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生成子で関数を動かす:Poisson 括弧の定義

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第11章 Poisson 括弧(生成子で動かす)
目次
  1. 点の変化から関数の変化へ
  2. 基本の括弧
  3. 3つの生成子で見る
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第11章 §1.11.1 ★★★ 生成子 GG が点を動かすとき、関数 AA の値の変化は ϵ{A,G}\epsilon\{A,G\}。括弧の中身は連鎖律だけで決まる

第1部第9章では、相空間の点を少しだけ動かす変換を、1つの関数 G(q,p)G(q,p) で決まる形δqi=ϵ ∂G/∂pi\delta q_i=\epsilon\,\partial G/\partial p_i、δpi=−ϵ ∂G/∂qi\delta p_i=-\epsilon\,\partial G/\partial q_i に書き、GG をその変換の生成子と呼んだ。運動量 pp は並進を、角運動量 LzL_z は zz 軸のまわりの回転を、Hamiltonian HH は時間 ϵ=dt\epsilon=\mathrm{d} t の時間発展を生成する。第1部第10章では、Lagrangian を変えない変換の生成子がそのまま保存量になること(Noether の定理)を示した。ただし、生成子が動かすのは点 (q,p)(q,p) だけではない。点が動けば、その点で値をとる関数 A(q,p)A(q,p)(エネルギー・角運動量・座標そのもの)の値も一緒に変わる。この章では、その変化を計算する演算をPoisson 括弧 {A,G}\{A,G\} として定義し、変換についての問いをすべてこの1つの演算で書き直す。

この章で作る道具は5つある。1つ目は定義そのもので、δA=ϵ{A,G}\delta A=\epsilon\{A,G\} という形から、括弧の中身が連鎖律だけで決まることを確かめる。2つ目は括弧の代数(反対称性・Leibniz 則・Jacobi 恒等式)で、これがあれば括弧を偏微分に戻さずに計算することができる。3つ目は時間発展の式 dAdt={A,H}+∂A∂t\frac{\mathrm{d} A}{\mathrm{d} t}=\{A,H\}+\frac{\partial A}{\partial t} で、ここから「GG が保存する」と「GG の変換で HH が変わらない」が同じ条件 {G,H}=0\{G,H\}=0 になる。4つ目は有限の大きさの変換で、無限小の変換を繰り返した結果が括弧を何重にも重ねた級数(Lie 級数)で書けることを示す。5つ目は2つの変換を続けて行うときの順番の問題で、順番を入れ替えたときの食い違いが2つの生成子の括弧 {F,G}\{F,G\} の生成する変換になる。最後に、量子力学で習う交換子 [A^,B^]/(iℏ)[\hat A,\hat B]/(\mathrm{i}\hbar) と Heisenberg の運動方程式が、この章の式と同じ形をしていることを並べる。

点の変化から関数の変化へ

自由度 ff の系の相空間の点を (q,p)=(q1,…,qf,p1,…,pf)(q,p)=(q_1,\dots,q_f,p_1,\dots,p_f) と書く。第1部第9章の無限小変換は

δqi=ϵ∂G∂pi,δpi=−ϵ∂G∂qi(i=1,…,f)(1.11.1)\delta q_i=\epsilon\frac{\partial G}{\partial p_i},\qquad \delta p_i=-\epsilon\frac{\partial G}{\partial q_i}\qquad(i=1,\dots,f)\tag{1.11.1}

である。ここで ϵ\epsilon は小さい実数のパラメータ、G(q,p)G(q,p) は変換を決める関数(生成子)である。相空間上の関数 A(q,p)A(q,p) を1つとり、点を式 (1.11.1) だけ動かしたときの AA の値の変化を ϵ\epsilon の1次まで求める。この計算は第1部第9章の式 (1.9.15) で連鎖律から済ませてあり、結果は

δA=ϵ∑i=1f(∂A∂qi∂G∂pi−∂A∂pi∂G∂qi)\delta A=\epsilon\sum_{i=1}^f\Bigl(\frac{\partial A}{\partial q_i}\frac{\partial G}{\partial p_i}-\frac{\partial A}{\partial p_i}\frac{\partial G}{\partial q_i}\Bigr)

である。右辺の和は AA と GG だけで決まり、点の動かし方の情報はすべて GG に入っている。第9章の式 (1.9.15) で略記として導入した括弧を、ここで正式に定義して性質を調べる。

定義 1.11.1(Poisson 括弧)

