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出てくるもの(2):N!N! はラベルを忘れた分の情報

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第5章 Gibbs のパラドックス
目次
  1. ラベル付きの気体のエントロピー
  2. ラベルを捨てる処理と連鎖律
  3. 同じ気体を合わせたときに残るもの
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.4 ★★★ 区別できる粒子として数えた状態の分布から、粒子のラベルを捨てると、エントロピーはちょうど ln⁡N!\ln N! 減る。これが相空間の測度の 1/N!1/N! である

ラベル付きの気体のエントロピー

同じ種類の粒子 NN 個からなる理想気体を、粒子に 1,2,…,N1,2,\dots,N の番号を付けて記述する。各粒子の位置と運動量の分布は独立で、解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第3章 のカノニカル分布で 1/N!1/N! を入れずに計算すると、分配関数は Zラベル=VN/λT3NZ_{\mathrm{ラベル}}=V^N/\lambda_T^{3N}(λT=h/2πmkBT\lambda_T=h/\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B} T} は熱的 de Broglie 波長)で、エントロピーは

Sラベル(N,V)=NkB[ln⁡VλT3+32](2.5.8)S_{\mathrm{ラベル}}(N,V)=N k_{\mathrm B}\Bigl[\ln\frac{V}{\lambda_T^3}+\frac32\Bigr]\tag{2.5.8}

になる。これは示量的でない。NN と VV を同時に2倍にすると、Sラベル(2N,2V)−2Sラベル(N,V)=2NkBln⁡2S_{\mathrm{ラベル}}(2N,2V)-2S_{\mathrm{ラベル}}(N,V)=2N k_{\mathrm B}\ln2 が余る。同じ気体の入った2つの容器(それぞれ NN 個、体積 VV)の仕切りを外すと、この 2NkBln⁡22N k_{\mathrm B}\ln2 だけエントロピーが増えることになる。これが授業で出会う形の Gibbs のパラドックスである。

この余りは、2.5.1 節の言葉ではまったく不思議でない。ラベル付きの記述では、「番号 11 から NN の粒子が左、N+1N+1 から 2N2N の粒子が右」という事象が仕切りを外す前の状態であり、外した後の分布でのその確率は 2−2N2^{-2N} である。命題 2.5.1 から D=2Nln⁡2D=2N\ln2 で、番号を種類の名前とみなせば、2N2N 種類の気体を混ぜたのと同じ計算になっている。問題は、番号が実験で区別できる量かどうかである。

ラベルを捨てる処理と連鎖律

位置と運動量を h3h^3 の大きさの小さな箱(1粒子の状態)に分け、その数を MM とする。ラベル付きの記述は「粒子 ii が箱 cic_i にいる」という NN 個の組 (c1,…,cN)(c_1,\dots,c_N) で、ラベルを捨てた記述は「どの箱に粒子がいるか」という集合 {c1,…,cN}\{c_1,\dots,c_N\} である。後者は前者から決まるので、第1部第3章 のエントロピーの連鎖律から

H(組)=H(集合)+H(組 ∣ 集合).(2.5.9)H(\text{組})=H(\text{集合})+H(\text{組}\,|\,\text{集合}).\tag{2.5.9}

希薄な気体では、NN 個の粒子が同じ箱に重なることはほとんどなく(N2/M→0N^2/M\to0 なら、全部が別の箱にいる確率は 11 に近づく)、集合を与えると組は「どの粒子をどの箱に割り当てるか」の N!N! 通りのどれかである。粒子の分布はラベルの付け替えで変わらないので、この N!N! 通りは等確率で、H(組 ∣ 集合)=ln⁡N!H(\text{組}\,|\,\text{集合})=\ln N! になる。したがって

S(N,V)≔kBH(集合)=Sラベル(N,V)−kBln⁡N!.(2.5.10)S(N,V)\coloneqq k_{\mathrm B} H(\text{集合})=S_{\mathrm{ラベル}}(N,V)- k_{\mathrm B}\ln N!.\tag{2.5.10}

相空間の測度に 1/N!1/N! を入れることは、ラベルという、どの実験でも読み取れない情報を記述から捨てることである。ln⁡N!≈Nln⁡N−N\ln N!\approx N\ln N-N(Stirling の公式)を使うと、式 (2.5.8) と合わせて Sackur–Tetrode の式

S(N,V)=NkB[ln⁡VNλT3+52](2.5.11)S(N,V)=N k_{\mathrm B}\Bigl[\ln\frac{V}{N\lambda_T^3}+\frac52\Bigr]\tag{2.5.11}

