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出てくるもの2:スタビライザー形式

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第9章 量子誤り訂正
目次
  1. Pauli 群と安定化群
  2. シンドロームと訂正の条件
  3. 5量子ビット符号
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第9章 §3.9.4 ★★★ 符号空間を交換する Pauli 演算子の同時固有空間で定め、Knill–Laflamme 条件を「誤りの積が安定化群に入るか、どれかの生成元と反交換するか」という交換関係の判定に落とす

Pauli 群と安定化群

nn 量子ビットの Pauli 群 Gn\mathcal G_n は、{1,X,Y,Z}\{\mathbf 1,X,Y,Z\} の nn 個のテンソル積に位相 ±1,±i\pm1,\pm\mathrm{i} を掛けたもの全体である。2つの Pauli 演算子は必ず交換するか反交換する。各量子ビットで XX と ZZ のように異なる非自明な Pauli が並ぶ位置の数を数え、それが偶数なら交換、奇数なら反交換する。

定義 3.9.3(安定化群と符号空間)

Gn\mathcal G_n の部分群 S\mathcal S が、互いに交換する独立な n−kn-k 個の生成元 g1,…,gn−kg_1,\dots,g_{n-k} で生成され、−1∉S-\mathbf 1\notin\mathcal S を満たすとき、S\mathcal S を安定化群と呼ぶ。S\mathcal S のすべての元で固有値 +1+1 を持つ状態の全体

C(S)={∣ψ⟩: g∣ψ⟩=∣ψ⟩ (g∈S)}(3.9.11)\mathcal C(\mathcal S)=\{| \psi \rangle :\ g| \psi \rangle =| \psi \rangle \ (g\in\mathcal S)\}\tag{3.9.11}

をスタビライザー符号と呼ぶ。

符号空間への射影子は P^=∏i=1n−k12(1+gi)=12n−k∑g∈Sg\hat P=\prod_{i=1}^{n-k}\frac12(\mathbf 1+g_i)=\frac{1}{2^{n-k}}\sum_{g\in\mathcal S}g である。1\mathbf 1 以外の Pauli 演算子のトレースは 00 なので、和の中で残るのは g=1g=\mathbf 1 の項だけで、dim⁡C=Tr⁡P^=2n/2n−k=2k\dim\mathcal C=\operatorname{Tr}\hat P=2^n/2^{n-k}=2^k。nn 個の物理量子ビットに kk 個の論理量子ビットが入る。−1∉S-\mathbf 1\notin\mathcal S は、符号空間が {0}\{0\} にならないための条件である。

ビット反転符号は S=⟨Z1Z2, Z2Z3⟩\mathcal S=\langle Z_1Z_2,\,Z_2Z_3\rangle(n=3n=3、k=1k=1)のスタビライザー符号で、シンドローム (3.9.3) は2つの生成元の固有値だった。

シンドロームと訂正の条件

Pauli 誤り EE が当たった符号状態 E∣ψ⟩E| \psi \rangle に生成元 gig_i を当てると、giE∣ψ⟩=±Egi∣ψ⟩=±E∣ψ⟩g_iE| \psi \rangle =\pm Eg_i| \psi \rangle =\pm E| \psi \rangle で、符号は EE と gig_i が交換するか反交換するかで決まる。gig_i を測ると、EE と反交換する生成元だけ −1-1 が出る。この n−kn-k ビットの列 s(E)s(E) がシンドロームで、∣ψ⟩| \psi \rangle に依らない。

S\mathcal S のすべての元と交換する Pauli 演算子の全体を N(S)\mathsf N(\mathcal S) と書く(正規化群)。N(S)\mathsf N(\mathcal S) の元はシンドローム 00 を与え、符号空間を符号空間に写す。そのうち S\mathcal S に(位相を除いて)入るものは符号状態に何もしないが、N(S)∖S\mathsf N(\mathcal S)\setminus\mathcal S の元は符号空間の中で状態を変える論理演算子である。

定理 3.9.4(スタビライザー符号の訂正条件 ★★★)

Pauli 誤りの組 {Ea}\{E_a\} は、すべての a,ba,b について Ea†Eb∉N(S)∖SE_a^\dagger E_b\notin\mathsf N(\mathcal S)\setminus\mathcal S(位相を除いて)であれば訂正することができる。

証明

Knill–Laflamme 条件 (3.9.10) を E=Ea†EbE=E_a^\dagger E_b ごとに確かめる。EE がある生成元 gg と反交換するなら、P^=gP^=P^g\hat P=g\hat P=\hat Pg を使ってP^EP^=P^EgP^=−P^gEP^=−P^EP^\hat PE\hat P=\hat PEg\hat P=-\hat PgE\hat P=-\hat PE\hat P となり、P^EP^=0\hat PE\hat P=0。EE が位相を除いて S\mathcal S に入るなら、EP^=λP^E\hat P=\lambda\hat P(λ\lambda は位相)なので P^EP^=λP^\hat PE\hat P=\lambda\hat P。どちらの場合も P^\hat P の定数倍で、条件を満たす。

