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出てくるもの (1):通信路符号化定理

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第6章 通信路容量
目次
  1. 符号と速さ
  2. 逆定理:Fano の不等式とデータ処理不等式
  3. 順定理:ランダムな符号と同時典型性
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第6章 §1.6.3 ★★★ 速さ R<CR<C なら誤りはいくらでも小さくでき、R>CR>C では下から押さえられる。逆定理は Fano とデータ処理不等式、順定理は同時典型性

符号と速さ

送りたい内容を MM 通りのうちの1つ(メッセージ v∈{1,…,M}v\in\{1,\dots,M\})とし、通信路を nn 回使って送る。

定義 1.6.7(符号・速さ・誤りの確率)

長さ nn、メッセージ数 MM の符号は、符号化 v↦xn(v)∈Xnv\mapsto x^n(v)\in\mathcal X^n と、復号 g:Yn→{1,…,M}g:\mathcal Y^n\to\{1,\dots,M\} の組である。xn(1),…,xn(M)x^n(1),\dots,x^n(M) を符号語と呼ぶ。符号の速さを

R=ln⁡Mn[nat/回](1.6.11)R=\frac{\ln M}{n}\quad[\text{nat/回}]\tag{1.6.11}

で定める(ビットで言うときは log⁡2M/n\log_2M/n)。メッセージ VV を一様に選んだときの誤りの確率を

Perr(n)=Pr⁡(g(Yn)≠V)=1M∑v=1MPr⁡(g(Yn)≠v ∣ xn(v) を送った)P_{\mathrm{err}}^{(n)}=\Pr\bigl(g(Y^n)\neq V\bigr)=\frac1M\sum_{v=1}^M\Pr\bigl(g(Y^n)\neq v\,\big|\,x^n(v)\text{ を送った}\bigr)

とする。

速さ RR は「1回使うごとに何 nat 分の内容を送っているか」を表す。同じ内容を3回繰り返して送り多数決で復号すれば、誤りは減るが速さは 13\frac13 に下がる。繰り返しを増やすほど誤りは 00 に近づくが、速さも 00 に近づく。Shannon の定理の要点は、速さを 00 に下げなくても、CC 未満の一定の速さを保ったまま誤りを 00 に近づけることができるという点にある。

定理 1.6.8(通信路符号化定理(Shannon 1948) ★★★)

離散無記憶通信路の容量を CC とする。

  1. (i) (順定理)R<CR<C なら、速さが RR 以上の符号の列で Perr(n)→0P_{\mathrm{err}}^{(n)}\to0(n→∞n\to\infty)となるものが存在する。
  2. (ii) (逆定理)速さ RR の任意の符号について

Perr(n) ≥ 1−CR−ln⁡2nR.(1.6.12)P_{\mathrm{err}}^{(n)}\ \ge\ 1-\frac CR-\frac{\ln2}{nR}.\tag{1.6.12}

したがって R>CR>C では、nn をどれだけ大きくしても誤りの確率は 1−C/R>01-C/R>0 に近い値より小さくできない。

逆定理のほうが短いので先に示す。

逆定理:Fano の不等式とデータ処理不等式

補題 1.6.9(Fano の不等式 ★★)

VV と V^\hat V が同じ MM 個の値をとる確率変数で、Perr=Pr⁡(V^≠V)P_{\mathrm{err}}=\Pr(\hat V\neq V) とすると

H(V ∣ V^)≤hb(Perr)+Perrln⁡(M−1)≤ln⁡2+Perrln⁡M.(1.6.13)H(V\,|\,\hat V)\le h_{\mathrm b}(P_{\mathrm{err}})+P_{\mathrm{err}}\ln(M-1)\le\ln2+P_{\mathrm{err}}\ln M .\tag{1.6.13}

証明

誤りの有無を表す変数 EE(V^≠V\hat V\neq V なら 11、そうでなければ 00)を入れる。EE は (V,V^)(V,\hat V) で決まるので H(V ∣ V^)=H(V,E ∣ V^)H(V\,|\,\hat V)=H(V,E\,|\,\hat V) で、連鎖律からH(V,E ∣ V^)=H(E ∣ V^)+H(V ∣ E,V^)H(V,E\,|\,\hat V)=H(E\,|\,\hat V)+H(V\,|\,E,\hat V)。第1項は条件を外すと増えるので H(E)=hb(Perr)H(E)=h_{\mathrm b}(P_{\mathrm{err}}) 以下である。第2項は、E=0E=0 なら V=V^V=\hat V で 00、E=1E=1 なら VV は V^\hat V 以外の M−1M-1 個のどれかなので ln⁡(M−1)\ln(M-1) 以下で、平均すると Perrln⁡(M−1)P_{\mathrm{err}}\ln(M-1) 以下になる。

