解答
(1) 第1部第12章の流れ φt(q,p)=(qcosωt+mωpsinωt, pcosωt−mωqsinωt) の逆は t を −t にしたものなので、
ρ(q,p,t)=ρ0(qcosωt−mωpsinωt, pcosωt+mωqsinωt).
指数の中は (q,p) の2次形式のままなので、ρ は時刻 t でも正規分布で、その楕円の軸が回る。
(2) 流れは線形 z↦Mz で、M=(cosωt−mωsinωtsinωt/(mω)cosωt)。線形写像で運んだ確率変数の共分散は C(t)=MC(0)MT である。detC(t)=(detM)2detC(0)=σq2σp2 で、Liouville の定理 detM=1 から時間によらない。ρ が最大値の e−1/2 倍になる楕円は zTC−1z=1 で、その面積は πdetC=πσqσp のまま変わらない(数値 σq=1, σp=2 で 2π=6.28)。
(3) {q2,H}=2qp/m, {qp,H}=p2/m−mω2q2, {p2,H}=−2mω2qp なので
dtd⟨q2⟩=m2⟨qp⟩,dtd⟨qp⟩=m1⟨p2⟩−mω2⟨q2⟩,dtd⟨p2⟩=−2mω2⟨qp⟩.
C(t)=MC(0)MT の成分を書くと ⟨q2⟩=σq2cos2ωt+m2ω2σp2sin2ωt、⟨qp⟩=(mωσp2−mωσq2)sinωtcosωt、⟨p2⟩=σp2cos2ωt+m2ω2σq2sin2ωt で、たとえば dtd⟨q2⟩=2ω(m2ω2σp2−σq2)sinωtcosωt=m2⟨qp⟩ となって第1式を満たす(残りの2式も同様)。m=ω=σq=1, σp=2 では ⟨q2⟩=cos2t+4sin2t=1+3sin2t で、1 と 4 の間を周期 π で行き来する。t=π/4 では 1+3/2=2.5。位置の広がりは周期的に大きくなったり小さくなったりするだけで、一方向に広がっていくことはない。
(4) ⟨q2⟩ が時間によらないのは σp2/(m2ω2)=σq2、すなわち σp=mωσq のときである。このとき
2σq2q2+2m2ω2σq2p2=mω2σq21(2mp2+21mω2q2)=mω2σq2H
なので ρ0∝e−H/(mω2σq2) で、H の関数になる。3.1.4節のとおり {H,ρ0}=0 で、ρ は時間によらない(このとき (1) の楕円は円に相当し、回しても変わらない)。e−βH と比べて β=1/(mω2σq2)、すなわち kBT=mω2σq2。これは 21mω2⟨q2⟩=21kBT と書き直すことができ、等分配則の形をしている(第3部第6章)。
(5) ln(hρ0)=ln2πσqσph−2σq2q2−2σp2p2 を ρ0 で平均すると、⟨q2⟩=σq2, ⟨p2⟩=σp2 から−⟨ln(hρ0)⟩=lnh2πσqσp+21+21 で、SG[ρ0]=kB[1+ln(2πσqσp/h)]。時刻 t では式 (3.1.19) から同じ値である((2) の言葉では、正規分布のエントロピーは detC だけで決まり、それが一定だから)。h=2π となる単位で σq=1, σp=2 なら SG/kB=1+ln2=1.693。
q の周辺分布は分散 ⟨q2⟩ の正規分布で、エントロピーは 21kBln(2πe⟨q2⟩)。(3) の数値では ⟨q2⟩=1 で 1.419kB、⟨q2⟩=4 で 2.112kB で、その間を周期 π で上下する。周辺分布のエントロピーの和は SG 以上で、差は q と p の相関の量である。t=0 では相関がなく等号、t=π/4 では差が kBln(5/4) になるが、t=π/2 で再び 0 に戻る。回転子では角運動量の違いで回る速さが異なり、分布が細い筋に引き伸ばされて混合した。調和振動子ではすべての点が同じ角振動数 ω で回るので、分布の楕円は形を変えずに回るだけで筋にならず、粗く見たエントロピーは周期的に戻る。粗視化したエントロピーが増え続けるには、Liouville の定理に加えて、混合を起こす運動(周期が点ごとに異なるなど)が必要である。