相空間上の滑らかな関数 A(q,p)A(q,p), B(q,p)B(q,p) に対して

{A,B}≔∑i=1f(∂A∂qi∂B∂pi−∂A∂pi∂B∂qi)(1.11.2)\{A,B\}\coloneqq\sum_{i=1}^f\Bigl(\frac{\partial A}{\partial q_i}\frac{\partial B}{\partial p_i}-\frac{\partial A}{\partial p_i}\frac{\partial B}{\partial q_i}\Bigr)\tag{1.11.2}

を AA と BB の Poisson 括弧と呼ぶ。AA, BB が時刻 tt を陽に含むときも、tt を止めて同じ式で定義する。

この記号を使うと、生成子 GG による関数の変化は

δA=ϵ{A,G}(1.11.3)\delta A=\epsilon\{A,G\}\tag{1.11.3}

の1行になる。A=qiA=q_i と A=piA=p_i を入れると {qi,G}=∂G/∂pi\{q_i,G\}=\partial G/\partial p_i、{pi,G}=−∂G/∂qi\{p_i,G\}=-\partial G/\partial q_i なので、式 (1.11.3) は式 (1.11.1) を特別な場合として含む。つまり、点の変化は「座標という関数の変化」として読み直すことができ、括弧 {⋅,G}\{\cdot,G\} はどの関数にも同じ形で当たる。この章で {A,G}\{A,G\} と書くとき、右に置いた GG が「動かす側」、左に置いた AA が「動かされる側」である。

基本の括弧

座標と運動量どうしの括弧を定義から計算すると

{qi,qj}=0,{pi,pj}=0,{qi,pj}=δij(1.11.4)\{q_i,q_j\}=0,\qquad \{p_i,p_j\}=0,\qquad \{q_i,p_j\}=\delta_{ij}\tag{1.11.4}

になる。{qi,pj}\{q_i,p_j\} では、和の第1項 ∂qi∂qk∂pj∂pk=δikδjk\frac{\partial q_i}{\partial q_k}\frac{\partial p_j}{\partial p_k}=\delta_{ik}\delta_{jk} だけが残る。この3つを基本の括弧と呼ぶ。式 (1.11.3) で読むと、{qi,pj}=δij\{q_i,p_j\}=\delta_{ij} は「pjp_j を生成子にすると qjq_j だけが ϵ\epsilon ずれ、他の座標は動かない」ことを言っている(pjp_j は qjq_j 方向の並進の生成子)。逆に {pj,qi}=−δij\{p_j,q_i\}=-\delta_{ij} なので、qiq_i を生成子にすると pip_i が −ϵ-\epsilon ずれる。座標を生成子にすると運動量が一様にずれる。

符号の流儀は記法の正本どおりで、{q,p}=+1\{q,p\}=+1 となる向きに定義した(この本の流儀)。教科書によっては逆の符号で定義しているので、読み比べるときは {q,p}\{q,p\} の値を最初に確かめるとよい(1.11.6節)。

3つの生成子で見る

第1部第9章で扱った3つの生成子を、関数の変化として書き並べる。

  • 並進 G=pxG=p_x:δA=ϵ{A,px}=ϵ ∂A∂x\delta A=\epsilon\{A,p_x\}=\epsilon\,\frac{\partial A}{\partial x}。関数を xx 方向に ϵ\epsilon ずらしたときの1次の変化そのものである。
  • 回転 G=Lz=xpy−ypxG=L_z=xp_y-yp_x:{x,Lz}=∂Lz∂px=−y\{x,L_z\}=\frac{\partial L_z}{\partial p_x}=-y、{y,Lz}=∂Lz∂py=x\{y,L_z\}=\frac{\partial L_z}{\partial p_y}=x なので δx=−ϵy\delta x=-\epsilon y, δy=ϵx\delta y=\epsilon x。zz 軸の正の側から見て反時計回りに角度 ϵ\epsilon だけ回転する。運動量も {px,Lz}=−py\{p_x,L_z\}=-p_y, {py,Lz}=px\{p_y,L_z\}=p_x で同じ向きに回転する。
  • 時間発展 G=HG=H, ϵ=dt\epsilon=\mathrm{d} t:δA=dt {A,H}\delta A=\mathrm{d} t\,\{A,H\}。A=qiA=q_i, pip_i とすると q˙i={qi,H}=∂H∂pi\dot q_i=\{q_i,H\}=\frac{\partial H}{\partial p_i}、p˙i={pi,H}=−∂H∂qi\dot p_i=\{p_i,H\}=-\frac{\partial H}{\partial q_i} で、Hamilton 方程式そのものになる。

