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出てくるもの (3):殻で数えても体積で数えてもよい理由

2026年10月15日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第2章 等重率とミクロカノニカル
目次
  1. 3つの候補
  2. 高次元の体積は表面に集まる
  3. 温度の定義のずれ
  4. は断熱不変量
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第2章 §3.2.5 ★★ 高次元の球の体積はほとんど表面の近くにある。そのため殻の厚み ΔE\Delta E も、殻と球の違いも、エントロピーの O(ln⁡N)\mathcal{O}(\ln N) の項しか変えない

3つの候補

エントロピーの定義には、殻の体積 W(E)=g(E)ΔEW(E)=g(E)\Delta E を使うもの(式 (3.2.6))のほかに、球の体積 Φ(E)\Phi(E) を使う S=kBln⁡Φ(E)S= k_{\mathrm B}\ln\Phi(E) もある。前の節では、理想気体で後者を使った。2つの定義の違いを理想気体で計算すると、Φ∝E3N/2\Phi\propto E^{3N/2} から g=3N2Φ/Eg=\frac{3N}{2}\Phi/E なので

ln⁡W(E)−ln⁡Φ(E)=ln⁡3NΔE2E(3.2.21)\ln W(E)-\ln\Phi(E)=\ln\frac{3N\Delta E}{2E}\tag{3.2.21}

になる。ln⁡Φ\ln\Phi は NN に比例する大きさ(式 (3.2.14))なのに対し、この差は ln⁡N\ln N の程度にすぎない。ΔE/E\Delta E/E を 10−1010^{-10} のように小さく選んでも差は ln⁡10−10≈−23\ln10^{-10}\approx-23 で、N=1023N=10^{23} の系の ln⁡Φ≈1024\ln\Phi\approx10^{24} と比べれば無視できる。殻の厚み ΔE\Delta E の選び方も、同じ理由でエントロピーを変えない。

高次元の体積は表面に集まる

なぜこうなるかは、高次元の球の体積の集まり方から分かる。Φ(E)∝E3N/2\Phi(E)\propto E^{3N/2} なので、エネルギーが E(1−δ)E(1-\delta) 以下の部分の体積は全体の (1−δ)3N/2(1-\delta)^{3N/2} 倍である。3N/23N/2 が大きいと、δ\delta が小さくてもこの割合はほとんど 00 で、体積のほとんどは表面のすぐ内側の薄い殻にある。球の中のほとんどの点は表面の近くにいるので、球の体積と殻の体積は(対数で見て)ほとんど同じ数になる。

例題 3.2.7 高次元の球の体積の集まり方 ★★

オリジナルNN 粒子の理想気体で、Φ(E)\Phi(E) のうち E(1−δ)<H≤EE(1-\delta)<H\le E の部分に入る割合を f(δ)f(\delta) とする。

  1. (1) f(δ)=1−(1−δ)3N/2f(\delta)=1-(1-\delta)^{3N/2} を示せ。
  2. (2) N=100N=100 で δ=0.01\delta=0.01 と δ=0.001\delta=0.001 のときの ff を求めよ。
  3. (3) N=6.02×1023N=6.02\times10^{23} で δ=10−10\delta=10^{-10} のとき、1−f1-f を指数の形で見積もれ。
解答

(1) Φ∝E3N/2\Phi\propto E^{3N/2} なので Φ(E(1−δ))/Φ(E)=(1−δ)3N/2\Phi(E(1-\delta))/\Phi(E)=(1-\delta)^{3N/2}。その残りが外側の殻の割合である。

(2) 3N/2=1503N/2=150。δ=0.01\delta=0.01 で f=1−0.99150=0.779f=1-0.99^{150}=0.779、δ=0.001\delta=0.001 で f=1−0.999150=0.139f=1-0.999^{150}=0.139。粒子が100個でも、エネルギーの外側 1%1\% の殻に体積の 78%78\% が入っている。

(3) ln⁡(1−f)=3N2ln⁡(1−δ)≈−3N2δ=−9.0×1013\ln(1-f)=\frac{3N}{2}\ln(1-\delta)\approx-\frac{3N}{2}\delta=-9.0\times10^{13} なので 1−f≈exp⁡(−9.0×1013)1-f\approx\exp(-9.0\times10^{13})。外側の相対幅 10−1010^{-10} の殻の外にある体積は、e−1014\mathrm{e}^{-10^{14}} の桁しかない。巨視的な系では、球の体積は全部が表面にあると思ってよい。

温度の定義のずれ

殻で数えるか球で数えるかで、温度の式もわずかにずれる。S=kBln⁡ΦS= k_{\mathrm B}\ln\Phi なら式 (3.2.19) のとおり E=32NkBTE=\frac32N k_{\mathrm B} T で、S=kBln⁡(gΔE)S= k_{\mathrm B}\ln(g\Delta E) なら g∝E3N/2−1g\propto E^{3N/2-1} から E=(32N−1)kBTE=(\frac32N-1) k_{\mathrm B} T になる。違いは自由度1つ分のエネルギー kBTk_{\mathrm B} T で、32NkBT\frac32N k_{\mathrm B} T に比べれば 1/N1/N の割合しかない。NN が小さい系(数個の粒子)ではこの違いが見えるので、どちらの定義を使ったかを書いておく必要がある。この本では、NN が大きい系の式は ln⁡Φ\ln\Phi と ln⁡W\ln W を区別せずに書く。

Φ\Phi は断熱不変量

球の体積 Φ(E)\Phi(E) を使う定義には、もう1つの利点がある。自由度1では Φ(E)=2πJ/h\Phi(E)=2\pi J/h で、作用変数 JJ そのものである。第1部第14章で示したとおり、系のパラメータ(箱の幅、ばね定数)をゆっくり変えると JJ は変わらない。したがって Φ\Phi も S=kBln⁡ΦS= k_{\mathrm B}\ln\Phi も変わらない。熱力学で「ゆっくりした断熱変化ではエントロピーが変わらない」と言うことの、自由度1の版である。多自由度の系でも Φ(E)\Phi(E) が断熱不変量になること(P. Hertz の定理)は第3部第5章で扱う。

ここでは結論だけを理想気体に当てはめる。Φ∝VNE3N/2\Phi\propto V^NE^{3N/2} が一定なら E∝V−2/3E\propto V^{-2/3} で、ゆっくり圧縮したときの圧力は

P=−(∂E∂V)Φ=2E3V=NkBTV(3.2.22)P=-\Bigl(\frac{\partial E}{\partial V}\Bigr)_{\Phi}=\frac{2E}{3V}=\frac{N k_{\mathrm B} T}{V}\tag{3.2.22}

になり、前の節の式 (3.2.20) と一致する。壁を動かしたときに粒子からされる仕事として定義した圧力(力学)と、∂S/∂V\partial S/\partial V から定義した圧力(統計)が同じものになっている。1粒子の箱での PV5/3=PV^{5/3}= 一定(第1部第14章)は、この式で N=1N=1 と置いたものにあたる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/N→01/N\to0(Stirling の公式の残り 12ln⁡(2πN)\frac12\ln(2\pi N) と、殻と球の違い ln⁡(3NΔE/2E)\ln(3N\Delta E/2E) を O(N)\mathcal{O}(N) の項に比べて捨てる) | 証明 条件付き(理想気体では本文の式で確かめた。相互作用のある系で ln⁡Φ/N\ln\Phi/N が N→∞N\to\infty で極限を持つ条件は要確認) | 行き先 近似の数理 第7章

木下の勉強ステータス

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