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当てる D の性質:局所操作と Holevo 限界

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第6章 テレポーテーションと超高密度符号
目次
  1. 局所操作は相手の状態を変えない
  2. Holevo 限界
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第6章 §3.6.2 ★★★ Alice の局所操作は Bob の状態を変えない(信号は送れない)。量子系に載せた古典情報は、データ処理不等式から Holevo 量 χ\chi で上から押さえられる

局所操作は相手の状態を変えない

命題 3.6.2(信号を送れないこと ★★★)

Alice が AA の側に任意の量子チャネル NA\mathcal N_A(測定とその結果の記録を含む)を当てても、Bob の側の状態 ρ^B\hat\rho_B は変わらない。すなわち

Tr⁡A[(NA⊗idB)(ρ^AB)]=Tr⁡Aρ^AB=ρ^B.(3.6.6)\operatorname{Tr}_A\bigl[(\mathcal N_A\otimes\mathrm{id}_B)(\hat\rho_{AB})\bigr]=\operatorname{Tr}_A\hat\rho_{AB}=\hat\rho_B .\tag{3.6.6}

したがって、Alice が操作を古典の値 xx に応じて選んでも、Bob の手元の状態は xx によらず、I(X;B)=0I(X;B)=0 である。

証明

Kraus 表示 NA(⋅)=∑aK^a(⋅)K^a†\mathcal N_A(\cdot)=\sum_a\hat K_a(\cdot)\hat K_a^\dagger で、∑aK^a†K^a=1A\sum_a\hat K_a^\dagger\hat K_a=\mathbf 1_A を使う。部分トレースは AA の側の巡回でTr⁡A[(K^a⊗1)ρ^AB(K^a†⊗1)]=Tr⁡A[(K^a†K^a⊗1)ρ^AB]\operatorname{Tr}_A[(\hat K_a\otimes\mathbf 1)\hat\rho_{AB}(\hat K_a^\dagger\otimes\mathbf 1)]=\operatorname{Tr}_A[(\hat K_a^\dagger\hat K_a\otimes\mathbf 1)\hat\rho_{AB}] と書けるので、aa について和をとると Tr⁡Aρ^AB\operatorname{Tr}_A\hat\rho_{AB} に戻る。測定の場合も、結果ごとの Kraus 演算子を全部足した和に同じ計算を当てればよい。後半は、xx ごとの Bob の状態 ρ^B(x)\hat\rho_B^{(x)} がすべて ρ^B\hat\rho_B に等しいので、Holevo 量 χ=S(ρ^B)−∑xpxS(ρ^B)=0\chi=S(\hat\rho_B)-\sum_xp_xS(\hat\rho_B)=0 となり、下の式 (3.6.8) から I(X;B)=χ=0I(X;B)=\chi=0 である。

この命題は、もつれを共有しているだけでは情報を送れないことを言っている。Bell 状態の対の片方を Alice が測ると、Bob の側は Alice の結果に応じた状態に「収縮」するが、結果を知らない Bob にとっての状態は結果について平均した ρ^B\hat\rho_B のままである。結果を知るには、古典の通信路で結果を教えてもらうしかない。テレポーテーションで古典ビットが要るのはこのためで、4節でその個数が2であることを示す。

Holevo 限界

Alice が古典の値 xx を確率 pxp_x で選び、状態 ρ^x\hat\rho_x を用意して Bob に送る。Bob は届いた系を測って結果 yy を得る。Bob が xx について得られる情報の上限を与える不等式をHolevo 限界と呼ぶ1A. S. Holevo (1973), Problems of Information Transmission 9, 177–183。下の脚注へ。値 xx と状態をまとめて、古典と量子の混ざった状態

ρ^XQ=∑xpx∣x⟩⟨x∣⊗ρ^x(3.6.7)\hat\rho_{XQ}=\sum_xp_x| x \rangle \langle x |\otimes\hat\rho_x\tag{3.6.7}

を作る(∣x⟩| x \rangle は記録用の補助の系の正規直交基底)。この状態の量子相互情報量は、第3部第2章の Holevo 量

I(X;Q)=S(∑xpxρ^x)−∑xpxS(ρ^x)=χ({px,ρ^x})(3.6.8)I(X;Q)=S\Bigl(\sum_xp_x\hat\rho_x\Bigr)-\sum_xp_xS(\hat\rho_x)=\chi(\{p_x,\hat\rho_x\})\tag{3.6.8}

