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Shannon エントロピー:驚きの平均

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第2章 驚きと Shannon エントロピー・典型系列
目次
  1. 定義と基本の性質
  2. 一様分布と比べる:
  3. 2つの変数:結合エントロピーと条件付きエントロピー
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第2章 §1.2.2 ★★★ 驚きを分布で平均したものが H(X)H(X)。一様分布と比べた DD で書くと、0≤H≤ln⁡∣X∣0\le H\le\ln\lvert \mathcal X\rvert が出る

定義と基本の性質

定義 1.2.2(Shannon エントロピー ★★★)

アルファベット X\mathcal X が有限集合で、分布が pp の確率変数 XX について、驚き −ln⁡p(X)-\ln p(X) の期待値

H(X)=⟨−ln⁡p(X)⟩p=−∑x∈Xp(x)ln⁡p(x)(1.2.3)H(X)=\langle -\ln p(X) \rangle _p=-\sum_{x\in\mathcal X}p(x)\ln p(x)\tag{1.2.3}

を XX の Shannon エントロピーと呼ぶ。分布だけで決まるので H(p)H(p) とも書く。p(x)=0p(x)=0 の項は 0ln⁡0=00\ln0=0 と約束する(tln⁡t→0t\ln t\to0(t→+0t\to+0)なので、起こらない値を足しても値は変わらない)。

驚きは値 xx ごとに違う確率変数で、HH はその平均である。Shannon は、場合分けに関する整合性(後の式 (1.2.8) の特別な場合)・連続性・等確率のときに場合の数について増加すること、の3条件から式 (1.2.3) の形が定数倍を除いて決まることを示した(C. E. Shannon (1948), Bell System Technical Journal 27, 379–423 と 623–656 の定理 2)。命題 1.2.1 は、個々の驚きに条件を課して同じ結論に達する別の道である。

2つの値をとる場合は特に使うので名前を付ける。

hb(p)=−pln⁡p−(1−p)ln⁡(1−p)(0≤p≤1)(1.2.4)h_{\mathrm b}(p)=-p\ln p-(1-p)\ln(1-p)\qquad(0\le p\le1)\tag{1.2.4}

を二値エントロピーと呼ぶ(Planck 定数 hh と区別するため添字 b を付ける)。図 1.2.1 のように p=1/2p=1/2 で最大値 ln⁡2\ln2(11 ビット)をとり、p=0,1p=0,1 で 00 になる。dhbdp=ln⁡1−pp\frac{\mathrm{d} h_{\mathrm b}}{\mathrm{d} p}=\ln\frac{1-p}{p} は p→0p\to0 で発散するので、pp が 00 から少し離れるだけでエントロピーは急に増える。たとえば p=0.1p=0.1 で hb=0.325h_{\mathrm b}=0.325 nat =0.469=0.469 ビットあり、最大値の半分近くに達している。

図

図 1.2.1 二値エントロピー hb(p)h_{\mathrm b}(p) をビットで表したもの。p=1/2p=1/2 で最大値 11 ビットをとる。赤い点は第3節以降で使う p=0.1p=0.1 の値。

HH の基本の性質を3つ挙げる。

命題 1.2.3(エントロピーの範囲 ★★★)

アルファベットの大きさを ∣X∣\lvert \mathcal X\rvert とすると

0≤H(X)≤ln⁡∣X∣(1.2.5)0\le H(X)\le\ln\lvert \mathcal X\rvert\tag{1.2.5}

が成り立つ。左の等号は XX が確率 11 で1つの値をとるとき、右の等号は pp が一様分布 u(x)=1/∣X∣u(x)=1/\lvert \mathcal X\rvert のときに限り成り立つ。

左の不等式は、各項 −p(x)ln⁡p(x)-p(x)\ln p(x) が 0≤p(x)≤10\le p(x)\le1 で 00 以上であることから出る。等号はすべての項が 00、つまりどの p(x)p(x) も 00 か 11 のときに限る。右の不等式を示すために、エントロピーを一様分布と比べた形に書き直す。

一様分布と比べる:H=ln⁡∣X∣−D(p ∥ u)H=\ln\lvert \mathcal X\rvert -D(p\,\|\,u)

2つの分布 p,qp,q について、次の章で相対エントロピー

D(p ∥ q)=∑xp(x)ln⁡p(x)q(x)D(p\,\|\,q)=\sum_xp(x)\ln\frac{p(x)}{q(x)}

を定義する。ここでは qq が一様分布 uu の場合だけを使う。ln⁡(p(x)/u(x))=ln⁡p(x)+ln⁡∣X∣\ln(p(x)/u(x))=\ln p(x)+\ln\lvert \mathcal X\rvert なので

D(p ∥ u)=∑xp(x)ln⁡p(x)+ln⁡∣X∣=ln⁡∣X∣−H(p)(1.2.6)D(p\,\|\,u)=\sum_xp(x)\ln p(x)+\ln\lvert \mathcal X\rvert =\ln\lvert \mathcal X\rvert -H(p)\tag{1.2.6}

となる。エントロピーは、最大値 ln⁡∣X∣\ln\lvert \mathcal X\rvert から「pp が一様分布からどれだけ離れているか」を測る D(p ∥ u)D(p\,\|\,u) を引いたものである。したがって、右の不等式 H≤ln⁡∣X∣H\le\ln\lvert \mathcal X\rvert は D(p ∥ u)≥0D(p\,\|\,u)\ge0 と同じことになる。

命題 1.2.3 の右の不等式の証明

t>0t>0 について ln⁡t≤t−1\ln t\le t-1 が成り立ち、等号は t=1t=1 のときに限る(t−1−ln⁡tt-1-\ln t は t=1t=1 で最小値 00 をとる)。p(x)>0p(x)>0 となる xx の集合を supp⁡p\operatorname{supp} p と書くと

−D(p ∥ u)=∑x∈supp⁡pp(x)ln⁡1∣X∣p(x)≤∑x∈supp⁡pp(x)(1∣X∣p(x)−1)=∣supp⁡p∣∣X∣−1≤0.-D(p\,\|\,u)=\sum_{x\in\operatorname{supp} p}p(x)\ln\frac{1}{\lvert \mathcal X\rvert p(x)} \le\sum_{x\in\operatorname{supp} p}p(x)\Bigl(\frac{1}{\lvert \mathcal X\rvert p(x)}-1\Bigr) =\frac{\lvert \operatorname{supp} p\rvert }{\lvert \mathcal X\rvert }-1\le0 .

