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出てくるもの (1):断熱不変量

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第14章 作用角変数と断熱不変量
目次
  1. ゆっくり変わるパラメータ
  2. 理由: は角度について平均すると
  3. 調和振動子では式で見える
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第14章 §1.14.3 ★★★ パラメータを周期に比べてゆっくり変えると、エネルギーも周期も変わるが、作用変数 JJ はほとんど変わらない

ゆっくり変わるパラメータ

Hamiltonian が外から操作できるパラメータ λ\lambda を含む系 H(q,p;λ)H(q,p;\lambda) を考える。振り子の糸の長さ、ばね定数、箱の幅がその例である。λ\lambda を一定にしておけば運動は周期的で、作用角変数 (θ,J)(\theta,J) が前節の方法で作ることができる。ここで λ\lambda を時間とともに変える。変え方が「ゆっくり」であるとは、1周期のあいだの λ\lambda の相対的な変化が小さいこと、すなわち

ϵ≔T ∣λ˙∣λ≪1(1.14.11)\epsilon\coloneqq T\,\frac{\lvert \dot\lambda\rvert }{\lambda}\ll1\tag{1.14.11}

をいう。ϵ\epsilon はこの章でだけ使う小さいパラメータで、λ\lambda が大きく(O(1)\mathcal{O}(1) の割合で)変わるまでにかかる時間は周期の 1/ϵ1/\epsilon 倍ほどになる。HH が時刻を含むのでエネルギーは保存しない。λ\lambda を変える操作が系に仕事をする。

定理 1.14.3(作用変数の断熱不変性 ★★★)

自由度1の系で、λ\lambda を ϵ≪1\epsilon\ll1 の速さで変える。λ\lambda が O(1)\mathcal{O}(1) の割合で変わるあいだ、各時刻の λ\lambda で計算した作用変数J(q,p;λ)J(q,p;\lambda) の変化は O(ϵ)\mathcal{O}(\epsilon) にとどまる。一方、エネルギーと周期は O(1)\mathcal{O}(1) の割合で変わる。

この主張の数学としての証明(どの条件で、どの時間の範囲まで成り立つか)は第V巻の平均化定理の仕事で、ここでは理由の筋道を示す。

理由:J˙\dot J は角度について平均すると 00

各時刻の λ\lambda で作った母関数 W(q,J;λ)W(q,J;\lambda) を使って、時刻ごとに (q,p)(q,p) を (θ,J)(\theta,J) へ変換する。λ\lambda が時刻とともに変わるので、母関数は時刻を含み、新しい Hamiltonian に ∂F2/∂t\partial F_2/\partial t が足される(第1部第12章)。

K(θ,J,t)=H(J;λ)+λ˙ Λ(θ,J;λ),Λ≔(∂W∂λ)q,J.(1.14.12)K(\theta,J,t)=H(J;\lambda)+\dot\lambda\,\Lambda(\theta,J;\lambda),\qquad \Lambda\coloneqq\Bigl(\frac{\partial W}{\partial \lambda}\Bigr)_{q,J}.\tag{1.14.12}

Λ\Lambda は qq と JJ を止めて λ\lambda で微分した WW を、θ\theta と JJ で書き直したものである。JJ の Hamilton 方程式は

J˙=−∂K∂θ=−λ˙ ∂Λ∂θ(1.14.13)\dot J=-\frac{\partial K}{\partial \theta}=-\dot\lambda\,\frac{\partial \Lambda}{\partial \theta}\tag{1.14.13}

となる。右辺は λ˙\dot\lambda に比例するので小さいが、00 ではない。JJ は1周期のあいだに O(ϵJ)\mathcal{O}(\epsilon J) だけ揺れる。

要点は、Λ\Lambda が θ\theta について周期 2π2\pi の関数であることである。qq が1周して同じ点に戻ると WW は ∮p dq=2πJ\oint p\,\mathrm{d} q=2\pi J だけ増えるが、この増え方は JJ だけで決まり λ\lambda によらない。したがって WW を λ\lambda で微分した Λ\Lambda は、1周で元の値に戻る。周期関数の導関数 ∂Λ/∂θ\partial\Lambda/\partial\theta は、θ\theta について1周平均すると 00 になる。

