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当てる DD の性質:容量は DD の球の半径

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第6章 通信路容量
目次
  1. 通信路容量の定義
  2. 黄金の恒等式
  3. 最適な入力の判定条件
  4. 容量は の球の半径
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第6章 §1.6.2 ★★★ 1つの恒等式から、容量の上界・最適な入力の判定条件・「各行を包む最小の DD の球の半径」という読み方がまとめて出る

通信路容量の定義

定義 1.6.2(通信路容量)

通信路 WW の通信路容量を

C=max⁡pI(p,W)(1.6.5)C=\max_{p}I(p,W)\tag{1.6.5}

で定める。最大は X\mathcal X 上の確率分布全体(単体)でとる。単体は有界な閉集合で、I(p,W)I(p,W) は pp について連続なので、最大値は存在する。最大を与える pp を最適な入力の分布 p∗p^*、そのときの出力の分布を q∗=p∗Wq^*=p^*W と書く。

この時点では CC は「ある関数の最大値」にすぎず、通信の速さとの関係は1.6.3節の定理で初めて分かる。この節では、最大値を求めるための道具を DD の性質からそろえる。

黄金の恒等式

命題 1.6.3(参照分布を入れ替える恒等式 ★★★)

Y\mathcal Y 上の任意の分布 rr について、q=pWq=pW とすると

∑xp(x) D(Wx ∥ r)=I(p,W)+D(q ∥ r).(1.6.6)\sum_xp(x)\,D(W_x\,\|\,r)=I(p,W)+D(q\,\|\,r).\tag{1.6.6}

証明

ln⁡W(y∣x)r(y)=ln⁡W(y∣x)q(y)+ln⁡q(y)r(y)\ln\frac{W(y|x)}{r(y)}=\ln\frac{W(y|x)}{q(y)}+\ln\frac{q(y)}{r(y)} と分けて、p(x)W(y ∣ x)p(x)W(y\,|\,x) を掛けて x,yx,y について和をとる。第1項の和は式 (1.6.3) から I(p,W)I(p,W) になる。第2項は xx について先に和をとると ∑xp(x)W(y ∣ x)=q(y)\sum_xp(x)W(y\,|\,x)=q(y) なので、∑yq(y)ln⁡q(y)r(y)=D(q ∥ r)\sum_yq(y)\ln\frac{q(y)}{r(y)}=D(q\,\|\,r) になる。

この恒等式は情報理論の教科書で「黄金の公式」と呼ばれることがある。D(q ∥ r)≥0D(q\,\|\,r)\ge0 を使うと、すぐに2つのことが分かる。

系 1.6.4(相互情報量の変分表示と凹性)

I(p,W)=min⁡r∑xp(x) D(Wx ∥ r),(1.6.7)I(p,W)=\min_{r}\sum_xp(x)\,D(W_x\,\|\,r),\tag{1.6.7}

最小は r=qr=q でだけ達成される。したがって I(p,W)I(p,W) は pp について凹である。

証明

式 (1.6.6) の D(q ∥ r)D(q\,\|\,r) は 00 以上で、r=qr=q のときに限って 00 になる(DD の非負性と等号条件、相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部第3章)。凹性については、rr を1つ止めると右辺の和は pp の1次関数で、1次関数の族の下限は凹関数になる。

凹性のおかげで、I(p,W)I(p,W) の極大はそのまま最大で、局所的な条件だけで最適かどうかを判定することができる。それが次の定理である。

最適な入力の判定条件

定理 1.6.5(容量の Kuhn–Tucker 条件 ★★★)

入力の分布 p∗p^* が容量を達成するための必要十分条件は、q∗=p∗Wq^*=p^*W として、ある定数 CC について

D(Wx ∥ q∗)=C(p∗(x)>0 の x),D(Wx ∥ q∗)≤C(p∗(x)=0 の x)(1.6.8)D(W_x\,\|\,q^*)=C\quad(p^*(x)>0\text{ の }x),\qquad D(W_x\,\|\,q^*)\le C\quad(p^*(x)=0\text{ の }x)\tag{1.6.8}

が成り立つことである。このとき定数 CC は通信路容量に等しい。

証明

(十分性)式 (1.6.8) が成り立つとする。p∗p^* で平均すると I(p∗,W)=∑xp∗(x)D(Wx ∥ q∗)=CI(p^*,W)=\sum_xp^*(x)D(W_x\,\|\,q^*)=C である。任意の入力 pp について、恒等式 (1.6.6) を r=q∗r=q^* で使うと

I(p,W)=∑xp(x) D(Wx ∥ q∗)−D(pW ∥ q∗)≤∑xp(x) D(Wx ∥ q∗)≤C.I(p,W)=\sum_xp(x)\,D(W_x\,\|\,q^*)-D(pW\,\|\,q^*)\le\sum_xp(x)\,D(W_x\,\|\,q^*)\le C .

