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典型系列:長い系列では驚きが平均にそろう

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第2章 驚きと Shannon エントロピー・典型系列
目次
  1. 1文字あたりの驚き
  2. 典型集合
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第2章 §1.2.3 ★★★ 独立同分布の系列では、1文字あたりの驚きが大数の法則で HH に集まる。これが漸近等分配性

1文字あたりの驚き

分布 pp から独立に nn 個取った系列 Xn=(X1,…,Xn)X^n=(X_1,\dots,X_n) を考える。値の系列を xn=(x1,…,xn)∈Xnx^n=(x_1,\dots,x_n)\in\mathcal X^n と書く(右肩の nn は冪でなく系列の長さを表す)。独立なので系列の確率は積

pn(xn)=∏i=1np(xi)p^n(x^n)=\prod_{i=1}^np(x_i)

になり、系列の驚きは各文字の驚きの和 −ln⁡pn(xn)=∑i(−ln⁡p(xi))-\ln p^n(x^n)=\sum_i(-\ln p(x_i)) になる。和を nn で割った1文字あたりの驚き

−1nln⁡pn(Xn)=1n∑i=1n(−ln⁡p(Xi))(1.2.10)-\frac1n\ln p^n(X^n)=\frac1n\sum_{i=1}^n\bigl(-\ln p(X_i)\bigr)\tag{1.2.10}

は、独立同分布の確率変数 −ln⁡p(Xi)-\ln p(X_i) の標本平均である。その期待値は H(X)H(X)、分散は

σs2=Var(−ln⁡p(X))=∑xp(x)(ln⁡p(x))2−H(X)2(1.2.11)\sigma_s^2=\mathrm{Var}\bigl(-\ln p(X)\bigr)=\sum_xp(x)(\ln p(x))^2-H(X)^2\tag{1.2.11}

で、X\mathcal X が有限なので有限である。標本平均の分散は σs2/n\sigma_s^2/n になる。

定理 1.2.4(漸近等分配性(AEP) ★★★)

X1,X2,…X_1,X_2,\dots が分布 pp に従う独立同分布の確率変数なら、任意の ϵ>0\epsilon>0 について

Pr⁡(∣−1nln⁡pn(Xn)−H(X)∣>ϵ)≤σs2nϵ2 → n→∞  0.(1.2.12)\Pr\Bigl(\Bigl|-\frac1n\ln p^n(X^n)-H(X)\Bigr|>\epsilon\Bigr)\le\frac{\sigma_s^2}{n\epsilon^2}\ \xrightarrow{\ n\to\infty\ }\ 0 .\tag{1.2.12}

証明

式 (1.2.10) は平均 H(X)H(X)、分散 σs2/n\sigma_s^2/n の確率変数なので、Chebyshev の不等式 Pr⁡(∣Z−⟨Z⟩∣>ϵ)≤Var(Z)/ϵ2\Pr(\lvert Z-\langle Z \rangle \rvert >\epsilon)\le\mathrm{Var}(Z)/\epsilon^2 をそのまま当てはめればよい。

定理の中身は大数の弱法則そのものである。新しいのは、標本平均を取る量が「各文字の驚き」という分布自身から作った量であることで、そのため結論が系列の確率についての主張になる。式 (1.2.12) の括弧の中を書き直すと、確率が 11 に近い系列 xnx^n について

e−n(H+ϵ)≤pn(xn)≤e−n(H−ϵ)(1.2.13)\mathrm{e}^{-n(H+\epsilon)}\le p^n(x^n)\le\mathrm{e}^{-n(H-\epsilon)}\tag{1.2.13}

が成り立つ。実際に出てくる長い系列は、1文字あたり ϵ\epsilon の幅の範囲で、どれもほぼ同じ確率 e−nH\mathrm{e}^{-nH} を持つ。確率がほぼ等しく分配されるので、この性質を漸近等分配性(asymptotic equipartition property、AEP)と呼ぶ。

歴史を述べておく。Shannon (1948) は独立な情報源と Markov 情報源についてこの性質を示し(前掲論文の定理 3)、McMillan は定常でエルゴード的な情報源へ広げて「漸近等分配性」の名を与えた(B. McMillan (1953), Annals of Mathematical Statistics 24, 196–219)。Breiman は収束を確率収束からほとんど確実な収束へ強めた(L. Breiman (1957), Annals of Mathematical Statistics 28, 809–811)。この章では独立同分布の場合だけを扱う。

