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当てる D の性質:粗く見ると混合のエントロピーは減る

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第5章 Gibbs のパラドックス
目次
  1. 同じ気体を混ぜる
  2. データ処理不等式で読む
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.2 ★★★ 種類を見分ける能力を通信路で表すと、データ処理不等式により混合のエントロピーは見分ける能力とともに連続に減り、同じ気体の極限で 00 に近づく

同じ気体を混ぜる

A と B が同じ種類の気体だったとする。このとき、観測者に分かるのは「左室に何個、右室に何個」という数だけで、どの粒子がもともとどちらにいたかは分からない。仕切りを外す前の状態として観測者が持っている情報は、事象 E′={左室にちょうど NA 個}E'=\{\text{左室にちょうど }N_{\mathrm A}\text{ 個}\} である。E⊂E′E\subset E' なのでp後(E′)≥p後(E)p_{\mathrm{後}}(E')\ge p_{\mathrm{後}}(E) で、命題 2.5.1 から DD は小さくなる。E′E' の確率は二項分布で、

D(p前′ ∥ p後)=−ln⁡[(NNA)xNA(1−x)NB]=12ln⁡(2πNx(1−x))+O(1/N)(2.5.5)D(p_{\mathrm{前}}'\,\|\,p_{\mathrm{後}})=-\ln\biggl[\binom{N}{N_{\mathrm A}}x^{N_{\mathrm A}}(1-x)^{N_{\mathrm B}}\biggr]=\frac12\ln\bigl(2\pi Nx(1-x)\bigr)+\mathcal{O}(1/N)\tag{2.5.5}

となる。最後の形は二項係数に Stirling の公式を当てたもので、二項分布の山の高さが 1/2πNx(1−x)1/\sqrt{2\pi Nx(1-x)} であることに当たる。同じ気体の仕切りを外しても、エントロピーは厳密には 00 でなく kB⋅12ln⁡(2πNx(1−x))k_{\mathrm B}\cdot\frac12\ln(2\pi Nx(1-x)) だけ増える。これは左室の粒子数がもう NAN_{\mathrm A} ちょうどでなく、Nx(1−x)\sqrt{Nx(1-x)} 程度揺らぐようになった分である。しかし NN でなく ln⁡N\ln N に比例するので、粒子1個あたりでは N→∞N\to\infty で 00 になり、熱力学では見えない。

データ処理不等式で読む

同じ気体の場合と違う気体の場合の差は、観測者が手にする記述の細かさの差である。違う気体を見分けられる観測者の記述は (粒子ごとの種類, 位置) で、見分けられない観測者の記述は (位置) だけである。後者は前者から種類のラベルを捨てる処理で得られる。この処理は前と後の両方の分布に同じように当たるので、データ処理不等式 D(Wp ∥ Wq)≤D(p ∥ q)D(Wp\,\|\,Wq)\le D(p\,\|\,q)(第1部第4章)から、見分けられない観測者にとっての DD は見分けられる観測者の DD を超えない。式 (2.5.5) と式 (2.5.2) の大小はこの一般の不等式の1つの例である。

この見方を使うと、「少しだけ違う気体」を扱える。観測者が種類を判定する装置を持っていて、それが誤り確率 ε\varepsilon で種類を取り違えるとする(0≤ε≤1/20\le\varepsilon \le1/2)。装置の出力を X~\tilde X と書くと、X→X~X\to\tilde X は2値対称通信路 WεW_{\varepsilon } である。この観測者の記述は粒子ごとに (X~,Y)(\tilde X,Y) で、前と後の分布に同じ WεW_{\varepsilon } が当たる。後の分布では X~\tilde X と YY は独立のままなので、観測者にとっての DD は1粒子あたり

DεN≔D(Wεp前XY ∥ Wεp後XY)=I(X~;Y)前=hb(x∗ε)−hb(ε),x∗ε≔x(1−ε)+(1−x)ε(2.5.6)\frac{D_{\varepsilon }}{N}\coloneqq D\bigl(W_{\varepsilon } p^{XY}_{\mathrm{前}}\,\big\|\,W_{\varepsilon } p^{XY}_{\mathrm{後}}\bigr)=I(\tilde X;Y)_{\mathrm{前}}=h_{\mathrm b}(x\ast\varepsilon )-h_{\mathrm b}(\varepsilon ), \qquad x\ast\varepsilon \coloneqq x(1-\varepsilon )+(1-x)\varepsilon\tag{2.5.6}