等号には、supp⁡p\operatorname{supp} p のすべての xx で ∣X∣p(x)=1\lvert \mathcal X\rvert p(x)=1 となり、しかも supp⁡p=X\operatorname{supp} p=\mathcal X となることが要る。これは p=up=u のときに限る。

一般の qq について D(p ∥ q)≥0D(p\,\|\,q)\ge0 を示すのは次の章の仕事で、そこでは Jensen の不等式から示す。上の証明は q=uq=u の場合に ln⁡t≤t−1\ln t\le t-1 を使っただけで、同じ1行の議論が一般の qq でも使える。

2つの変数:結合エントロピーと条件付きエントロピー

2つの確率変数 X,YX,Y の組 (X,Y)(X,Y) も1つの確率変数なので、同時分布 p(x,y)p(x,y) のエントロピーH(X,Y)=−∑x,yp(x,y)ln⁡p(x,y)H(X,Y)=-\sum_{x,y}p(x,y)\ln p(x,y) が定まる。これを結合エントロピーと呼ぶ。また、X=xX=x と知ったときの YY の条件付き分布 p(y ∣ x)p(y\,|\,x) のエントロピーをxx について平均した

H(Y ∣ X)=∑xp(x)(−∑yp(y ∣ x)ln⁡p(y ∣ x))=⟨−ln⁡p(Y ∣ X)⟩p(1.2.7)H(Y\,|\,X)=\sum_xp(x)\Bigl(-\sum_yp(y\,|\,x)\ln p(y\,|\,x)\Bigr)=\langle -\ln p(Y\,|\,X) \rangle _{p}\tag{1.2.7}

を条件付きエントロピーと呼ぶ。驚きの分解 (1.2.2) の両辺を同時分布で平均すると、連鎖律

H(X,Y)=H(X)+H(Y ∣ X)(1.2.8)H(X,Y)=H(X)+H(Y\,|\,X)\tag{1.2.8}

を得る。XX と YY が独立なら H(Y ∣ X)=H(Y)H(Y\,|\,X)=H(Y) なので H(X,Y)=H(X)+H(Y)H(X,Y)=H(X)+H(Y) である。YY が XX の関数 Y=g(X)Y=g(X) なら、XX を知れば YY は確定するので H(Y ∣ X)=0H(Y\,|\,X)=0 となり、連鎖律を2通りに使うと

H(X)=H(X,g(X))=H(g(X))+H(X ∣ g(X))≥H(g(X))(1.2.9)H(X)=H(X,g(X))=H(g(X))+H(X\,|\,g(X))\ge H(g(X))\tag{1.2.9}

が出る。関数を通すと(値をまとめると)エントロピーは増えない。この不等式は、第1部第4章のデータ処理不等式のいちばん簡単な場合である。

例題 1.2.2 2つのさいころの和のエントロピー ★★

オリジナル公平なさいころを2つ独立に振り、出た目を X1,X2X_1,X_2、和を S=X1+X2S=X_1+X_2 とする。

  1. (1) H(X1,X2)H(X_1,X_2) を nat で求めよ。
  2. (2) SS の分布を書き、H(S)H(S) を nat とビットで求めよ。
  3. (3) H(X1,X2 ∣ S)H(X_1,X_2\,|\,S) を求め、その意味を述べよ。
解答

(1) X1,X2X_1,X_2 は独立でそれぞれ一様なので、H(X1,X2)=2ln⁡6=ln⁡36≈3.584H(X_1,X_2)=2\ln6=\ln36\approx3.584 nat である。

(2) S=sS=s(s=2,…,12s=2,\dots,12)となる目の組は 6−∣s−7∣6-\lvert s-7\rvert 通りなので p(s)=(6−∣s−7∣)/36p(s)=(6-\lvert s-7\rvert )/36 である。

H(S)=−∑s=2126−∣s−7∣36ln⁡6−∣s−7∣36≈2.270 nat≈3.274 ビット.H(S)=-\sum_{s=2}^{12}\frac{6-\lvert s-7\rvert }{36}\ln\frac{6-\lvert s-7\rvert }{36}\approx2.270\ \text{nat}\approx3.274\ \text{ビット}.

SS は11通りの値をとるので上限は ln⁡11≈2.398\ln11\approx2.398 nat だが、77 の付近に確率が偏っている分だけ小さい。

(3) SS は (X1,X2)(X_1,X_2) の関数なので、式 (1.2.9) から H(X1,X2 ∣ S)=H(X1,X2)−H(S)≈3.584−2.270=1.314H(X_1,X_2\,|\,S)=H(X_1,X_2)-H(S)\approx3.584-2.270=1.314 nat(1.8961.896 ビット)である。和を知らされた後に「どちらのさいころがいくつだったか」について残っている不確かさを平均したもので、S=2S=2 や 1212 なら残りは 00、S=7S=7 なら ln⁡6\ln6 になる。∑sp(s)ln⁡(6−∣s−7∣)\sum_sp(s)\ln(6-\lvert s-7\rvert ) を直接計算しても同じ値が出る。

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