典型集合

定義 1.2.5(典型集合 ★★★)

ϵ>0\epsilon>0 と長さ nn について、式 (1.2.13) を満たす系列 xnx^n の集合

Aϵ(n)={xn∈Xn: ∣−1nln⁡pn(xn)−H(X)∣≤ϵ}A_\epsilon^{(n)}=\Bigl\{x^n\in\mathcal X^n:\ \Bigl|-\frac1n\ln p^n(x^n)-H(X)\Bigr|\le\epsilon\Bigr\}

を典型集合、その元を典型系列と呼ぶ。

2値の場合に具体的に書く。X={0,1}\mathcal X=\{0,1\}、p(1)=pp(1)=p とし、系列に含まれる 11 の個数を kk とすると pn(xn)=pk(1−p)n−kp^n(x^n)=p^k(1-p)^{n-k} なので

−1nln⁡pn(xn)−hb(p)=(kn−p)ln⁡1−pp(1.2.14)-\frac1n\ln p^n(x^n)-h_{\mathrm b}(p)=\Bigl(\frac kn-p\Bigr)\ln\frac{1-p}{p}\tag{1.2.14}

となる。典型系列とは、11 の割合 k/nk/n が pp から ϵ/∣ln⁡((1−p)/p)∣\epsilon/\lvert \ln((1-p)/p)\rvert 以内にある系列のことである。p=0.1p=0.1、ϵ=0.05\epsilon=0.05 nat ではln⁡9≈2.197\ln9\approx2.197 で割って ∣k/n−0.1∣≤0.0228\lvert k/n-0.1\rvert \le0.0228 になる。

図

図 1.2.2 p=0.1p=0.1 の2値の系列で、11 の個数 KK の分布(二項分布の厳密な値。縦軸は nn 倍して面積を 11 にそろえた)。nn が大きくなるほど k/n=0.1k/n=0.1 の近くに集まり、橙の帯(典型集合 ∣k/n−0.1∣≤0.0228\lvert k/n-0.1\rvert \le0.0228)に入る確率が 11 に近づく。

例題 1.2.3 何文字あれば典型と言えるか ★★

オリジナルp(1)=0.1p(1)=0.1、p(0)=0.9p(0)=0.9 の2値の情報源について次を求めよ。

  1. (1) 驚きの分散 σs2\sigma_s^2。
  2. (2) ϵ=0.05\epsilon=0.05 nat として、Chebyshev の評価 (1.2.12) で「典型集合から外れる確率が 0.10.1 以下」を保証できる最小の nn。
  3. (3) 図 1.2.3 の厳密な値と比べて、(2) の評価がどの程度ゆるいかを述べよ。
解答

(1) 驚きは x=1x=1 で ln⁡10\ln10、x=0x=0 で ln⁡(10/9)\ln(10/9) をとり、その差は ln⁡9\ln9 である。2つの値をとる確率変数の分散は「確率の積 ×\times 値の差の2乗」なのでσs2=0.1×0.9×(ln⁡9)2≈0.4345\sigma_s^2=0.1\times0.9\times(\ln9)^2\approx0.4345 nat2^2 である。

(2) σs2/(nϵ2)≤0.1\sigma_s^2/(n\epsilon^2)\le0.1 から n≥0.4345/(0.1×0.0025)≈1738.0n\ge0.4345/(0.1\times0.0025)\approx1738.0 となり、最小の nn は 17391739 である。

(3) 厳密には n=500n=500 で典型集合の確率がすでに 0.9140.914 あり、0.90.9 を超えている。Chebyshev の不等式は分散だけしか使わないので、二項分布の裾が実際には指数関数的に速く減ることを反映せず、必要な長さを3倍以上多く見積もる。裾の指数的な減り方は第1部第8章の大偏差の話題である。

図

図 1.2.3 p=0.1p=0.1、ϵ=0.05\epsilon=0.05 nat での典型集合の確率。点線(黒丸)が二項分布から計算した厳密な値、実線が Chebyshev の不等式による下界。nn が小さいところで厳密な値が増減するのは、帯に入る整数 kk の個数が nn とともに飛び飛びに変わるためである。

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