギー線の囲む面積の EE 微分 T=ddE∮p dqT=\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} E}\oint p\,\mathrm{d} q になることだった。これを JJ で書けば

dJdE=T2π>0(1.14.2)\frac{\mathrm{d} J}{\mathrm{d} E}=\frac{T}{2\pi}>0\tag{1.14.2}

である。JJ は EE の増加関数なので、逆に解いて EE を JJ の関数として E=H(J)E=H(J) と書くことができる。この関数 H(J)H(J) が、作用角変数での Hamiltonian になる。

作用角変数の主張

定理 1.14.2(作用角変数 ★★★)

自由度1の時刻を含まない系で、あるエネルギーの範囲の運動がすべて周期的であるとする。このとき、相空間の点 (q,p)(q,p) から新しい変数 (θ,J)(\theta,J) への正準変換で、

  1. 新しい運動量 JJ は式 (1.14.1) の作用変数で、
  2. 新しい Hamiltonian は JJ だけの関数 H(J)H(J) になり、
  3. 新しい座標 θ\theta は運動の1周で 2π2\pi だけ増える

ものがある。Hamilton 方程式は

J˙=−∂H∂θ=0,θ˙=∂H∂J≕ω(J)(1.14.3)\dot J=-\frac{\partial H}{\partial \theta}=0,\qquad \dot\theta=\frac{\partial H}{\partial J}\eqqcolon\omega(J)\tag{1.14.3}

となり、JJ は一定、θ=ωt+θ0\theta=\omega t+\theta_0 は一定の速さで増える。角振動数は ω=2π/T\omega=2\pi/T である。

証明は1.14.2節で前の章の特性関数を使って行う。ここでは主張の意味を確かめる。JJ は等エネルギー線を1本選ぶ量(どの楕円の上にいるか)で、θ\theta はその線の上のどこにいるかを角度で表す量である。運動はこの「線の上を一定の角速度で回る」という形に書き直される。角速度が一定になるように θ\theta の目盛りを選んである点が要所で、もとの qq では線の上を回る速さは場所によって違う(転回点の近くでは遅い)。

自由度が2以上のとき:Liouville–Arnold の定理と保存量の探し方

自由度 ff の系で、互いの Poisson 括弧がすべて消える独立な保存量が ff 個そろうと、運動は求積だけで解ける(Liouville–Arnold の定理)。保存量の値を決めた等位集合が有界でつながっていれば、それは ff 次元のトーラスになり、その上に作用角変数 (θi,Ji)(\theta_i,J_i) が作れる。このような系を可積分系と呼び、中心力の問題(保存量は Hamiltonian・角運動量の2乗・その zz 成分)がその例である。

保存量を探す道具は、主に次の3つである。

  1. (1) 点変換の対称性を探す。δL\delta L が全微分になる条件を、変換の向き Ki(q,t)K_i(q,t) についての偏微分方程式(決定方程式)として解き、Noether の定理(第1部第10章)で保存量にする。
  2. (2) 運動量の多項式を仮定して係数を決める。保存量を運動量の2次式などと置き、Hamiltonian との Poisson 括弧が 00 になるように係数を合わせる。V=−α/rV=-\alpha/r の Kepler 問題ではこの方法で Runge–Lenz ベクトル ARL=p×L−mα r/r\bm{A}_{\mathrm{RL}}=\bm{p}\times\bm{L}-m\alpha\,\bm{r}/r が出る(第2部第1章)。この保存量は配置の空間の点変換からは出てこない。
  3. (3) 平衡点のまわりで Hamiltonian を級数の正準変換で順に整え、各次数で角変数を含まない形へ直す(Birkhoff 標準形)。振動数の間に共鳴が無ければ各次数まで保存量が作れるが、級数は一般には収束しない。

保存量は、局所には自明に存在する。運動が止まっていない点の近くでは、相空間の流れを1つの座標の並進に直す座標(流れの箱)がとれて、残りの 2f−12f-1 個の座標がすべて保存量になる。

問題は、それを相空間の広い範囲で1価の滑らかな関数としてつなげられるかで、一般にはつながらない。Poincaré は三体問題で、Hamiltonian と独立で摂動の大きさについて解析的な保存量が無いことを示した。KAM の定理は、可積分系を十分小さく乱したとき、振動数の比が共鳴から十分離れたトーラスの多くが少し変形して残り、共鳴の近くのトーラスは壊れることを示す。

可積分性と Liouville–Arnold の定理は、詳しくは基礎理論『物理のための微分幾何入門』第14章 §14.6 で扱う。

調和振動子

H=p22m+12mω2q2H=\frac{p^2}{2m}+\frac12m\omega^2q^2 の等エネルギー線は半軸 2E/(mω2)\sqrt{2E/(m\omega^2)} と 2mE\sqrt{2mE} の楕円で、その面積は 2πE/ω2\pi E/\omega だった(前の章)。よって

J=Eω,H(J)=ωJ,∂H∂J=ω.(1.14.4)J=\frac{E}{\omega},\qquad H(J)=\omega J,\qquad \frac{\partial H}{\partial J}=\omega .\tag{1.14.4}

作用角変数での角振動数はもとの ω\omega に一致する。楕円の上の位置を角度 θ\theta で表すと、JJ と θ\theta から qq と pp は

q=2Jmω sin⁡θ,p=2mωJ cos⁡θ(1.14.5)q=\sqrt{\frac{2J}{m\omega}}\,\sin\theta,\qquad p=\sqrt{2m\omega J}\,\cos\theta\tag{1.14.5}