になり、V/NV/N だけで決まる示量的な形になる。

同じ気体を合わせたときに残るもの

ラベルを捨てた記述で、同じ気体の2つの容器を合わせたときのエントロピーの増加を、Stirling の公式を使わずに書くと

S(2N,2V)−2S(N,V)kB=2Nln⁡2−ln⁡(2N)!(N!)2=ln⁡4N(2NN)=12ln⁡(πN)+O(1/N)(2.5.12)\frac{S(2N,2V)-2S(N,V)}{ k_{\mathrm B}}=2N\ln2-\ln\frac{(2N)!}{(N!)^2}=\ln\frac{4^N}{\binom{2N}{N}}=\frac12\ln(\pi N)+\mathcal{O}(1/N)\tag{2.5.12}

になる。これは 2.5.2 節の式 (2.5.5) で、全粒子数を 2N2N、x=1/2x=1/2 としたもの 12ln⁡(2π⋅2N⋅14)=12ln⁡(πN)\frac12\ln(2\pi\cdot2N\cdot\frac14)=\frac12\ln(\pi N) と一致する。2つの計算は、同じ「左室の粒子数がちょうど NN という条件の驚き」を、一方は分布から、他方は分配関数から求めたものである。図 2.5.3 のように、1粒子あたりの増加はラベル付きでは ln⁡2\ln2 のまま、ラベルを捨てると ln⁡N/N\ln N/N の速さで 00 に近づく。

図

図 2.5.3 同じ気体の2つの容器(各 NN 個)を合わせたときの、1粒子あたりのエントロピーの増加。破線はラベル付きで数えた ln⁡2\ln2、点線は 1/N!1/N! を入れた厳密な値 ln⁡(4N/(2NN))/(2N)\ln(4^N/\binom{2N}{N})/(2N)、実線は Stirling の公式による近似 14Nln⁡(πN)\frac{1}{4N}\ln(\pi N)

古典力学は N!N! を決めない

古典力学の粒子には軌道があり、原理的には番号を付けて追いかけられる。したがって 1/N!1/N! は古典力学から導かれるものではなく、「実験者は同じ種類の粒子の番号を使えない」という記述の選択である。番号を実際に読み取れる場合(大きさのそろったコロイド粒子に1つずつ印を付けた場合など)は、ラベル付きのエントロピー (2.5.8) の方が正しい記述で、印で選り分けられる膜があればその差 kBln⁡N!k_{\mathrm B}\ln N! に応じた仕事を取り出せる。2.5.3 節と同じく、どちらの数え方が正しいかは使える操作で決まる。量子力学では、この選択が理論の側で決まる(次の節)。

例題 2.5.4 1モルずつの同じ気体を合わせる ★★

オリジナル同じ温度・同じ圧力の同じ理想気体を 1 mol1\,\mathrm{mol} ずつ入れた2つの容器の仕切りを外す(N=NAvN=N_{\mathrm A_v}、NAv=6.022×1023N_{\mathrm A_v}=6.022\times10^{23} は Avogadro 数)。

  1. (1) ラベル付きの数え方 (2.5.8) でのエントロピーの増加を J K−1\mathrm{J\,K^{-1}} で求めよ。
  2. (2) 1/N!1/N! を入れた数え方での増加を、式 (2.5.12) の最後の形で求めよ。(1) との比はどれほどか。
解答

(1) 2NkBln⁡2=2Rln⁡2=11.5 J K−12N k_{\mathrm B}\ln2=2R\ln2=11.5\,\mathrm{J\,K^{-1}}。

(2) 12ln⁡(πN)=12(ln⁡π+ln⁡(6.022×1023))=12(1.145+54.75)=27.9\frac12\ln(\pi N)=\frac12(\ln\pi+\ln(6.022\times10^{23}))=\frac12(1.145+54.75)=27.9 なので、増加は 27.9 kB=27.9×1.381×10−23=3.86×10−22 J K−127.9\, k_{\mathrm B}=27.9\times1.381\times10^{-23}=3.86\times10^{-22}\,\mathrm{J\,K^{-1}}。(1) との比は 3.3×10−233.3\times10^{-23} で、熱量計で測れる大きさではない。これは左右の容器の粒子数の揺らぎ(N/2≈5.5×1011\sqrt{N/2}\approx5.5\times10^{11} 個の程度)による増加で、粒子数 1 mol1\,\mathrm{mol} に対して相対的に 10−1210^{-12} の揺らぎである。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/N→01/N\to0(Stirling の公式 ln⁡N!≈Nln⁡N−N\ln N!\approx N\ln N-N) | 証明 証明済み(Stirling の公式は誤差の上下界つきで成り立つ漸近展開) | 行き先 近似の数理 第7章

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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