解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第14章 §1.14.4 ★★ 糸を引き上げて振り子を短くすると振幅が l−3/4 で増える。数値積分で J が保たれることと、速く変えると保たれないことを確かめる
振り子の H と作用変数
支点から長さ l の糸で質量 m のおもりをつるし、糸を支点の穴から引き上げて長さを l(t) と時間とともに変える。鉛直下向きからの振れの角を φ とする(この章では θ を角変数に使うので、振り子の角度には φ を使う)。おもりの速度の2乗は l˙2+l2φ˙2 なので
L=21m(l˙2+l2φ˙2)+mglcosφ.
l(t) は与えられた関数なので、21ml˙2 は時刻だけの関数で、Euler–Lagrange 方程式に寄与しない(時刻だけの関数は、ある関数の時間微分として書けるので第1部第5章の「L に全微分を足しても運動は変わらない」という結果をそのまま使う)。これを落とすと、p=ml2φ˙ と
H(φ,p;l)=2ml2p2−mglcosφ(1.14.15)
を得る。l を止めればこれは第1部第8章の振り子そのもので、l がパラメータ λ にあたる。運動方程式は dtd(ml2φ˙)=−mglsinφ、すなわち lφ¨+2l˙φ˙+gsinφ=0 である。
振れが小さければ cosφ≈1−φ2/2 で、H は定数 −mgl を除いて質量 ml2・角振動数 ω=g/l の調和振動子になる。振れの振幅を φmax とすると、振動のエネルギーは Eosc=21mglφmax2 なので
J=ωEosc=21mgl3/2φmax2.(1.14.16)
J が一定なら
φmax∝l−3/4,Eosc=ωJ∝l−1/2(1.14.17)
となる。糸をゆっくり引き上げて振り子を短くすると、振れの角は大きくなり、振動のエネルギーも増える。引き上げる手が、糸の張力に逆らって仕事をするためである(その仕事を直接数える計算は1.14.6節)。
振れが大きいときも J は正確に計算することができる。H=E の等エネルギー線の面積を楕円積分で書くと、k=sin(φmax/2) として
J=π8mgl3[E(k)−(1−k2)K(k)]
になる(K, E は第1種・第2種の完全楕円積分)。k→0 で E−(1−k2)K≈4πk2 となって式 (1.14.16) に戻る。数値積分では、各時刻の (φ,p) と l からエネルギーを出し、この式(または面積の数値積分)で J を計算して追う。
数値積分の結果
m=g=1 とし、長さを l=1 から l=1/4 まで、l(t)=1−43⋅21(1−cos(πt/ts))(0≤t≤ts)と滑らかに変える。初めの振幅は φmax=0.1、初めの周期は T=2πl/g≈6.28 である。変える時間 ts を 100(ゆっくり。T/ts≈0.06)と3(速い。T/ts≈2)の2通りにとり、運動方程式を数値で積分して J を追った結果が図 1.14.2 である。

図 1.14.2 長さを l=1 から 1/4 へ変える振り子の作用変数(m=g=1、初めの振幅 0.1)。ゆっくり変えると J は ±1.2% ほど揺れるだけで、変え終わった後(t/ts>1)は初めの値に 10−4 以下の差で戻る。速く変えると変える途中で J が倍近くまで動き、変え終わった後も 1.27 倍に残る。縦の破線は長さを変え終わる時刻
ゆっくり変えた場合、J は式 (1.14.14) と同じ形で1周期ごとに揺れるが、揺れは ±1.2% ほどで、長さを変え終わった後の J は初めの値と 2×10−5 の差しかない。エネルギー Eosc はこの間に 4=2 倍になっているので、J が保たれているのはエネルギーが保たれているのとはまったく別のことである。速く変えた場合は、J は変える途中で 1.95 倍まで動き、変え終わった後も 1.27 倍が残る。このときの値は、変え始めたときの振り子の位相によって変わる。
振幅の変化を長さの関数として描いたのが図 1.14.3 である。ゆっくり変えた数値積分の振幅は、式 (1.14.17) の φmax=0.1l−3/4 に沿って増え、長さ 1/4 では 0.1×43/4=0.283 に対して数値は 0.2834 になる。わずかな差は、振幅 0.28 では cosφ≈1−φ2/2 の近似の誤差が見え始めるためで、正確な J の式で計算した予測とは数値の桁まで一致する。

図 1.14.3 ゆっくり(ts=100)長さを縮めたときの振幅。横軸は右へ行くほど短い。点は数値積分で得た振れの極大(1周期おきに表示)、実線は J が一定とした近似の予測
例題 1.14.4 振り子の糸を半分にする ★★
オリジナル長さ l0 の糸で振れの角 5∘ で振れている振り子の糸を、周期に比べてゆっくり引き上げて長さ l0/2 にする。
- (1) 引き上げた後の振れの角を求めよ。
- (2) 振動のエネルギー Eosc=21mglφmax2 は何倍になるか。式 (1.14.17) の2つ目の式と一致することを確かめよ。
- (3) 周期は何倍になるか。振動のエネルギーと周期の積はどうなるか。
解答
(1) 式 (1.14.16) の J∝l3/2φmax2 が一定なので φmax∝l−3/4、長さを半分にすると 23/4≈1.68 倍になり、5∘×1.682≈8.41∘。この程度の角度なら小振動の近似は十分よい。
(2) Eosc∝lφmax2∝l⋅l−3/2=l−1/2 なので 2≈1.41 倍。Eosc=ωJ で ω=g/l が 2 倍、J は一定なので同じ答えになる。
(3) 周期 T=2πl/g は 1/2 倍。EoscT=2πJ なので積は変わらない。振動のエネルギーと周期の積(=2πJ)が保たれる、というのが断熱不変性の言い換えである。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com