で戻る。代入すると H=ωJ(cos⁡2θ+sin⁡2θ)=ωJH=\omega J(\cos^2\theta+\sin^2\theta)=\omega J になり、θ=ωt+θ0\theta=\omega t+\theta_0 を入れれば q=Asin⁡(ωt+θ0)q=A\sin(\omega t+\theta_0) という見慣れた解が出る。逆向きには

J=p22mω+mωq22,tan⁡θ=mωqp(1.14.6)J=\frac{p^2}{2m\omega}+\frac{m\omega q^2}{2},\qquad \tan\theta=\frac{m\omega q}{p}\tag{1.14.6}

である。この変換が正準であることは、Poisson 括弧 {θ,J}=1\{\theta,J\}=1 で確かめられる(第1部第11章)。θ=arctan⁡(mωq/p)\theta=\arctan(m\omega q/p) と JJ の偏微分を計算すると

{θ,J}=∂θ∂q∂J∂p−∂θ∂p∂J∂q=mωpp2+m2ω2q2⋅pmω+mωqp2+m2ω2q2⋅mωq=1\{\theta,J\}=\frac{\partial \theta}{\partial q}\frac{\partial J}{\partial p}-\frac{\partial \theta}{\partial p}\frac{\partial J}{\partial q} =\frac{m\omega p}{p^2+m^2\omega^2q^2}\cdot\frac{p}{m\omega}+\frac{m\omega q}{p^2+m^2\omega^2q^2}\cdot m\omega q=1

となる。同じことを母関数で言えば、F1(q,θ)=12mωq2cot⁡θF_1(q,\theta)=\frac12m\omega q^2\cot\theta から p=∂F1/∂qp=\partial F_1/\partial q, J=−∂F1/∂θJ=-\partial F_1/\partial\theta として式 (1.14.5) が出る(第1部第12章の母関数の型。章末の総合問題 (1))。

図 1.14.1 の左に、この楕円と作用角変数の関係を描いた。θ\theta は pp 軸の正の向きから時計回りに測った「楕円の上の角度」だが、楕円を円に引き伸ばしてから測った角度なので、図の上の幾何学的な角度とは一致しない。

図

図 1.14.1 作用変数は等エネルギー線の囲む面積の 1/(2π)1/(2\pi)。(a) 調和振動子では楕円で、角変数 θ\theta は pp 軸から時計回りに測る(楕円を円に引き伸ばしたときの角度)。(b) 幅 aa の箱の中を往復する粒子では、壁で運動量の符号が一瞬で入れ替わり、軌道は長方形になる。どちらも運動は時計回り

例題 1.14.1 調和振動子の点を作用角変数で読む ★★

オリジナルm=1m=1, ω=2\omega=2 の調和振動子が、ある時刻に q=1q=1, p=2p=2 にある。

  1. (1) 作用変数 JJ、角変数 θ\theta、エネルギー EE を求めよ。
  2. (2) 式 (1.14.5) に (1) の値を入れて (q,p)=(1,2)(q,p)=(1,2) に戻ることを確かめ、この運動の楕円の面積を求めよ。
  3. (3) この時刻から、粒子が初めて q=0q=0 を通過するまでの時間を、θ\theta の進み方から求めよ。
解答

(1) 式 (1.14.6) から J=222⋅1⋅2+1⋅2⋅122=1+1=2J=\frac{2^2}{2\cdot1\cdot2}+\frac{1\cdot2\cdot1^2}{2}=1+1=2。tan⁡θ=mωq/p=2/2=1\tan\theta=m\omega q/p=2/2=1 で、q>0q>0, p>0p>0 なので θ\theta は第1象限の角で θ=π/4\theta=\pi/4。E=ωJ=4E=\omega J=4 で、p22m+12mω2q2=2+2=4\frac{p^2}{2m}+\frac12m\omega^2q^2=2+2=4 と一致する。

(2) q=2⋅2/(1⋅2)sin⁡π4=2⋅12=1q=\sqrt{2\cdot2/(1\cdot2)}\sin\frac\pi4=\sqrt2\cdot\frac{1}{\sqrt2}=1、p=2⋅1⋅2⋅2cos⁡π4=8⋅12=2p=\sqrt{2\cdot1\cdot2\cdot2}\cos\frac\pi4=\sqrt8\cdot\frac{1}{\sqrt2}=2 で戻る。楕円の半軸は 2E/(mω2)=2\sqrt{2E/(m\omega^2)}=\sqrt2 と 2mE=8\sqrt{2mE}=\sqrt8 なので面積は π28=4π\pi\sqrt2\sqrt8=4\pi で、2πJ=4π2\pi J=4\pi に一致する。

(3) q=0q=0 になるのは sin⁡θ=0\sin\theta=0、つまり θ=π\theta=\pi のときである(θ=0\theta=0 は過去)。θ\theta は一定の角速度 ω=2\omega=2 で増えるので、π/4\pi/4 から π\pi までにかかる時間は (π−π/4)/2=3π/8≈1.18(\pi-\pi/4)/2=3\pi/8\approx1.18 である。もとの qq で解くなら q(t)=2sin⁡(2t+π/4)=0q(t)=\sqrt2\sin(2t+\pi/4)=0 を解くことになり、同じ答えが出るが、作用角変数では「角度の差を角速度で割る」だけで済む。

木下の勉強ステータス

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