になる。2つ目の等号は、X~\tilde X の周辺分布が (x∗ε, 1−x∗ε)(x\ast\varepsilon ,\,1-x\ast\varepsilon ) で、YY を与えたときの X~\tilde X が誤り確率 ε\varepsilon でしか揺らがないことから、I=H(X~)−H(X~ ∣ Y)I=H(\tilde X)-H(\tilde X\,|\,Y) を計算したものである。ここで NN 個の粒子を独立に扱った。粒子数を固定したことによる補正は式 (2.5.5) と同じく ln⁡N\ln N の程度で、1粒子あたりでは消える。

式 (2.5.6) は ε=0\varepsilon =0 で hb(x)h_{\mathrm b}(x)(違う気体)、ε=1/2\varepsilon =1/2 で hb(1/2)−hb(1/2)=0h_{\mathrm b}(1/2)-h_{\mathrm b}(1/2)=0(同じ気体)になり、その間を連続に、しかも単調に下がる(図 2.5.1)。単調性は、Wε′W_{\varepsilon '}(ε<ε′≤1/2\varepsilon <\varepsilon '\le1/2)が WεW_{\varepsilon } の後にもう1つ2値対称通信路をつないだものとして書けることと、データ処理不等式から従う。Gibbs の不連続は、「区別できる(ε=0\varepsilon =0)」と「区別できない(ε=1/2\varepsilon =1/2)」の2点しか見ていないことから現れた。

図

図 2.5.1 種類を誤り確率 ε\varepsilon で取り違える観測者にとっての、1粒子あたりの混合のエントロピー(kBk_{\mathrm B} 単位)。式 (2.5.6) の値で、ε=0\varepsilon =0 の hb(x)h_{\mathrm b}(x) から ε=1/2\varepsilon =1/2 の 00 まで連続かつ単調に下がる

例題 2.5.2 見分ける装置の精度と混合のエントロピー ★★★

オリジナルx=1/2x=1/2 とする。種類を判定する装置が誤り確率 ε\varepsilon で種類を取り違える。

  1. (1) ε=0.1\varepsilon =0.1 のとき、この観測者にとっての1粒子あたりの混合のエントロピー Dε/ND_{\varepsilon }/N を nat で求めよ。
  2. (2) 同じ装置を2台独立に使い、2台の判定が一致したときだけ記録し、一致しなければ「不明」と記録する。X~\tilde X を3つの値 A・B・不明を取る変数として、I(X~;Y)前I(\tilde X;Y)_{\mathrm{前}} を求めよ。(1) と比べて増えたことを、データ処理不等式と矛盾しない理由とともに説明せよ。
解答

(1) 式 (2.5.6) で x∗ε=1/2x\ast\varepsilon =1/2 なので、Dε/N=ln⁡2−hb(0.1)=0.6931−0.3251=0.3681D_{\varepsilon }/N=\ln2-h_{\mathrm b}(0.1)=0.6931-0.3251=0.3681 nat。違う気体と見分けられる観測者の ln⁡2\ln2 の約 53% である。

(2) 粒子が A のとき、2台とも A と判定する確率は 0.810.81、2台とも B は 0.010.01、一致しないのは 0.180.18 である。B のときは A と B を入れ替える。x=1/2x=1/2 なので X~\tilde X の周辺分布は (0.41, 0.41, 0.18)(0.41,\,0.41,\,0.18) で、H(X~)=−2(0.41)ln⁡0.41−0.18ln⁡0.18=0.7311+0.3087=1.0398H(\tilde X)=-2(0.41)\ln0.41-0.18\ln0.18=0.7311+0.3087=1.0398。YY を与えると X~\tilde X の分布は (0.81, 0.01, 0.18)(0.81,\,0.01,\,0.18) かその入れ替えで、H(X~ ∣ Y)=−0.81ln⁡0.81−0.01ln⁡0.01−0.18ln⁡0.18=0.1707+0.0461+0.3087=0.5254H(\tilde X\,|\,Y)=-0.81\ln0.81-0.01\ln0.01-0.18\ln0.18=0.1707+0.0461+0.3087=0.5254。よって I(X~;Y)前=1.0398−0.5254=0.5144I(\tilde X;Y)_{\mathrm{前}}=1.0398-0.5254=0.5144 nat で、(1) の 0.36810.3681 より大きい。これはデータ処理不等式と矛盾しない。2台の装置の出力の組は1台の出力より細かい記述で、1台の出力は2台の組から「2台目を捨てる」処理で得られる。データ処理不等式が言うのは、処理で DD が増えないことだけであり、測定を増やして記述を細かくすれば DD は増えうる。それでも上限 hb(1/2)=ln⁡2h_{\mathrm b}(1/2)=\ln2 は超えない。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/N→01/N\to0(粒子数が大きい。式 (2.5.5) の二項係数の評価) | 証明 証明済み(Stirling の公式は誤差の上下界つきで成り立つ漸近展開) | 行き先 近似の数理 第7章

木下の勉強ステータス

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