1周期のあいだ λ˙\dot\lambda はほとんど一定で、θ\theta は一定の速さ ω\omega で 2π2\pi だけ進むので、式 (1.14.13) を1周期にわたって積分すると

ΔJ1周≈−λ˙ω∫02π∂Λ∂θ dθ=0\Delta J_{1\text{周}}\approx-\frac{\dot\lambda}{\omega}\int_0^{2\pi}\frac{\partial \Lambda}{\partial \theta}\,\mathrm{d}\theta=0

となる。λ˙\dot\lambda の1次の大きさでは、1周ごとの JJ の変化が打ち消し合う。残るのは λ˙\dot\lambda の2次の大きさ(λ˙\dot\lambda が1周期のあいだに変わる分と、θ\theta の進み方が一様からずれる分)で、1周あたり O(ϵ2J)\mathcal{O}(\epsilon^2J) である。λ\lambda が O(1)\mathcal{O}(1) 変わるまでの周回数は 1/ϵ1/\epsilon ほどなので、積み重なっても O(ϵJ)\mathcal{O}(\epsilon J) にしかならない。これが定理 1.14.3 の中身である。一方、エネルギーは E˙=∂H/∂t=λ˙ ∂H/∂λ\dot E=\partial H/\partial t=\dot\lambda\,\partial H/\partial\lambda で変わり、右辺の平均は一般に 00 でないので、λ\lambda が O(1)\mathcal{O}(1) 変わるあいだに EE も O(1)\mathcal{O}(1) の割合で変わる。

調和振動子では式で見える

ばね定数をゆっくり変える調和振動子 H=p22m+12mω(t)2q2H=\frac{p^2}{2m}+\frac12m\omega(t)^2q^2 では、J˙\dot J を母関数を使わずに直接計算することができる。J=H/ωJ=H/\omega を時間で微分し、Hamilton 方程式 q˙=p/m\dot q=p/m, p˙=−mω2q\dot p=-m\omega^2q を使うと、HH の時間変化は ∂H/∂t=mωω˙q2\partial H/\partial t=m\omega\dot\omega q^2 だけなので

J˙=mωω˙q2ω−Hω˙ω2=ω˙ω(mωq2−J).\dot J=\frac{m\omega\dot\omega q^2}{\omega}-\frac{H\dot\omega}{\omega^2} =\frac{\dot\omega}{\omega}\bigl(m\omega q^2-J\bigr).

式 (1.14.5) の mωq2=2Jsin⁡2θm\omega q^2=2J\sin^2\theta を入れると

J˙=−ω˙ω Jcos⁡2θ(1.14.14)\dot J=-\frac{\dot\omega}{\omega}\,J\cos2\theta\tag{1.14.14}

を得る。右辺は cos⁡2θ\cos2\theta に比例し、θ\theta について平均すると 00 である。式 (1.14.13) と比べると Λ=J2ωsin⁡2θ\Lambda=\frac{J}{2\omega}\sin2\theta で、実際に (∂W/∂ω)q,J(\partial W/\partial\omega)_{q,J} を計算するとこの形になる。Λ\Lambda は θ\theta について周期的で、新しい Hamiltonian はK=ωJ+ω˙2ωJsin⁡2θK=\omega J+\frac{\dot\omega}{2\omega}J\sin2\theta である。JJ は cos⁡2θ\cos2\theta で揺れながら、平均としては一定にとどまる。J=E/ωJ=E/\omega が一定なので、ゆっくりばね定数を変えると、エネルギーは角振動数に比例して変わる。振幅 2J/(mω)\sqrt{2J/(m\omega)} は ω−1/2\omega^{-1/2} に比例する。