Fano の不等式は「誤りが少ないなら、推定値を知ったあとの元の値の不確かさは小さい」ことを量で言う。逆向きに読むと、受け手の手元に残る不確かさが大きければ誤りは減らせない。

補題 1.6.10(無記憶通信路の相互情報量 ★★)

入力の列 XnX^n がどんな分布(文字どうしに相関があってもよい)でも、無記憶通信路の出力 YnY^n について

I(Xn;Yn)≤∑i=1nI(Xi;Yi)≤nC.(1.6.14)I(X^n;Y^n)\le\sum_{i=1}^nI(X_i;Y_i)\le nC .\tag{1.6.14}

証明

I(Xn;Yn)=H(Yn)−H(Yn ∣ Xn)I(X^n;Y^n)=H(Y^n)-H(Y^n\,|\,X^n) と書く。無記憶性 (1.6.1) から、xnx^n を止めると Y1,…,YnY_1,\dots,Y_n は独立で YiY_i は xix_i だけで決まるので、H(Yn ∣ Xn)=∑iH(Yi ∣ Xi)H(Y^n\,|\,X^n)=\sum_iH(Y_i\,|\,X_i) である。一方 H(Yn)≤∑iH(Yi)H(Y^n)\le\sum_iH(Y_i)(劣加法性。相互情報量が非負であることと同じ、相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部第3章)。差をとると1つ目の不等号が出る。各項 I(Xi;Yi)I(X_i;Y_i) は XiX_i の分布を入力とした1回分の相互情報量なので CC 以下である。

逆定理 (ii) の証明

メッセージ VV を一様に選ぶと H(V)=ln⁡M=nRH(V)=\ln M=nR。V→Xn→Yn→V^=g(Yn)V\to X^n\to Y^n\to\hat V=g(Y^n) は Markov 連鎖をなす(符号化は VV だけで決まり、通信路は XnX^n だけを見て、復号は YnY^n だけを見る)。データ処理不等式(相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部第4章)を2回使うと I(V;V^)≤I(Xn;Yn)I(V;\hat V)\le I(X^n;Y^n)。これと Fano の不等式 (1.6.13)・補題 1.6.10 から

nR=H(V)=H(V ∣ V^)+I(V;V^)≤ln⁡2+Perr(n) nR+nC.nR=H(V)=H(V\,|\,\hat V)+I(V;\hat V)\le\ln2+P_{\mathrm{err}}^{(n)}\,nR+nC .

両辺を nRnR で割って整理すると式 (1.6.12) になる。

逆定理の証明に通信路の細かい形は一度も出てこない。使ったのは「内容は通信路を通る間に増えない」というデータ処理不等式と、1回あたりの上限 CC だけである。データ処理不等式は DD の単調性(確率行列を両方の分布に掛けると DD が増えない)の言い換えだったので、逆定理はこの巻の背骨の性質から直接出ていることになる。

順定理:ランダムな符号と同時典型性

順定理の証明は、良い符号を具体的に作らずに「乱数で作った符号の誤りを平均すると小さい、だから小さいものが少なくとも1つある」という論法をとる。道具は典型系列(相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部第2章)を入力と出力の組に広げたものである。

定義 1.6.11(同時典型集合)

結合分布 pXYp_{XY} と δ>0\delta>0 について、次の3つを満たす列の組 (xn,yn)(x^n,y^n) の全体を同時典型集合 Aδ(n)A_\delta^{(n)} と呼ぶ。

∣−1nln⁡pn(xn)−H(X)∣<δ,∣−1nln⁡qn(yn)−H(Y)∣<δ,∣−1nln⁡pXYn(xn,yn)−H(X,Y)∣<δ.\Bigl|-\tfrac1n\ln p^n(x^n)-H(X)\Bigr|<\delta,\quad\Bigl|-\tfrac1n\ln q^n(y^n)-H(Y)\Bigr|<\delta,\quad\Bigl|-\tfrac1n\ln p^n_{XY}(x^n,y^n)-H(X,Y)\Bigr|<\delta .