に等しい。実際、S(XQ)=H(p)+∑xpxS(ρ^x)S(XQ)=H(p)+\sum_xp_xS(\hat\rho_x)(ブロック対角)、S(X)=H(p)S(X)=H(p)、S(Q)=S(ρˉ)S(Q)=S(\bar\rho) を I=S(X)+S(Q)−S(XQ)I=S(X)+S(Q)-S(XQ) に入れればよい(ρˉ=∑xpxρ^x\bar\rho=\sum_xp_x\hat\rho_x)。

定理 3.6.3(Holevo 限界 ★★★)

Bob がどんな測定をしても、測定結果 YY と Alice の値 XX の古典の相互情報量は

I(X;Y)≤χ({px,ρ^x})≤S(ρˉ)≤ln⁡d(3.6.9)I(X;Y)\le\chi(\{p_x,\hat\rho_x\})\le S(\bar\rho)\le\ln d\tag{3.6.9}

を満たす(dd は送る系の次元)。

証明

Bob の測定(POVM {E^y}\{\hat E_y\})は、QQ を古典の記録 ∑yTr⁡(E^y ⋅ )∣y⟩⟨y∣\sum_y\operatorname{Tr}(\hat E_y\,\cdot\,)| y \rangle \langle y | に写す量子チャネルである。このチャネルを ρ^XQ\hat\rho_{XQ} の QQ の側に当てると XX と YY の古典の同時分布px p(y ∣ x)p_x\,p(y\,|\,x) を表す対角の状態になり、その相互情報量は I(X;Y)I(X;Y) である。量子相互情報量は相対エントロピー D(ρ^XQ ∥ ρ^X⊗ρ^Q)D(\hat\rho_{XQ}\,\|\,\hat\rho_X\otimes\hat\rho_Q) で、QQ の側に当てたチャネルは2つの状態を同じように写すので、量子データ処理不等式(第3部第3章)から I(X;Y)≤I(X;Q)=χI(X;Y)\le I(X;Q)=\chi が出る。χ≤S(ρˉ)\chi\le S(\bar\rho) は S(ρ^x)≥0S(\hat\rho_x)\ge0 から、S(ρˉ)≤ln⁡dS(\bar\rho)\le\ln d は第3部第2章のエントロピーの上限から従う。

定理 3.6.3 は、「dd 次元の量子系1個には ln⁡d\ln d nat を超える古典情報を載せられない」ことを言っている。量子ビットは連続無限個の状態をとれるが、送れる古典情報は1ビットまでである。古典ビットに対する量子ビットの得は、それ単独では無い。符号を長くとれば χ\chi が漸近的に達成できること(Holevo–Schumacher–Westmoreland の定理)は、次の章(第3部第7章)で扱う。この章では、上限 χ\chi を情報量の物差しとして使い、達成できることは「Bob が状態を確率1で見分けられる」場合に限って直接示す。

Holevo 限界と超高密度符号は矛盾しないか

超高密度符号では、量子ビット1個を送って2ビットを伝える。定理 3.6.3 を送った1個の量子ビットだけに当てると上限は1ビットで、矛盾するように見える。ところが Bob は、届いた量子ビット AA と、もともと手元にあった BB を合わせた4次元の系を測る。上限は ln⁡4=2ln⁡2\ln4=2\ln2 で、2ビットはこれに収まる。命題 3.6.2 から BB だけでは何も分からず、AA だけでも1ビットまでしか分からないが、2つを合わせると2ビット分かる。

