出てくるもの3:エントロピーで数える符号の限界
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第9章 §3.9.5 ★★ 消失の訂正は と同値であることから、劣加法性だけで量子 Singleton 上界 を出し、状態の数え上げの量子 Hamming 上界と並べる
消失と相互情報量
どの量子ビットが失われたかが分かっている誤りを消失と呼ぶ。量子ビットの組 が消失するとは、 が環境の一部になることなので、3.9.3節の議論で環境を に置き換えると、参照系 と最大にもつれさせた符号状態で
が成り立つ。距離 の符号では、 のどの組の消失も訂正することができる。 の上だけに働く誤りの積は重み 以下で、論理演算子になりえないからである。消失は場所が分かっている分だけ易しく、任意の誤りなら 個しか直せない符号でも、消失なら 個まで直すことができる。
量子 Singleton 上界
定理 3.9.5(量子 Singleton 上界 ★★)
符号は を満たす。
証明
個の論理量子ビットを参照系 と最大にもつれさせ、 とする。 の場合は、 個を 個以下の組 、 の2つに分け、以下の議論で を空にすれば 、すなわち になるので、 としてよい。 個の量子ビットを、 個の組 、 個の組 、残り 個の組 に分ける。 と はどちらも消失を訂正できるので、式 (3.9.13) により 、。 の全体は純粋状態なので 、。劣加法性 、(第3部第2章の )を使うと
2式を足すと 。 は 個の量子ビットなので で、 を得る。
古典の Singleton 上界は で、量子では右辺が2倍になる。証明の2つの式は と を入れ替えた対称な形で、もし が無ければ、 と のどちらからも論理状態が復元できることになる。2つの互いに素な部分系がそれぞれ同じ量子状態を持つことは複製不可能定理が禁じていて、係数2はその表れである。エントロピーを使ったこの証明は Cerf と Cleve による1N. J. Cerf and R. Cleve (1997), Phys. Rev. A 56, 1721。上界そのものは Knill–Laflamme (1997) にもある。下の脚注へ。
量子 Hamming 上界
もう1つの限界は数え上げから出る。 個までの誤りを訂正する符号で、異なる誤りが符号空間を互いに直交する部分空間へ写すとき(非縮退の符号)、重み の Pauli 誤りは 個あり、それぞれが 次元の部分空間を占める。それらが 次元の空間に収まるので
は各量子ビットに の3通りの誤りがあることによる(古典の Hamming 上界では )。縮退した符号(異なる誤りが符号空間に同じ作用をする符号)ではこの数え方が使えず、式 (3.9.14) は一般には証明されていない。Singleton 上界の方は縮退の有無によらず成り立つ。
例題 3.9.5 の符号に要る量子ビットの数 ★★
オリジナル任意の1量子ビットの誤りを直す(、)符号について考える。
- (1) のそれぞれで、量子 Hamming 上界 (3.9.14) と量子 Singleton 上界が許す最小の を求めよ。
- (2) 5量子ビット符号を参照系 と最大にもつれさせた状態で、任意の2量子ビットの組 について 、任意の1量子ビットについて となる。これが Singleton 上界の証明のどの不等式の等号にあたるかを説明せよ。
解答
(1) の Hamming 上界は 。 では で 、 で なので 。 では で 、 で なので 。 では で 、 で なので 。 では で 、 で なので 。Singleton 上界は なので、 で 。
| 1 | 2 | 3 | 4 | |
| Hamming(非縮退) | 5 | 7 | 8 | 9 |
| Singleton | 5 | 6 | 7 | 8 |
では2つの上界が一致し、5量子ビット符号が両方を等号で満たす。 では非縮退の符号に対して Hamming 上界の方が厳しい。 の は実際に 符号で達成される(Gottesman 1996。)。
(2) 、 では と が2量子ビットずつ、 が1量子ビットになる。 は消失の訂正の条件 (3.9.13) そのもので、証明の最初の段で使った等式である。 なので Singleton 上界は等号で、証明の不等式はすべて等号でなければならない。最後の の等号が「1量子ビットの 」、すなわちどの1量子ビットを取り出しても完全混合状態で、論理状態について1量子ビットだけからは何も分からないことにあたる。逆に3量子ビットの組を取ると、残りの2量子ビットが消失を訂正できる組なので、式 (3.9.8) から となり、論理の情報をすべて持つ。
1 N. J. Cerf and R. Cleve (1997), Phys. Rev. A 56, 1721。上界そのものは Knill–Laflamme (1997) にもある。
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