ここで pn(xn)=∏ip(xi)p^n(x^n)=\prod_ip(x_i) などは独立に nn 回引いたときの確率である。

補題 1.6.12(同時典型性 ★★)

(Xn,Yn)(X^n,Y^n) を pXYp_{XY} から独立に nn 組引いたものとする。

  1. (a) Pr⁡((Xn,Yn)∈Aδ(n))→1\Pr\bigl((X^n,Y^n)\in A_\delta^{(n)}\bigr)\to1(n→∞n\to\infty)。
  2. (b) ∣Aδ(n)∣≤en(H(X,Y)+δ)|A_\delta^{(n)}|\le\mathrm{e}^{n(H(X,Y)+\delta)}。
  3. (c) X′nX'^n と Y′nY'^n を、それぞれ pnp^n と qnq^n から互いに独立に引くと

Pr⁡((X′n,Y′n)∈Aδ(n))≤e−n(I(X;Y)−3δ).(1.6.15)\Pr\bigl((X'^n,Y'^n)\in A_\delta^{(n)}\bigr)\le\mathrm{e}^{-n(I(X;Y)-3\delta)} .\tag{1.6.15}

証明

(a) 3つの条件はどれも、独立な確率変数 −ln⁡p(Xi)-\ln p(X_i) などの標本平均が期待値に近いという主張なので、大数の法則から各々の確率が 11 に近づく(典型系列の性質、相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部第2章)。(b) Aδ(n)A_\delta^{(n)} の各元は pXYn≥e−n(H(X,Y)+δ)p^n_{XY}\ge\mathrm{e}^{-n(H(X,Y)+\delta)} を満たし、確率の和は 11 以下なので、元の数は en(H(X,Y)+δ)\mathrm{e}^{n(H(X,Y)+\delta)} 以下である。(c) Aδ(n)A_\delta^{(n)} の元では pn(xn)≤e−n(H(X)−δ)p^n(x^n)\le\mathrm{e}^{-n(H(X)-\delta)}、qn(yn)≤e−n(H(Y)−δ)q^n(y^n)\le\mathrm{e}^{-n(H(Y)-\delta)} なので

Pr⁡≤∑(xn,yn)∈Aδ(n)pn(xn)qn(yn)≤en(H(X,Y)+δ) e−n(H(X)−δ) e−n(H(Y)−δ)=e−n(H(X)+H(Y)−H(X,Y)−3δ).\Pr\le\sum_{(x^n,y^n)\in A_\delta^{(n)}}p^n(x^n)q^n(y^n)\le\mathrm{e}^{n(H(X,Y)+\delta)}\,\mathrm{e}^{-n(H(X)-\delta)}\,\mathrm{e}^{-n(H(Y)-\delta)}=\mathrm{e}^{-n(H(X)+H(Y)-H(X,Y)-3\delta)} .

指数の H(X)+H(Y)−H(X,Y)H(X)+H(Y)-H(X,Y) は I(X;Y)I(X;Y) である。

(c) の指数 I(X;Y)=D(pXY ∥ pXpY)I(X;Y)=D(p_{XY}\,\|\,p_Xp_Y) には、この節の背骨の形がそのまま現れている。独立な対 pXpYp_Xp_Y から引いた列が、まるで相関のある対 pXYp_{XY} から引いたように見える確率は、2つの分布の DD を指数として e−nD\mathrm{e}^{-nD} の速さで小さくなる。この「分布を取り違える確率は e−nD\mathrm{e}^{-nD}」という形は、仮説検定の Stein の補題として相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部第8章で一般の形に直す。

順定理 (i) の証明の骨格

容量を達成する入力 p∗p^* をとり、R<CR<C とする。δ>0\delta>0 を R<C−3δR<C-3\delta となるように小さくとる。M=⌈enR⌉M=\lceil\mathrm{e}^{nR}\rceil 個の符号語 xn(1),…,xn(M)x^n(1),\dots,x^n(M) を、各文字を p∗p^* から独立に引いて作る。受け手は、届いた yny^n と同時典型になる符号語がちょうど1つあればそれを答え、無いか2つ以上あれば誤りとする。メッセージ 11 を送ったとして、誤りは「正しい符号語 xn(1)x^n(1) と yny^n が同時典型でない」か「ほかの符号語 xn(v)x^n(v)(v≠1v\neq1)が yny^n と同時典型になる」かのどちらかで起こる。前者の確率は (a) から 00 に近づく。後者について、v≠1v\neq1 の符号語は yny^n と独立に作られているので、(c) と和の上界から

Pr⁡(ほかの符号語が同時典型)≤(M−1) e−n(C−3δ)≤enRe−n(C−3δ)=e−n(C−3δ−R)→0.\Pr(\text{ほかの符号語が同時典型})\le(M-1)\,\mathrm{e}^{-n(C-3\delta)}\le\mathrm{e}^{nR}\mathrm{e}^{-n(C-3\delta)}=\mathrm{e}^{-n(C-3\delta-R)}\to0 .