断熱不変性が成り立たない所

断熱不変性の理由は「1周期のあいだ λ\lambda がほとんど変わらない」ことだったので、周期が無限に長くなる所では成り立たない。振り子では、等エネルギー線がセパラトリクス(往復と回転の境目。第1部第8章)に近づくと周期が発散し、どれだけゆっくり λ\lambda を変えても ϵ=T∣λ˙∣/λ\epsilon=T\lvert \dot\lambda\rvert /\lambda は小さくならない。パラメータを変えるうちに軌道がセパラトリクスを横切ると、JJ は O(ϵ)\mathcal{O}(\epsilon) より大きく跳ぶ。また、周期に比べて速く変えた場合(ϵ≳1\epsilon\gtrsim1)にも JJ は保たれない(1.14.4節の図 1.14.2)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ϵ=T∣λ˙∣/λ→0\epsilon=T\lvert \dot\lambda\rvert /\lambda\to0(パラメータの1周期あたりの相対変化が小さい) | 証明 条件付き(自由度1で、軌道が周期的なまま角振動数 ω(J,λ)\omega(J,\lambda) が 00 に近づかない〔セパラトリクスを横切らない〕とき、θ\theta を時間の代わりに使えば平均化定理の形になり、λ\lambda が O(1)\mathcal{O}(1) 変わる時間 O(1/ϵ)\mathcal{O}(1/\epsilon) のあいだ JJ のずれは O(ϵ)\mathcal{O}(\epsilon)) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 1.14.3 べき乗のポテンシャルの係数をゆっくり変える ★★

オリジナルH=p22m+λ∣q∣kH=\frac{p^2}{2m}+\lambda\lvert q\rvert ^k(k>0k>0)の係数 λ\lambda をゆっくり変える。

  1. (1) 作用変数が J∝λ−1/kE1/2+1/kJ\propto\lambda^{-1/k}E^{1/2+1/k} の形になることを示せ。
  2. (2) λ\lambda をゆっくり変えたとき、E∝λ2/(k+2)E\propto\lambda^{2/(k+2)} となることを示せ。k=2k=2 で1.14.3節の「エネルギーは角振動数に比例」に戻ることを確かめよ。
  3. (3) k=4k=4 で λ\lambda をゆっくり2倍にすると、エネルギーは何倍になるか。
解答

(1) 転回点は λqmaxk=E\lambda q_{\mathrm{max}}^k=E から qmax=(E/λ)1/kq_{\mathrm{max}}=(E/\lambda)^{1/k}。q=qmaxuq=q_{\mathrm{max}}u と置くと

∮p dq=4∫0qmax2m(E−λqk) dq=42mE qmax∫011−uk du.\oint p\,\mathrm{d} q=4\int_0^{q_{\mathrm{max}}}\sqrt{2m(E-\lambda q^k)}\,\mathrm{d} q=4\sqrt{2mE}\,q_{\mathrm{max}}\int_0^1\sqrt{1-u^k}\,\mathrm{d} u .

最後の積分は kk だけで決まる数なので、J∝E1/2(E/λ)1/k=λ−1/kE1/2+1/kJ\propto E^{1/2}(E/\lambda)^{1/k}=\lambda^{-1/k}E^{1/2+1/k}。

(2) JJ が一定なら E(k+2)/(2k)∝λ1/kE^{(k+2)/(2k)}\propto\lambda^{1/k}、両辺を 2k/(k+2)2k/(k+2) 乗して E∝λ2/(k+2)E\propto\lambda^{2/(k+2)}。k=2k=2 では λ=12mω2\lambda=\frac12m\omega^2 なので E∝λ1/2∝ωE\propto\lambda^{1/2}\propto\omega となり、J=E/ωJ=E/\omega が一定であることと一致する。

(3) E∝λ1/3E\propto\lambda^{1/3} なので 21/3≈1.262^{1/3}\approx1.26 倍。m=1m=1 で λ\lambda を 11 から 22 へ時間 600600 かけて滑らかに変える数値積分(周期は 22 程度)でも、エネルギーは 1.2601.260 倍になる(verify_ch1-14.py)。調和振動子なら 2≈1.41\sqrt2\approx1.41 倍、箱(k→∞k\to\infty)なら λ\lambda を変えてもエネルギーは変わらない。ポテンシャルの壁が急なほど、係数を変えたときのエネルギーの変化は小さい。

木下の勉強ステータス

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