この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.7 ★★★ Gibbs のパラドックスは、混合のエントロピーを前と後の として読み、データ処理不等式で記述の粗さとの関係を見ると、不連続の無い形に整理される
この章では、2種類の気体の混合を、仕切りを外す前の分布と外した後の分布の比較として読んだ。前の分布は後の分布をある事象で条件付けたもので、混合のエントロピーはその事象の驚き 、すなわち に を掛けたものであり、粒子1個あたりでは種類と位置の相互情報量である。この量は Stirling の公式を使わずに厳密に と求まる。
当てた性質はデータ処理不等式である。種類を見分ける能力が粗い観測者の記述は、細かい記述に処理を当てたものなので、 は小さくなる。見分ける能力を誤り確率 で表すと、混合のエントロピーは と連続に下がり、同じ気体の極限では の程度の量だけが残る。混合のエントロピーの 倍は半透膜で取り出せる仕事の上限で、エントロピーの値は「実験者がどの変数を区別して操作できるか」で決まる。同じ見方で、相空間の測度の は、ラベルの情報 を記述から捨てたことに当たり、連鎖律 で表される。量子力学では、同種粒子の数え方は理論で決まって希薄な極限で に一致し、内部状態に重なり のある2種類の混合のエントロピーは Holevo 量 に等しく、 について連続に変わる。
第2部の5つの章は、統計力学のエントロピーを、知っていることに基づく分布の性質として読んできた。最大エントロピー原理(第1章)は「何を知っているか」を制約で表し、Gibbs の変分原理(第2章)は平衡からのずれを で測り、粗視化(第4章)は「何を見ているか」を処理で表した。この章の結論は、その3つが合わさったものである。エントロピーは、どの変数を知っていて、どの変数を区別して見ているかを決めて初めて定まる。次の第3部では、分布を密度行列に、処理を量子チャネルに置き換えて、この章の最後の節で使った von Neumann エントロピーと量子相対エントロピーを一般に扱う。
この章の道具
- 条件付けの相対エントロピー:。
- 混合のエントロピー:(厳密)。
- 見分ける能力が誤り確率 の観測者:。同じ気体では 。
- 取り出せる仕事:。
- :。Sackur–Tetrode 。
- 重なり の内部状態:、。
総合問題 偏った量の2種類の気体を、見分ける能力を変えて混ぜる ★★★
オリジナル体積 の箱を体積 の左室と の右室に仕切り、温度 で、左室に気体 A を 個、右室に気体 B を 個入れる()。どちらも理想気体とする。
- (1) (使う道具:2.5.1節)仕切りを外したときの混合のエントロピー を求め、それが自発的に元の配置に戻る確率の を で割ったものに等しいことを示せ。
- (2) (使う道具:2.5.3節・第2部第2章 の Gibbs の変分原理)、合わせて のとき、半透膜で取り出せる仕事の上限を求めよ。また、それが前と後の自由エネルギーの差に等しい理由を述べよ。
- (3) (使う道具:2.5.2節・第1部第4章 のデータ処理不等式)種類を誤り確率 で取り違える観測者にとっての を求め、(1) より小さいことを確かめよ。
- (4) (使う道具:2.5.2節・2.5.4節・第1部第2章 の二項分布の典型性)A と B が同じ気体だったとする。 のとき、仕切りを外したときのエントロピーの増加 を、二項分布の確率から厳密に求め、近似式 と比べよ。
- (5) (使う道具:2.5.5節)A と B の粒子が内部状態 ・ だけで異なり、重なりが のとき、1粒子あたりの混合のエントロピーを求めよ。(1)・(3) の値と大小を比べ、(3) の観測者との違いを述べよ。
解答
(1) 式 (2.5.3) で とすると。混ざった後の状態で、 個の A がすべて左室(確率 ずつ)、 個の B がすべて右室(確率 ずつ)にいる確率は で、その を で割ると 。命題 2.5.1 のとおり、両者は等しい。
(2) 式 (2.5.7) から 。前と後で各粒子の運動エネルギーの平均は のままなので内部エネルギーは等しく、自由エネルギー の差は だけである。後の分布は種類の数を固定したときの平衡分布なので、Gibbs の変分原理 を 、 に当てると になる。等温で取り出せる仕事は自由エネルギーの減少を超えないので、これが上限である。
(3) なので、式 (2.5.6) から nat。(1) の より小さく、データ処理不等式 のとおりである。
(4) 同じ気体なら、観測者が知っているのは「左室にちょうど 個」という数だけである。仕切りを外した後の分布でその確率は で、式 (2.5.5) から 。近似式は で、差は である。1粒子あたりでは で、違う気体の (1) の の約 4% にすぎず、 で になる。
(5) 式 (2.5.17) で 、 なので 、。 nat。(1) の より小さく、(3) の より大きい。(3) の値は、完全に見分けられる気体を性能の悪い装置で見る観測者の値で、装置を良くすれば (1) まで上げられる。(5) の値は、内部状態が重なっていることによる上限で、どんな装置を使っても超えられない。前者は観測者の側の制限、後者は系の側の制限である。
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