相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.6 ★★ 授業の混合エントロピー・理想溶液の混合 Gibbs エネルギー・Sackur–Tetrode の式・1/N! は、どれもこの章の D と連鎖律の式の言い換えである
熱力学の混合エントロピー
熱力学の授業では、混合エントロピーを次のように求める。各気体が混合の後に全体積 V を占めることに注目し、気体 A は VA から V へ、気体 B は VB から V へ、それぞれ独立に等温膨張したと考える。理想気体の等温膨張のエントロピー変化 NkBln(V後/V前) を足して
ΔSmix=NAkBlnVAV+NBkBlnVBV=−NkBi∑xilnxi(2.5.18)
を得る(xi=Ni/N はモル分率)。この章の形 (2.5.4) と並べると、右辺の −∑ixilnxi はモル分率の分布の Shannon エントロピー H(X) で、それが前の状態での種類と位置の相互情報量 I(X;Y)前 に等しい。等温膨張で考える教科書の手順は、2.5.3 節の半透膜のピストンの過程を数式でなぞったものである。3種類以上の気体でも、前の状態で Y が X で決まるので I(X;Y)前=H(X) がそのまま成り立つ。
化学の理想溶液
化学熱力学では、理想溶液(または理想気体の混合物)の混合 Gibbs エネルギーを
ΔGmix=nRTi∑xilnxi(2.5.19)
と書く(n は全物質量)。混合のエンタルピーが 0 なので ΔGmix=−TΔSmix で、この章の言葉では −kBTD(p前∥p後) である。化学ポテンシャルの μi=μi∘+RTlnxi(1モルあたり)の RTlnxi は、成分 i の1粒子の驚き −lnxi に −kBT を掛けたものを1モル分にしたものに当たる。
統計力学の 1/N! と Sackur–Tetrode の式
統計力学の授業では、相空間の測度を dΓ=d3Nqd3Np/(h3NN!) とし、N! を「同種粒子は区別できないので、入れ替えで移り合う状態を1つと数える」と説明する(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第2章)。この章の式 (2.5.10) は同じことを、エントロピーの連鎖律H(組)=H(集合)+lnN! として述べている。授業の説明で「区別できない」と言うところを、この章は「ラベルの情報 lnN! を記述から捨てた」と言い換えている。Sackur–Tetrode の式 (2.5.11) は、その後に Stirling の公式を当てたものである。
次の表に対応をまとめる。
| 授業の形 | この章の形 |
| ΔSmix=−NkB∑ixilnxi | kBD(p前∥p後)=NkBI(X;Y)前 |
| 等温膨張の和で求める | 半透膜で取り出す仕事 =kBTD |
| ΔGmix=nRT∑ixilnxi | −kBTD(p前∥p後) |
| 1/N!(同種粒子は区別できない) | ラベルを捨てる処理、H(組∣集合)=lnN! |
| 同じ気体なら ΔS=0 | 正確には 21ln(2πNx(1−x))kB、1粒子あたり 0 |
| 違う気体なら ΔS=0(不連続) | 見分ける能力(ε・c)について連続 |
例題 2.5.6 理想溶液の混合 Gibbs エネルギー ★★
オリジナル温度 298.15K で、2種類の液体を物質量の比 1:4(xA=0.2)で混ぜて合わせて 1mol の理想溶液を作る。
- (1) ΔGmix を求めよ。
- (2) 同じ量を、1粒子あたりの相互情報量 I(X;Y)前 と kBT で書き、ビットに直すと何ビットか。
解答
(1) 式 (2.5.19) から ΔGmix=RT(0.2ln0.2+0.8ln0.8)=−RThb(0.2)=−8.314×298.15×0.5004=−1240J。
(2) 1粒子あたり ΔGmix/N=−kBTI(X;Y)前 で、I(X;Y)前=hb(0.2)=0.5004 nat。ビットでは 0.5004/ln2=0.722 ビットである。混ぜる前は、分子の種類が分かればどちらの容器にいたかが分かり、その相関が1分子あたり 0.722 ビットあった。混ぜることでこの相関が失われ、1ビットあたり kBTln2 の自由エネルギーが下がる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com