最後の不等号は、どの xx でも D(Wx ∥ q∗)≤CD(W_x\,\|\,q^*)\le C だからである。よって p∗p^* は最大を与え、最大値は CC になる。

(必要性)p∗p^* が最大を与えるとし、C=I(p∗,W)C=I(p^*,W) とおく。ある入力 x0x_0 について D(Wx0 ∥ q∗)>CD(W_{x_0}\,\|\,q^*)>C だったとする。x0x_0 に確率を集めた分布 δx0\delta_{x_0} へ向けて pt=(1−t)p∗+t δx0p_t=(1-t)p^*+t\,\delta_{x_0} と動かすと、II の t=0t=0 での右微分は∑x(δx0(x)−p∗(x))∂I∂p(x)\sum_x(\delta_{x_0}(x)-p^*(x))\frac{\partial I}{\partial p(x)} で、偏微分は I=∑xp(x)∑yWln⁡W−∑yqln⁡qI=\sum_xp(x)\sum_yW\ln W-\sum_yq\ln q を p(x)p(x) で微分して

∂I∂p(x)=∑yW(y ∣ x)ln⁡W(y ∣ x)−∑yW(y ∣ x)(ln⁡q(y)+1)=D(Wx ∥ q)−1\frac{\partial I}{\partial p(x)}=\sum_yW(y\,|\,x)\ln W(y\,|\,x)-\sum_yW(y\,|\,x)\bigl(\ln q(y)+1\bigr)=D(W_x\,\|\,q)-1

となる。したがって右微分は (D(Wx0 ∥ q∗)−1)−(C−1)>0\bigl(D(W_{x_0}\,\|\,q^*)-1\bigr)-\bigl(C-1\bigr)>0 で、tt を少し正にすると II が増える。これは p∗p^* の最大性に反するので、すべての xx で D(Wx ∥ q∗)≤CD(W_x\,\|\,q^*)\le C である。さらに ∑xp∗(x)D(Wx ∥ q∗)=C\sum_xp^*(x)D(W_x\,\|\,q^*)=C で、各項が CC 以下なので、p∗(x)>0p^*(x)>0 の xx ではすべて等号になる。

条件 (1.6.8) を言葉で書くと、「実際に使う入力はどれも、平均の出力の分布から同じ距離(DD)にあり、使わない入力はそれより近い」となる。使う入力のどれかが遠ければ、その入力を多めに使うと II が増える。近すぎる入力は、受け手にとって平均と区別しにくいので使わない。

容量は DD の球の半径

定理 1.6.6(容量の min-max 表示 ★★★)

C=min⁡rmax⁡xD(Wx ∥ r),(1.6.9)C=\min_{r}\max_{x}D(W_x\,\|\,r),\tag{1.6.9}

最小は r=q∗r=q^*(最適な入力での出力の分布)で達成される。特に、Y\mathcal Y 上の任意の分布 rr について

C≤max⁡xD(Wx ∥ r).(1.6.10)C\le\max_xD(W_x\,\|\,r).\tag{1.6.10}

証明

任意の rr について、恒等式 (1.6.6) を p=p∗p=p^* で使うとC=I(p∗,W)≤∑xp∗(x)D(Wx ∥ r)≤max⁡xD(Wx ∥ r)C=I(p^*,W)\le\sum_xp^*(x)D(W_x\,\|\,r)\le\max_xD(W_x\,\|\,r) で、式 (1.6.10) が出る。r=q∗r=q^* を選ぶと、Kuhn–Tucker 条件 (1.6.8) から max⁡xD(Wx ∥ q∗)=C\max_xD(W_x\,\|\,q^*)=C となり、等号が達成される。

容量を図で読む

Y\mathcal Y 上の確率分布の全体を1つの図形(単体)と考え、通信路の各行 WxW_x をその中の点として打つ。「rr を中心とする半径 ρ\rho の DD の球」を {s:D(s ∥ r)≤ρ}\{s: D(s\,\|\,r)\le\rho\} と決めると、式 (1.6.9) は「すべての点 WxW_x を含む DD の球のうち、最も小さいものの半径が CC で、その中心が q∗q^* である」と読める。行どうしが互いに離れているほど球は大きく、容量も大きい。球の表面に乗っている行が実際に使う入力で、球の内側に埋もれている行は使わない(式 (1.6.8))。DD は対称でないので、これは普通の意味の距離の球ではない。中心 rr を DD の第2引数に置く向きが大事である。

