解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第14章 §1.14.2 ★★★ 前の章の特性関数 W(q) の定数を E から J に取り替えると、作用角変数への母関数になる
母関数 W(q,J)
前の章(第1部第13章)では、時刻を含まない H に対して Hamilton–Jacobi 方程式を S=W(q)−Et と分離し、特性関数 W が H(q,∂W/∂q)=E を満たすことを見た。自由度1ではこれは ∂W/∂q=p(q,E) で、p(q,E) は等エネルギー線を p について解いたものである。積分すれば
W(q,E)=∫q0qp(q′,E)dq′(1.14.7)
となる。前の章ではこの W を、定数 E を新しい運動量とみなした母関数 F2 として使い、新しい座標 ∂W/∂E=t+β1 を得た。
ここでは定数の選び方を変える。E は J の関数 E=H(J) なので、W を q と J の関数 W(q,J)=W(q,H(J)) とみなし、J を新しい運動量にした母関数F2(q,J)=W(q,J) を使う。母関数の規則(第1部第12章)p=∂F2/∂q, θ=∂F2/∂J から
p=∂q∂W=p(q,H(J)),θ=∂J∂W(1.14.8)
を得る。1つ目は「(q,p) がエネルギー H(J) の等エネルギー線の上にある」ことを言っている。F2 は時刻を含まないので、新しい Hamiltonian はもとの H をそのまま新しい変数で書いたもので、その値は等エネルギー線の上で H(J) である。これで定理 1.14.2 の (1)(2) が示せた。θ の運動はθ˙=∂H(J)/∂J で、J が一定なので θ˙ も一定である。
角変数は1周で 2π 増える
定理の (3) を示す。運動が1周するあいだに θ がどれだけ増えるかは、θ=∂W/∂J を q について1周積分すればよい。J を固定して q について微分してから積分すると
Δθ=∮∂q∂θdq=∮∂q∂(∂J∂W)dq=∂J∂∮∂q∂Wdq=∂J∂∮pdq=∂J∂(2πJ)=2π(1.14.9)
となる。3つ目の等号では q についての微分と J についての微分の順を入れ替え、J についての微分を積分の外へ出した(積分の経路は J ごとに変わるが、閉曲線を1周するので端の寄与は無い)。最後の等号は作用変数の定義そのものである。J を ∮pdq/(2π) と定義したことが、そのまま角変数の周期を 2π にしている。J を別の定数倍にとれば、角変数の周期もその逆数倍になる。
1周で θ が 2π 増え、その速さが一定値 ω=θ˙ なので、1周にかかる時間 T は ωT=2π を満たす。これと式 (1.14.2) を合わせると
ω(J)=dJdH=dJ/dE1=T2π(1.14.10)
で、作用角変数の Hamilton 方程式から出る角速度と、前の章で面積の E 微分から出した周期とが同じものであることが確かめられる。作用角変数を使うと、運動を解かずに周期が出る。 J(E) を面積として計算し、逆に解いて H(J) を出し、J で微分すればよい。
相空間の面積は変数を変えても同じ
正準変換は相空間の面積を保つ(第1部第8章・第1部第12章)。(θ,J) の平面では、エネルギー E の等エネルギー線はJ=J(E) の水平な線分 0≤θ<2π で、その下の面積は 2πJ である。(q,p) の平面でこれに対応するのは等エネルギー線の囲む領域で、その面積はやはり 2πJ である。作用角変数は、相空間の閉曲線を高さ J・幅 2π の長方形に「伸ばして並べる」変換になっている。調和振動子の式 (1.14.5) では、変換のヤコビアン ∂(q,p)/∂(θ,J) を計算すると 1 になり、面積が保たれていることが直接確かめられる。
例題 1.14.2 箱の中の粒子の作用角変数 ★★★
オリジナル質量 m の粒子が、0<q<a の範囲を自由に動き、両端の壁で弾性的に跳ね返る(ポテンシャルは箱の中で 0、壁で無限大)。
- (1) エネルギー E の運動の作用変数 J(E) を求めよ。
- (2) H(J) と ω(J)=dH/dJ を求め、粒子の速さ v を使って ω=πv/a と書けることを示せ。これが往復の時間と合うことを確かめよ。
- (3) 右向きに動いているあいだ(p>0)の角変数 θ を q で表せ。
- (4) m=1, a=2, E=1/2 のとき J, ω, 周期 T の値を求めよ。
解答
(1) 箱の中では p=±2mE で一定。軌道は図 1.14.1(b) の長方形で、面積は a×22mE。よって
J=2π1⋅2a2mE=πa2mE.
(2) 逆に解いて E=H(J)=2ma2π2J2。ω=dJdH=ma2π2J。速さ v の粒子では 2mE=mv なので J=amv/π を入れて ω=πv/a。周期は T=2π/ω=2a/v で、距離 a を往復する時間と一致する。調和振動子と違い、ω が J(エネルギー)によって変わる。
(3) p>0 の枝で W=∫0q2mEdq′=q2mE=πJq/a。θ=∂J∂W=πq/a で、q が 0 から a まで進むあいだに θ は 0 から π まで一様に増える。帰り道(p<0)では W に −2mE(q−a) が足され、θ=π+π(a−q)/a が π から 2π まで増える。1周で 2π で、粒子の位置は時間に比例して進むので θ も時間に比例する。
(4) J=22⋅21/π=2/π≈0.637、ω=π2(2/π)/(1⋅4)=π/2≈1.57、T=2π/ω=4。速さは v=2E/m=1 で、往復の距離 4 を速さ 1 で進む時間 4 と一致する。
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