解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第11章 §1.11.6 ★★★ 量子力学の交換子 [A^,B^]/(iℏ) と Heisenberg の運動方程式は、この章の式と1対1に対応する
量子力学の交換子
学部の量子力学の授業では、正準交換関係 [q^,p^]=iℏ から出発し、時間発展を Heisenberg の運動方程式dtdA^H=iℏ1[A^H,H^]+(∂t∂A^)H で書く。並進は e−iap^/ℏ、回転は e−iθL^z/ℏ で表し、角運動量の交換関係 [L^x,L^y]=iℏL^z を使って固有値を求める。この章の式と並べると、Poisson 括弧を交換子に置き換える規則
{A,B} ⟶ iℏ1[A^,B^](1.11.19)
で、次の表のように1対1に対応する(この本の符号の流儀では、両方の右に生成子を置く)。
| この章(古典) | 量子力学 |
| 基本の関係 | {q,p}=1 | [q^,p^]/(iℏ)=1 |
| 無限小変換 | δA=ϵ{A,G} | δA^=ϵ[A^,G^]/(iℏ) |
| 有限の変換 | eϵDGA(Lie 級数) | eiϵG^/ℏA^e−iϵG^/ℏ |
| 時間発展 | dtdA={A,H}+∂t∂A | dtdA^H=[A^H,H^]/(iℏ)+(∂tA^)H |
| 保存量と対称性 | {G,H}=0 | [G^,H^]=0 |
| 角運動量 | {Lx,Ly}=Lz | [L^x,L^y]/(iℏ)=L^z |
有限の変換の行は、A^(ϵ)=eiϵG^/ℏA^e−iϵG^/ℏ を ϵ で微分すると dϵdA^=[A^(ϵ),G^]/(iℏ) になることから出る。これを ϵ について展開すると A^+ϵ[A^,G^]/(iℏ)+2!ϵ2[[A^,G^],G^]/(iℏ)2+⋯ で、Lie 級数 (1.11.15) の括弧をすべて交換子に置き換えた形になる。交換子も反対称性・線形性・Leibniz 則([A^B^,C^]=A^[B^,C^]+[A^,C^]B^)・Jacobi 恒等式を満たすので、1.11.2節から1.11.5節の議論は、ほぼそのまま量子力学に持ち込むことができる。授業で「運動量は並進の生成子」「角運動量は回転の生成子」と習う内容は、古典力学の段階ですでに式 (1.11.3) として成り立っている。
ただし規則 (1.11.19) は、どの関数にも同じように当たるわけではない。演算子の積は順序によって値が変わるので、qp のような積を演算子に直すとき、q^p^ と p^q^ のどちらにするかを決めなければならない。下の例題で見るように、q2 と p2 の括弧と交換子では、順序の決め方の分だけ食い違いが出る。この問題をどう扱うかは 第4部第1章 で扱い、Heisenberg 描像との対応は 第4部第3章 で詳しく見る。
解析力学の教科書の書き方
解析力学の教科書の多くは、Poisson 括弧を式 (1.11.2) の形で定義として与え、連鎖律から式 (1.11.10) を出す。この章との違いは、出発点を「生成子による関数の変化 δA=ϵ{A,G}」に置いたかどうかである。定義の式そのものは同じで、「時間発展の式に出てくる便利な組み合わせ」として括弧を導入すると、並進・回転・時間発展が同じ演算で書けることが見えにくい。
符号の流儀は教科書によって分かれる。Goldstein の教科書はこの本と同じ {q,p}=+1 だが、Landau–Lifshitz の力学の教科書は2つの項を逆の順に書き、[q,p]=−1、時間発展を dtdf=∂t∂f+[H,f] と書く(括弧の中の順番が逆になる)。どちらの流儀でも物理の内容は同じで、左右の引数を入れ替えれば一方から他方へ移る。読み比べるときは、基本の括弧 {q,p} の値と、時間発展の式で H がどちらの引数に入っているかを最初に確かめる。
例題 1.11.6 括弧と交換子を並べる ★★
オリジナル1次元で p^=−iℏdqd とする。
- (1) 関数 ψ(q) に当てて [q^,p^]ψ=iℏψ を確かめよ。
- (2) 古典の {q2,p2} を求めよ。
- (3) [q^2,p^2]/(iℏ) を、交換子の Leibniz 則と (1) を使って q^, p^ の積で表し、(2) と比べよ。
解答
(1) q^p^ψ=−iℏqψ′、p^q^ψ=−iℏ(qψ)′=−iℏ(ψ+qψ′)。差は [q^,p^]ψ=iℏψ。
(2) {q2,p2}=∂q∂(q2)∂p∂(p2)=2q⋅2p=4qp。
(3) Leibniz 則を2回使うと [q^,p^2]=p^[q^,p^]+[q^,p^]p^=2iℏp^、[q^2,p^2]=q^[q^,p^2]+[q^,p^2]q^=2iℏ(q^p^+p^q^)。よって
iℏ1[q^2,p^2]=2(q^p^+p^q^)=4q^p^−2iℏ.
古典の 4qp の積を対称に並べた 2(q^p^+p^q^) に対応する。4q^p^ と書けば −2iℏ だけ余り、この差は ℏ→0 で消える。規則 (1.11.19) は ℏ の0次では成り立つが、積の順序の分だけ ℏ の1次の食い違いが残る。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com