逆に Ea†EbE_a^\dagger E_b が論理演算子なら、EaE_a と EbE_b は同じシンドロームを与えるのに符号空間の中で違う作用をするので、見分けることができず、条件は破れる。重み(恒等でない因子の数)が最小の論理演算子の重みを符号の距離 dd と呼び、nn・kk・dd をまとめて [[n,k,d]][[n,k,d]] と書く。重み tt 以下の誤りの積は重み 2t2t 以下なので、2t<d2t<d すなわち t=⌊(d−1)/2⌋t=\lfloor(d-1)/2\rfloor 個までの任意の量子ビットの誤りを訂正することができる。ビット反転符号は Z1Z_1 が重み1の論理演算子なので、XX に限らない誤りに対しては d=1d=1 で、何も直すことができない。

5量子ビット符号

任意の1量子ビットの誤りを直す(d=3d=3)最小の符号は5量子ビットで、生成元を巡回的に並べた

g1=XZZX1,g2=1XZZX,g3=X1XZZ,g4=ZX1XZ(3.9.12)g_1=XZZX\mathbf 1,\quad g_2=\mathbf 1XZZX,\quad g_3=X\mathbf 1XZZ,\quad g_4=ZX\mathbf 1XZ\tag{3.9.12}

で書ける([[5,1,3]][[5,1,3]])1R. Laflamme, C. Miquel, J. P. Paz and W. H. Zurek (1996), Phys. Rev. Lett. 77, 198; C. H. Bennett, D. P. DiVincenzo, J. A. Smolin and W. K. Wootters (1996), Phys. Rev. A 54, 3824。スタビライザーの形での記述は D. Gottesman (1996), Phys. Rev. A 54, 1862。下の脚注へ。論理演算子は XL=XXXXXX_{\mathrm L}=XXXXX、ZL=ZZZZZZ_{\mathrm L}=ZZZZZ に取れる。どちらも各生成元とは異なる非自明な Pauli が並ぶ位置が2か所なので交換し、互いには5か所なので反交換する。

例題 3.9.4 5量子ビット符号のシンドローム表 ★★

オリジナル5量子ビット符号 (3.9.12) について次を確かめよ。

  1. (1) g1g_1 と g2g_2 が交換すること。
  2. (2) 15通りの1量子ビット誤り Xj,Yj,ZjX_j,Y_j,Z_j(j=1,…,5j=1,\dots,5)のシンドローム s=(s1s2s3s4)s=(s_1s_2s_3s_4)(gig_i と反交換すれば si=1s_i=1)を求め、すべて異なり 00000000 でないことを示せ。
  3. (3) シンドロームの数と誤りの数を比べ、この符号が「無駄のない」符号であることを説明せよ。
解答

(1) g1=XZZX1g_1=XZZX\mathbf 1 と g2=1XZZXg_2=\mathbf 1XZZX を位置ごとに比べると、位置2で ZZ と XX、位置3で ZZ と ZZ、位置4で XX と ZZ が並ぶ。異なる非自明な Pauli が並ぶのは位置2と4の2か所で、偶数なので交換する。他の組も同じく2か所ずつである。

(2) XjX_j は、生成元の jj 番目が ZZ か YY のとき反交換する。ZjZ_j は jj 番目が XX か YY のとき、YjY_j は jj 番目が XX か ZZ のとき反交換する。生成元の各列を読むと次の表になる。

j=1j=1j=2j=2j=3j=3j=4j=4j=5j=5
XjX_j00011000110001100011
ZjZ_j10100101001010010100
YjY_j10111101111011110111

Yj=iXjZjY_j=\mathrm{i} X_jZ_j のシンドロームは XjX_j と ZjZ_j のシンドロームのビットごとの和(mod 2)になっている。15個はすべて異なり、00000000 は無い。

(3) 4ビットのシンドロームは 24=162^4=16 通りで、誤りなし(00000000)と15通りの1量子ビット誤りにちょうど1つずつ割り当てられ、余りが無い。このように誤りの数とシンドロームの数が等しい符号を完全符号と呼ぶ。5量子ビットより少なくすると、シンドロームの数が誤りの数に足りない(3.9.5節)。

1 R. Laflamme, C. Miquel, J. P. Paz and W. H. Zurek (1996), Phys. Rev. Lett. 77, 198; C. H. Bennett, D. P. DiVincenzo, J. A. Smolin and W. K. Wootters (1996), Phys. Rev. A 54, 3824。スタビライザーの形での記述は D. Gottesman (1996), Phys. Rev. A 54, 1862。

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