例題 3.6.2 測る基底を変えても Bob には伝わらない・4状態でも1ビット ★★

オリジナル

  1. Alice と Bob が ∣Φ+⟩| \Phi^+ \rangle を共有している。Alice が AA を ZZ 基底(∣0⟩,∣1⟩| 0 \rangle ,| 1 \rangle)で測る場合と XX 基底(∣±⟩=(∣0⟩±∣1⟩)/2| \pm \rangle =(| 0 \rangle \pm| 1 \rangle )/\sqrt2)で測る場合のそれぞれについて、結果ごとの確率と Bob の状態を求め、結果を知らない Bob の状態がどちらも 1/2\mathbf 1/2 であることを確かめよ。
  2. もつれを使わずに、Alice が1個の量子ビットに ∣0⟩,∣1⟩,∣+⟩,∣−⟩| 0 \rangle ,| 1 \rangle ,| + \rangle ,| - \rangle のどれかを確率 1/41/4 ずつ載せて送る。Holevo 量 χ\chi を求めよ。
  3. (2) で Bob が ZZ 基底で測るとき、I(X;Y)I(X;Y) を求めて χ\chi と比べよ。
解答

(1) ZZ 基底:∣Φ+⟩=12(∣0⟩∣0⟩+∣1⟩∣1⟩)| \Phi^+ \rangle =\frac{1}{\sqrt2}(| 0 \rangle | 0 \rangle +| 1 \rangle | 1 \rangle ) から、結果 00 と 11 は確率 1/21/2 ずつで、Bob の状態はそれぞれ ∣0⟩| 0 \rangle、∣1⟩| 1 \rangle。平均は 12(∣0⟩⟨0∣+∣1⟩⟨1∣)=1/2\frac12(| 0 \rangle \langle 0 |+| 1 \rangle \langle 1 |)=\mathbf 1/2。XX 基底:∣0⟩=(∣+⟩+∣−⟩)/2| 0 \rangle =(| + \rangle +| - \rangle )/\sqrt2、∣1⟩=(∣+⟩−∣−⟩)/2| 1 \rangle =(| + \rangle -| - \rangle )/\sqrt2 を両方の系に入れると ∣Φ+⟩=12(∣+⟩∣+⟩+∣−⟩∣−⟩)| \Phi^+ \rangle =\frac{1}{\sqrt2}(| + \rangle | + \rangle +| - \rangle | - \rangle ) なので、結果 ±\pm は確率 1/21/2 ずつで、Bob の状態は ∣±⟩| \pm \rangle。平均は 12(∣+⟩⟨+∣+∣−⟩⟨−∣)=1/2\frac12(| + \rangle \langle + |+| - \rangle \langle - |)=\mathbf 1/2。Bob の手元の状態は、どの基底で測っても、結果を知らなければ同じである。Bob の状態が Alice の結果に応じて変わることと、Bob 1人には何も伝わらないことは両立する。

(2) ρˉ=14(∣0⟩⟨0∣+∣1⟩⟨1∣+∣+⟩⟨+∣+∣−⟩⟨−∣)=14(1+1)=1/2\bar\rho=\frac14(| 0 \rangle \langle 0 |+| 1 \rangle \langle 1 |+| + \rangle \langle + |+| - \rangle \langle - |)=\frac14(\mathbf 1+\mathbf 1)=\mathbf 1/2 なので S(ρˉ)=ln⁡2S(\bar\rho)=\ln2。4つとも純粋状態で S(ρ^x)=0S(\hat\rho_x)=0。よって χ=ln⁡2\chi=\ln2、すなわち1ビットである。4つの状態を使っても、取り出せる情報は2ビットにならない。

(3) ∣0⟩,∣1⟩| 0 \rangle ,| 1 \rangle は確実に 0,10,1 を出し、∣±⟩| \pm \rangle は 0,10,1 を確率 1/21/2 ずつ出す。YY の分布は一様で H(Y)=ln⁡2H(Y)=\ln2、H(Y ∣ X)=12⋅0+12ln⁡2H(Y\,|\,X)=\frac12\cdot0+\frac12\ln2。よって I(X;Y)=ln⁡2−12ln⁡2=12ln⁡2=0.3466I(X;Y)=\ln2-\frac12\ln2=\frac12\ln2=0.3466 nat で、χ=0.6931\chi=0.6931 nat を下回る。∣0⟩,∣1⟩| 0 \rangle ,| 1 \rangle と ∣±⟩| \pm \rangle は互いに直交しないので、どの測定でも4つを確実には見分けられない。

1 A. S. Holevo (1973), Problems of Information Transmission 9, 177–183。

木下の勉強ステータス

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