3つ目は、時間発展を「HH が生成する変換」として読むという第1部第9章の見方を、関数に広げたものである。図 1.11.1 に、1自由度の相空間で3種類の生成子が点を動かす向きを描いた。

図

図 1.11.1 1自由度の相空間で、生成子 GG が点を動かす向き(δq=ϵ ∂G/∂p\delta q=\epsilon\,\partial G/\partial p, δp=−ϵ ∂G/∂q\delta p=-\epsilon\,\partial G/\partial q の矢印をつないだ線)。(a) 運動量 pp は qq を一様にずらす。(b) qpqp は qq を eϵ\mathrm{e}^{\epsilon} 倍、pp を e−ϵ\mathrm{e}^{-\epsilon} 倍にし、点は双曲線 qp=qp= 一定の上を動く。(c) 調和振動子の HH(m=ω=1m=\omega=1)は点を時計回りに円の上で回転させる。どの場合も、点は GG の等高線の上を動く(δG=ϵ{G,G}=0\delta G=\epsilon\{G,G\}=0)

図の3つの場合とも、点は GG の等高線に沿って動いている。これは δG=ϵ{G,G}\delta G=\epsilon\{G,G\} で、定義 (1.11.2) の2つの項が打ち消し合って {G,G}=0\{G,G\}=0 になるからである。生成子は、自分が生成する変換では値を変えない。時間発展では、これは HH が時間を陽に含まなければエネルギーが保存することにあたる。

例題 1.11.1 伸縮の生成子 qpqp ★★

オリジナル1自由度の系で、生成子 G=qpG=qp を考える。

  1. (1) {q,G}\{q,G\} と {p,G}\{p,G\} を求め、GG が生成する無限小変換を書け。
  2. (2) {qp,G}\{qp,G\} を求め、(1) の変換で積 qpqp が変わらないことを確かめよ。
  3. (3) kk を定数として H=p22m+kq2H=\dfrac{p^2}{2m}+\dfrac{k}{q^2} について {H,G}\{H,G\} を求め、HH がこの変換でどう変わるかを述べよ。
解答

(1) {q,qp}=∂q∂q∂(qp)∂p=q\{q,qp\}=\frac{\partial q}{\partial q}\frac{\partial (qp)}{\partial p}=q、{p,qp}=−∂p∂p∂(qp)∂q=−p\{p,qp\}=-\frac{\partial p}{\partial p}\frac{\partial (qp)}{\partial q}=-p。よって δq=ϵq\delta q=\epsilon q, δp=−ϵp\delta p=-\epsilon p で、qq を (1+ϵ)(1+\epsilon) 倍、pp を (1−ϵ)(1-\epsilon) 倍にする変換である(図 1.11.1(b))。

(2) {G,G}=0\{G,G\}=0 なので δ(qp)=0\delta(qp)=0。直接にも (1+ϵ)q⋅(1−ϵ)p=qp+O(ϵ2)(1+\epsilon)q\cdot(1-\epsilon)p=qp+\mathcal{O}(\epsilon^2) で、1次の変化は 00 である。

(3) 運動エネルギーの部分は {p2/(2m),qp}=−∂∂p(p22m)⋅∂(qp)∂q=−pm⋅p=−p2m\{p^2/(2m),qp\}=-\frac{\partial }{\partial p}\Bigl(\frac{p^2}{2m}\Bigr)\cdot\frac{\partial (qp)}{\partial q}=-\frac{p}{m}\cdot p=-\frac{p^2}{m}。ポテンシャルの部分は {k/q2,qp}=∂∂q(kq2)⋅∂(qp)∂p=−2kq3⋅q=−2kq2\{k/q^2,qp\}=\frac{\partial }{\partial q}\Bigl(\frac{k}{q^2}\Bigr)\cdot\frac{\partial (qp)}{\partial p}=-\frac{2k}{q^3}\cdot q=-\frac{2k}{q^2}。和をとると

{H,G}=−p2m−2kq2=−2H.\{H,G\}=-\frac{p^2}{m}-\frac{2k}{q^2}=-2H .

よって δH=−2ϵH\delta H=-2\epsilon H で、HH は変わらないが、全体が (1−2ϵ)(1-2\epsilon) 倍になる。qq を λ\lambda 倍、pp を 1/λ1/\lambda 倍にすると運動エネルギーも k/q2k/q^2 も同じ λ−2\lambda^{-2} 倍になるので、この HH は伸縮で形を保ったまま定数倍される。ポテンシャルが k/q2k/q^2 以外の形(たとえば q2q^2)なら、2つの項の倍率がそろわず、{H,G}\{H,G\} は HH の定数倍にならない。

木下の勉強ステータス

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