式 (1.6.10) は、最適な入力を知らなくても、適当な rr を1つ選ぶだけで容量の上界が出ることを言っている。下界は、適当な入力 pp を選んで I(p,W)I(p,W) を計算すれば出る。上界と下界の差が小さくなるまで pp と rr を改善していく手続きが、1.6.4節の Blahut–Arimoto の反復法である。

図

図 1.6.2 入力の分布 p=(1−π,π)p=(1-\pi,\pi) の関数としての相互情報量(どちらも厳密な値なので点線)。青は BSC(0.10.1)、赤(点つき)は Z(12\frac12)。白丸が最大値で、BSC では対称性から π∗=12\pi^*=\frac12、Z 通信路では乱される入力 11 を控えめに使う π∗=25\pi^*=\frac25 になる(例題 1.6.2)。どちらの曲線も凹である(系 1.6.4)

例題 1.6.2 Z 通信路の容量を Kuhn–Tucker 条件で解く ★★★

オリジナルZ(12\frac12) 通信路(入力 00 は必ず 00、入力 11 は確率 12\frac12 で 00 に化ける)を考える。入力 11 の確率を π\pi とする。

  1. 出力の分布 qq と、D(W0 ∥ q)D(W_0\,\|\,q)、D(W1 ∥ q)D(W_1\,\|\,q) を π\pi で表せ。
  2. 条件 (1.6.8) を使って、最適な π∗\pi^* と容量 CC を求めよ(両方の入力を使うと仮定してよい)。
  3. 最適なときの出力の分布 q∗q^* を求め、両方の行までの DD が CC になること(DD の球の中心であること)を確かめよ。
解答

(1) q(1)=π/2q(1)=\pi/2、q(0)=1−π/2q(0)=1-\pi/2。W0=(1,0)W_0=(1,0) なので D(W0 ∥ q)=ln⁡11−π/2=−ln⁡(1−π2)D(W_0\,\|\,q)=\ln\frac{1}{1-\pi/2}=-\ln\bigl(1-\frac\pi2\bigr)。W1=(12,12)W_1=(\frac12,\frac12) なので

D(W1 ∥ q)=12ln⁡1/21−π/2+12ln⁡1/2π/2=−12ln⁡((2−π)π).D(W_1\,\|\,q)=\frac12\ln\frac{1/2}{1-\pi/2}+\frac12\ln\frac{1/2}{\pi/2}=-\frac12\ln\bigl((2-\pi)\pi\bigr).

(2) 両方の入力を使うので、条件 (1.6.8) は D(W0 ∥ q)=D(W1 ∥ q)D(W_0\,\|\,q)=D(W_1\,\|\,q) である。両辺の指数をとって2乗すると(1−π2)2=(2−π)π\bigl(1-\frac\pi2\bigr)^2=(2-\pi)\pi、つまり (2−π)24=(2−π)π\frac{(2-\pi)^2}{4}=(2-\pi)\pi。π≠2\pi\neq2 なので 2−π=4π2-\pi=4\pi、π∗=25\pi^*=\frac25。容量はこのときの共通の値で

C=−ln⁡(1−15)=ln⁡54≈0.2231 nat≈0.3219 ビット.C=-\ln\Bigl(1-\frac15\Bigr)=\ln\frac54\approx0.2231\ \text{nat}\approx0.3219\ \text{ビット}.

入力 11 は半分の確率で 00 と見分けがつかなくなるので、12\frac12 より少なく使うのが得になる。

(3) q∗=(1−15,15)=(45,15)q^*=(1-\frac15,\frac15)=(\frac45,\frac15)。D(W0 ∥ q∗)=ln⁡54D(W_0\,\|\,q^*)=\ln\frac54、D(W1 ∥ q∗)=12ln⁡1/24/5+12ln⁡1/21/5=12ln⁡(58⋅52)=12ln⁡2516=ln⁡54D(W_1\,\|\,q^*)=\frac12\ln\frac{1/2}{4/5}+\frac12\ln\frac{1/2}{1/5}=\frac12\ln\bigl(\frac58\cdot\frac52\bigr)=\frac12\ln\frac{25}{16}=\ln\frac54。2つの行が q∗q^* から同じ DD の距離にあり、q∗q^* は2点を含む最小の DD の球の中心である。r=(1−t,t)r=(1-t,t) を格子で動かして max⁡xD(Wx ∥ r)\max_xD(W_x\,\|\,r) を数値で最小化しても、t=0.2t=0.2 で最小値 ln⁡54\ln\frac54 をとる(verify_ch1-06.py)。一般の Z(ss) でも同じ計算で C=ln⁡(1+(1−s)ss/(1−s))C=\ln\bigl(1+(1-s)s^{s/(1-s)}\bigr) になる。

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