符号の作り方についての平均の誤り確率が 00 に近づくので、平均以下の誤り確率を持つ具体的な符号が少なくとも1つ存在する。

なぜ enC\mathrm{e}^{nC} 個まで送れるのか

入力が典型的なら、出力の典型系列はおよそ enH(Y)\mathrm{e}^{nH(Y)} 個ある。1つの符号語を送ったとき、雑音で散らばる先の出力はおよそ enH(Y∣X)\mathrm{e}^{nH(Y|X)} 個の「雲」を作る。雲どうしが重ならないように符号語を選べば受け手は区別できるので、詰め込める符号語の数はおよそ enH(Y)/enH(Y∣X)=enI(X;Y)\mathrm{e}^{nH(Y)}/\mathrm{e}^{nH(Y|X)}=\mathrm{e}^{nI(X;Y)} 個になる。入力の分布を最適に選べば enC\mathrm{e}^{nC} 個である。上の証明は、この勘定を乱数の符号で確かめたものになっている。

定理が言わないこと

順定理は符号が存在することを言うが、作り方と復号の手間については何も言わない。乱数の符号を表で引いて復号すると、手間は M=enRM=\mathrm{e}^{nR} に比例して増える。容量に近い速さで実際に復号できる符号(LDPC 符号・ターボ符号・極符号など)は別の研究の主題で、この章では扱わない。もう1つ、定理は n→∞n\to\infty の極限についての主張で、有限の nn で誤りがどれだけの速さで 00 に近づくか(誤り指数)は別の問題である。その指数も DD の最小化として書けることは相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部第8章の大偏差の道具で扱う。逆定理の式 (1.6.12) は R>CR>C で誤りの確率を 1−C/R1-C/R 程度で下から押さえるだけだが、実際には R>CR>C で誤りの確率が 11 に近づくことも示されている(強い逆定理)。

例題 1.6.3 容量を超えた速さで送るときの誤りの下限 ★★

オリジナルBSC(0.10.1) の容量は C=ln⁡2−hb(0.1)C=\ln2-h_{\mathrm b}(0.1) である(一様な入力が最適になることは1.6.6節で確かめる)。

  1. CC を nat とビットで求めよ。
  2. 速さ 0.750.75 ビット/回の符号を長さ n=100n=100 で作ると、誤りの確率はどれだけ以上になるか。n→∞n\to\infty ではどうか。
  3. 速さ 0.50.5 ビット/回・長さ n=100n=100 の符号ではメッセージは何通りあるか。この速さについて定理は何を言うか。
解答

(1) hb(0.1)=−0.1ln⁡0.1−0.9ln⁡0.9≈0.3251h_{\mathrm b}(0.1)=-0.1\ln0.1-0.9\ln0.9\approx0.3251 nat なので C≈0.6931−0.3251=0.3681C\approx0.6931-0.3251=0.3681 nat、ln⁡2\ln2 で割って 0.53100.5310 ビット。

(2) 式 (1.6.12) はビットで書いても形が変わらず、ln⁡2nR\frac{\ln2}{nR} の項は RR をビットで表すと 1nRビット\frac{1}{nR_{\text{ビット}}} になる。

Perr≥1−0.53100.75−1100×0.75≈1−0.708−0.013=0.279.P_{\mathrm{err}}\ge1-\frac{0.5310}{0.75}-\frac{1}{100\times0.75}\approx1-0.708-0.013=0.279 .

n→∞n\to\infty では最後の項が消えて 1−0.708=0.2921-0.708=0.292 である。符号をどれだけ長くしても、およそ3回に1回は復号を誤ることになる。

(3) M=2nR=250≈1.13×1015M=2^{nR}=2^{50}\approx1.13\times10^{15} 通り。0.50.5 ビットは容量 0.5310.531 ビットより小さいので、順定理から、この速さを保ったまま nn を大きくすれば誤りの確率をいくらでも小さくできる。容量との差がわずかなので、そのためには n=100n=100 よりずっと長い符号が要る。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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